【インタビュー】木梨憲武が語る、遊んで楽しむ人生観と無限の“コネクション”「音楽もアートもテレビも意識は全く同じ」

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■すぐに全部形にしていかないと
■飽きちゃったりするでしょ

──今回の1曲目と5曲目は、もともとココリコ遠藤さんが木梨サイクルへ自転車を買いに行って…。

木梨:いや、カゴを付けに来たんだよ。

──そうだ、カゴでした。「ガーンガーンって2回叩けばいい」って話でした(笑)。遠藤さんが木梨サイクルへ行ったのが火曜日の朝。それが全ての始まりで、金曜日にはレコーディングもほぼ終わっているという。

木梨:カゴを付けたら、お茶を飲んで、じゃあねって流れになるんだろうけど、たまたま、その後は何もなかったから。その前の日には、遠藤と狩野英孝が“クセがありすぎる歌”って企画をYouTubeでやっているのを知ったからね。「歌ってるじゃん」という話になって、「ちょっと狩野に電話してみ」って。二人にその“クセがありすぎる歌”を歌ってもらおうと思ったんだけど、GYAO!のカメラが回ってるから、「みんなで1曲、なにかやろうよ」って。その前に所(ジョージ)さんに電話したら居たので、世田谷ベースに行って。初めての世田谷ベースに二人も喜んじゃってさ。自転車屋の俺が自転車あげてないのに、所さんが狩野に自転車あげちゃったり(笑)。狩野も「いいんすか!?」って喜んじゃったり。で、ようやく落ち着いて、ご飯を食べているときに、「よーし、歌へ行こう」っつって。「この天気のいい日に起こったこの感じを、歌で作ろう」って。「えっ、今ですか?」って二人は言うんだけど、「今だよ!」って。「狩野がギター弾きながら、みんなで詞も同時に書くんだよ」っつってね。ほとんど2〜3日で形になった感じ。ああいうタイミングがなければ、こうはならなかったし、狩野も電話に出なければなにも起こらなかったかもしれないし。


──その過程を『木梨の貝。』で観ていて、鳥肌も立ったんですよ。何ヵ月も前から仕込むんじゃなくて、瞬間瞬間ですぐに始まって、すぐに形になるというスピード感やワクワク感。

木梨:すぐに全部形にしていかないと、飽きちゃったりするでしょ。

──始まり方から形になっていく過程が、バンドでジャムって曲にしていくような感覚に近いと思いました。

木梨:そうじゃない曲もあるんだけどね。どっちにしろ、いろいろ起こるんなら、いろんな形で遊びながら仕上げていって、一緒に伝えたほうが楽しいから。事前に決めていっても、「この間のほうがいいから、今日はやめちゃおうか」とかあるし。その“この間のほう”を思い出すのに必死になったりね。現場でのそういう予想外の出来事や楽しいムードは、『木梨ファンク ザ・ベスト』の頃からで。後からユニバーサルさんにお伝えすることが多くなってきた。

──そっちのほうも、いよいよ事後報告になってきたわけですか(笑)。

木梨:ええ。で、引き気味でいたら「引かないでね」って(笑)。ユニバーサルさんが「もう知〜らない、知〜らんぺっ」って言うこともあるだろうからさ(笑)。


──音楽はみんなで楽しみながら作っていくことを木梨さん自身も大切にしていると思うんです。でも、このアトリエで絵画やアート作品に向かうときは、音楽とは真逆で、一人での作業になるんですよね?

木梨:でも、音楽もアートもテレビやっているときも、全く同じ意識。何の変わりもないんですよ。自分の頭の中のタイトルに沿って、線や色で描くのがアートだったら、音楽はメロディと詞だったりする。意識的に近くてね。だから完璧に仕上げて、完璧にイメージ通りに筆を進めるんじゃなくて、やっていくうちに何か見えて、“ああ、タイトル自体を変えちゃおう”ってことだってあるし。ダメだったら、一回白く塗りつぶしちゃう。白で塗っても、その中に実は元の色もいるから、だったらここだけ残そうかなとかね。それは詞も一緒だしさ。絵はしゃべりもしないのに、よくみんな、俺の絵を見てくれるなと。見てくれる人や聴いてくれる人が、何か思い浮かべるような分かりやすいタイトルにするかとか、分からないけどこのタイトルのほうがいいかなとか。もっと分かりやすくしようとかね。音楽と全く近いんですよ。

