【インタビュー】メトロノーム、こだわりを詰め込んだライヴアルバム完成

ツイート

■みんなで「そういう感じ!」とか「今のよかったね」とか
■言いながら作業を進めていくのがすごく楽しかった


──タイトさと生々しさが融合された独特のテイストやライブならではのエモーショナルな瞬間が詰め込まれた『5th狂逸インパクト』は本当に魅力的です。続いて、CD2に収録されている新曲の話をお聞きしたいです。1曲目の「華胥之夢」は、メトロノームの新たなに触れられるウォームなミディアムチューン。

リウ:「華胥之夢」は今年に入ってからメロディーを作って、元々はバンドっぽいアレンジというか、頭打ちのビートでロックっぽいアレンジと今回音源化されたアレンジの2パターンをイメージしていたんです。メトロノームだったらバンド感のあるほうだよなと思いつつ、ちょっと新機軸でもうひとつのほうでやれたらいいなと思っていたんですね。そういう中で『5th狂逸インパクト』の話が出てきて、レコード会社の担当さんとも話したところ、今回はいつもとは違う冒険をしてもいいと思うよ、ということだったんです。だったらこれだと思って、バンド感のないほうのアレンジでいくことにしました。ドラムは入れないことにして、ループとかで組み立てていって。でも、シンセは手弾きでハネさせていて、シンセのリズムはシャッフルだったりするんです。リズムの縦をキッチリ揃えるというよりは自分の中のグルーブを重ねていったという作り方なので、意外とグルーヴィな感じになりましたね。

──打ち込みが主体でいながら柔らかみがあることが印象的です。それに、ちょっとオリエンタルな雰囲気が香っているのもいいですね。

リウ:日本も含めたアジアっぽさを少し出したいなというのがあったんです。初めてメトロノームを聴く人だったり、もっと大きく言うと海外のリスナーが聴いたときに、“おっ?”と感じてもらえるものにするというチャレンジをしたいなと思っていたので、そういう方向に持っていきました。


──この曲のエキゾチックさは、海外のリスナーを強く魅了すると思います。歌詞は“たとえ自分だけがみんなと違っている世界だったとしても好きになる理由を考えたらキリがないくらいありました”ということを歌っていますね。

リウ:コロナ禍が起こったことで、急に時間がいっぱいある状態になったんですよね。僕はそういう中で暗い気持ちになるんじゃなくて、自分を見つめ直すことができたし、いろんなことを考えることもできたというのがあって。「華胥之夢」の歌詞はそういう中で感じた正直な気持ちを、そのまま書いた感じです。曲調も含めて、こんなときだから優しい曲を書きたいなという気持ちが、どこかにあった気がしますね。

フクスケ:「華胥之夢」はリウのほうからアコギでも、エレキギターでも、どっちでもいいよと言われまして。最初はこういう雰囲気の曲なのでアコギのほうがいいかなと思ったんですけど、自分の感じた印象としては木ではないテクスチャーを出したほうが合う気がしたんです。僕が使っているギターはボディーが木ではないのでそこを活かして、さらに弦の感じを強調したクリーントーンを、こういうゆったりした曲にあてられたらいいなと。それで、エレキギターでいくことにしました。

──全編クリーントーンというアプローチはメトロノームとしては珍しいですよね。それに、エモーショナルなギターソロも聴きどころです。

フクスケ:僕は元々、ソロで乾いた感じの音を出す人がすごく好きだったんです。リウが作った「華胥之夢」のデモにはそういう音のソロが入っていて、それを聴いたときに自分はこういう音が好きなのに、これまで使ったことがなかったなと思って。なので、できるだけ乾いた歪み音で録るようにしました。音色とフレーズが相まって、いいソロを弾けたんじゃないかなと思います。

シャラク:今まで歌をレコーディングするときは自分でスタジオを予約して、1人でスタジオにいって、自分で録っていたんです。デモに入っている仮歌のニュアンスを真似して歌って自分で判断するというやり方だったけど、今回はフクスケとリウにスタジオにきてもらって、その場でいろいろ意見を聞きながら歌うことにしたんです。そういうやり方をしたので、久しぶりにレコーディングしたなという気持ちになりました(笑)。

