【インタビュー】近石涼、過去・現在・未来を一望できる集大成であり初めの一歩『Chamaleon』

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■「全部リード曲で行けるぜ」というぐらい集大成ではあると思います
■ただここで終わりたくないという意味では第一歩という意味合いもある


――「1曲ごとにこれまでの人生の深いドラマがあるんだなぁ」と思います。どの曲も、過去を振り返ったり、今に戻ったり、時間を行き来する視点が多いように思うんですね。歌詞の中で。過去と現在と未来が常にあるような。「room 501」はどうでしょう。これはラブソングと思っていいんでしょうか。

近石:そのへんは幅広くとらえてもらっていいかなと。「room 501」って何の部屋なのか?とか、ご想像にお任せします(笑)。それによって曲のとらえ方が変わるだろうし、でもまあ基本はラブソングですよね。

――ラブソングとライフソングがあるとしたら、ライフの曲が多いイメージがあるんですね。近石さんの曲は。

近石:ああ、そうですね。ラブソングは全然書いてこなかった気がします。

――それは苦手だから?

近石:えー、何でしょう。僕、BUMP OF CHICKENが好きだったんですけど、バンプってラブソングがほぼないんじゃないかな。とらえ方によったらそう聴こえるけど、そうはならない曲が多い気がして。

――ああそうか。「天体観測」とかも、ラブソングといえばそうだけど、何か違う要素もありそうな。

近石:あの曲は、最近、歌詞の読み解きをしている人がいるんですよ。そういうものを読んでると面白くて。あの曲、当たり前のように聴いて当たり前のように歌ってたけど、歌詞の明確な意味って何なんだろう?とか思いますし。「スノースマイル」という曲も、ラブソングかどうかわからないという考察もあるし、バンプにラブソングはほぼない気がします。それで自分で書くことになると…最近になってやっと、歌詞を書く術みたいなものが身についてきて、やっと自分で歌っていても恥ずかしくない伝え方というものをつかんできたところがあります。それで恋愛のことも遠回しに言えるようになってきたから、書けるようになってきたのかもしれないです。

――たとえば「最低条件」も、君と僕の恋愛物語にも聴こえるじゃないですか。

近石:そうですね。

――でも、最後に向かう先は自分の生き方みたいなところに着地している。

近石:そうですね、確かに。



――「最低条件」は、どちらも入ってる曲だなと思います。

近石:僕の恋愛観がそういう感じなのかもしれない。一緒にいたとしても絶対別々の道を歩いているし。「room 501」に関しても、結局別々の道を歩むけど、おのおのが好きなように生きた先に隣にいられたらいいよね、みたいなことを歌ってる気がするので。「最低条件」も、大切な人がいて、その人が自己実現をしてほしいし、二人だけの世界に留まりたくない、というものが表れているんだと思います。言われて気づきましたけど。

――すみません(笑)。

近石:確かに過去と現在と未来がありますね。

――「最低条件」は、曲調的にもバンドロックど真ん中で、キャッチーな曲だと思います。

近石:この曲を一番最後に書いたんですけど、これがない状態のアルバムを見渡してみて「端っこにいる曲が多いな」と感じたんです。近石涼という円があるとして、すべての曲が外側に散らばってる感じだったんで、真ん中に誰かいてほしいと思って、ど真ん中なサウンドになるような曲を作りました。歌詞の意味合い的には、『Chameleon』というところからは離れているんですけど、アルバムの中の芯にしたい曲だったんで、アルバムの直前先行リリースとしてリード曲にしました。


――よくできたアルバムだと思います。バランスも良くて。

近石:『Chameleon』という意味合いの表のテーマ的には「兄弟II」という曲がそうだと思います。“『思うまま』の自分になるだけだ!”と言っているところが身体の色を変えていくカメレオンを肯定していて、サウンド的にも二番で一気にがらっと変わるところなんかがカメレオン的な要素があるなと思って、1曲目はこいつだと思いました。それを裏のテーマ的に「ノスタルジークラムジー」が支えている気がします。

――よくできてますね。

近石:そういうことを狙って「こういうアルバムを作るぞ!」と思って曲を作り始めたわけじゃなくて、ただがむしゃらに、自分が良いと思う曲を作って行って、曲が出揃ってきた時にまとめ方を考えたんです。でもやっぱり、アルバムということを考えずに作ったものの、「兄弟II」と「ノスタルジークラムジー」のように、曲のどこかがリンクしていたりしていたので、なんとかまとめられた、そんなアルバムです。

――これは近石涼の集大成だと思います? それとも、初めの一歩?

