【インタビュー】Dが紡ぐアートの世界。最新作は“竜と人の物語”

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Dが長年描いてきた物語といえばヴァンパイア・ストーリーだが、また別の世界観として、2017年にリリースしたミニアルバムに『愚かしい竜の夢』というものがある。今回この二つの世界観がリンクした曲が生まれたことにより、新たなアルバム「Zmei」としてリリースされた。こちらは東欧のブルガリアにあるZmei(ズメイ)という守護竜の伝説をモチーフに、竜と人間の関係を描いたものだった。

◆D ライブ画像(14枚)

今回、その作品に新たに書き下ろした新曲4曲と2010年にリリースした5thアルバム『7th Rose』収録曲「花摘みの乙女~Rozova Dolina~」をリレコーディングしたものを加え、フルアルバム『Zmei』を作り上げたD。今作で『愚かしい竜の夢』の物語はいったいどんな広がりを見せたのか。5人に話を聞いた。

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■『愚かしき竜の夢』からストーリーがどんどん広がっていく

──まずアルバムの話をお伺いする前に、Dがいまも無観客ライブを続けてらっしゃる理由から教えてもらえますか?

ASAGI(Vo):これはあくまでも自分たちの考えなのですが。有観客ライブはやりたいんですけど、いままでみたいに手放しでは喜べない様々な問題がいまもなおつきまとう状況じゃないですか。そういった中で、自分たちはステージに立つにあたって、心に不安が残った状態ではなく、ちゃんと納得できた状態で立つことがすごく大事だと思っているんです。メンバー、ファンの健康と安全を第一に考えた上で、いまはまだその時期ではないのかなということです。

──そういう選択をしたなか、Dは新たな挑戦としてミュージックビデオの撮影場所を巡る無観客ライブ<Music Live Video(以下、M.L.V.)>なるものを行ってらっしゃって。これ、素晴らしいアイデアですよね。

ASAGI:ありがとうございます。オンラインで音楽を届けるにあたってどんなものがいいのか、すごい悩んでたんです。妥協案としての配信ライブはやりたくなくて。単に僕らだけでライブ映像を配信しても、それだとこれまで撮ってきたライブ映像、つまりファンとの相乗効果で生まれるパワーで作られたライブ映像には絶対敵わないんですよ。ファンがいない部分をロケーションや世界観の演出でできる限りカバーしたものが作れないか、現場が密にならないように野外でできないかなど、いろいろ悩みながらたどり着いたのが、去年末M.L.V.の第1弾としてやったロックハート城での<Vampire Chronicle 2020>だったんです。やってみたら、ファンの方々がめちゃくちゃ喜んでくれて。



──絶対そうだと思いました。

ASAGI:Dらしいアート作品としていい映像作品ができたなと、やってみて思ったんですよね。

Ruiza(G):演る前から「このアイデア凄いな」と思いましたね。実際やってみたら、場所もライブハウスではないですし、外なのでどうパフォーマンスすればいいのかいろいろ悩んだんですけど、ライブが始まったらそんなものは関係なくて、すごく集中して入り込んで演奏できたんですよ。感覚としてはお客さんがいなくてもお客さんを感じられたというか。いまだに銀テープが飛んだときの景色は憶えてますね。終わったあとはすごく空が綺麗で。収録後はもう夜ということもあって厳しい寒さで、機材のケースが凍っていました(笑)。

HIROKI(Dr):当日の夜は機材に霜が降りるぐらい寒かったんですよね(笑)。自分の地元・群馬にあるロックハート城は山の方なので夜冷え込むんですよ。屋外なので完全に天候に左右されるからとても心配でした… 自分はすごい“雨男”なので(笑)。

ASAGI:群馬の雨男といえばHIROKIですから(笑)。

HIROKI:ロックハート城で「月の杯」のミュージックビデオを撮ったときも、実は僕のソロの演奏シーンだけ雨が降りましたからね(笑)。



ASAGI:そういうこともいろいろ考えて、M.L.V.に関しては収録でいくことにしたんですよね。

HIROKI:当日は天候も味方してくれました(笑)! 周りは山しかないので、音がすごく遠くまで飛んでいくのが気持ちよくて。この音をみんなに届けられると思うと凄く嬉しかったですね。

Tsunehito(B):完成した映像を見たら、当たり前なんですけどいわゆる普通のライブではなくて。

──そうなんですよ!

