【インタビュー】竹内唯人、現在を刻み未来への可能性を切り開いたミニアルバム『XX』

ツイート

竹内唯人の1stミニアルバム『XX』(トゥエンティ)は彼の20歳の等身大の音楽が詰まった作品となった。歌声の表情の豊かさが素晴らしい。じわじわ染みてきたり、包み込まれたり、ガツンと入ってきたりする。多彩なシングル曲「After the rain」「I Believe Myself (Prod. GeG)」「YOZORA (feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」も収録。彼が歌詞を手掛けた新曲では新境地を開拓し斬新な魅力も堪能できる。一体感あふれるライブの光景が見えてきそうな「Roar」、今の思いを真っ直ぐ歌に詰め込んだヒューマンな「XX」など、現在を刻んだ作品であると同時に、未来への可能性を切り開いた作品でもあるだろう。ミニアルバム『XX』について聞いていく。

■20歳でアルバムを出したい。21歳の誕生日が来る前にアルバムを出したい
■アルバムの構想の具体的な話をしてから1か月くらいで一気に作りました


――『XX』(トゥエンティ)が完成しました。どう感じていますか?

竹内:うれしかったですね。「Roar」や「XX」は自分がこれまでに作ったことのないタイプの音楽だったんですよ。やっと自分のやりたい音楽を見つけられたという手応えがありました。

――「Roar」を聞いていて、観客とコール&レスポンスしているようなライブのイメージがわいてきました。

竹内:そういうことを考えながら制作していました。雄叫びもホールの中でお客さんと掛けあいをイメージして、その場で声を重ねながら作りました。

――今回の作品はアルバムをイメージして制作したのですか? それとも1曲1曲に集中して、曲がたまった時点でアルバムとしてまとめたのですか?

竹内:アルバムを作りたいということは以前から考えていました。自分が音楽でもっとも刺激を受けるのは同世代のアーティストやラッパーなんですが、みんなアルバムを出しているんですよ。そこは大きかったです。メジャーデビューが決まったタイミングで、「20歳でアルバムを出したい。21歳の誕生日が来る前にアルバムを出したい」とディレクターに話して、かなりのスピード感で制作に臨みました。2nd デジタルシングル「I Believe Myself (Prod. GeG)」をリリースする週から、アルバムの構想の具体的な話をして、そこから1か月くらいで一気に作りました。

――今の瞬間瞬間を切り取っていくような制作だったんですね。

竹内:そうですね。その時々のヴァイブスで作りました。

――1か月で集中して作るのは大変な部分もあったのでは?

竹内:大変さは感じませんでした。前のレーベルにいた時のほうがハイペースで作っていましたし、今回は楽しみながらアルバムを作ったという感じです。

――個々の曲についてもうかがいます。1曲目の「After the rain」はメジャーでの1stデジタルシングル曲ですが、アルバムの幕開けにもふさわしい曲ですね。

竹内:アルバムの並びは時間をかけて考えて決めたわけではないんですよ。「どういう並びにする?」と聞かれて、感覚的に「これはここ、これはここ」と決めました。「After the rain」は自分の中で“初めの一歩”みたいな位置づけの曲でもあるので、アルバムの1曲目に持ってきたんだろうなと思います。

――「After the rain」は明るい光の要素だけでなく、陰の要素も備えているところも魅力的な曲ですね。

竹内:この曲は光や雨を描いていて、前に進んでいく気持ちを表現すると同時に、その気持ちを彼女や君に例えて、同時に2つのストーリーを作ることを目指しました。UTAさんにそのイメージを伝えて作った曲なので、二面性のある表現ができたんじゃないかと思います。


――歌声も表情が豊かです。歌う際に意識したことは?

竹内:UTAさんと一緒に作るようになった初期の頃から「AメロとBメロとサビのメリハリをはっきりつけよう」ということは言われていました。「ニビイロ」「Silence」「After the rain」はUTAさんと一緒に作る過程で、メリハリをつけることが自然にできるようなってきたんじゃないかと感じています。

――2曲目の「Land of Dreams」では疾走感あふれるテンポの中でリズムに乗って、歌のニュアンスを的確に表現しているところも見事です。

竹内:この曲は大変でした。やったことのないリズムと速さなので最初はとまどいましたし、意味がわからなかったです(笑)。デモの段階では、この曲を作っていただいた辻村有記さんの歌が入っていたんです。声が高くて、しかも何本も重ねてあり、サビのハモは7、8本入っていました。自分はそういう録り方をしたことがなかったので、これは大変なレコーディングになるなと覚悟しました。


――技術的にも物理的にもハードだったんですね。

竹内:これはマジですごい曲です(笑)。AメロとBメロも何本もかぶせてあるので、レコーディングはかなり時間がかかりました。リズムも難しかったです。もともと自分はR&Bを聴くので、タメをワンテンポ入れる癖があるんですが、この曲はくい気味で入るので、その感覚をつかむのに苦労しました。ただし、難しいながらも、自分に合った曲を作ってくださっているおかげで、最終的には良い形にできているんだと思います。

――この曲はドラマ『18禁の恋がしたい』の主題歌にもなっています。歌う時にドラマを意識したところはありますか?

