【インタビュー】幻のビートリッシュ・バンド“ヴィニール・キングス”、「エド・サリヴァン・ショーで人生が変わった。ビートルズは僕たちの先生だったね!」

ポスト

これまでにウェスト・コーストやナッシュヴィルの様々なアーティストの名盤やツアーに参加した、凄腕セッション・ミュージシャン達(メンバーの1人は、鈴木英人のジャケットでも有名な、1982年日本で大ヒットしたAOR定盤『ロンリー・フリーウェイ』のラリー・リー)が「ビートルズへの愛情と敬意」を示すために2002年に結成し、『A LITTLE TRIP』(2002年)、『TIME MACHINE』(2005年)と2枚のアルバムを残した、幻のビートリッシュ・バンド、ヴィニール・キングス。「ビートルズの遺伝子」を最良な形で受け継ぐポップでマジカルな彼らの音源をすべてを収録した日本独自企画盤『ザ・ベスト・オブ・ヴィニール・キングス』が2021年12月22日(水)発売となった。

◆ヴィニール・キングス 関連動画&画像

彼らの音源が日本初CD化されることを記念して、今回メンバーのうちラリー・リー(key, vo)、ジョシュ・レオ(g, vo)、ジム・フォトグロ(g, vo)、ハリー・スティンソン(ds, vo)の4人がナッシュヴィルに集まり、日本で初めてのインタビューが実現した。インタビューでは結成のいきさつや、ビートルズへの想い、アルバムや収録曲のエピソード、JDサウザーやイーグルスのグレン・フライと来日した時の日本の想い出から、現在レコーディング中の新作についてまで、興味深い内容を初めて明かしてくれた。

   ◆   ◆   ◆

──ヴィニール・キングスとビートルズについて教えてください。

ラリー・リー:当時、みんなそれぞれの音楽キャリアでとても成功していたんだけど、ただ楽しむためだけに音楽をやりたいという思いで、このバンドを結成するために集まった。ビートルズは僕らメンバーの青春の音楽の大部分を占めていて、アルバムは彼らから受けた影響に敬意を表すために作ったものなんだ。

ジム・フォトグロ:ジョシュはフルタイムのプロデューサーで、ハリーはナッシュヴィルからリリースされる大半のアルバムにヴォーカルとドラムで参加していた。ラリーもアルバムをプロデュースしていて、僕はバックアップ・ミュージシャンとソングライターをやっていた。でもヴィニール・キングスは僕たち自身が楽しむため、僕たちにとって魅力的でハッピーになれる大好きな音楽を作る。すべての鍵は(ビートルズへの)愛だよ。

ジョシュ・レオ:「もしビートルズがもう1枚アルバムを作っていたらこんな感じ」みたいなものを作ろうと思ったんだ。 サウンドにはこだわったね。楽器も僕はリッケンバッカーの6弦や12弦、アンプはVOXを使って、今日はいないんだけど、ベーシストのマイケル(・ローズ)は「この時期は多分ヘフナーを弾いているね」なんて言って顕微鏡見てるみたいに研究してた。

ハリー・ステントン:ビートルズがきっかけで音楽業界に入ったようなものだよ。僕らの曲にはビートルズが各時代にリリースしたアルバムが反映されている。大切だったのはビートルズがキャリアのそれぞれの時代でどんな音を作っていたか。どのアルバムも違っていたからね。音的にその辺をすごく細かく再現する必要があったと思う。

ジョシュ・レオ:「ア・リトル・トリップ」という曲は11歳の僕の実話に基づいたストーリーだ。『エド・サリヴァン・ショー』を見たときのことだね。その前はカトリックの神父になりたかったけど、あれを見て「ノー、あんなに女の子にモテるんだったらミュージシャンになりたい」と思ったんだ(笑)。『エド・サリヴァン・ショー』でビートルズを見たあの時からすべてが始まった。

ラリー・リー:『エド・サリヴァン・ショー』で僕たち全員の人生が永遠に変わったんだ。あれがなかったら僕たちはミュージシャンになってすらいないと思うよ。

ジム・フォトグロ:彼らに敬意を表して「ありがとう」と言いたかった。そういえば、僕らのライヴにスティーヴ・ウィンウッドが観に来て、「君たちはまるで音楽の考古学者みたいだな!」なんて言っていたね(笑)。そして、ライヴで一緒に「Gimme Some Lovin’」をやったんだ。最高だったね。

ジョシュ・レオ:僕はビートルズをいつまでも「勉強」するんだ。彼らは僕たちの先生だったね。ビートルズ以上の先生はないよ。彼らは天使みたいに遣わされて、この惑星を平和で愛に満ち溢れた、創造性のある場所にしようとしていたんだと思うんだ。いくら語っても語り尽くせないよ。