──確かに白で塗っちゃおうとか、そういった作品作りの過程は、楽曲のアレンジ作業にも近いですよね。

木梨:そうですね。“これは前まで良かったけど、こういうふうにアレンジしたからいけねえのかな。元のやつを聴いてみよう、やっぱりこっちのほうが良かったね”っていうのは、テレビもそう。テレビの編集も、最初の粗編(本番の前段階として粗くつないだ編集)のほうがおもしろかったなとか、人に伝わるなとか。ずいぶん前にテレビの編集所に通ってたことがあってさ。当時は自分が出演したものを自分で編集し始めてたから。そんな面倒臭いタレントなんていないでしょ(笑)。明朝体で字幕スーパー入れたほうがいいかな、タイトルは丸文字のほうがかわいいかな、文字のレイアウトはここかなとか。それは絵もアートも一緒。映画をやっているときも、俺がカット割りするなら、ここだったのになとか、もっと寄ったのになとかね。そうやって観るのもおもしろい時期があったんだよね。

──確かに話を聞いていると、表現の仕方が違うだけで感覚は同じですね。

木梨:そう、一緒だと思う。うまくまとまらないこともあるけど、“ああ、やっていることや考える過程は一緒だな”と思って。この『木梨ミュージックコネクション3』のポスターも、デザイナーさんと「昔の映画みたいな感じなのは?」ってところから始まって。麻布十番の写真館へ行って、プロのカメラマンがバシャバシャ撮る。だけど、自分でシャッターを押してみようかなと思って、俺もリモコン片手に撮る。そこの写真館のお父さんも撮る。3人が撮ってるもんだから、「さあ、どれが選ばれるんでしょうか〜?」って(笑)。結局、俺が自分でシャッター押したのが選ばれたんだけど、変に強めにアピールしてる写真だよね、自分で撮ったもんだから(笑)。


──木梨さんが、ピンドンノリコになっているだけで十分強めですけどね。

木梨:GYAO!の『木梨の貝。』のキャラクターからだからね。店のママとして「ボトル入れて飲みなさいよ〜」なんてセリフ言いながら放送した回のやつで。だから、今回の「命綱 feat. マツコデラックス, ミッツ・マングローブ&ピンドン・ノリ子」を歌うかってところから始まったんじゃなくて、最初は久しぶりに扮装して、このヴィジュアルで作りたかっただけで(笑)。これが麻布十番の商店街とか居酒屋とかに貼ってあったらおもしろいなと思ってね。

──TBS『木梨の会。』でしゃべっていたように、ポスターには本当に“仏壇 坂田”の携帯番号を載せちゃっているんですね。

木梨:ピンドンノリコのキャラクターと問い合わせ先が仏壇屋って、なんか合ってるでしょ(笑)。“あっ、仏壇を大事にしている人なんだ”と。みなさん、どうぞなにか困ったことがあれば、“仏壇 坂田”へ電話を掛けてください。そろそろみなさんも神棚とか仏壇が必要な世代でしょ(笑)。坂田は世田谷の後輩なんですよ。このアトリエにある神棚も“仏壇 坂田”ので、屋久杉を使った一番いいやつですからね。品揃えもピンキリだから、そういう問い合わせも“仏壇 坂田”へ(笑)。で、坂田に言わないで、本人の携帯番号をポスターに載せちゃうっていうね。

──坂田さんの直電番号ですか!?

木梨:そうです(笑)。普通は店の電話番号を載せるんだろうけど、店電じゃ繋がらないこともあるだろうから、本人直(笑)。

──そこも宇崎さんにやったのと同じ、事後報告ですか(笑)?

木梨:坂田は大笑いしてたけどね、「でもヤバい、どうしよう」って言ってた(笑)。「“仏壇ですか? ありがとうございます!”って言えばいいし、いたずらだったら、“いたずらは困ります”って言えばいいだろ」ってね。で、「もし仏壇売れたら、一応、20%よこせ。飯ぐらいおごれよ」っつってね(笑)。それも今、GYAO!でずっと追っかけ回してる。いたずらが来るのか、来ないのか(笑)。

──向かうときの意識は全て同じと言っていましたが、相乗効果が生まれることもありますか? 音楽をやっているからアートにも意外なおもしろい発想が生まれるとか。

木梨:これが不思議でね。俺がアートの展覧会でツアーやったりすると、100万人ぐらい来てくれるんですよ。だから、曲を出したら100万枚ぐらい売れるぞと思ったら、全然なんだよ。たいして売れなくてビックリしちゃうわけですよ(笑)。でも、俺、グロスで見ているからさ。よっしゃ、展覧会にCDも並べて売ればいいじゃないかと。それでもたいして売れないんだけどね(笑)。やっぱね違うんだね。ユニバーサルの宣伝が足りねえんじゃないかって。人のせいにしちゃったりね(笑)。

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