【ライブレポート】ロックな黒木渚が戻って来た

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あれからひと月近く経つというのに、いくつもの鮮やかな場面が今も目に焼きついて離れない。10月3日(日)、東京キネマ倶楽部にて行われた黒木渚の今年初となる有観客ライブ<死に損ないのパレード>が、11月6日(土)21時から配信オンエアされた。

◆ライブ画像(21枚)

ファンクラブ限定、約300名のみ参加のライブながら、ここはアリーナか?と思うほど多彩な演出、新旧取り混ぜたベスト選曲、そして何より「ロックな渚が戻って来た」と確信する、力強い歌声とカリスマティックなオーラ。すごいものを見てしまった。


雨粒のように再会しよう、私たちはもともと一つのかたまりだったのだから──。謎めいた物語風のナレーションが開幕を告げると、すかさず真っ赤なフェンダーが唸りをあげる。東京キネマ倶楽部の名物、一段上のサイドステージを上手く使った衝撃のオープニングから、2曲目で早くも観客は総立ちだ。「音楽でひとつになろう!」と煽る渚は、清楚な黒髪に白のドレスワンピース。「虎視眈々と、淡々と」など、序盤から攻撃的キラーチューンを繰り出しつつ、アルバム『死に損ないのパレード』からの「合わせ鏡」では、包容力あふれる歌で観客を抱きしめてみせる。感情の振り幅が実に広い。


この日のセットリストには、おそらく一つの物語があった。女優・黒木渚と呼びたい、初めて見るチャーミングな一面が楽しめる「モンロー」から、自死した幽霊の鬼気迫る独白「ウェット」への急展開も、実に意味深だ。「死んだように生きるのと、生き生きと死ぬのでは、どちらが幸せだろうか?」──的確に挿入されるナレーションと効果音が、いやがうえにも想像力をかきたてる。


中盤の、いやこのライブ全体の核心を成すのは、「死に損ないのパレード」だろう。かつて人生のどこかで、生と死の境へ追い詰められ、それでも生きていたいと願った人。そんな死に損ないを、開き直った陽気なパレードへと誘うこの歌を、悲しみでも絶望でもなく、勇気と笑顔で歌う渚。死と生が反転し、逆転人生の幕開けを高らかに告げる。渚がライフル銃を持ち出し、ステージ上に幸せの紙吹雪をまき散らす「象に踏まれても」の、逆境を笑い飛ばすパワーに圧倒される。間違いなくこの日の音楽的瞬間最大風速を記録した、「ダ・カーポ」のすさまじいスピードにぶっ飛ばされる。


私の持てるものはすべてつぎ込んで、みなさんと歩いていこうと決めました──そんなふうに語ったあとに歌う、「心がイエスと言ったなら」の圧倒的な肯定感はどうだ。なぜかサンバのリズムに衣替えした「ふざけんな世界、ふざけろよ」を、カーニバルダンサーに変身して踊る渚の、笑ってしまうほどの生命エネルギーは何だ。喉の治療とリハビリに費やしてきた日々がついに終わりを告げた、そんなふうに感じられるほど今の黒木渚は自信満々に見える。


アンコールを含めておよそ90分、全14曲。宮川トモユキ(B)、柏倉隆史(Dr)、神佐澄人(Key)、及川晃治(G)の熱気あふれる演奏、メンバー紹介で発覚したそれぞれユニークなキャラクターも楽しかった。『死に損ないのパレード』というテーマのもと、古い曲にも新しい意味が注ぎ込まれたセットリストと、次々登場する演出も素晴らしかった。そして何より、死に損ない代表としてバンドを率い、オーディエンスを焚きつけ、先頭を切って突っ走る黒木渚のロックな雄姿が、有無を言わさず圧倒的にかっこよかった。


この日のライブのアーカイブ映像は11月14日(日)23時59分まで視聴可能。黒木渚のライブ映像作品に、また一つ新しい傑作が加わる。見逃してはいけない。

ライター◎宮本英夫
写真◎後藤壮太郎

アーカイブ配信情報

黒木渚 ONEMAN LIVE 2021『死に損ないのパレード』
アーカイブ:2021年11月14日(日)23:59まで
料金:¥2,500
チケット購入サイト:https://eplus.jp/kurokinagisa1106-st/
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