【インタビュー】伊波杏樹、「25年間しっかりと真摯に役者として生き続けてきた結果が“ココ”」

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アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』高海千歌役、現在、舞台『「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra”Stage 本物の英雄(ヒーロー)PLUS ULTRA』トガヒミコ役などで活躍する声優・舞台女優の伊波杏樹が、1stフルアルバム「NamiotO vol.0.5 〜Original collection〜『Fly Out!!』」を12月8日(火)にリリースした。

◆ジャケット画像

本作は伊波杏樹にとって初のオリジナルフルアルバム。それだけでなく、全10曲中9曲を伊波本人が作詞を担当、作曲を手がけた楽曲も収録されるなど、伊波にとっての意欲作となっている。そんな本作について、BARKSではインタビューを実施し、伊波がどのような思いを持って本作に向き合ったのか探った。

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■自分で生きようとあがき、もがいた姿が
■生々しく乗ったアルバムになりました


──楽曲や歌声のバラエティといい、作詞のほとんどをご自身が手掛けられていることといい、これが初のフルアルバムだなんて信じられないクオリティですね。

伊波:ありがとうございます! 作詞に関しては、気づいたらそうなっていた……という感じなんですけど(笑)。

──ここに至るまで、きっと長い年月をかけて“アーティスト”としての準備を積まれてきたのではないかと想像したのですが、いかがでしょう?

伊波:そうですね。私自身、歌うことは小さい頃から大好きで、好きなJ-POPの曲が上手く歌えないと、悔しくて泣いちゃうような子だったんですよ。ただ、中学を卒業してからは役者という道を進んできて、まずは芝居をしっかりやることに注力していたから、その中で歌は“好き”の一つでしかなくて。もちろんミュージカルのお仕事を通して、歌で表現することの楽しさ、素晴らしさは味わっていたけれど、いわゆる“アーティスト”として活動したいということはあまり考えていなかったんです。

▲初回生産限定盤ジャケット

──とはいえ、人気作『ラブライブ!サンシャイン!!』で主人公の高海千歌を演じ、Aquarsとしてもステージに立って、ミュージカルに出演するほどの歌唱力があれば、アーティストデビューの話はもっと以前からあったはずで。あえてお断りしていたのでは? 

伊波:正直、やらないようにしていた部分はありますね。やっぱり自分の軸は舞台であり、芝居を自分の身体で表現することがとにかく大切で、それを声のお仕事に活かすという相乗効果を一番重要視していたから、成長し続けるためには舞台の上に立ち続けることが大事だなと。そんな中でアーティストデビューしても、果たして伝えたいことをしっかり伝えられるスケジューリングで活動していけるのか?という不安もありましたし。様々なコンテンツとしての活動もあったので、軸がブレてしまうんじゃないか?とか、伊波杏樹という一人の女性として捉えてもらえないんじゃないか?っていう想いも強かったんですよね。

──わかります。キャラクターとしての高海千歌と、アーティスト・伊波杏樹が混同されてしまうのではないか?という懸念ですよね。

伊波:そうなんです。役としてのフィルターを通したままで曲を聴いてみようとかっていうことになると、ちょっと違ってきてしまうこともあるのかなと。でも、やっぱり歌は好きだから、ファンクラブ限定でカバー曲を歌うライヴをやったりCDを出したりして、伊波杏樹が好きだと言ってくれる人だけが聴いてくだされば十分だと思っていたんです。裏を返せば“外”に出ることが怖かった。謂れもなく、トゲを向けられるのではないか?とか、自分の本当の想いが伝わらないのではないか?っていう恐怖感があったんです。

──では、今回なぜ“外”に出ることになったんでしょう?

伊波:そうやって“歌”という表現方法が一つ増えて、ファンクラブイベントで歌ったりするうちに、「伊波杏樹の歌が好きです」とか「伊波さんの声に励まされてます」とか、嬉しい言葉をたくさん頂くようになって。こんなにファンの方々が「伊波杏樹ってすごくいいんだよ!」って声を大にしてくださっているのに、自分がそんなに弱気でどうするんだ?って、自分で自分が恥ずかしくなったんです。みんなを信じて飛び出してみてもいいんじゃないかと、本当に少しずつ気持ちが変わっていったタイミングで、このアルバムのお話を頂いたときに“ココだな”と。ココで私が飛び出すことで改めてファンの方々に感謝を伝えたいし、「みんなのおかげで自信がついたよ!」って明言したいなと思えたので、今はファンクラブだけではなく、“外”に向けてもリリースすることに正直ワクワクしてます。それが“嬉しい”と、ようやく素直に感じれるようになりました。

