【インタビュー】木梨憲武が語る、遊んで楽しむ人生観と無限の“コネクション”「音楽もアートもテレビも意識は全く同じ」

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木梨憲武が10月3日、EP『木梨ミュージック コネクション3』を配信リリースした。同EPは2020年にリリースされた『木梨ミュージック コネクション』『木梨ミュージック コネクション2』の続編で、ももいろクローバーZ、マツコデラックス、ミッツ・マングローブ、中井貴一、遠藤章造、狩野英孝、堀内健がフィーチャリングアーティストとして参加。GYAO!で配信中の『木梨の貝。』から生まれた楽曲、阿木燿子と宇崎竜童の書き下ろしによる「命綱」「ジグソーパズル」、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのカバー「サクセス」など全5曲が、多くの喜びとロマンを感じさせる仕上がりだ。

◆木梨憲武 画像

1980年代より、とんねるずとしてバラエティー番組を席巻し、音楽やアートといった分野でも数々の才能を発揮してきた。ソロデビュー発表は<氣志團万博 2019>初日トリのステージ。「57歳、ジジイ、やれるだけやってみます」とのMCで会場を沸かせて以降、最新EP『木梨ミュージック コネクション3』を含め、これまで配信4作、アルバム1作を発表している。B’zの松本孝弘や藤井フミヤをはじめとする著名ミュージシャン、作詞作曲家、俳優、芸人など幅広い人脈を活かしながら、多くの交友関係をアグレッシヴに巻き込んで進められる音楽制作は木梨憲武ならではのもの。圧巻のスピード感と膨大な発想力の源には、人生の楽しみ方を知っている彼だからこそのスタイルがある。

iTunes総合アルバムランキング1位、同J-POPアルバムランキング1位、レコチョランキングアルバムデイリー1位、同ハイレゾアルバムデイリー1位、music.jp総合アルバムランキングデイリー1位など、デイリー5冠を達成した『木梨ミュージック コネクション3』の制作過程はもとより、ソロアーティストとしての始動から現在まで、画家としての活動やアートについて、創造力の源について、じっくりと語ってもらった10000字オーバーのロングインタビューをお届けしたい。木梨憲武曰く、今回の取材のキーワードは“差し込み”と“休憩がてら”だ。

   ◆   ◆   ◆

■100万枚いったり、紅白歌合戦に出たり
■ずっと音楽はやってる感じですかね

──インタビューの前に、木梨さんのアトリエに招いていただいたことに、まず感激です。GYAO!の番組『木梨の貝。』でよく見るアトリエで、“あの階段からみんなは来るんだな”と。階段を昇ってくるうちにテンション高まっちゃって(笑)。

木梨:おっと、その感じで書いておいてください(笑)。

──そのGYAO!の『木梨の貝。』で、今回のEP『木梨ミュージックコネクション3』の制作過程もずっと放送してきましたね。

木梨:GYAO!が俺の動くところ、たいがいにへばりついて、その記録が全部残ってるんでね。テレビとか他の配信とかにも残ってる記録は全部GYAO!に渡すようにしてます。だからGYAO!は番宣と資料を提供する会社…です(笑)。

──そんな断言しちゃっていいんですか(笑)。でも『木梨の貝。』を見返すと、『木梨ミュージックコネクション3』をさらに深く楽しめると思いますね。

木梨:だいたい分かりますからね、どうやって出来ていったかとか、どの流れで宇崎(竜童)さんに内緒で話を進めたとか。「いつも事後報告だね、木梨くん」と宇崎さんに言われながら、「そうです。申し訳ない」と(笑)。最近はTBSラジオの番組『木梨の会。』とか俺のインスタライブとか見ている人が、宇崎さんにタレ込んだり、いろいろ情報がグルグル回ってますんで。宇崎さんもそれで知ってくれてるみたい。問題ないみたいで怒ってないです、はい(笑)。


▲宇崎竜童

──関わる方全員、さすがですね。ところで木梨さん、2019年9月の<氣志團万博 2019>初日トリのステージでソロデビューが発表され、「57歳、ジジイ、やれるだけやってみます! 」と語っていました。その当時のマインドを教えてほしいんです。木梨さんは昔からずっと音楽にも携わっている印象なんですが、ソロとしては2019年がスタートの年だったんですよね。

木梨:そうですね。とんねるずが若い頃(1981年、テレビアニメ『新・ど根性ガエル』の主題歌「ピョン吉・ロックンロール」で歌手デビュー)、“えっ、俺らがレコード出すの!?”とか“アルバム出すの!?”という驚きや思いもあったんですけど。それも含めて、歌手になってもいいんだと。そこから歌を始めたら、「ガラガラヘビがやってくる」(1992年1月発表)が100万枚いったり、紅白に出たり(過去4回出演)、野猿ができたり、矢島美容室ができたり。演歌歌っていいんだ、ヒップホップ歌っていいんだとか…なんとなく音楽は長い感じですね。

──芸能界デビュー以前に音楽は?

