【インタビュー】MUCC、新体制による初音源完成「行き着いたのは“自分とどう向き合うか?”」

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■BEGINNING OF THE WORLDだな
■という感じで書いていました

──「GONER/WORLD」のミュージックビデオやアーティスト写真は、メジャーデビューシングル『我、在ルベキ場所』(2003年発表)のオマージュだそうですが、どういう意図があったんですか?

ミヤ:新体制での再スタートなので、“一からまたやり直し”という感じがあったから。ミュージックビデオの監督も当時『我、在ルベキ場所』を撮った人で、ちょっと遊んでもいいかなという部分が理由としてひとつあります。オマージュというほど大袈裟なものでもないんですけどね。この20年で、街の風景もそうだしうちらもそうだし、すごく変化しているので。そこを見比べられたら面白いかなと思ったんですよ。

──ミュージックビデオの舞台となっている街は池袋ですか?

逹瑯:ミュージックビデオは池袋で、アーティスト写真は渋谷のスクランブル交差点です。

──あぁ、渋谷の街は特に激変していますよね。

ミヤ:同じ場所で写真を撮ってみたら、20年前にあったビルがもうなくなっていたり。でも、その周りには変わらないものも結構いっぱいあって。それもバンドと一緒だな、という感じがしました。

──ミュージックビデオもアーティスト写真も、失われたものへの郷愁だけではなくて、新たな変化への希望を感じ取れる気がします。

ミヤ:自分が当時『我、在ルベキ場所』を作った時と、今回「GONER」を作った時の気分って、あまり変わってないなと思ったんですよね。曲のもともとのテーマからしてそう。結局、自分の今の現状を歌っているんですよ。でも、やっぱり視野は変わっているというか。その変化がすごく面白かったので。今は特殊な環境ではありますけど、比べたら興味深いものになるなって。


▲『我、在ルベキ場所』ポスター

──逹瑯さんは『我、在ルベキ場所』と同じシチュエーションでの撮影では、どんなお気持ちでしたか?

逹瑯:面白かったですね。“当時も、このシチュエーションで撮影するのはちょっと恥ずかしかったんだよなー”とか思い返しながら。アーティスト写真は渋谷のど真ん中の目立つところで撮影したんですけど、“早く車に戻りたいな。スムーズに終わらせよう”と思いながら、今も昔も(笑)。ミュージックビデオに関しては、当時は昼間というか朝に撮影したんですけど、今回は逆の夜中で、“人目につかない時間で良かった”と思いながら撮影しました(笑)。

──ははは。YUKKEさんはいかがですか?

YUKKE:俺は逹瑯と逆で、あまり人がいない時間だったから、“もっと人のいる時間が良かったな”と思ってました(笑)。もちろん、以前の表現との対比で“時間帯が違う”というのも面白いと思ったんですけどね。渋谷の撮影は“もっと撮ってたかったな”と思うぐらいで。昔から、渋谷駅とか繁華街での撮影が好きみたいだし、ロケが好きなのかな? そういった意味でも気持ち良かったですね。“何だあれ?”みたいな見られ方をするのが好きみたいです。

──なるほど。では続いて「WORLD」のお話に移します。美しいメロディーラインで、ファンの方々のコーラスがまるで聖歌隊の賛美歌のようで。作曲は“逹瑯・ミヤ”のダブルクレジットですが、どのような分担で作られたんですか?

ミヤ:もともと「WORLD」という曲と「アンセム」という全く別の2曲があって、それをひとつにくっつけたんです。両曲に共通しているコンセプトがあったので、「逹瑯の曲の“お客さんのコーラスを入れたい”というアイデアと、俺がやりたかったバラードをくっつけたら面白いんじゃないか?」って。

──ちなみに「WORLD」と「アンセム」、どちらがどちらの曲だったんです?

ミヤ:わかりやすく言うと、コーラスパートとBメロが逹瑯の「アンセム」で、Aメロとサビが俺の「WORLD」です。

──そんなふうに生まれた曲って、今までもあったんですか?

逹瑯:よくよく考えたら他にもあったかもしれないですけど、ここまでしっかり綺麗にハマッたのは珍しい気がする。俺のもともとのイメージも、ラストのサビはみんながコーラスするようなメロディーがあって、それとは違うサビを俺がグングン歌っていくというものだったので。だから、俺が作っていたコーラスパートとリーダーが別の曲として作っていたサビとが、さほどコードをいじらずにガチャッと合わさったというのは、本当にすごいですよね。全然違うタイミングで作った曲だけど、完全にガッチャンコすることができたから。

──奇跡的ですね。ライヴが延期となってしまった8月の空白期間を活用して、ファンの方からコーラス音声をSNS上で募集したわけですが、実際1000人ぐらいの声が入っているんですよね?