──だからタイトルも『Fly Out!!』、つまり“飛び出せ!”と。

伊波:そうです。“飛び出せ!”と自分自身を鼓舞し、飛び出す準備を着実に重ねてきて。ただ、これまで歌ってきたカバー曲やキャラソンにも、自分の気持ちに重なる曲はたくさんあったから、最初は自分の言葉でなくても想いは届けられていて。「作詞なんて無理です!」って言っていたのに、CDやライヴでもずっとお世話になってきた多田(三洋)さんのくださる楽曲たちが素晴らしくて! これまでに頂いた励ましの言葉に応えたい、自分の想いを伝えたいという気持ちを、魔法の地図のように引き出してくれて、結果的に10曲中9曲が自分の作詞になってしまいました。もともと口下手で、自分が話すより相手の話を聞く方が好きなタイプなのに。

──本当に? 歌詞の言葉遣いや表現が巧みで、昔からポエムとか書かれていたのかなと思ったんですが。

伊波:全然(笑)。そこは役者をやっているからこそ、いろんな表現を学べているところが大きいでしょうね。今はレギュラーでラジオもやらせていただいてますけど、結局、包み隠さず自分でいたほうが届くなんじゃないかと思うんです。いろんな声色を駆使して表現する技術も素晴らしいけれど、そこに気持ちがついてこないと絶対に意味が無いので、結果的に自分の人生観や今までに見聞きしてきたもの、そして自分で生きようとあがき、もがいた姿が、生々しく乗ったアルバムになりましたね。

▲初回盤ジャケット

──ちなみに『Fly Out!!』の前についている“NamiotO vol.0.5”は、何を指しているんでしょう?

伊波:“NamiOto”は伊“波”杏樹が紡ぐ音楽、歌ということで、これまでのCDにも共通して付けているワードですね。“vol.0.5”はスタートラインの狭間を表していて、スタートを0と見るか1と見るかは人それぞれじゃないですか。それを今の自分には決められないし、そもそもスタートに立つときが来るのかもわからない。だけど歌っていたいという意味を込めて0.5にしたんです。

──凄い。全ての事柄に意味があって、“なんとなく”で決めていることが無いんですね。

伊波:一つも無いです(笑)。例えばジャケット写真が白いのは、伊波杏樹という人間のことを自分では無色透明に捉えているからなんですよね。常に悩んで笑って泣いて、どの色にも染まらないからこそ、役者としていろんな作品やキャラクターを演じられるんだと思っているから、“NamiOto”シリーズは絶対に白のワンピースって決めてます。今回そこに花で色を添えたのは、私にとって花が手紙のような役割を果たしているからで、例えばライヴになると、ファンの皆さんが花言葉まで考えてフラワースタンドを贈ってくださるんですよ! それって毎回でっかいラブレターを頂いているような感覚で、なので私からもファンの皆さんに毎回フラワースタンドを出していますし、今回のアルバムでも曲や歌詞に想いを乗せて伝えているから、花に囲まれて撮影したかったんです。

──なるほど。

伊波:その上で偶然が重なることも多くて、例えば今回だったら10曲中“I”で始まるタイトルの曲が3つあるんです。で、残りが7曲だから並べると“I・7・3”。そこで“I”を1に見立てると、私の名前の“イナミ”になるんですよ! 実は9曲目の「I promise you…」は別のタイトル候補もあって、自分の実体験を少し織り交ぜている曲だから、ある特定の日付をタイトルにしようかと迷っていたんですね。だけど“I・7・3”になっていることに気づいて、きっとこれは神様が降ろしてくれた偶然だなと「I promise you…」にしました。

──実体験だからこそ、逆に客観性を持たせるために一人称が“僕”になっているんでしょうか?

伊波:自分の経験が元にはなっているけれど、それは誰にでも起こり得るようなことでもあるので、聴いていただいた方それぞれの答えが正解なんですよね。なので男女どちらでも通じる書き方にしたくて“僕”目線にしました。

◆インタビュー(2)へ
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