【インタビュー】anewhite「自分の書きたいことをより深く書けるようになった」

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“anew(新たな)”と“white(白)”を掛け合わせて作られたそのバンド名は、彼らの音楽を体現するようだ。東京出身、2000年度生まれの4ピースロックバンドanewhite(アンホワイト)が、2021年の締めくくりに1stフルアルバム『2000's』をリリースする。

爽やかさと鋭さが共存したバンドサウンド、言葉遊びや聴き手の感性を刺激するワードセンス、聴き心地の良さを持ちながらも意外性のある楽曲展開、ボーカルとマッチしたドラマチックなメロディなど、彼らが持ちうる確かなソングライティング力と、バンドとしての美学が隅々にまで反映された作品だ。

anewhiteはいったいどんなバンドなのか、彼らにとって『2000's』はどんな作品になったのか、メンバー全員に訊いた。


──佐藤さんが音楽に目覚めたきっかけ、ものすごく珍しいですよね。お笑い芸人・さらば青春の光の深夜のテレビ番組を観ていた時にクリープハイプと出会うという。

佐藤佑樹(Vo、G):当時はそこまで音楽にのめり込んでなくて、芸人さんが好きで。いつも通りテレビを観ていた時にクリープハイプの曲がCMに流れてきて、6秒くらいのその一瞬で、言葉では言い表せない衝撃を受けたんですよね。小学生の頃から表現したい欲があって、自分の存在意義や今生きている印として、小6の卒業間際から歌詞を書いたり、絵を描いたりはしていたんですけど。

──音楽にのめり込む前から歌詞を書いてらっしゃったんですか? それもなかなか珍しい。

佐藤佑樹:なんでかわかんないけど、そんなに深く考えずひたすら歌詞を書くようになって。お笑いを観る以外趣味もなかったし、暇だったんです(笑)。そんな時にCMきっかけで音楽と出会って、すぐにギターを買ってもらって。まずはクリープハイプのコピーをしようとしたんですけど、コードが難しくてコピーできなくて(笑)。「じゃあ歌詞はあるから、自分で勝手に弾いてメロディをつけたら、これでずっと遊べるな」と試してみたら、それがすごく自分にしっくりきたんです。「高校で軽音楽部に入って、大人になってもバンドをやれる仲間に出会えるといいなあ」と思いながら、中学から曲作りをしていましたね。

──晴れて高校に入学し、軽音楽部でこの4人が出会うわけですね。

佐藤佑樹:部活のなかで「まず最初に1年生同士でバンドを組んでみよう」ということになって、集まったのがこの4人と、もうひとりギターを入れた5人だったんです。一真は当時キーボード担当で、彼が中心となってメンバーを集めてくれて。一真は小さい頃からピアノを習っていたから、ピアノ始まりの曲で音合わせしたらめちゃくちゃうまいわテンポ速いわで、みんな追いつけなかったという思い出があります(笑)。

河田一真(G、Key):(笑)。その時はバンドをずっとやっていこうとは思ってなかったから、気軽な気持ちで4人に声を掛けました。ギターは高校に入る前後くらいで始めたので、ギターが抜けてからギターも担当するようになりました。

佐藤佑樹:そしたら一真はどんどんギターがうまくなって。僕のほうがギター歴長いのに、彼は一瞬で追い抜いていきました(笑)。楽器や音選びのセンスがすごくある人だと思いますね。


──anewhiteは高校卒業を迎えた2019年の春から本格始動とのことですが、軽音楽部の大会で結果を残していたので在学中から注目度も高かったですし、さらに卒業後は<未確認フェスティバル2019>のLIVE STAGEに出演し、<RO JACK 2019 winter>で優勝をするなど、2019年はかなり怒涛だったのではないでしょうか。

鈴木優真(Dr):そうですね。まず、卒業してすぐに「バンドを今後どうしていくか?」と人生を大きく左右する決断をしなくてはいけなくて。そこで本格的にバンドを動かしていこうと一致団結しました。渋谷のスクランブル交差点の広場で3時間くらい立ち話をして…。

佐藤佑樹:僕はギターを始めた中学時代からバンドを本格的にやっていきたい気持ちがあったけど、3人はそこまででもなかったんじゃないかな?それなのに大会で優勝したりして、後には引けない状態になってバンド活動を辞められなくなっちゃったというか(笑)。