木梨:そもそも音楽は、『科学忍者隊ガッチャマン』の主題歌を一人で歌ったサッカー部の部室からで。みんな、盛り上がってくれて。高校2年生の演芸大会に出たりもしましたね。それが、つい2週間前、BS-TBSの番組『Sound Inn “S”』でフルオーケストラにダンサー付きで「ガッチャマン」を歌えた喜び、ね(笑)。高校の部室でアカペラで歌っていたのが、究極にクオリティが高いフルオーケストラの「ガッチャマン」へ到達したという。だからいろんなグループで歌いながら、ソロデビューさせてもらったのが2019年9月。他の仕事もいろいろしてるけど、たくさんの人が一緒に曲で遊んでくれたり、ずっと音楽はやってる感じですかね。

──その究極の「ガッチャマン」は17歳当時の木梨さん自身に見せてあげたい感じですよね。

木梨:いや、ぶったまげるでしょ(笑)。部室や合宿所で歌う、何かってときの「ガッチャマン」でしたから(笑)。


▲EP『木梨ミュージック コネクション3』

──ソロとして初めてのアルバムが2019年の『木梨ファンク ザ・ベスト』でした。タイトルが示すように、ファンクやR&Bなどが軸になっています。もともとファンクというキーワードや方向性は、木梨さんが提示したものだったんですか?

木梨:R&Bやヒップホップも含めたファンクものということでは、もともと、とんねるず時代から俺はバブルガム・ブラザーズのブラザー・コーンちゃんの直系なんでね。バブルガムの初めての新宿ルイードのライブとか、地方のライブまでついていったり。それまでの自分はディスコサウンドやファンクものには疎かったけど、そういう音楽がギュッと詰まっているバブルガム・ブラザーズがカッコいいと思ったのが、若い時代で。コーンちゃんたちのライブで俺は、どうやって笑わせたり、ノリを良くしようかと。で、酒飲んで、いい女が来て、モテるとかね。そういう遊びとか仕事ぶりが、20代ぐらいに響いていたタイプなんで。そういうことをいつかできたらいいなと思っていてね。

──染み付いていたんですね、ファンクが。

木梨:そうそう。それで初めてソロになったとき、ファンクがくっついたのかな。そこにSWAYやAK-69、AKLOやSALUとか、若いヤツらに今のヒップホップシーンを教えてもらったりしたんだけど、「57歳のおじさん、字数が多いヒップホップは無理だわ」とか、「でもレコーディングでうまくくっ付ける編集すりゃ、なんとかなるか」と(笑)。そういう若い兄貴たちがフェスに呼んでくれば「行く行く!」っつって、それが楽しいんですね。おじさんたちをかまってくれるんですよ、若いヤツたちが。でも、彼らの話をよく聞くと、「小学の頃に初めて買ったのがとんねるずの曲です」とか言うから、「じゃあ、俺の音源を手伝ってくれ」と。その上下関係で付き合ってくれたり、命令したり、頼んだり(笑)。

──<氣志團万博2019>に出演したときには、そのバックヤードで「曲を書いて」というセリフを連発していたような(笑)。

木梨:未だにそうですけど、氣志團の翔やんとか(森山)直太朗とか、会う人会う人に「曲を書いて」と言ってみて。一応、顔色をうかがいながらね(笑)。だから、本人のOKが取れれば、事務所やレコード会社は後からついてくるって感じですよね(笑)。例えば、「今から曲を書くと結構時間が掛かっちゃう」っていうんなら、「日の目を見なかったアリモノでいいよ。ボツ曲みたいな捨てそうなやつをちょうだいよ」っていうのが俺のスタイル(笑)。それを「こっちでうまくやってみます」って。

──この前、翔やんの作ったデモを木梨さんはTBSラジオの『木梨の会。』で断りもなく流すという暴挙を(笑)。そしてラジオを聴いた翔やんはビックリという。

木梨:まあ、俺がすることに、そろそろ翔やんはビックリしないと思うんだけどね。「こういう曲ですよ」って言葉で説明するより、翔やんが音を入れてくれたデモがここにあるんだから、もうラジオで掛けちゃえみたいなね(笑)。そして、ここから宇梶(剛士)さん、嶋大輔クン、浅香唯ちゃん、翔やん、俺でレコーディングに入るっていう。レコーディング前からプロモーションはすでに始まっているんですよ。


──さすが。“しかけ早めに動いていこう!”と今回の曲でも歌っているように、仕掛けも行動も素早い。

木梨:そうですよ! でも、この『木梨ミュージックコネクション3』には、まだ入ってないですよ、翔やんの曲。この次がもうスタンバイしていて、その動きは間もなくですから。俺も本当は“これに入るのかな”と思ってたの。ところがどんどん新しい曲が出来ちゃって、翔やんの曲はちょっと間に合わず。実は翔やんに「まだか? まだか? 早く! 早くしろ」と言ってたわけ。そうしたら「今、出ました」とか「今、そこの道を曲がったところです」とか、そば屋の出前みたいなこと言って、翔やんが笑わせながら急いでくれて(笑)。

──そうだったんですね。

木梨:実はラジオで流した曲の前に、違う曲も書いてくれてたんですよ。それを俺と翔やんでやろうかなと思っていたんだけど、さっき言ったメンバーを発表したら、翔やんが「書き直します」って(笑)。翔やんもプロですからね。「これでお願いします」って改めて持ってきてくれたのが、ラジオで掛けたデモで。見事な曲を書いてきましたよね。でも、『木梨ミュージックコネクション3』に間に合わなかったんだから、そんなに慌てて書き直してくれなくても良かったのにって(笑)。

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