フクスケ:僕はメンバーが録ってきたトラックに対してどうこう言わないというか、こういうふうに仕上げてくれたんだと思って受け入れていたんです。でも、今回は歌っているそばから「こういうニュアンスで」とか「もうちょっと、こういう感じ」と言って、その中でシャラクの歌い方を出してもらうというやり方をしたんですね。その結果、僕やリウが思うニュアンスとシャラクの個性を両立することができた。録るのも早かったし、仕上がりもよくて、歌録りに立ち会ったのは正解だったなと思います。

リウ:歌録りをする前に強弱のニュアンスとかを伝えるのは本当に難しいんですよ。今回はその場でシャラク君に何パターンか試してもらうことができたので、すごくやりやすかった。メンバーがすぐそこにいると歌いづらいだろうなと思いましたけど(笑)。

シャラク:歌いづらいというか、恥ずかしかったです(笑)。レコーディングスタジオはブースとコンソールルームが別々だけど普通のスタジオなので、みんな同じ部屋にいるんですよ。で、ヘッドフォンをして歌うから、みんなに聴こえるのは生の歌声なんですよね。それが、恥ずかしかった(笑)。でも、みんなで「そういう感じ!」とか「今のよかったね」とか言いながら作業を進めていくのがすごく楽しかったです。


──歌録りの新しい試みも、いい方向に出ましたね。リウさん、「華胥之夢」のベースについても話していただけますか。

リウ:僕は自分で作った曲は、いつも一番最後にベースを考えるんですね。この曲はドラムらしいドラムがなくて、さらに先に自分のイメージでシーケンスを打ち込んだり、シンセを弾いたりしたので、ベースはその間を縫うというか。全体をうまく馴染ませる役としてのベースということを意識しました。チューニングも歌のキーに合わせて下げたんですけど、本来こういう曲はシンベなんだろうなと思いながら、生の5弦ベースを弾くという(笑)。「華胥之夢」は、生ベースでどこまでいい感じにいけるかということに挑戦した曲でもありますね。

──生ベースということが個性につながっていますし、すごくしなやかなベースを弾かれていて良い選択をされたと思います。もう1曲の「汚レテ汚レタ時刻ニ」は退廃的なEDMテイストとグランジっぽさを融合させた印象のナンバーです。

フクスケ:これはメトロノームでフクスケが書く曲のいいところが出せたらいいなと思って作り始めたんです。そう思っていたけど、サビのメロディーで今までにない感じを出せたので、これはぜひシャラクに歌ってほしいなと思って、この曲でいかせてもらうことにしました。歌詞は、僕がメトロノームで歌詞を書くときはただただ暗いものとかが多いんですけど、今回は前向きな歌詞になっています。こういう時期なので、希望を感じさせるもののほうがいいかなと思って。歌詞がカタカナなのは、簡単に読めないことで“なにを歌っているんだろう?”と思って、より一層食いついてくれるかなというのがあって。

──なるほど。

フクスケ:それに、この曲は“ぐんぐん進め”という言葉を入れたかったんです。進撃するイメージで、そういう中でも旧日本軍を思わせるようにカタカナというのも含まれています。あと、これは気づいてくれたのがキングレコードの人だけだったんですけど、サビの終わりが“終わろとも”と“終わろうとも”の2種類があるんです。歌の終わり方の違いで、どうしてもそうなってしまうんですよ。そういうときは、歌詞は統一して表記することが多い気がするけど、敢えてそうしなかった。たぶん、誰も気づいていないと思いますけど(笑)。