日原大吾:あははは(笑)。卒業したあとバンドを辞めるつもりはなかったけど、マイペースにMVやCDを出していくのかなと思っていて。でもその話し合いをきっかけに「かなり本腰を入れて活動していくんだな」という意識に変わっていきました。

河田一真:anewhiteが軽音楽部の大会で賞を獲った時、僕はテストの成績が振るわなくて、部活のルールでanewhiteから抜けていたんです。「またバンドをやらない?」と誘われた時には、卒業後もガチでバンドを続ける流れになっていました(笑)。バンドを仕事にしていくつもりではなかったんですけど、やるなら本腰を入れてやりたいなと意識を切り替えましたね。

佐藤佑樹:環境に突き動かされている面が強かったかもしれない。言い方は悪いけど、成り行き任せなところはあったんです。

河田一真:だから<RO JACK>から1ヶ月半くらいで、自粛期間に入って活動がゆっくりになったことは、正直ありがたくて。

──と言いますと?

河田一真:「ここからという時に足止めを食らってしまって大変だね」と言っていただくことが多いんですけど、僕らは活動が本格化する前だったのが逆に良かったというか。

鈴木優真:<未確認フェスティバル>も<RO JACK>も主に音源が認められていたので、ライヴでの演奏力がまだまだだという自覚があったんです。だからコロナ禍で練習に力が入れられたのは、僕たちにとってすごく良い時間だったんですよね。今もまだまだ未熟者ではあるんですけど、もしあのまま順調に活動が進んでいたら、演奏力が全然まだまだだったかもしれない。

佐藤佑樹:高校卒業からの1年間が猛スピードすぎて、うれしい反面戸惑っていたことは否めなくて。だからコロナ禍で一旦立ち止まることができたのは、僕らにとって良かったんですよね。

河田一真:うん。このバンドはずっと運に味方されてるなと思うんです。

佐藤佑樹:そうだね。その瞬間はピンチだと思う出来事が、結果的にいい方向につながっていくんです。コロナ禍に入った時もなんとなくそうなる予感があったから、そこまで焦らなくてもいいなって切り替えられました。

──現におっしゃっていただいたように演奏力を磨くための練習ができただけでなく、2020年の夏には「カヤ」がMVとともに注目を集めて、1st EP『NACHTMUSIK』、2nd EP『劇場を抜けて』と音源も精力的に発表と、anewhiteはコロナ禍でも充実の時間を送ることができたということですね。


佐藤佑樹:そうですね。スピードを落とすことなく、その期間で地に足を付けることができたと思っています。

──そして2021年を締めくくるのが1stフルアルバム『2000's』。今までのanewhiteがやってきたことを土台にしたうえで、新しい挑戦をした作品だと感じました。ストリーミングが盛んになってから、フルアルバムというフォーマットへの考え方もアーティストさんそれぞれですが、anewhiteは今作をどんな作品にしようと考えましたか?

佐藤佑樹:僕としてはアルバム単位で聴くことの面白さや、1曲1曲の流れを大切にしたかったんですよね。少ない曲数ではできない表現ができるのも、フルアルバムの魅力だと思っています。僕らは2000年度生まれなので、自分たちの生きてきた期間をフルアルバムで表現したたいと思っていました。

河田一真:ライヴをしていくなかで「もっとこういう曲がライヴでできたらいいな」と思うことがあったので、それも考えながら制作はしていきました。anewhiteの色は濁さず、ほんわかと振れ幅を見せられたらいいなって。

鈴木優真:アルバムは「これだけ成長しましたよ」とお見せできるものなのかなと思っていて。本当は2020年の年末にフルアルバムをリリースするつもりだったので、今回の新曲たちは1年半くらい掛けて作ったんです。だから曲それぞれで、その時その時の自分たちの趣味や好みが出ていて、その瞬間にしか作れなかった味があるなと感じてます。最初から最後まで聴き飽きない作品を目指しました。

日原大吾:自分はもともとアルバム単位で曲を聴くタイプではなくて。でもレコーディングし終えたアルバムを頭から最後まで聴きとおして、「アルバムの良さってこういうことか」と初めて理解できました。だからアルバムの選曲と曲順を考えたこのふたり(佐藤と河田)は本当にすごいなあ…。