竹内:制作のタイミングでは、ドラマで流れる曲ということは考えていました。でも歌入れの時は特に意識せず、楽曲に集中して気持ちを入れて歌いました。

――この曲もライブでやったら、盛り上がりますね。

竹内:さすがにライブでこの曲を全部も歌い切るのはきついと思いますが、イントロでスイッチが入る曲なので、お客さんと自分のテンションを上げる曲になったらいいなあと考えています。

――「YOZORA (feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」はVILLSHANAさんと$HOR1 WINBOYさんとのコラボ曲で、3人が集っていくパワーも伝わってきました。どんな流れで作った曲なのですか?

竹内:8月3日に、この3人で大阪でライブをやったんですが、「来てくれる人たちに向けて作ろうよ」ということから始まった曲です。それぞれの家に宅録の機材があるので、おおよそのトラックを決めて、「じゃあVILL君はヴァースで、オレはフックね」って言って、それぞれで録って、くっつけてみたら、「メッチャいいね」ということになり、リリースすることになりました。

――くっつけた時に1つの曲として成立するところが素晴らしいですね。

竹内:トラックを聞いた時に、みんな、夜空のイメージが浮かんでいたみたいで、歌っていることもほぼ同じでした。

――3人で作ることによって、刺激を受けた部分はありましたか?

竹内:最初にヴァースをあげてきたのがVILL君で、自分的にVILL君のヴァースがすっげえ好きで、タイプなんですよ。

――どういうところがタイプなんですか?

竹内:VILL君の楽曲では1行目から3行目までは韻を踏んで、4行目でまったく違うフロウを出してきて、その次に最初のフロウで落とすんです。それがすごく好きで、この曲でも結構そのやり方をやっていて、すごく良いのをあげてきたなと思いました。自分はその時点で違うフックを書いていたんですが、これじゃダメだと思って書き直しました。その間に$HOR1君のヴァースが上がってきて、これがまた良くて。そこでまたテンションが上がって、3人の作ったものを合わせたらこうなりました。


――3人で作ることの相乗効果があったと?

竹内:共作の良さが出ていると思います。当初はブリッジがなかったんですよ。リリースするなら、ブリッジを作るか、自分のヴァースを8小節足す必要があったんですが、それぞれで作ったものがとても良かったので、3人で一緒にブリッジを作りました。

――<赤く輝く夜空と星>のところからですね。

竹内:ここでもVILL君がかましてくれました(笑)。おそらくこの3人で作ることはそんなにないと思いますが、それだけに新鮮でしたし、楽しかったですね。

――3人で楽しく作っている雰囲気も曲の中に入っていますね。

竹内:そうだと思います。

――他のミュージシャンと一緒に作る良さって、どんなところにあると思いますか?

竹内:刺激を受けることと、あとは余裕が生まれることですね。$HOR1君と作った「MIRAI (feat. $HOR1 WINBOY)」をライブでやった時も感じたんですが、すべてを自分でやらなくていい分、自分のパートで100%の力を出せます。

――「エンドロール」はせつないラヴソングです。唯人さんの歌声がこの世界観に見事に合っていますが、自分ではどう感じていますか?

竹内:自分では恋愛の曲をあまり書かないようにしています。

――それはどうしてなんですか?

竹内:「CINDERELLA」という楽曲があって、『オオカミちゃんには騙されない』という番組に出演していた当時の夏の思い出を書いたんですね。でも自分がそのドラマに出ていることを知らないリスナーが聴いたら、何を言ってるかわからないだろうなって思ったんですよ。その時、恋愛っぽい曲を書くのは苦手だなと痛感して、恋愛の曲のリリックはお任せしたほうがいいと判断しました。「エンドロール」があがってきた時、とてもきれいな歌詞だなと感じました。これまで自分がふれてきた音楽にはなかったので、「エンドロール」と「Last Scene」はとても難しかったです。


――どういうところが難しかったんですか?

竹内:デモがあがってきた時に、自分が歌っているイメージがわかなかったんですよ。自分だったら言わないようなフレーズがあって、どうやって入り込んで表現するべきなのか苦労しました。でも自分の声が前に出るように作っていただいていた曲だったので、声がしっかり届くように歯切れ良く歌うことを意識しました。

――ゴスペルに通じるようなテイストのコーラスが入ってくるところもいいですね。

竹内:そういうイメージはありました。海外のアーティストって、ゴスペルの要素が入っている曲が結構あるじゃないですか。そういう曲が好きなので、この曲があがってきたときには、もっとコーラスを入れたいと思いました。

――人間味のあるバラード、声質にもとても合っていると思います。

竹内:「もっとバラードを出してよ」というファンの声もよく聞きますね。

――バラードについて思うことは?

竹内:ちゃんとしたバラードは作りたいですし、出したいとは思っているんですが、そのバラードがもし売れたら、ライブやテレビの生放送でも歌わなきゃいけないじゃないですか。それがちょっと怖いなと(笑)。ライブで自分のヴァイブスに任せて歌える曲がほしくて「YOZORA (feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」を作ったという経緯もあります(笑)。

◆インタビュー(2)へ
この記事をツイート

この記事の関連情報