リウ:フクスケ君とシャラク君が書く曲ではわりと多いんですけど、デモの段階でベースは1コードの同じフレーズがループした状態になっていて驚くことが多いんですね。それも全然いいけど、その中でちょっとずつ変化をつける……音を間引いたり、スラップにしたりというのをいろいろ試してアレンジしていて、「汚レテ汚レタ時刻ニ」もそれがうまくできたかなと思います。あとは、間奏のベーソロのところはスラップだけじゃなくて、指弾きも混ぜています。それが、ちょっとベテランっぽいというか(笑)。ソロの中で、うまくメリハリをつけることができて気に入っています。


──やりますね。サビで歌とベースがユニゾンするアプローチなどもセンスの良さがうかがえます。

リウ:ありがとうございます。シャンソンとかの現場でベースを弾いていると、そういうアプローチが多いんですよ。「汚レテ汚レタ時刻ニ」はよく考えたらメロディーがシャンソンっぽいというかドラマチックなので、ベースがボーカルとユニゾンするというアレンジにしました。ロックでは、あまりないパターンかもしれないですね。

フクスケ:そうだね。

シャラク:歌とベースがユニゾンになるところは、歌っていても気持ちいいです。「汚レテ汚レタ時刻ニ」の歌は、難しかったですね。特に、サビのメロディーが2拍3連のところが難しかった。フクスケとリウにいろいろ説明を聞いたりしながら、なんとか歌い切りました。いつもは1人で歌っているから、自分の解釈が正解じゃない場合とかもあるんですよ。そう考えると、今回の録り方は良かったなと思います。

フクスケ:「汚レテ汚レタ時刻ニ」はサビ中でミュージカルとか、オペラの低い声で歌う人みたいな響く声で1オクターブ下の声を入れてほしいと、その場でお願いしたんです。そういうところに顔を合わせて録った良さが出たなと思いますね。1オクターブ下を入れてほしいと言っても、普通の低い声になってしまいがちなので。

シャラク:そう、それもわかりやすくて良かったです。

フクスケ:「汚レテ汚レタ時刻ニ」のギターは、心持ち的にはカート・コバーンを意識しました。カート・コバーンと同じフレーズを弾くということではなくて、勢いとかの部分で彼を感じさせるようなギターにしたかったんです。で、レコーディングした楽曲ならではで、Aメロとかはギターが左右に動くようにパンで振っているんですよね。ちょっとボーカルを邪魔したりもしますけど、作品としては効果的だったと思います。


──同感です。それに、この曲のギターソロもカッコいいです。アーミングからスイッチングという流れがちょっとジミ・ヘンドリックスっぽいですし、後半のシーケンスフレーズがバックの拍からズレていくというぶっ飛び方もなども最高です。

フクスケ:ありがとうございます(笑)。最後のところはバックが“ジャッジャッジャッジャ”と鳴っているうえで同じフレーズを繰り返して弾いて、感覚でだんだん遅くしていって、拍が合うところで“ピッ”と切りました。“これ、ライブでできないな”と思いながら(笑)。でも、ライブはライブで、また考えればいいやと思ったんです。

──ライブで求められるものは音源とはまた少し違っていたりしますからね。ライブといえば、12月26日に<REAL TOP METRONOME ver.メーDAY X‘mas 2021>と銘打った有観客ライブを、川崎CLUB CITTA'で行ないます。

フクスケ:お客さんにいろいろな制限がある中で観てもらうことになりますけど、久しぶりに生のメトロノームを楽しんでもらえればいいなと思います。あと、自分達的には、有観客ライブと配信を同時にやるというのがあって。2年間で蓄えた配信のスキルと久しぶりの有観客に向けた思いを、いい形でぶつけられるライブにしたいなと思っています。
シャラク:本当に、生のライブのやり方を覚えているかどうかという不安があるんですよ。メトロノームは曲によって決まった振りとかがあるんですけど、配信ではお客さんがいないからやらなかったので、忘れているところもあると思うし。そういう状態なので、12月のライブは会場に来てくれた方と一緒に、ある意味ゼロの状態からひとつのライブを作り上げていけたらいいなと思います。