佐藤・河田・鈴木優真:(笑)。

日原大吾:語彙力足りなくてうまく言えないですけど(笑)、すごいなあって思いましたね。ベースが新しくなったり、いろんなアンプを使ったり、初めてのアルバムでいろんなことに挑戦できました。

佐藤佑樹:時間を掛けて作ったぶん、みんなで知恵を出し合って音作りができたんです。今まで出した作品以上に4人で協力して作れました。だから去年ではなく、この時期に出せて良かったと思っていますね。


──anewhiteは物語性の高い詞世界を大事にしていらっしゃると同時に、メロディや楽曲の展開も個性的ですし、各楽器のフレーズにも細かいこだわりが見えるのが特徴的だと思います。

佐藤佑樹:結構欲張りな感じですよね(笑)。僕がメロディと歌詞を作って、それを一真がアレンジをしてくれることでanewhiteっぽさが出てくるし、リズム隊のフレーズは各々で決めてくれるので、楽曲には全員の意見やこだわりが反映されています。

河田一真:自分の根底には「バンドらしいものがやりたい」という気持ちがずっしりあって。最近はバンドっぽくないものやJ-POPが流行っていたり、僕自身もクラシックをやってきているので理論的な考え方を持っているんですけど、やっぱりずっと聴いてきた音楽はバンドだったので。

日原大吾:僕は音入れがいちばん最後だから、ノリの気持ち良さを大事にしながら弾いていて楽しい、かっこいいフレーズを好き勝手詰め込んでいきます。それを最終的に一真が「ここはちょっと抜いてもらえる?」や「もう少し普通のフレーズでいいよ」「ここはバスドラに合わせたほうがいい」みたいに意見をくれて整えてくれます。たとえば「out of the blue」は持っていったまんま採用してもらえたどころか、「もうちょっと凝ったことしていいよ」とも言ってもらって(笑)。弾いていてめっちゃ楽しい曲ですね。わがままだらけです(笑)。

鈴木優真:僕はバンドらしさを失わず聴きやすい曲にするために、今回支える側に回りました。前はいろんな難しいフレーズを叩けるようになりたいと思っていたんですけど、最近はシンプルなフレーズを綺麗に叩ける人がかっこいいなと思うようになって。『2000's』はそこに力を注ぎましたね。これまでに音源をリリースしていくなかでドラムの音についてもわかるようになってきて、テックさんとより深い話し合いをしながら音作りができました。

──河田さんが音楽理論の知識とバンド愛を持ち合わせているからこそ、anewhiteならではの鋭利なロック感と知的なポップセンスが共存するアンサンブルが出来上がるのかもしれません。

河田一真:佑樹がセンスでメロディと歌詞を書いていく人間なので、それが基盤になっているのも大きいと思います。そこを大事にするために理論的な解釈を加えて、それがマッチした時はanewhiteにとっての「いい曲」になっている実感がすごくあるんです。たとえば「チョコレート・ハートレイト」は1番のAメロだけあって、聴いた瞬間に「これはいい曲になる」と直感的に思って。

──「チョコレート・ハートレイト」は佐藤さんがnoteに「メンバーが気に入ってくれてレコーディングすることになった」と書いてらっしゃいました。メンバーとは河田さんのことだったんですね。

河田一真:僕のごり押しで、そこから一緒に続きのメロディを作っていきました。その時に佑樹がギターでコードを弾きながらいろんなメロディを歌ってくれて、「同じコードでこれだけいろんなメロディが出てくるの本当にすごいな」と感心して。おまけにそのメロディがいいし、歌声にも合っている。自分の声に合ったメロディを感覚で作れるセンスは、シンプルにうらやましいですね。

──小6から表現欲があって歌詞を書き始めたこと然り、佐藤さんは自分なりの世界観がしっかりある方なんでしょうね。憧れの誰かになりたいという願望ではなく、ただただ自分の持っているものを表現するために音楽をやってらっしゃるからこそ、佐藤佑樹という個性がセンスとして色濃くソングライティングに発揮されるのかもしれない。