ミヤ:1000人以上、千何百人ぐらいですね。

──応募総数自体は、それを上回る数だったんでしょうから、それを全部聴いてミックスしてという作業は……気が遠くなるようなものだったと思います。

ミヤ:ホンットにキツかった(笑)。イヤホンで聴いていたとき、何回か間違って1000人の声を同時に出しちゃったんですけど、世界の終わりのような音になりましたよ。鼓膜が破れるかと思ったぐらい(笑)。1000人の音のパワーってすげえなって思いましたね。

──SNSでの募集方法もミヤさん発案ですか?

ミヤ:“お客さんのコーラスを募集しよう”というアイデアはもともと逹瑯の曲であって。“どういう形で募集するのがベストか?”となった時に、“今はわりと携帯のマイクもカメラも精度が高いので、それぞれにリモートで録ってもらったら成立するんじゃないかな?”って。すごく大きいサイズのデータでも送れるようになっているしね。配信ライヴのときに、お客さんにリモート参加してもらうような試みはいろいろやってきたし、世界中で行われていることだと思うんですよ。でも、声でリモート参加する、それをレコーディングの音に乗せることって、あまりないと思うので、“あぁ、今しかできねぇな”と思ったんですよ。大変な作業ではあったんですけど、延期延期で時間も若干生まれていたし。そこもコロナのお陰ですね。

YUKKE:今はライヴ会場でお客さんが声を出せないじゃないですか。今の時期を逆手に取った企画で、アイデアが素晴らしいと思いました。過去に何回かライヴハウスでお客さんの掛け声を録音したことはあるんですけど、個人個人が自宅とか、それぞれ違った環境で録ると、そもそも音質が違うし、バックに他のいろいろな音が入っていたりもして(笑)。そういうのも全部、今の時代の企画としてアリだし、面白かったですね。1000人の声の存在感ってやっぱりすごいんですよ。声の壁というかね。いつか実際に広い会場で聴けたら鳥肌が立つだろうなって想像しています。

──歌詞は逹瑯さんが書かれていますが、“世界の始まりを歌うよ” “壊れた世界を超えて”という表現が、今にふさわしい、バンドの状況にも世の中にもシンクロしたメッセージだと感じます。

逹瑯:やっぱり今の世の中の感じには、どうしても引っ張られるからね。自然と引っ張られて出てくるんだったら、それをちゃんと形にしようとは思ってて。過去に「THE END OF THE WORLD」と歌えていた時……あれを歌えていた時は世の中が正常だったんだなと思う。逆に本当にぶっ壊れた感じになっちゃうと、自然と“光に向かっていかなきゃ”ってなるもんだなと。もし過去に「THE END OF THE WORLD」を歌っていなかったら、今、「THE END OF THE WORLD」を歌ったかもしれないですけどね。ただ、それはもう過去に歌えていたから、今は逆に“進んでいこう”って歌える。“「BEGINNING OF THE WORLD」だな、今回は”という感じで書いていました。

──やはり、世界の終わり、絶望、別れに向き合い続けてきたMUCCだからこそ、一足早く“始まりの兆し”を歌えるアドバンテージがあるんですかね?

逹瑯:うん、そんな気がします。

──ミヤさんは逹瑯さんの歌詞をどう受け止められましたか?

ミヤ:「GONER」と「WORLD」では結局、曲調や言葉は違うんですけど、表現したいことが似ているというか、思っていることとかテーマは一緒なんですよ。だから、選曲の段階でこの2曲が出てきた時に、“こっちの側面はこっちで”という考え方になったし。だったら2曲同時に出したほうがいいな、ということで両A面としてリリースすることにしたんです。

──表裏一体ということですね。

ミヤ:うん。それに、コーラスパートが入っている逹瑯の「アンセム」が選曲のときに出てなかったら、別途、俺の「WORLD」を出していたと思うんです。やっぱりそれがバンドの強みというか、いろいろな気持ちを持つ人間の集合体が成せる業というか。ソロアーティストだったらできないなという感じでしたね。

──逹瑯さんの歌声も表情が豊かで、聴き惚れてしまいました。

逹瑯:「GONER」がさっき話したように感情を抜いていった感じだったから、対照的にこっちは少し表情が分かりやすいというか。“歌のニュアンスをこういう声色でアプローチしよう”というよりも、温度とか体温とか表情が見えるような歌い方をしていますね。

──それは意識的になさったわけですね?

逹瑯:その曲その曲をどう仕上げていこうか?ということなので、もとから2曲の対比とは考えていなかったですけど。この曲ではそういうチョイスだったという感じです。

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