【インタビュー】VALSHE、6thミニアルバム『ISM』に主義と主張「あなたは間違えない」

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VALSHEが12月22日、6thミニアルバム『ISM』をリリースした。タイトルの意味は、主義/主張だ。“仲間”、“敵”、“家族”、“命”、“信頼”、“今”など、各楽曲には明確なテーマを設定。それらが全く異なるジャンルの振り切れたサウンドをまとって収録されたという意味では、全9曲のコンセプチュアルな作品の完成だ。

◆VALSHE 画像 / 動画

デジタルロックを基軸に様々なアプローチで深読みができる世界観を提示してきたVALSHEだが、リード曲「GIFT」のミュージックビデオではバンドスタイル、ダンサーとの共演、ソロで歌うショットを長回しで撮影し、ヴォーカリスト、エンターティナーとしてのポテンシャルの高さを提示。フレンチエレクトロ、ケルトミュージック、K-POP、ハードコアメタルとバラエティという言葉では収まりきらない楽曲たち──その根底に流れているものこそが“VALSHEイズム”だ。ラストの曲をあえて「INTRODUCTION」で締めくくったVALSHEに今の心境、楽曲が生まれた背景についてたっぷり訊いた。

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■どれが本当のVALSHEなんだろう?
■という気持ちになっていただけたら成功

──6thミニアルバム『ISM』では、“全曲違うジャンル感を目指した”ということですが、最初から決めていたことなのでしょうか?

VALSHE:はい。歌詞に関してはそれぞれ、VALSHEの主義/主張が詰まっているんですが、先ず何より音楽作品として楽しんでほしかったので、 “全曲、ジャンルを変えよう”と。これまでの10年間もいろいろなサウンドや世界観にアプローチしてきましたが、さらに上をいく多岐にわたるサウンドを純粋に届けたかったんです。それも主義のひとつです。

──曲順も含めてデジタルロック、フレンチエレクトロ、バラード、ハードコアメタルと振り切れた9曲が収録されていますが、そこはチャレンジですか?

VALSHE:ライヴを見てくださったり、アルバムを聴いてくださってきた方には、自分の振り幅の加減はある程度お馴染みだと思うので、それほど驚かないと思いますが、今作で初めて聴く方は“どれが本当のVALSHEなんだろう?”って。そういう気持ちになっていただけたら成功だと思うし、嬉しいですね。


──VALSHEさんにはいくつの顔があるんだろう?って。

VALSHE:ええ。それぞれ“この曲がホントの顔かな”と思って聴いてくださっても、間違っていない。どれも正しいと思います。

──リード曲「GIFT」のミュージックビデオはパフォーマーとしてのVALSHEさんの存在感が圧倒的です。

VALSHE:曲を作る前からミュージックビデオのイメージがあったんです。“映像でやりたいことがあるから、こういう曲でこういう歌詞にしたい”という。

──VALSHEさんを中心にバンドメンバーとダンサーが交錯して登場しますが、これは初の試みになりますか?

VALSHE:ライヴに参加してもらっているダンサーやバンドメンバーが1曲の中に登場する演出は初めてですね。ライヴや音源で表現していることをミュージックビデオで具現化したいと思ったんです。根底にあったのはVALSHEがバンドをバックに歌っても、ダンサーと一緒に踊って歌っても、マイクを持って一人で歌っても成立する楽曲を視覚的に表現したいという想いです。ミュージックビデオの見どころとしては、初めて長回しの撮影にチャレンジしています。バンドとVALSHE、ダンサーとVALSHE、ソロのVALSHEを間髪入れずノンストップで見せたかったので、その切り替えに関しては監督やスタッフと話し合い、何度もリハーサルを重ねて臨みました。

──映像の多面性もVALSHEさんそのものです。手に持っている正方形の箱もモチーフになっていますね。

VALSHE:箱は自分の頭の中や心の中を表しています。エンディングまで見ていただいた時に、“箱”と、“緑”という色が意味するものがわかっていただけると思っています。

──オフィシャルYouTubeチャンネルでショートバージョンがいち早くアップされましたが、どんなリアクションが返ってきていますか?