佐藤佑樹:ああ、ありがとうございます。「チョコレート・ハートレイト」は中1の時、曲を作り始めて5、6番目に書いた曲なんですけど、Aメロを弾いたら一真が「それいいね。リード曲にするからサビ考えて」と言ってきて(笑)、そのあとの部分を一緒に書き直しました。中1の僕が作っためちゃくちゃなコードを弾いてその場で歌いながら作ったサビメロを、一真がピアノでちょっと整えてます。


──昔作った曲を再構築するのは、佐藤さん的にどういう感覚なのでしょう?昔の曲を引っ張り出すのは恥ずかしいという方も多いですが。

佐藤佑樹:僕はめちゃくちゃよくやってます(笑)。9曲目の「切言」を作ったのは高校卒業間際だし、「バケトナ」の原型は中2の時に書いているんです。というのも僕が中学の時、自分の好きなバンドが「なんか変わっちゃったよね」と言われているのに腹が立って(笑)。自分が将来バンドをやってこんなふうに言われるのめっちゃ嫌だから、今の段階から曲をめちゃくちゃ作りためて、ちゃんとバンドをやれるようになったらその時その時のセンスでその曲たちを再構築して、今と昔を混ぜていけばそれが回避できるんじゃないかなって…。

日原大吾:(笑)。


佐藤佑樹:だから中学の時に何百曲と書いたんですよね。今までの作品もそのサイクルで作ってます。「なんか変わっちゃったね」とは言われたくないし、もしそう言われた時に「昔作った曲ですけど?」と言えたらその意見も塞ぎこめるなと(笑)。

──はははは。「変わっちゃったね」への嫌悪感はどこから来るものなんでしょう?

佐藤佑樹:うーん、なんなんだろう。そのあたりの考え方も、少しずつ変わってきているような気もするんですけど…自分が作るものに対して細かいことを言われたくないって感じもあるかもしれない(笑)。音楽を続けるうえでストレスになりそうなことはやらないでおきたいし、あとはやっぱり、初期の頃から応援してくれる人にも満足してもらえるバンドになりたかったからですね。そのためには初期のテイストをこれからも残しておくことが必要だと思ったんです。

──となると「チョコレート・ハートレイト」はそれが理想的なかたちで実現できた曲ではないでしょうか。日原大吾:さん命名のタイトルも楽曲にマッチしていますし。

日原大吾:「明日〆切のタイトルがまだ決まってない」と言われて提案してみたんですけど、まさか採用されるとは思ってなかったです(笑)。

佐藤佑樹:まあ時間もなかったんで(笑)。

日原大吾:いや~その言い方は良くないって(笑)。

佐藤佑樹:(笑)。歌詞もレコーディングスタジオに向かう電車でどんな同音異義語の言葉遊びができるだろうか……とぎりぎりまで悩んでなんとか書ききりました。

──佐藤さんのお書きになる歌詞は、「忘れること」や「別れ」について綴られていることが多い印象があるのですが、その背景とは?

佐藤佑樹:自分が書きたいと突き動かされるテーマがそこなんですよね。過去に何か深い出来事があったというわけではないんですけど、生きているといろんなことはあるじゃないですか。特に生き死にはどの世代の人にも身近なテーマだし、どんな人にも訪れるものなので、共感性も高いと思うんです。歌詞をきっかけにしてそういうことをじっくり考えてほしいわけではないけど、心の奥ではわかっていてほしい…そう思うことを歌詞にしていきたい。作った曲が一過性のものになってしまうのはかわいそうだから、人生にずっと必要なものを歌詞にしているんですよね。

鈴木優真:佑樹の書く歌詞はDMとかLINE、SNSみたいにわかりやすいキャッチーなワードがないし、一見わかりにくいかもしれないけど、時間が経ってじっくり染み入る歌詞だと思うんです。

──ストレートに意味が伝わる表現方法ではないけれど、ご自分の大事にしている感情や哲学を、ご自分の言葉の美学でしたためているということですね。

佐藤佑樹:そうですね。誰かが亡くなることで後悔することはあるじゃないですか。後悔するのは自分にとって大切なことでもあるし、そういうものを歌詞にしていきたいんですよね。ちょっと言語化が難しいんですけど。

