【ライブレポート】RED ORCA、刺激と可能性にあふれた初ワンマン

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11月25日、RED ORCAのワンマン公演がついに実現した。昨年3月に1stアルバム『WILD TOKYO』をリリースし、本来ならば同年4月には同作を携えながらのツアーを実施することになっていた彼らだが、運悪くも時期的にパンデミック襲来と重なり、それから1年半以上にわたり延期措置となっていた待望のライブがようやく実現に至ったというわけだ。東京公演の会場となった渋谷クラブクアトロにはこの機会を待ち焦がれてきたコアなファンが集結。当然ながら今現在もライブ開催にはさまざまな制約がつきものではあり、オーディエンスはフロアの定位置で、マスク着用のまま声をあげずに観覧することを強いられることにはなったが、約90分に及ぶそのステージは、ライブを愛する者たちが当然の自由を奪還しつつあることを実感させる、極上の躍動感に満ちたものだった。

◆ライブ画像

約束の日の幕開けに据えられていたのは、去る10月22日に配信リリースされた最新シングル「Crow from the sun」。今回の公演にもこの楽曲タイトルが掲げられており、約1年半という時間経過は、あくまで『WILD TOKYO』発売を記念して組まれていたツアーを、この最新曲発表に伴うものに変えていた。そうした事実が象徴していたのは、ライブ活動面ではしばらく停止を余儀なくされていたものの、RED ORCAの進化/深化はその間も止まっていなかったということに他ならない。実際、この夜の彼らはこの最新シングルの他にも計3曲の未発表曲を披露してみせたが、いずれも『WILD TOKYO』の世界を超越した刺激と可能性を感じさせる楽曲ばかりだった。フロントマンの来門はステージ終盤のMCで「2022年、半端ねえところまで行くぞ!」と宣言していたが、すでに次なる作品リリースに向けての準備は着々と進んでいるということなのだろう。



そもそも金子ノブアキを軸とするプロジェクトとして誕生したこのRED ORCAだが、彼と来門(Vo)、PABLO(G)、葛城京太郎(G)、草間敬(Syn)という共謀者たちとの繋がりは、純粋に音楽的な意味において高次元でのケミストリーを引き起こすばかりではなく、運命共同体としてのバンド然とした空気感をも伴ったもの。それは『WILD TOKYO』完成当時に行なった全員集合でのインタビューの際にも感じさせられたことだが、今回のライブを通じてそうした印象はさらに色濃いものとなった。しかも音同士で交わされる会話はめちゃくちゃ緻密でテンションが高いのに、曲間で繰り広げられるメンバー間のトークはまさしく楽屋などでの雑談そのままの緩さ。ただ、いざ演奏が始まるとすべてがビシッと噛み合い、「beast test」の歌詞ではないが、まさしく完全無欠の状態で、変幻自在にラウドで刺激的な音像を構築していく。そうした緊張と緩和のコントラストが醸し出す妙味も、RED ORCAという集団をいっそう魅力的なものにしている。




RED ORCAは当事者たちにとっては、いわば選ばれし者たちによる贅沢な遊び場のようなものでもあるのかもしれない。ただ、まさしく知性と野生を兼ね備えたこのインテリジェントなバケモノが繰り出す自由度の高い音楽は、来門が何度も口にしていた「音楽の力」というものの際限のなさを感じさせるものだし、これまでのミクスチャーやラウド・ロック、さらにはそうした音楽の背景にあるものまでをも飲み込み、それを大胆に精製してみせたものだと感じられる。コロナ禍の中で思うような活動展開ができずにいたなかでも歩みを止めてこなかった彼らではあるが、同時にそうした日常の中で、金子自身のみならず全員がある種の鬱憤を抱えてきたに違いない。それがこれから先に向けての起爆剤になるのであれば、それはある意味、コロナ禍における収穫だといえるのかもしれない。この音楽、この集団の唯一無二感は他に例を見ないものだといえるし、だからこそ彼らが2022年にどのような動きをみせてくれるかが楽しみでならない。

取材・文◎増田勇一
撮影◎Yoshifumi Shimizu

  ◆  ◆  ◆

なおRED ORCAは、11月30日に大阪・梅田クラブクアトロでワンマンライブを開催する。チケットは現在一般販売中。公演は定められたガイドラインを遵守のうえ、感染拡大防止策を徹底して行なわれる。

<RED ORCA LIVE 2021 “Crow from the sun”>

2021年
11月25日(木)東京・渋谷クラブクアトロ ※公演終了
11月30日(火)大阪・梅田クラブクアトロ

■チケット
前売り¥6,900(グッズ付き・ドリンク代別)
プレイガイド:チケットぴあ、ローチケ、イープラス


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