【コラム】HiGE、“テーマ=睡眠”が貫かれた全9曲の誰も試みない領域

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11月10日、HiGEのニューアルバム『HiGNOTIQE』がリリースされた。

◆HiGE 画像

これは珍しい!──アルバムとなるとテーマを掲げるミュージシャンは多い。が、大抵は“言われてみれば…”ぐらいの反映の仕方だ。ところが髭の新作は全曲にその痕跡が窺えるのだ。

そのテーマとは“催眠”。と知って改めてタイトルを眺めてみるとHiGE+HYPNOTIC=HiGNOTIQEという流れがまず見えてくる。ただし、催眠だからといってひたすら眠りを催す内容じゃない。考えられる限りの“ゆったり感”が次々に現れてひたすら驚かされるコンテンツだった。

ここにもアプローチのユニークさがある。ふつうロックバンドだったら、1枚のアルバムにゆったり系は1〜2曲。アクセント的な存在だったりする。なぜならその手のナンバーは勢いで押す楽曲よりはるかにスキルが要求されるから。ましてや今回の髭のようにアルバム全体としてゆったりというのは、まず誰も試みない領域だ。それでは間がもたないだろう、という判断のもと。


『HiGNOTIQE』は通常だったらアルバムの最後に出てきそうなスローナンバー「Oh Baby」から始まる。リリースライヴのことを考えてもこれはかなり大胆だ。しかし、こんなにもゆっくりとしていてもそこに聴き手の身体をゆらすグルーヴがあり、そのことでこの1曲目は成立している。このへんは20年近いキャリアを持つバンドならではの部分だろう。

2曲目「それくらいのこと」はやや早めのミドルテンポ。けれども間合いをしっかりとったメロディーと“いつも言葉たちはオーバー だからもう気にしないで”と歌う詞が力まない世界を作り出している。つづく「HiGNOTIQE」は本作中もっとも速い楽曲。が、ガシガシとビートが刻まれるのではなく浮遊感全開のギターが中心のインスト。しかも2分以内というサイズがアルバムカラーを乱さない。

4曲目「おうちへおかえり」はビートだけとればそれなりの速さの4つ打ち。が、それを覆い隠すようにサイケなノイズギターがうねっている。かつてのマイ・ブラディ・バレンタインのように。つづく「思い通りいかないもん」はのどかなムードのミドルテンポ。「WEINHAUS」は歪んだベースとギターのスローミッドながら歌はドーム級に広がった処理。同じくスローな「yy」も広がった歌物。「Tour」は切切とした歌にまずギターとベースだけが寄り添い、徐々にドラムが出てくるというアレンジ。そしてオーラスの「so sweet」はギターも歌も広大に広がったミドルナンバー。

催眠〜ゆったりという観点で眺めてみると、よくぞここまでそれを貫いたなと感心させられる新作。振り返ってみると昨年のアルバム『ZOZQ』は途中までアゲたりポップだったりしながら最後の3曲はゆったりだった。あそこからすでに今回のモードは始まっていたのかもしれない。

新作で15枚目を数えるバンドのキャリアが可能にした作品。さらには1発で聴き手をアゲるシャウトの持ち主である一方、癒しの詞と声をも得意とするボーカルの須藤寿の一面を活かし切った作品。新たなバンド体験としておすすめしたい。

文◎今津 甲


■アルバム 『HiGNOTIQE』

2021年11月10日(水)リリース
XQLX-1008 ¥2,700 +tax
https://linkk.la/HiGNOTIQE
1. Oh Baby
2. それくらいのこと
3. HiGNOTIQE
4. おうちへおかえり
5. 思い通りいかないもん
6. WEINHAUS
7. yy
8. Tour
9. so sweet

■リリースツアー<HiGNOTIQE+ZOZQ tour>

11月27日(土) 仙台CLUB JUNK BOX
・start15:00
・start18:00
12月04日(土) 梅田CLUB QUATTRO
・start18:00
12月05日(日) 名古屋CLUB QUATTRO
・start18:00
12月11日(土) 渋谷CLUB QUATTRO
・start15:00
・start18:00

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