VALSHE:先ずはやっぱり視覚的な部分として、ダンサーとバンドがミュージックビデオで共演していることを喜んでくださっている方が多いですね。いつも“今回はどんなアプローチなんだろう?”とワクワクして待っていてくださるので、意表をついたものが制作できて、自分の中で手応えとしては“よしっ!”って(笑)。


──では、バラエティという言葉では収まりきらない楽曲についてお聞きしたいのですが、目まぐるしく展開していく1曲目の「ISM」はオープニングSE的なポジションですか?

VALSHE:いちばん最初に耳に飛び込んでくる曲なので、“1曲の中に自分の心の動きや頭の中の変化を落とし込めないだろうか?”と思ったのがスタートラインです。ディレクターにデモを持っていって「自分の頭の中を曲にすると絶対に破綻する。不協和音にしないと成立しない」っていう話をして、デビュー当時からの仲のG'n-さんならそれを形にしてくれるんじゃないかという話になり、アレンジをお願いしました。“調和”と“不調和”、“協和”と“不協和”をテーマに、それを同居させたインストになっています。ピアノのメロディから始まる“綺麗な曲”かと思いきや、中盤から一気に心が乱れるような展開に移行するので、聴き終えた後の“はあ〜っ”っていう気持ちが湧き上がった状態で「GIFT」を聴いてほしかったんです。

──それで冒頭と終わりに吐息が入っているんでしょうか?

VALSHE:いちばん最初は息を吸っている音なんです。レコーディングの時も曲を流した状態で実際に曲中、息を止めていたんです。息を吸って自分の心情の変化を受け止めた上で最後に吐き出したんですが、リアリティを求めていたからこそ、そこはこだわったポイントでもあります。

──「ISM」からの「GIFT」はデジタルロックの王道でありつつ、ラウドな要素も盛り込まれています。

VALSHE:そうですね。「GIFT」をリード曲にすることは最初から決めていたので、自分の源流になったサウンドをしっかり反映させつつ、ビート感で新しさを提示しています。今までは疾走感がある中に変則的ビートを取り入れているのがVALSHEらしさでもあったと思うんですが、「GIFT」は淡々とした4つ打ちのビートなんです。そこにトライアングルやリズムのループを複雑に絡ませているところ、ギターリフが特徴的なバンドサウンドを乗せているところが、これまでになかったアプローチになっています。ミュージックビデオありきの曲だったので「Aメロはこんな感じでBメロでバンドスタイルになって」とディレクターと話して、曲の土台をサウンドプロデューサーの瞬さんが作って、自分がメロディをつけた曲です。

──キャッチフレーズになっている“あなたは間違えない”はご自身に向けてメッセージしている言葉ですか?

VALSHE:自分自身にとっても、聴いてくださる方にとっても、重要なワードです。受け取ってくれた方の人生の選択という意味の解釈もできると思うんですが、「GIFT」の中の“あなたは間違えない”はVALSHEが発信するものをあなたがどう受け取ったとしても、それは間違いではないという意味も込められています。この曲ではVALSHEの活動そのものにおける主義を描いています。

──刺激的な「GIFT」から「シープランド」ではメルヘンでエレクトロな世界に移行して、そのギャップに驚かされます。

VALSHE:「シープランド」の原型はエレクトロポップだったんですが、「スネアやキック、ベースの音色が重いフレンチエレクトロポップにしたいね」ってアレンジを変えました。この曲は、実はアルバム『WONDERFUL CURVE』(2017年発表)の候補曲だったんです。当時は『WONDERFUL CURVE』に収録するにはポップ過ぎると思っていたんですが、いつか歌いたいと思っていた大好きな曲で、いろいろなジャンル感の楽曲がテーマのミニアルバムなので、今回最初に入れたいと思った曲でもあります。そんな嬉しい気持ちから始まって、ジャンルの特徴をもっと強く押し出したくてフレンチエレクトロポップにしてみました。

──ヴォーカルスタイルも少年のようでガラリと変わります。“白い目で見られて ヘンだって言われたって 転んじゃったって大丈夫”と歌っていますが、VALSHEさんの幸せの定義を歌っているのかな?と。

VALSHE:歌詞のテーマは“仲間”についての“ism”なんです。10年間活動してきた中で、どういう人たちと出会って別れて、ここまで来たのか。自分自身が思う仲間とは?という主張をポップな世界観に乗せて歌っています。

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