──いえいえ、ありがとうございます。聴き手の感性を刺激する言葉運びや、リアルとファンタジーが混在した物語を描いたものが多いので、シニカルな言い回しが小気味よい「オールドスクール」やストレートな表現も多い「2000's」、コロナ禍を彷彿とさせる「怪獣と光線銃」のように、佐藤さんが矢面に立って言葉を発信している歌詞は新鮮でした。

佐藤佑樹:ファンタジーな歌詞は人間が主人公だと言えないようなことも言えるんですけど、今回は自分がひとりの人間として発信したいことが多かったんですよね。たぶん「オールドスクール」みたいな書き方は得意なんだと思います(笑)。今まで書いてきたファンタジックな歌詞も僕が書いているんだし、なら自分の素のままで書いてもいいんじゃないかなって。

──ちょっと物申したい、嫌なことがあったと。

佐藤佑樹:そりゃあ、まあ…嫌なことは常にありますよね(笑)。この取材場所に来るまでの道のりでも嫌なことたくさんありましたもん(笑)。

河田一真・日原大吾・鈴木優真:(笑)。

佐藤佑樹:そうやって小さいことに腹を立てる自分は生き方が下手だなあ、もっと上手に生きれたらいいのになあ…と思うことが多くて。でもきっとみんなそれに近いことを感じているんだろうなと思ったんです。そういう気持ちを歌詞にすることで、救われる人がひとりでもいたらいいな、そういう寄り添い方ができたらいいんじゃないかなと思ったし、万人に響く曲だけでなくピンポイントの人に刺さる曲があってもいいんじゃないかなって。あんまり表に出さない、もっともっと深いところで向き合えたらなと思ったんです。

──佐藤さんがnoteに書いてらっしゃった「いい曲だからアレンジしたくない」とメンバーさんから言われた曲はどれですか?

河田一真:「怪獣と光線銃」です。去年聴かされた時に、元の曲がいいぶん自分のアレンジ力ではこの曲を殺してしまうな、自分には手に負えないなと思ったんです。それで1年置いて、今ならできるかなと。メロとコードを生かした楽器をそのままつけました。

佐藤佑樹:この曲は珍しく優真に歌詞を褒めてもらいました(笑)。わかりやすかったみたいです(笑)。優真はうちのバンドでいちばんミーハーなので、アーティストさんの代表曲を幅広く知っているんですよね。世の中にはそういう人が多いと思うので、彼のジャッジは大事なんです。僕は作ってる側だから、何がいいのか悪いのかがわからなくなっちゃうから。

鈴木優真:このふたり(佐藤と河田)は特に、音楽やりすぎて頭が音楽バカなんです(笑)。

河田一真:歌詞とメロディを作って、音を作って…とやっていると、どうしてもどんどん凝りたい気持ちが強くなっちゃって。中学時代に好きなバンドに対して「もっとバンドサウンドを聴きたいのにな」と思うことがあったんですけど、実際に自分もそういう方向に進んでしまっているなと気付いて。だからアレンジを考えるうえで「自分たちはバンドなんだ」という意識は強く持つようになりました。

佐藤佑樹:曲数もたくさんあって、レコーディングの期間も3ヶ月あったので、時間が掛けられたぶんできることも増えて。このアルバムをきっかけにいろんなことができるようになりましたね。


──ラストを飾る「つんとくる」の、ギターソロからピアノソロにつながる間奏も小粋でした。どちらも河田さんが弾いてらっしゃると思うのですが、ライヴでどう披露するのでしょう?

河田一真:まだ未定ですね(笑)。

日原大吾:ちょうど昨日その話をしてたんです(笑)。

佐藤佑樹:彼がピアノをanewhiteのステージで弾いたのも、初ワンマンの「バケトナ」が初めてだったんです。「つんとくる」は一真にキーボード弾いてすぐギターを弾いてもらうか、僕があのギターソロを弾くのか…。でも彼のギターソロは、彼の手癖が満載なんですよ。

河田一真:ギターソロは深く考えないで、気持ちで弾いてるので(笑)。

佐藤佑樹:「切言」は一真がピアノに集中して、僕はバッキングを弾きながら大事なギターフレーズだけ弾くことにしたんですけど、だいぶ練習してやっとできるようになりました(笑)。

