【ライブレポート】LiSA、アリーナツアー<LADYBUG>完遂「最高の武道館をありがとうございました」

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2021年12月7日および8日。LiSAは日本武道館のステージに立った。10周年という節目のツアー<LiVE is Smile Always ~LADYBUG~>の追加公演にしてファイナルだ。両日を含めて数えると、LiSAは2014年1月3日に初の武道館公演を行ってから、通算7回、武道館のステージに立ったことになる。

◆LiSA 画像(全13点)

多くのアーティストがひとつのステップとして武道館を目指すが、LiSAが武道館を目指すようになったのには、単なる憧れからくる目標ではない確固たる理由がある。LiSAが目標の場所として掲げて来た武道館は、オーディションの最終決戦の会場であった思い出の場所であり、“いつか自分だけのライブでここに戻って来たい”と願った特別な場所なのである。


今から10年前、2011年4月20日にミニアルバム『Letters to U』でソロデビューしたLiSA。このアルバムの1曲目に置かれている「Believe in myself」は、今も彼女が大切にライブで歌い続けている楽曲であり、LiSAの変わらぬ想いであり、信念だ。LiSAは“歌手になりたい!”と自分の中で初めて決めた日から、Believe in myself──そう、自分を信じて、走り続けて来たのだと思う。自分自身と戦い続けて来た10年と言っても過言ではないだろう。

それを証拠に、著名アーティストとのコラボでも話題を集めたほか、とことん“10”にこだわり抜いたというソロデビュー10周年記念ミニアルバム『LADYBUG』(2021.5.19発表)には、ミニアルバム『Letters to U』でデビューした10年前の自分へのアンサーソング「Letters to ME」と、10年間ずっと叫び続けて来た結果と今を唄った「Another Great Day!!」(今日もいい日だ!!)が収録されている。

幅広い楽曲と歌唱に、ジャンルレスにチャレンジした今作で見せつけたLiSAという絶対的なポテンシャルとアーティストとしての成長、そして唱え続け、迷わず信じて歩いて来た道の先にあった光景を、リアルな景色として提示してくれた今回のツアー<LiVE is Smile Always ~LADYBUG~>は、LiSAの歩んで来た10周年が余すことなく凝縮された時間だった。その12月7日公演のレポートをお届けしたい。



客席の照明が全て落とされ、LiSAカラーのピンクが360度の客席を染め上げ、『LADYBUG』のモチーフでもあったてんとう虫をイメージした巨大なメカテントウが武道館のセンターステージからゆっくりとせり上がり、そして客席から入場して来たメンバーとLiSAが定位置に着いたところから、ライブの幕は落とされた。

黒いドレスを翻しながら凛とした表情で届けられた「dawn」からの始まりや、序盤に置かれていたSiMのMAH作曲による「ViVA LA MiDALA」での気怠く少し引きずるような歌唱で魅せたLiSAの歌声は、今まで以上に骨太なロックヴォーカリスト的奥行きを宿し、明らかな成長を感じさせた。圧巻の存在感とパワフルな歌唱でオーディエンスを惹きつけると、今度は一気に舵を切り、隙間なく独特な感情表現の言葉達が歯切れの良いメロディに詰め込まれた女王蜂のアヴちゃん作詞作曲による「GL」を届けたのだ。この曲では、子供の頃から嗜んできた得意のダンスを、男女4人のダンサー達と惜しみなく届け、最高のSHOWを演出して魅了、妖艶かつ華やかなステージにオーディエンスを引きずり込んでいった。“ロックバンドのヴォーカリスト”というアクトと“ダンス&ヴォーカル”というアクトの二面性は、LiSAというアーティストがもともと持っていた資質であり、それこそ彼女の最大の武器である。



イントロはまさしく往年のハードロックといったロック色の強い「ROCK-mode'18」や、一般的なLiSAのイメージを象徴するとことんポップなメロディとサビの振り付けが印象的な「HADASHi NO STEP」などからもそのことは伺える。「ROCK-mode'18」も「HADASHi NO STEP」も10年前からLiSAの楽曲を手掛けてきたUNISON SQUARE GARDENの田淵智也の作曲によるものなのだが、LiSAは、自身の音楽ルーツと深い関係のあるロックとポップを、自らのライブでいかに楽しく魅せ、盛り上げていけるかを第一に考え、共存させて来たのである。まさしく、ここに至るまでずっとライブタイトルとして用いられている<LiVE is Smile Always>は、LiSAのモットーなのだ。

「ようこそ、<LiVE is Smile Always ~LADYBUG~>へ! 最高に楽しんで行きましょう! ピース!」──LiSA

この日もライブの冒頭で叫ばれたこの言葉は、LiSAからのライブへの招待状。<LiVE is Smile Always>は、楽しみ方も楽しませ方も知っているLiSAならではの合言葉でもあるのだ。前述したように10年前、ミニアルバム『Letters to U』でデビューしたLiSA。そこから10年が過ぎた2021年。今、ここでこの周年ライブを全力で届ける彼女の姿を見て、改めて、LiSAは最初に掲げた<LiVE is Smile Always>の信念を何一つ変えてはいないと感じた。しかし、10年前とハッキリと違うのは、アーティストとしても人間としても、経験を積み上げて来たからこそ、今だからこその説得力だろう。



椅子を使ったしなやかなダンスと共に届けられた「わがままケット・シー」も、美しく背伸びしない女性像をLiSAらしく表現していたし、ギタリストのPABLOとツインヴォーカルで唄う、これまでにはない試みの「play the world! feat.PABLO」での野生的な唄声も、この先のアーティストLiSAの振り幅を大きく広げるキッカケを作ったに違いない。そんなPABLOが編曲を務めた「RUNAWAY」は、円形舞台の外周を高速で回る特別装置のステージから、ポールに絡み付きながら妖艶かつ重厚なパフォーマンスを届けた。

