【ライブレポート】完結へのカウントダウン、キング・クリムゾン最後のジャパン・ツアー開幕

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11月27日、東京国際フォーラム ホールAにて<MUSIC IS OUR FRIEND JAPAN 2021>と銘打たれたキング・クリムゾンのジャパン・ツアーが開幕を迎えた。

長引くコロナ禍の影響により、一部のフェスなどを例外として、いわゆる海外アーティストの単独来日公演はジャンルや規模を問わず久しく行なわれてこなかった。当然ながら今現在も興行にはさまざまな制約が伴い、当のメンバーたち自身も通常以上に前倒しの日程で日本に入国し、ホテルでの待機期間を過ごさねばならなかったが、そうした調整やプロモーター側の尽力もあり、ついにそのツアー初日を迎えることになったというわけだ。このツアー実現こそが、音楽ファンにとって待ち焦がれていた日常の奪還に繋がることになるに違いない。


まずお断りしておきたいのは、本記事に伴うすべての写真は同日の東京公演のものではなく、去る9月11日に行なわれたワシントンでの公演の際に撮影されたものだということ。残念ながら27日の公演については公式撮影されていないのだが、マネージメント側からの「ストーリー的な流れとしても、まずジャパン・ツアーのひとつ前の公演の写真を使うのが良いのではないか?」という計らいにより提供されたのがこれらの写真だった。日本での写真についても入手できしだい改めて紹介したいと考えているが、同時に、マネージメント側のこうした思慮深さにも感謝したい。






彼らはこの7月から9月にかけ、北米ツアーを実施してきた。その際にも、それが最後のアメリカ・ツアーになる可能性が高いことが公言されてきたが、日本についてもそれは同じことで、ロバート・フリップはこのツアーの行程の終着点が日本になると公言している。さらに11月23日付でバンドのオフィシャル・サイトにアップされた彼自身の手記の中にも、今回のジャパン・ツアーについて「日本でのツアーを完結させるもの」という意味合いの記述がみられる。

しかもその文中に記されている事実が非常に興味深い。キング・クリムゾンの初来日が実現したのは1981年のことで、最初の公演は同年12月9日に東京・渋谷公会堂で行なわれている。そして、それからちょうど40年後にあたる今年の同じ日、彼らはこの最終ジャパン・ツアーの全行程を終えて帰国の途に就くことになるのだ。また、バンド自体の歴史はすでに半世紀を超えているわけだが、フリップは、そのうちの40年間にわたり日本という国が常にこのバンドの「非連続的な連続性」を成立させるうえで非常に重要な存在であり続けてきた、とも記している。初来日以降も1984年、1995年、2000年、2003年、2015年、2018年と日本上陸の機会を繰り返してきた彼らだが、通算8回目となる今回の日本公演が、その歴史における重要な節目となることは間違いない。



そうした事実からはやはり集大成的内容の演目が想像されるところだが、この場で27日の初日公演のセットリストについて具体的に触れることは、これ以降の公演を楽しみにされている方々のためにも控えておきたい。ただ、間にインターヴァルを設けながら二部構成的に繰り広げられていくその演奏プログラムは、まさしく出し惜しみのないものだった。トリプル・ドラムがステージ前面に並ぶ、どこか異様でありながらもこのバンドらしいとしか言いようのない風景。緊張感とある種の威圧感により刺激的な快感がもたらされ、過度な演出とは無縁でありながら音楽自体が空気の流れを変えていくという不思議さ。聴きたい曲、聴かずに帰路に就くわけにいかない曲が網羅されたそのステージを通じて感じさせられたのは、よく言うところの「音楽の力」といった次元を超えた「音楽の魔力」とでもいうべきものの凄絶さだった。


このツアーはこの先、名古屋、大阪を巡ったのちにふたたび東京に戻り、12月7日と8日の両日、Bunkamuraオーチャードホールでの追加公演2本をもって幕を閉じることになる。蛇足ではあるが、ライヴの最後、すべての演奏終了後には携帯やスマートフォンでの写真撮影が可能な時間が少しだけ用意されていたりすることも付け加えておきたい。そして、来場される皆さんには、スムーズな入場のためにも来場者情報シートへの事前記入をお願いしたいところだ。万全を期した状態で、二度と味わうことのできない2021年のキング・クリムゾンを、是非この機会に体験して欲しい。


写真◎David Singleton
文◎増田勇一

◆キング・クリムゾン | MUSIC IS OUR FRIEND JAPAN 2021(creativeman.co.jp)
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