【インタビュー】神はサイコロを振らない、コラボ第二弾はキタニタツヤ「キーワードは“エロ” “キャッチー” “ノレる”」

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神はサイコロを振らないがコラボシングル第二弾となる「愛のけだもの」を9月17日にデジタルリリースした。7月に発表された第一弾「初恋」は、 n-buna from ヨルシカが作曲とサウンドプロデュースを手掛け、神サイの柳田周作(Vo)が作詞を担当、アユニ・Dをコラボボーカリストに迎えたものだった。続く第二弾は、シンガーソングライター、ベーシスト、ボカロPなど多彩な顔を持つキタニタツヤとのコラボシングルとなるものだ。

◆神はサイコロを振らない 画像 / 動画

「愛のけだもの」を貫くファンクアレンジは、キタニタツヤのデモ音源からすでにあったということだが、神サイ・メンバーによるサウンド&プレイの躍動感が凄まじい。バスドラムの音質へのこだわり、あえて4弦ベースを使用したというリズム隊の心意気やアプローチをはじめ、16ビートカッティングに3連符を絡ませたフックだらけのギターソロなど、プレイヤー各々が新たな扉を開くことに成功したようだ。また、柳田とキタニの2人は作詞やメロディー構築、歌唱で見事に絡まり、息の合った初コラボをグルーヴィーに響かせる。

両者の出会いや、波長が共鳴しあった制作過程、今回のコラボがもたらした神サイの新発見など、メンバー4人にじっくりと語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■PCを譲り合いながらドンドン打ち込んで
■“ボーカリスト、すごいな”と思った

──「初恋」が7月リリースだったので、結構短いスパンで2ndコラボシングルが来たなという印象でした。制作はどういうふうに進めていたんですか?

柳田:実は、「初恋」と同時進行で制作を進めていたんです。普段は、僕ら4人+編曲者で楽曲を作っているんですけど、コラボシングルだとアイデアマンがさらにもう一人いる状態なので、両方ともめっちゃスムーズに進んで。

──そうだったんですね。キタニさんとは、そもそも吉田さんが知り合いだったとか。

吉田:はい。コロナ前は結構会っていたんですけど、コロナ以降はなかなか会うことができなかったので、「久しぶりに会って、一緒に曲を作ろうよ」みたいな感じでラフに始まって。

柳田:まずキタニと吉田に俺の家へ来てもらったんですけど、そのときも別に制作をするという感じでもなく、音楽でちょっと遊ぶというテンションで。トラックを作って、そこに俺とキタニが歌をはめ込んで……みたいなことをやりました。その次はキタニのスタジオに行って、そこでこの「愛のけだもの」の制作を進めました。普段の制作とはまるで違って、仕事半分遊び半分の感覚だったというか。ただただ楽しくやっていました。


▲柳田周作(Vo)

──「愛のけだもの」をいざ作り始めようとなったとき、3人でイメージを共有するために使っていたワードってありましたか?

柳田:“エロ”、“キャッチー”、“ノレる”の3ワードから派生させていきました。キタニはフェロモンがすごいし、神サイにもエッチな曲はちらほらあるので、お互いのエロティシズムを詰め込もうぜと。あと、リファレンスとしてキタニがプレイリストを作ってくれたので、それを共有していましたね。

──そのプレイリストにはどんなアーティストが入っていたんですか?

柳田:米津玄師さんと野田洋次郎さんの「PLACEBO」やDua Lipaの「Don’t Start Now」、Cory Henry & The Funk Apostlesの「rise」……神サイの「遺言状」も入っていました。

吉田:キタニはデモを3曲ぐらい出してくれていたよね。

柳田:そうそう。テンポが遅めの曲とかもあって、そっちもめっちゃカッコよかったんですけど、やっぱりイントロが飛んできたときに身体が勝手にノリだしてしまうというか……「愛のけだもの」のプロトタイプにあたるデモは、とにかくイントロのインパクトがすごく強かったので。こっちでいこうかという感じになりました。

吉田:そういう意味では、制作のテンポ感はかなり速かったですね。

柳田:デモのクオリティも“これ、もうリリースできるじゃん”みたいな感じだったんですよ。

吉田:やっぱりキタニはクリエイティヴ面で優れている人なんだなと感じました。


▲吉田喜一(G)

──アレンジはどうやって固めていったんですか?