そして、更なる圧巻の景色を魅せてくれたのは、「炎」「明け星」からの「紅蓮華」が届けられたときだった。テレビアニメ『鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編』のオープニングテーマ「紅蓮華」のヒットは、ファンにとっては誇りだったに違いない。この日、LiSAが「炎」「明け星」「紅蓮華」を続けて届けると、そこにはLiSAとファン達とのプライドが強い絆となって見えた気がした。3時間弱のライブという時間の中で魅せてくれた目まぐるしく移り変わるLiSAの七変化は、実に素晴らしく、美しかった。


LiSAは、アンコールで、このツアーで1番伝えたかったであろう2曲を選んでいた。「Letters to ME」と「Another Great Day!!」だ。“なにかになりたかったあの日から なにもかもが少しずつ違うけど また生まれ変わっても 私はわたしでいたい”と唄われる「Believe in myself」へのアンサーソング「Letters to ME」。“本気で生きてる私は本気美しい”と唄われる今の素直な想い「Another Great Day!!」。涙を堪えながら笑顔で唄い切ったLiSA。あんなにも泣きじゃくりながらも、1人1人と目を合わすかのように大切に大切に完璧に唄い切ったLiSAはプロである。

「本当はね、今日、すっごく怖くて。この武道館には、最高の思い出も最低な思い出もたくさんあって。でも、いつも最高の時間に変えて来てくれたのは、みんなでした。今日は最高の武道館をありがとうございました。結局このツアー、全部泣いてない? 『Letters to U』でデビューしてから10年。いろんな思い出を繋いでここに立っています。今日も歌を唄っています。この<LiVE is Smile Always~LADYBUG~>ツアーの中でも、楽しいこととか悔しいこととかいっぱいあって。最初の大阪とかは不安もあったけど、12月7日、今日、ここに立ててること、歌えていることを幸せに思います。今日は来てくれて本当にありがとう」──LiSA



“なにかになりたかったあの日から、なにもかもが少しずつ違う”とLiSAは言うが、もうとっくに“なにか”にはなれているのだと思う。しかし、常にストイックだからこそ、その“なにか”のハードルがどんどん高くなっているのだろう。その欲張りこそが本気の証拠。

きっとこの先の未来も、LiSAにとって武道館という場所は特別。彼女は、ずっと永遠にこの場所と戦い続けて行くのだろう。もうとっくに“この場所にいつか帰って来たい!”という最初に掲げた願いは叶ったはずなのに、LiSAにはまだまだこの場所で叶えたい夢や、この場所で見たい景色があるのだと思う。嬉しい思い出も悲しい思い出も悔しい思い出も全部ここにはあるから。ここは、LiSAの原点だから。

有言実行で、“自分を愛することの大切さと自分を信じることの大切さ”を教えてくれるLiSA 。10年先も、20年先も、ずっとこの場所に“ただいま”という言葉を言い続けていて欲しい。そして、綺麗事ではない、苦しみを伴う言葉でもある“今日もいい日だ!”を、これからも掲げ、無我夢中なサバイバーであり続け、その人間力と、他を寄せ付けぬ絶対的な歌唱力と感情溢れるパフォーマンスで、これからの未来もずっとフロアをLiSA色のピンクで埋め尽くして欲しい。



この日、ステージから降りてマイクを回収されてからも、駄々っ子のように“ヤダ。帰りたくない”とスタッフに懇願していたLiSA。幾つになっても無邪気でどこまでも素直なLiSAの姿を愛おしく思った。この先もどうか、LiSAの唄がたくさんの人達を笑顔に導けますように。そして、この先もどうか、強くて優しくて、本当は誰よりも弱くて泣き虫なLiSAが、たくさんの“ありがとう”の上で、心の底から笑っていられますように。

取材・文◎武市尚子
撮影◎Viola Kam (V'z Twinkle/写真は2021年12月8日のもの)

■<LiVE is Smile Always ~LADYBUG~>2021.12.7@日本武道館 SETLIST

01. dawn
02. 白銀
03. ADAMAS
04. ViVA LA MiDALA
05. GL
06. わがままケット・シー
07. HADASHi NO STEP
08. 覚醒屋
09. Little Braver
10. 往け
11. play the world!
12. RUNAWAY
13. 炎
14. 明け星
15. 紅蓮華
16. ROCK-mode'18
17. Rising Hope
18. ハウル
encore
en1. Letters to ME
en2. Another Great Day!!

■<LiVE is Smile Always~Eve&Birth~>

▼「the Eve」
2022年4月01日(金) 東京エレクトロンホール宮城
open17:30 / start18:30
2022年4月12日(火) 福岡サンパレスホテル&ホール
open17:30 / start18:30
▼「the Birth」
2022年4月20日(水) 日本武道館
open17:30 / start18:30
【チケット】
■東京エレクトロンホール宮城|福岡サンパレスホテル&ホール:指定席 8,800円(税込|来場者特典付)
■日本武道館:指定席 9,999円(税込|来場者特典付)/着席指定席:9,999円(税込|来場者特典付 ※必ず座ってご覧いただく席で、立ってご覧いただくことはできません)/注釈付き指定席:9,999円(税込|来場者特典付 ※ステージ機材、会場設備などにより出演者、映像、演出などの一部が見えづらい可能性のある座席です)

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