【インタビュー】Reol、『第六感』を切り拓いた「いちばん大きな交差点に出るということ」

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■ギリギリっていう感じがずっとある
■ずっと黄色い線の上を歩いてるみたいな

──「Boy」などもその感じですね。「Boy」はミニマルなトラックだからこそ、言葉、声色が際立つ仕上がりです。内容は、ちょっと自虐ではありますが(笑)。

Reol:そうですね(笑)。自分に発破をかけている曲かなと。

──曲に込めた思いとしては、どこかで自分を叱咤する、奮い立たせる感覚もありますか?

Reol:手放しで人に“頑張って”というのは、私には抵抗があって。自分は頑張れているんだろうか?って思ってしまうから、頑張ってと言い切れないところがある。だから楽曲でも、人の背中を押せたらいいなとか聴く人に対してそういうふうに作用してくれたらいいなと思うことがあっても、それをいざ歌詞にしたためようとすると、私の人生の居場所的には、まだ言えなくて。それはこの先、言えるようになるかもしれないし、わからないですけど。今は、とにかく自分がボロボロになっている様を書くことで、自分も頑張ろうと思ってもらえるようにしか書けないし、自分にまだ器量がないんだろうなとも思うけど。逆にいえばそれは、今しか書けない瞬間でもあるのと思うので。


──これまでたくさんの曲を書いてきて、それでも拭い切れないものがずっとある?

Reol:曲にして昇華できるものと、そうでないものがあるんですよね。劣等感だったり、よく言われる自己肯定感だったりって、生きている間、ずっと自分の後をついてくる影のようなものだと思うんです。それが完全になくなることって、たぶんないと思うし。自分の人生にいろいろなトピックが起こったとしても、それが消えることは絶対にないんだろうなって。私にとっては、自分が音楽を作ることにおいて、無視できないひとつの要因というか。音楽が作れても別にそういうことを曲にしない人もいると思うんですけど、私はそこが切っても切り離せない。自分が自分たる要素のひとつだと思いますね。感覚的に、ギリギリっていう感じがずっとあるんです。良くも悪くもですけど、ずっと黄色い線の上を歩いてるみたいな。白線ですらないみたいな感覚が、なんかあるんですよね。

──作り続けることは、そのギリギリの感覚があってこそ生まれてくるというか。歌詞を書くということは、自分を削り取っていく感覚などもありますか。

Reol:近年は特にそうですね。昔は、若干恥ずかしさもあって、抽象的な歌詞も多かったし、フィクションみたいに取り掛かることも多かったけど。徐々に変化もあって。自分が感動したり、自分に大きく刻まれている音楽ってなんだろうと思い返したときに、自分が好きだったミュージシャンがめちゃくちゃはらわたを晒してくれた瞬間が好きだなと思ったんですね。終始何も考えさせないでくれる音楽も、私はすごく好きだけど、やっぱり、この人の音楽が好きだなって思ったときって、ある種ダサさが垣間見える瞬間というか、カッコ悪いところを見せてくれたときだと思って。私も音楽を作るからには、そういうタームがちゃんとコンスタントにありたいなと思います。


──今回の制作のなかで、印象深く残っている曲はありますか?

Reol:世の中の皆さんと同じように、2020年からどうしても時が止まっている感覚があると思うんです。

──止まっているのか、空白がゆえすごく速かったのか、麻痺している感がありましたね。

Reol:その感覚のなかで、私も2年間この作品を作っていたから。あまり記憶がないというか。取り立てて、ここがすごく覚えているなっていうことがあまりないんだけど、淡々と、地続きで作られたなという感じですかね。

──改めて日常の大事さにも気づく時間でしたね。ミュージシャンであれば、ライブやツアーが日常でもあったと思いますし。

Reol:そうですね。逆に今までのことが非日常だったんじゃないか、くらいの感覚になりましたしね。

──じっくりと制作に向かう時間でもあったと思いますが、Reolさんは曲だけでなくミュージックビデオなども自身が携わっていますね。曲を作りながら、映像的なイメージのかけらみたいなものも同時にある感じですか?

Reol:もしこの曲でミュージックビデオを撮るなら、こういう色味にしたいなとか、こういうシチュエーションだろうなとかは、メロディを書いているときにぼやっと抽象的な感じで出てくるけど。言葉をつけた瞬間に、どういう街にハマる曲だとか、具体的な場所や情景が見えてくるところはありますね。


──「第六感」のミュージックビデオも面白かったですが、自分が生み出すものは自分で手掛けたい気持ちが強いのでしょうか?

Reol:手掛けたかったわけではないんです、本当は。そこはきっと、性格とかが起因していると思うんですけど、人に頼ることが苦手なんです。全部任せるよって言ったくせに、ディレクションしてくる人とかいるじゃないですか(笑)。そうなりたくないって思っちゃうんですよね。

──それならば最初から自分でと。

Reol:どうせ黙っていられる気がしないのなら最初から参加したほうがいいんじゃないかという感じで、ずっとやってきてしまったというだけなんです。やりたかったわけじゃないと思いますね、これに関しては。

──そうだったんですね。でも映像など別角度でものを創る面白さとか、広がる発想もありそうですね。

Reol:そうですね。私の音楽の原体験は、ピアノもやっていたんですけど、どちらかというとマーチングだと思っていて。自分の街にブラストという、世界を回っているマーチング界のシルク・ドゥソレイユみたいな素晴らしい集団がいて。子どもの頃、ブラストの公演を見たときに、私もこういうものがやりたいって思ったんですね。自分がやりたいことって、音楽は音楽としてあるんだけど、その音楽を使っていかにその音楽を魅力的に見せるかという、そういうショービズの脳みたいなものが原体験としてあるので。

──それこそ、みんなで作り上げる面白さじゃないですか。

Reol:自分本位なものを作りたいとは思わないんです。それは、リスナーに対してだけではなくて。リスナーっていうものが第三者だとしたら、二者の人たち全員がこの作品にすごく入り込んで作ったなという体験であってほしい──ちょっと押し付けかもしれないなとも思いながらではありますが。そういうのって、すごくわかると思うんですよ、クリエイティヴを見ていく上で。やっぱり人と作ると渦を作ることができるんですよね。それが楽しいと思います。

──渦ですか。

Reol:音楽を作るということもそうだし、ミュージックビデオもそうだし、その先のプロモーションや、レコード会社の人とこの音楽でどうしていくか、この音楽がどう見られたいかのか、みたいなこととかも含めた渦ですね。リスナーに届くその直前までのところが全部クリエイティヴだと思うんです。その渦が大きければ大きいほどいいなという感じ。

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