柳田:基本的にはキタニにデモを作ってもらってます。だけど、キタニの家で2人でやりとりしながらMIDIで打ち込むみたいなこともしたし、その結果、キタニがバッとボイスメモに吹き込んだ歌メロがサビに採用されていたり、俺がMIDIで打ち込んだメロがDメロに採用されていたりしましたね。

吉田:僕もそれを横で見ていたんですけど、2人ともガンガンメロディが浮かんで、PCを譲り合いながらドンドン打ち込んでいくみたいな感じで。“ボーカリスト、すごいな”と思った覚えがあります。

柳田:だから本当に共作って感じです。歌詞もそうですけど、それぞれのクセが出ているから、2人で作った感があって。めっちゃおもろいですよね。

──桐木さん、黒川さんはデモを受け取ってどう感じましたか?

黒川:シンプルにめっちゃカッコいいなあと思いました。キタニくんのところでドラムを叩いているマットくんという子がいるんですけど、自分はマットくんと仲がよくて。キタニくんも含めた3人で話すこともあったし、マットくんと2人でスタジオに入って研究したりもしましたね。

桐木:僕は最初に聴いたとき、ビビッときましたね。メンバーとは前々から「こういう曲ほしいね」みたいな話をしていたんですよ。

柳田:うんうん。

桐木:だけど4人ではなかなか具現化できなかったので、今回キタニさんの力を借りたことで、やっと形にできた感じもあって。「うわ、こういう曲、ほしかったー!」って感じでした。

柳田:ファンクはバスドラムが命じゃないですか。だからレコーディングはめっちゃシビアに、特にバスドラムには時間をかけて。

黒川:ファンクなドラムはこれまで聴いてきたものの、演奏することってほとんどなかったので、いざやろうとしても最初は全然グルーヴが出なかったんです。ネイト・スミス(アメリカはヴァージニア州出身のドラマー)の動画を観ながら、“どういうふうにリズムをとっているんだろう?”みたいなところから研究しました。あと、マットくんはそういうドラムがめちゃくちゃ上手いんです。それで、さっき言ったように、2人でスタジオに入ったりもしたんですね。

桐木:ベースもめちゃめちゃ手こずりました。指のタッチからして今までやってきたものと全然違ったから、そこからやり直さないといけなかったし、普段5弦を使っているので、4弦のテンション感にも慣れていなくて。

──あえて4弦ベースを使用したんですね。

桐木:やっぱりこういうベースフレーズはオーソドックスな4弦ベースが似合うと思って。難易度は高かったけど、勉強になりましたね。今後、きっと神サイにも5弦以外の曲が増えていくと思うので、そのきっかけにはなったんじゃないかなと思います。


──ベースフレーズはキタニさん発案ですか?

桐木:いや、「自由にして」みたいな感じでした。デモのまま残っているのは、イントロのスラップとサビくらいで、それ以外はわりと僕がアレンジしたものです。

──手グセで対応していないというか、ちゃんと曲本位で考えている感じがありますよね。

桐木:コードを分解して、“こことここで音が当たってる”みたいな確認をしながらつけたからですかね。レコーディング前にギターフレーズをコピーしたんですよ。何回も転調する曲なので、“どうなってるんだろう?”と思って。普段はそういうことはしないので、音楽理論の勉強にもなったんですよ。

──そう、転調の回数が多いんですよね。ギターソロの終盤で、上りながら転調していくところが印象的でした。

柳田:そこ、“キタニ、ぶっ飛んでるな”って思いますよね(笑)。

吉田:最初はもっと渋いソロだったんですけど、「ここはもっと華やかな感じで」「派手にいきたい」っていうキタニと柳田にアレンジしてもらいつつ。結果、10回ぐらいギターソロは変えたんですよ。結局完成したのが、レコーディング前日の夜中3時ぐらいで。

柳田:あいつ(キタニ)は、次の日に丸一日俺らのディレクションをするのに、夜中の3時までよぴ(吉田)のギターに付き合ったという。

吉田:そうそう。でも、キタニが手伝ってくれたおかげで、めっちゃいい感じのソロができたんじゃないかと思ってます。ちょっと新宿っぽくないですか? さらに言うと歌舞伎町。

柳田:分かるわー。ミュージックビデオを作るとしたら、絶対に歌舞伎町を舞台にすると思う。画面がセパレートされていて、俺とキタニ、それぞれの画が映っているんですけど、まず女の子と2人でラブホから出てきて、ビンタされてフラれるんですよ。そのままプラプラ歩いて、酒飲んで、タバコ吸って、最終的にキタニと俺が合流する。そこまで具体的な画が浮かぶような曲です。

◆インタビュー【2】へ
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