──ライヴでどう表現されるのか、年明けの東名阪リリースツアーにて乞うご期待ですね。

鈴木優真:一真はライヴアレンジをめっちゃ凝るんですよ。初ワンマン(編集部註:2021年8月、渋谷WWWにて開催)の時も本来同期が必要ない曲に新規で同期をつけてきて、ドラマーの自分はなかなかしんどかったです(笑)。

河田一真:(笑)。壮大な音が似合うバンドだから、そういうサウンドで届けたいじゃん。

鈴木優真:そうなんだけどさ~しんどいよ(笑)。でも大きなミスもなく終わらせられてほっとしました。そういうアプローチがたっぷりできるのはワンマンライヴなので、来年の渋谷WWWXワンマンも頑張りたいですね。

日原大吾:ワンマンでは一真のピアノインストの「#928171」もやらせます(笑)。僕もこの曲大好きなので、いい流れを作ってほしいし。

佐藤佑樹:そうだね。初ワンマンをやったからこそわかったことがたくさんあったんです。同期でしっかり決める曲もあれば、4人のリズムで繰り出していく曲もあるので、どっちの良さも生かしたライヴができたらと思ってますね。やっと他県にも行けるようになってきたので、ツアーでは大きく成長した姿をお見せしたいです。


──『2000's』をきっかけに、またバンドが大きく成長しそうですね。

鈴木優真:アルバムを作ると必然的に自分と向き合う時間が増えるんです。自分はどういうフレーズが得意なのか、どういう音楽が好きなのか、あらためて実感できるきっかけをくれた作品ですね。いろんなアーティストを満遍なく聴いている自分だからこそ叩けるドラムもあると思うので、気を抜ぬかずに今後も腕を磨いていきたいです。

河田一真:今回は「オールドスクール」みたいに自分がある程度しっかりオケを作ってリズム隊に方向性を示すパターン、ぼんやり作ったオケを送ってほとんどフレーズをお任せするパターン、「ソフト」や「out of the blue」みたいにリズム隊が好き勝手に弾いたものからアレンジを広げたパターンと、いろんな方法で曲作りができたんです。録り終えて、満足感と同時にもっともっと曲を作りたい欲が湧いてきました(笑)。

──河田さんからとっても素敵な笑顔をいただきました。次への意欲が湧くのは、『2000's』が充実の作品になった証ではないでしょうか。

日原大吾:『2000's』には最近録った曲だけでなく、「カヤ」みたいに最初にレコーディングをした曲も入っているので、自分たちの成長だけでなく、「昔から好き勝手にやってるんだな」と変わらないところも実感できたし、昔のことも思い出せたんです。それはアルバムという、13曲を頭から最後まで聴いたからだと思っていて。

佐藤佑樹:いま大吾が言ったことと近いことが自分にもありましたね。13曲を頭から最後まで聴くからこそ、自分の書きたいことが書けるようになっていることも実感できたし、変わらない自分の好きな言い回しや、大事な曲には“擦れる”という言葉が入っていることにも気付いて。人間的に“擦れる”という言葉が好きなんですよね(笑)。

──「氷菓」「群像劇にはいらない」、今回は「チョコレート・ハートレイト」と、リード曲に入っている言葉ですね。一般的にはあまりいい意味では使われにくいですけど。

佐藤佑樹:人間は擦れることで丸くなっていくんじゃないかなあと思うんです。生きていくうえで必要な過程だと思うので、自分はそういうものも歌詞に残したいんだなと気付けたし、それ以外にも自分のいろんなことにあらためて気付くきっかけになりました。実際にこのアルバムを経て、自分の書きたいことをより深く書けるようになって。今作ってる曲、すごく気に入ってるんです。

取材・文◎沖さやこ


anewhite 1st Full Album『2000's』(読み:トゥーサウザンズ)

2021年12月22日発売
NEWREC-0031 3,300円(税込)
2.out of the blue
3.チョコレート・ハートレイト
4.カヤ
5.バケトナ
6.for tune
7.(874)(読み:カコバナシ)
8.オールドスクール
9.切言
10.2000's
11.怪獣と光線銃
12.#928171(読み:ココニハイナイ)
13.つんとくる

◆anewhite Twitter
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