【インタビュー】さとうもか、“もやもや”を少しずつ解消していったドキュメントAL『WOOLLY』

ツイート

さとうもかは不思議な人物だ。ものすごく強い意志を感じさせるが、どこか掴みどころがない。繊細でありながらも突拍子もないユニークな大胆さを持っていて、子どものように無邪気かと思いきや悟りを開いたように達観している部分もある。少年性、少女性、等身大の女性性やこれまでの人生で培ってきた人間性、すべてを詰め込んだおもちゃ箱のようだ。

そんな彼女の人柄やポリシーを嘘偽りなく受け取ることができるのが音楽なのだろう。メロディは言葉にしにくい感情を隅々までクリアに彩り、バラエティに富んだアレンジは楽曲それぞれに宿るメンタリティや風景、香りまでも緻密に描いていく。メジャー1stフルアルバム『WOOLLY』は、彼女が抱えてきたもやもやとした気持ちが、素直に落とし込まれた作品。自分と向き合い、自分の弱さを受け入れた彼女のドキュメント映画のような今作は、彼女の人生において非常に意味深い1枚になるのではないだろうか。

   ◆   ◆   ◆

■未来のことを考えると怖くて仕方がなかった。
■でも未来を信じたかった。その両方がありました。


──エラー音と銃声で始まるメジャー1stフルアルバム。なかなか斬新ですね。

さとうもか:(笑)。こういう始まり方、かっこいいかなと思って。『ザ・ファブル』っていう殺し屋の漫画にハマってる影響もあると思います。

──突飛かつユーモラスでインパクトのあるオープニングだったので、さとうさんらしいなと思いました。ところでさとうさんは今年の5月に地元岡山から上京なさったんですよね。半年近く経ちましたが、東京の暮らしはいかがですか?

さとう:最近は結構楽しいかもしれません。引っ越してから急にコロナの陽性者数が増えて、東京怖すぎる……! と思ってたんですけど、最近は人数も落ち着いて、緊急事態宣言も解除されたりして外に出られるようになってきたので浅草とか行ったりしました。音楽制作に関しても、岡山時代からのやり方も引き続き残しつつ、東京にもどんどん仲間が増えていっている実感があって。この半年でだいぶよい環境が作れました。


──上京なさってすぐにリリースしたメジャーデビューシングルの表題曲「Love Buds」は、名残惜しさを感じながらも新しい一歩を踏み出していくといった内容の曲だったので、そのあたりはさとうさんの上京のマインドと通じてそうですね。

さとう:『GLINTS』をリリースした時に“この環境がずっと続くだろうし、続けばいいな”と思ったんです。でもその後にいろんなことが変わってきて、これはわたしが一歩踏み出したほうがみんな幸せになるだろうなって。でもメジャーデビューをするにあたって、どういう人と一緒に活動していくべきなのか、本当にメジャーデビューをするべきなのかをすごく考えました。最終的にはEMI Recordsに信頼できるスタッフの方がいたので、ここで一緒にやっていこうと決意しました。


──メジャーデビューをすると、それまでにしたことがない経験も増えますよね。2021年11月度のD-PUSHアーティストに選ばれたこともそのうちのひとつだと思うのですが、いかがでしょうか。

さとう:そうですね、本当にありがたいです。DAM CHANNELの収録もすっごく楽しくて。踊ったりもしました(笑)。

──DAM CHANNELってトークコンテンツですよね? 踊る……!?

さとう:ぜひカラオケに行ってチェックしていただきたい!(笑)。どんな編集になっているか楽しみです。自分も高校生や大学生の時にめっちゃカラオケに行っていたので、カラオケで自分の曲を歌ってもらえると考えると“まじかよ”って感じで衝撃的すぎて。めっちゃうれしいんです。失恋した時に友達と一緒にわいわい吹き飛ばすような感じで、特に「Woolly」はお腹から思いっきり声を出して戦うくらいの勢いで歌ってほしいです(笑)。

──歌唱法伝授ありがとうございます(笑)。前作『GLINTS』も様々な音楽性を取り入れたカラフルな作品でしたが、今作『WOOLLY』はそのバラエティに富んだ音楽性で1本の物語を作っているような印象がありました。ドキュメンタリーのようにリアリティのある青春映画を観ているような心地と言うか。

さとう:ああ、うれしい。『GLINTS』は1曲1曲が異なるストーリーを持っていると思うんですけど、『WOOLLY』の楽曲は実際に自分が今悩んでいることを曲にしたものが多くて、半分くらいが東京に引っ越してから作った曲なんです。アルバム1枚でストーリーを作ろうとは意識していなかったんですけど、そういう作品に仕上がったなと思っています。心のなかにいろんなもやもやすることがあって、そのもやもやが少しずつ解消していく感じというか。

──もやもやした気持ちを抱えていた時期に作った作品であると。

▲さとうもか/『WOOLLY』通常盤

さとう:人に言うほど深刻でもないけれど、ひとりの時に感じた“寂しいな”のなかで作った曲が多いかも。新しい環境になって“あの時は良かったな”って過去ばっかり振り返ってしまったこともあったけど、そうやって悩んでいくなかで信頼している人たちに相談をしたりして。そうしていくうちに、少しずつ気持ちが解消されて、自分が大切にしているものが見えてきて“今を見て、前を向かなきゃ”と思えるようになって。それで出来たのが「アイロニー」です。この曲はいちばん最後に作った曲なんです。

──「アイロニー」はすごく爽やかで、軽やかな力強さを感じます。ここに行き着くまでに、いろんな苦しさを抱えていらっしゃったんですね。

さとう:ちょっとスランプだったこともあって、このままで大丈夫かな、人生間違えたかな……とどんどんマイナスに考えてしまう時期で。

──ちなみにそのスランプはいつぐらいですか?