リウ:ずっと配信をやっていて、配信映えすることを考えてセットリストを組んだり、演出を考えたりしてきたんです。今回は配信もありますけど、久しぶりの有観客ということで、“とにかく楽しいライブを”ということを考えてセットリストを組みました。そういうライブは久しぶりなので、すごく楽しみですね。いい形で2021年を締め括ることができるように、がんばります。

フクスケ:それに、年明けの1月9日に<メトロノーム新年祝賀公演「初メト出-2022-」>という有観客ライブを、池袋harevutaiでやることも決まっています。毎年年越しライブをしていたんですけど、今年はやらずに新年1発目を早めることにしました。お正月感があるタイミングでやれるので、いつもの年越しとはまた一味違って、今回はみんなで新年をしっかり祝えるようなライブにしたいですね。年明けに、皆さんと楽しい時間を過ごせることを楽しみにしています。

取材・文◎村上孝之
撮影◎いわなびとん

『5th狂逸インパクト』

2021年12月22日(水)発売
品番:KICS-4037~8 定価 ¥3,850 (税抜 ¥3,500)(2CD)

▼商品情報
https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICS-4037/
▼特典情報
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t12819/

[CD 1]
01.5th狂逸インパクト
02.世界はみんな僕の敵
03.強くて NEW GAME
04.暗い baby
05.魔法
06.おやすみ世界
07.デリート
08.脳内消去
09.とある事象
10.PSYCHO-ENEMY
11.まだ見ぬ世界
12.孤独氏
13.幣帚トリムルティ
14.Catch me if you can?
15.血空
16.解離性同一人物

MAJOR DEBUT 5TH ANNIVERSARY SPECIAL ONLINE LIVE 2021
「5th 狂逸インパクト」
Recorded at Club Mixa on October 24th

Support Drum:HIROSHI (CASCADE)

[CD2]
01.華胥之夢
02.汚レテ汚レタ時刻二

<REAL TOP METRONOME ver.メーDAY X'mas 2021>

2021年12月26日(日)川崎CLUB CITTA' OPEN 16:45 / START 17:30
■出演
メトロノーム【サポートドラム:HIROSHI(CASCADE)】

■チケット
ADV ¥7,500- / DOOR 未定-(1drink別途)
ご入場時に本人確認(顔写真付きのもの)およびワクチン2回接種証明書の提示が必要です。接種証明書がない場合は入場をお断りし、払戻し対応もいたしませんのでご注意ください。

■チケット販売
イープラス(スマチケのみ)
https://eplus.jp/sf/detail/0070050001-P0030049?P6=001&P1=0402&P59=1

■お問合せ
DISK GARAGE:050-5533-0888

■REAL TOP METRONOME ver.メーDAY X'mas 2021(ツイキャス配信)
OPEN(BGMスタート)17:00 / START 17:30
※固定カメラにてフクスケのみを収録したバージョンも12月27日(月)21:00より追加配信
どちらも本チケットにて2022年1月9日(日)までご視聴いただけます。

■出演
メトロノーム【サポートドラム:HIROSHI(CASCADE)】

■配信アカウント
ART POP ENTERTAINMENT

■チケット
¥3,500-(税込)

■チケット販売
キャスマーケット

■発売日
2021年10月30日(土)12:00~

■お問合せ
ART POP ENTERTAINMENT:045-650-2155(平日12:00〜19:00) info@artpop.org

<メトロノーム新年祝賀公演「初メト出-2022-」>

2022年1月9日(日)池袋harevutai OPEN 17:00 / START 17:30
■出演
メトロノーム【サポートドラム:HIROSHI(CASCADE)】

■チケット
ADV ¥7,500- / DOOR 未定-(1drink別途)
※ご入場時に本人確認(写真付き身分証明書)およびワクチン2回接種証明書(控え)/PCR検査陰性証明(1/6以降)の提示が必要です。

■チケット一般発売
イープラス(スマチケ)
https://eplus.jp/sf/detail/0070050001-P0030050?P6=001&P1=0402&P59=1
受付期間:2021年12月18日(土)10:00~

■お問合せ
DISK GARAGE:050-5533-0888

◆メトロノーム オフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス