【インタビュー】Nothing's Carved In Stone、村松と生形が語る11thアルバム「バンドとして出せる最善の答え」

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■最近、特に気にしてるのは音色
■そこは妥協しないようにしてます

──今回は日向さんの曲が多いんですか?

生形:多いですよ。俺とひなっちでスタジオに入って、セッション的に曲を作っていくこともあって。特にレコーディング後半に作った……アルバム収録曲でいうと頭の4曲は全部その作り方で。俺がデモを持っていったり、ひなっちもデモ持ってきたりして、スタジオにマニピュレーターに来てもらいつつ、ふたりで詰めていって。

──生形さんから見て、日向さんの曲の印象というと?

生形:メンバーそれぞれ特色があるんですけど、ひなっちはノリがデカいですね。

村松:アメリカンな感じ。

──大陸的なリズムとメロディ?

生形:そうそう。あと、普段はロックよりもむしろR&Bとかヒップホップを聴いてるから、そういうセンスを感じる。今、アメリカではR&Bとヒップホップがメインじゃないですか。そういう音楽こそ、実は最新だったりするし、そういうセンスはひなっちがナッシングスに持ってきてるものだろうなと思いますね。


▲生形真一(G)

──アメリカンというと1曲目の「Deeper,Deeper」から新鮮さがあったんですけど、これは日向さんですか?

生形:この曲は、サビのコードとメロディをひなっちが持ってきて、そこからふたりでスタジオに入って作りました。1曲目は勢いよくいきたかったし、それまでレコーディングした曲にはあまりラウドなものがないような気もしてたから。

──1曲目に入れることも想定して作った曲なんですね。そのオープニングナンバーを聴いて、“こういうサウンド傾向のアルバムなのかな”と思いきや、2曲目とか3曲目でまた変わっていくのが面白いなと思いました。生形さん節と日向さん節が融合しているから、新しい感じがするんですね。一緒に作っていくのは、今まではあんまりなかったんですか?

生形:「NEW HORIZON」くらいからかな。こういう音楽、こういう曲にしたいとかはふたりで共有して、そこに自分の解釈を加えていく曲作りというか。新しいことができてるなっていう感覚はあります。


──村松さん的にはいかがですか? ふたりでの作曲について。

村松:曲の質がすごく上がったことを感じますね。(生形)真一はやっぱりUKっぽい少し翳りのあるギターを弾ける人で。ひなっちとはある意味、逆と言えるところにルーツがある。それがいい具合に混ざってるなっていう。もちろん、その過程で全員がスタジオに入ってバンドで曲を仕上げるんですけど、その前のデモ段階で、より最初からしっかりと構築されているものが上がってきていたんです。だから、セッションしながら生まれる突発的な要素ではなく、きちんといい曲を書いて、それをもとにバンドで作るっていうかたちが、個人的にはすごくよかった。自分たちなりに今までの経験をきちんと消化してきてることを感じましたね。

──ナッシングスらしさはあるけど新しい、っていう印象の理由としてすごく腑に落ちました。あと最近、生形さんのヘヴィなリフが牽引する曲が増えてきたイメージもあって。

生形:そうですか?

──先行シングルの「Bloom in the Rain」とか「Wonderer」とか。

生形:ああ、ただ「Bloom in the Rain」と「Wonderer」という2曲は作り方がまったく違っていて。「Bloom in the Rain」は俺がリフから作った曲なんですよ。もうひとつの「Wonderer」に関しては、ひなっちが持ってきたデモに対して俺が後からリフをつけたんです。でもたぶん、フレーズとしてはどんどんそういうふうになっていってますね。ナッシングスの最初の頃は、あえて複雑なアレンジやアンサンブルを作っていたところもあるんだけど。アルバムを10枚作ってきて、それはもういいんじゃないかなと思ったりしてね。だから、そういうサイクルの中で、今はシンプルな方向へむかっているかもしれないですね。



──シンプルなリフものっていうのも得意分野だったりするんですか?

生形:うーん、自分で得意とは思ってないけど、やっぱり得意技でありたいっていうか。リフがよければ曲ってよくなったりするので、そこは常に磨きたいとは思ってますね。

──ちなみに、村松さんから「もともとUK感を持っている」という話もありましたが、ラウドなリフものも生形さんのルーツに?