Tsunehito:ミュージックビデオでもあり、ライブ映像でもあり。そういったものを、会場まで遠くてなかなか足を運べなかったりっていう子達にも距離とか関係なく配信で観てもらえたのは、すごくよかったなと思ってます。

HIDE-ZOU(G):屋内にステージセットを作ってライブをするのとはまた違って、セット自体がリアルですからね。屋外に実際にある場所で、ミュージックビデオでも使った場所で僕らはいまライブをしてるんだというので、すごくそこに入り込めましたね。我々がライブをやる意味合い、そのなかでも、自分たちが描きたい世界観。そこに、極限まで近づけたような手応えを感じました。

──そして、このM.L.V.のアイデア並みに驚いたのが、アルバムから先行配信したデジタルシングル「Zmei~不滅竜~」が各国のチャートをにぎわせていたことなんですよ。

ASAGI:台湾、コロンビアでは1位。ブラジルでは2位でしたね。

HIROKI:ヤバいですよね。震えました!ヨーロッパやアメリカではライブをしてるので、少なからずその影響もあるのかなと。アジア圏はまだ行ったことはないんで、僕らにとってもサプライズでした。M.L.V.も海外の方が見てくださってるんで、そういったところの影響もあったのかもですね。

HIDE-ZOU:CDではなく、デジタルコンテンツというところで今までなかなか届きづらかった国や地域の人達にも聴いていただけたことがとても光栄で嬉しいことでした。

ASAGI:各国で配信を始めたら、この曲に限らず、Dのいろんな曲がチャートに入ってたりするんで。様々な要素がつながっての結果だと思いますね。



──どうせなら、この勢いで今作『Zmei』と関わりあるブルガリアのチャート、狙いたいですよね。

ASAGI:そうですね、ブルガリアにも届いて欲しいですね!

──その流れで、ここからはアルバムについてお伺いしたいんですが。『Zmei』はどんなコンセプトで作った作品なんですか?

ASAGI:『愚かしき竜の夢』というミニアルバムを出してるんですけど、そこに新曲を加えて『愚かしき竜の夢』から未来に進んだ物語が「Draco animus」と「Venom immunity」、「Lamb’s REM sleep」で、ものすごく過去にさかのぼった始まりの物語が「Zmei~不滅竜~」なんですよ。



──なんでこのタイミングで『愚かしき~』をさらに壮大にした物語を描こうと思ったんですか?

ASAGI:Dはこれまでミニアルバムをいくつか出してるんですけど、それと関連曲を組み合わせてライブをやったりしていると、ストーリーがどんどん広がっていくんですね。

──ああ~、なるほど。

ASAGI:それで、今回M.L.V.の第三弾として『愚かしい竜の夢』をやろうなったときに、この作品自体を振り返ったり、関連曲を振り返ったりしているなかで「Draco animus」ができて。その流れで「Venom immunity」もできそうだ、「Zmei~不滅竜~」もできそうだとどんどんイメージが膨らんで。これはコンセプト・フルアルバムができるなと思ったんです。



──M.L.V.が制作のきっかけとなった訳ですね。

ASAGI:そうです。

──Zmeiというワードはどうやって見つけたんですか?

ASAGI:「愚かしい竜の夢」を書いたときです。これはブルガリアを舞台に描いた曲なんですが、「花摘みの乙女~Rozova Dolina~」に出てくる乙女の孫が『愚かしい竜の夢』に登場する乙女につながっているんです。ブルガリアにある“薔薇の谷”と“Zmei =守護竜”の組み合わせがすごく素敵だなと思ったところから話が進んでいった感じですね。


──普通ブルガリアといえばブルガリアンヨーグルトがまず出てくるじゃないですか?

全員:はははっ。

Ruiza:僕らも「花摘みの乙女~Rozova Dolina~」を作った時に薔薇の谷の事をASAGIくんに教えてもらいましたね。

HIDE-ZOU:僕も最初はブルガリア=ヨーグルトというイメージが強かったですね。ASAGIさんから楽曲のイメージを教えてくれたことで和らぎましたが。

HIROKI:CMで刷り込まれてますからね(笑)。ASAGI君がそこに新たな情報を入れてくれて、上書きをしてくれた感じです!

ASAGI:ブルガリアの薔薇の谷は昔、武器を作っていた場所なんですが、いまはそこが薔薇の谷になってるということを知ると胸を打たれるじゃないですか。それだけで作品を作りたくなって、アートとして残したくなるんですよね。

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