さとう:6、7、8月くらいかな。

──このインタビューが10月頭なので、最近と言えば最近ですね。

さとう:もっと言うと1、2、3、4、5月あたりから……。

──それはもう2021年の半分以上ですね(笑)。メジャーデビュー盤の制作も、その苦しみのなかで生み出したものだったということですか。

さとう:はい。あることがきっかけで人のことを信じられなくなってしまって。人を疑ってばかりの自分が嫌だったし、自分を守るためにいろんなことを勉強するようになったら、そっちに気を取られすぎちゃったり……。悩み事に意識を取られすぎて、何も考えられなくなって。メジャーデビューというありがたい機会を頂いているのにテンションが低くて、それもすごく嫌だったんです。“自分ってこんな人だったっけ?”とどんどん自分のことも嫌いになってしまって、そしたら全部が意味ないように思えてきて、歌詞に書きたいこともなくなって──。

──その苦しさのなかでも、先ほどおっしゃっていたように、信頼する人たちに相談するなかで糸口を見つけていったということですね。

さとう:自分としっかり向き合っていくと、ちょっとずつ歌詞の言葉が出てくるようになって、自分の気持ちに気付くことも多かったです。「アイロニー」を書き始めた頃もちょっともやもやしていたんですけど、書いていくうちに“この歌詞じゃだめだ! 1回ちゃんとこのもやもやに踏ん切りをつけなきゃ。このままじゃまずい。自分が前向きにならなきゃ!”と危機感を覚えて、その勢いで書きなぐったんです。そしたらすごくすっきりしました。この曲を書くなかで、ただ好きなものを追いかければいいし、好きな人に“好きだ”と伝えればいいだけじゃん! と思えたんですよね。

──八方塞がりの苦しみのなかで楽曲制作を続けて、信頼する人の力を借りながら活路を見出して「アイロニー」まで到達できた。『WOOLLY』はさとうさんのドキュメントアルバムですね。

さとう:ふふふふ。ありがとうございます(笑)。岡山での環境も大好きで、ずっと変わらずやれると信じていたけど東京に来て不安だったんです。でも今は遠くてもリモートを駆使したりして、今までと同じように音楽が作れることもわかったし、スランプでもやもやしていたけれど、気付けば3、4ヶ月で7、8曲作ることができて。それも自信になりました。


──タイトル曲の「Woolly」は「Love Buds」と通ずるものがありますよね。「Love Buds」よりも“ここにいても未来がない”というテーマにフィーチャーしている印象です。

さとう:公私ともに“未来が全然見えないけど、この先どうなるんだろう?”と不安に感じていた時期に作った曲です。友達や周りの人にもそういう人が多くて、いろいろ話していたら自然とそういう曲を作り始めていました。結論が出てないなかで書いたので、書き進めていくうちに未来の想像に迷いこんでいって……未来怖い!って思いながら作りました(笑)。

──「Woolly」や「Love Buds」以外にも、歌詞に“未来”という言葉は多いですよね。

さとう:ほんとだ。全然意識してなかったけど、未来に対して意識を向けていた時期だったんでしょうね。ここ最近は毎年環境が変わっているので、ちょっとほっとしたい気持ちもあったのかな(笑)。このままでいたいけど、未来はどうなるかわからんなあ……って。未来のことを考えると怖くて仕方がなかった。でも未来を信じたかった。その両方がありました。

──“未来”と同じくらい“変化”に関する言葉も多くて。時の流れに敏感な時期だったのかなとも思いました。

さとう:個人的にもいっぱい変わったことがあったし、コロナ禍というのも大きかったです。2020年はライヴができないぶん制作に没頭できる!と思ってたけど、だんだん“このままずっと何も起こらなかったらどうしよう?”と不安になって。コロナ禍になっても自分はあまり影響はないと思ってたけど、自分も含めて全部が変わった感覚がありました。

──コロナ禍前のさとうさんはリアルと空想がマーブリングのように溶け合った楽曲を制作していた印象があるのですが、『WOOLLY』はどちらかというとリアル寄りかもしれない。恋愛だけではなく、人生が詰まっているというか。

さとう:そうですね。わりと最近のことばっかり曲になってるし。スタッフさんとこのアルバムについて話している時に「デトックスしていくようなアルバムだよね」と言ってもらって。たしかに……!! と思いました(笑)。

◆インタビュー(2)へ
この記事をツイート

この記事の関連情報