近石:曲自体は3年前のものもありますし、新しいものもある中で、今の自分のベストアルバムとして「全部リード曲で行けるぜ」というぐらいの、そういう意味で今までの集大成ではあると思います。ミュージックビデオもほぼ全曲作りましたし。ただここで終わりたくないし、次に出すアルバムの中の1曲を今回のアルバムのどの曲よりも良いものにしたいと思って、今も楽曲制作をしています。そういう意味では、第一歩という意味合いもあるなという感じです。

――このアルバム、どんな人に届いてほしいですか。

近石:一番は、今まで僕の活動を見てくれていた人です。4、5年前からずっとライブハウスでやってきて、「よくあんな音楽してたな」と思うぐらいに無茶苦茶な音楽をしていたんです。エド・シーランに憧れてルーパーを使ってたんですけど、使ったら駄目な音もそのまま出して、ぐちゃぐちゃになってたような(笑)。そういう頃しか知らない人にはすごい成長したと思ってもらえるはずです。ライブハウスの人や、共演者や、「誰に届くか」と言われて一番に思い浮かぶのはそういう人たちの顔です。その上で、いろんな人に届いてほしいし、この曲を聴いて「明日も仕事頑張ろう」みたいな、その活力になれればいいなと思います。

――反響が楽しみです。最後に、2022年1月22日、神戸VARIT.での初ワンマンライブへの意気込みをぜひ。

近石:初めてのワンマンで、初めてバンドセットでするので、すごい不安な気持ちもあります。神戸VARIT.はずっとお世話になっていたライブハウスで、それこそ「ライブハウスブレイバー」という曲ができたきっかけの場所でもあるし、ミュージックビデオを撮った場所でもあるし。撮影の場所を貸してくださいと言った時に「ワンマンしてみない?」と言われて、良いタイミングかもと思って決めました。ずっと神戸で歌ってきて、最近は大阪でも歌っている中で、さっき話したみたいに昔は無茶苦茶なことをしてましたけど、それも含めて成長した姿を地元の神戸の人にたくさん見てもらえたらうれしい。そこから大阪や東京に出て行って、もっと活躍して、また大切な日に神戸に戻って来れたらいいなという、その第一歩にしたいなと思います。

――期待しています。今度東京に来た時にはぜひライブでお会いしましょう。

近石:ぜひ、よろしくお願いします。

取材・文:宮本英夫






リリース情報

『Chameleon』
2021.12.8(水)リリース
LS-008
収録曲
1.兄弟 II
2.最低条件
3.ハンドクラフトラジオ
4.room 501
5.ノスタルジークラムジー
6.寂しさは夜のせい
7.ライブハウスブレイバー
8.生まれて死ぬまでの間に
(全8曲)
lemon syrup / NEW WORLD RECORDS
(レモンシロップ ・ニューワールドレコーズ)

ライブ・イベント情報

初ワンマン<近石涼『Chameleon』2022>
2022年1月22日(土)@神戸VARIT.
OPEN 18:00 / START 18:30
チケット:前売り 2,500円+1D / 当日 3,000円+1D

<「Chameleon」発売記念インストアイベント>
2021年12月18日(土)
タワーレコード梅田NU茶屋町店 店内イベントスペース
START 16:00
【内容】アコースティックLIVE&サイン会

<ライブハウスジャッジメント in KOBE>
2021年12月19日(日)
開場12:00 / 開演13:00
会場:CHICKEN GEORGE / VARIT. / 太陽と虎 / ART HOUSE
料金:前売 [来場] 3,000円(1D別) / [配信] 2,000円
出演:稲村太佑(アルカラ) / 今村モータース / 植田真梨恵 / かず / 門脇更紗 / サーカスフォーカス / スロウ / 近石涼 / 西海岸ヤバ男(オテモトチョップスティックス) / 浜端ヨウヘイ / 村松拓(Nothing’s Carved In Stone) / メガマサヒデ / もえ子 / 森田雛 / 山下英将(folca) / 山本章(iTuca)

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