ハリー・ステントン:『ザ・ビートルズ ゲット・バック』を見てビートルズの音楽を発見する若者たちもいるだろうね。ビートルズの音楽はどうやら、聴き手の歳など関係ないみたいだね。今の10歳児だって夢中になる。あの音楽のどの要素がそうさせるのかは分からないけど、とにかくマジックが入っているんだよ。


──ツアーで日本を訪れたときの思い出について教えてください。

ジム・フォトグロ:僕は2回日本に行ったことがあるんだ。80年代に2枚アルバムを出してね。いわゆる「ウェストコースト・ミュージック」のカテゴリに入るタイプの。それで、1981年にプロモーションで日本に行ってヤマハの世界歌謡祭にも出演した。京都で伝統的な日本のホテルに泊まる機会があった。創業何百年みたいなところでね。素晴らしかったよ。

ジョシュ・レオ:僕は日本で2回プレイしたことがある。1979年にJ.D.サウザーと、1982年にグレン・フライと日本に行った。いい思い出がたくさんあるね。「Cools Rockabilly」という名前のクラブに行ったんだ。みんな頭をリーゼントにしていて、ロカビリー・バンドが1950年代のロカビリーをやっていた。僕が初めてウォークマンを買ったのも東京だった。まだアメリカでは売っていなかった頃でね。アメリカに戻って「どうだ、こんなの買ったぞ!」なんて自慢していたよ(笑)。

ハリー・ステントン:その頃は日本に行くやつが誰かいないかよく探していたよね。ヤマハのDX7を買ってきてもらいたいとかで。僕はまだ日本に行ったことがないんだ。頼む、ぜひ呼んでくれ。見えないバリアがあってそれを超えられないんだ(笑)。

ラリー・リー:ぜひ日本で初めてリリースされる僕たちのアルバムを買って、聴いてほしいね。そうしたら僕たちが日本に行けるから(笑)。実は今(ヴィニール・キングスとしての)新作レコーディングをしているんだよ。そのためにみんなここに集まっていたんだ。まだまだ時間はかかるかもしれないけど現時点での最高傑作になると思うから、完成したら是非日本のみなさんに聞いてほしいね。

ジョシュ・レオ:ひと言付け加えたい。僕たちの「ドリームズ」を素晴らしいバンドやアーティストと一緒に『Power To The Pop 2』に入れてもらえたのは本当に光栄なことだった。あの面々と関連付けてもらえたことは素晴らしい特権だった。あれが僕たちの今後について道を開いてくれるといいね。

   ◆   ◆   ◆

「I Took A Chance」の初期ビートルズを捉えたようなサウンド、「A Little Trip」のビートルズがサイケデリック・ムーヴメントに突入していく瞬間、『Power To The Pop 2』に収録された「Dreams」に見られる後期ビートルズの匂い、SEを使った「Time Machine」、逆回転が微笑ましくもある「Mr.Greedyman」、メロトロンがマジカルでサージェントなテイストを漂わせる「67(Home)」他、ジョン・レノンを彷彿とさせるヴォーカルも含めて「ビートルズの遺伝子」を最良な形で受け継ぐ楽曲の宝庫、『ザ・ベスト・オブ・ヴィニール・キングス』は、ビートルズの遺伝子が確実に受け継がれ、半世紀を経ても輝き続けていることを知るにはもってこいの1枚と言えるだろう。

インタビュー全文はこちらで:https://www.sonymusic.co.jp/artist/CompilationInt/info/536506


『 A LITTLE TRIP / TIME MACHINE』

2021年12月22日(水)
SICX 174 定価¥2,750

■収録曲
1 アイ・トゥック・ア・チャンス I Took A Chance
2 ドント・ウォリー・アバウト・ミー Don't Worry 'Bout Me
3 ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン Here We Go Again
4 アイ・シンク・アイ・ノウ I Think I Know
5 リーヴ・ディス・タウン Leave This Town
6 マインド・オーヴァー・マター Mind Over Matter
7 マザー・ディア Mother Dear
8 バン・バン Bang Bang
9 チョコレート・ケーキ Chocolate Cake
10 ルージン・マイ・マインド Losin' My Mind
11 ホワット・イフ・イット・ワー・ユー What If It Were You
12 ドリームズ Dreams
13 タイム・マシーン Time Machine
14 ミスター・グリーディマン Mr. Greedyman
15 67(ホーム) 67 (Home)
16 ユア・ターン・トゥ・シャイン Your Turn To Shine
17 シカモア・ベイ Sycamore Bay
18 ペイル・ブルー・ドット Pale Blue Dot
19 ワン・ラヴ・アット・ア・タイム One Love At A Time
20 ジャスト・アナザー・デイ Just Another Day
21 プレイ・フォー・ピース Pray For Peace
22 エロイーズ Eloise
23 アンド・ラヴ・ユー And Love You
(1-13 from album 『A LITTLE TRIP』/14-24 from album『TIME MACHINE』)

◆BeatleDNAシリーズ オフィシャルサイト
この記事をポスト

この記事の関連情報