生形:あります。俺らの世代だったら、やっぱりKORNとかNINE INCH NAILSとかはすごく聴いてましたし。あのへんは独特すぎて、マネしちゃうと本当にモノマネみたいになっちゃうけど(笑)。

──リフもそうですが、繊細なアルペジオフレーズとか幅広く弾かれますよね。ちょっと余談になりますが、生形さんがギタリストとして意識してるところは?

生形:俺が最近特に気にしてるのは音色ですね。音が良ければ…。

村松:古くならないよね。

生形:そうそう。それこそシンプルであればあるほど音色が大事になってくる。ギターって音色一発で人を感動させることもできるじゃないですか。もちろんプレイヤーの弾き方というのは大前提として、それ以外に音色の作り方とか音の出し方がすごく大事だと思っていて。ギター本体、アンプ、エフェクターとか、それら機材すべてが噛み合った時に初めて素晴らしい音になると思っているんです。そこは妥協しないようにしてます。

──おっしゃるとおり、ギターの一音で曲の雰囲気をガラッと変えられますし。

生形:うん。音色を良くするっていうことを「逃げだ」っていう考え方もあるんですよ。ギターが上手い人なら、どんなアンプを使おうが、どんなギターを使おうが、その人の音になるっていう人もいるじゃないですか。でも、俺はそれは違うと思ってて。その曲に合った音色っていうのが必ずあるはずだから、それを探す作業を怠らないようにしてます。


──たとえば「Beautiful Life」は一聴すると煌びやかなポップチューンですが、ベーシックのバッキングには歪みきったファズの音色も入っていて。メロディの美しさとダーティーなギターサウンドの対比というか両極が、楽曲の味わいをより深いものにしていると感じました。

生形:まさにポップ過ぎると思ったんですよ。だから、ギターはギラギラの音色にしたんですけど、この歪みが入っているのと入っていないのとでは楽曲の印象が異なるんですね。レコーディングではエンジニアに「ここまでやっちゃってもいいかな」って相談したんですけど、「大丈夫だと思いますよ」と言ってくれて。あえてギラギラさせました。

──しかも、故意に汚すようなギターサウンド、高揚感を煽るシーケンス的なギターリフ、煌びやかなクリーントーンのバランスにもこだわりを感じます。“俺の音はこれ”って凝り固まるのではなくて、曲に合わせて変えていくんだと。

生形:彫刻を作る人って彫る前から形が見えてるっていうじゃないですか。俺も曲のイメージが最初から頭にあるから、この曲はこの音っていうことをまず自分で理解して認識して、そこに近づけていくっていう。

──バンドサウンドとしては「Wonderer」「We’re Still Dreaming」あたりにニューウェイブの肌触りを感じました。シンセやドラムの定位を含めて。

生形:そう、'80sですね。ドラムに関してはだいぶレンジの下のほうに位置しているんですけど、このへんはオニィ(大喜多)が自分で判断して作った音で。めちゃくちゃタイトですよね。


▲村松拓(Vo)

──村松さんは、弾き語りの活動も増えてきていますけど、それによる意識の変化もありますか?

村松:バンドの中でなにが俺の役割かっていうと、もちろん歌だなって。余計なものが削ぎ落とされてきた感じがあります。なるべく曲も書こうっていう気持ちはありますけど、ギターとか音楽的なアプローチで貢献するよりも、このバンドではやっぱり歌に懸ける。そういうところに重点を置いたほうがいいかなって考えになってきました。

──日本語詞が多くなってきたことも影響あるのかなと思うんですけど?

村松:そうですね。でも、それも行ったり来たりなんです。“こんな歌い方したらいいかな? こんな歌い方はやっぱりよくないかな?”みたいなことを試しながら。いろいろ試行錯誤しながらです。

──村松さんの歌のルーツには、それこそ日本語ロックも洋楽もありますよね?

村松:そうですね。小学校の時はTHE BLUE HEARTS、中学校の時はユニコーンが大好きで。高校に行ったらKORNとかLIMP BIZKITがドンピシャ世代だったし。OASISとかも好きだったけど、最初はアメリカンなほうでしたね。

──ボーカルスタイルとして影響を受けたのもそのあたりですか?

村松:最初は声をしゃがらせたかったんですよね。甲本ヒロトさんもそうだし、HUSKING BEEの磯部(正文)さんもそう。好きなバンドのボーカルはだいたいがなってたので、そういう感じを選んでマネしてたところはあったかもしれない。今はもう他のボーカリストは意識せずに、自分の歌を追求したらいいと思ってますけど。

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