【ライブレポート】生粋のライブバンド・the GazettE、帰還

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2020年初頭に起こったコロナ禍の影響により同年3月に予定していた18周年ライブを中止した後沈黙を続け、2021年5月にニューアルバム『MASS』をリリースしたthe GazettE。

◆ライブ写真

コロナ禍の中でもバンドが稼働し続けていたことを『MASS』で示し、さらに7月に入ってからthe GazettEが9月から11月にかけて<LIVE 2021 -DEMONSTRATION EXPERIMENT- BLINDING HOPE>と銘打った東名阪ツアーを行うことがアナウンスされた。アルバムのリリースと約2年ぶりとなるライブの再開に、the GazettEのファンが狂喜乱舞したことは想像に難くない。

生粋のライブバンドといえるthe GazettEが配信なども含めて一切ライブをしないと決めたのはファンに感染のリスクを背負わせたくない、来場したファンには思いきり暴れてほしいという思いがあったからだろう(ちなみにメンバー達の中には配信ライブという選択肢は皆無で、話題にすらならなかったという)。ファンを思いやると同時に、いわゆる“完全な状態”でなければライブをする意味がないという強いこだわりを持つthe GazettEがライブを再開するタイミングを慎重に見極めていたことは明らかだ。つまり、the GazettE は“生粋のライブバンドなのにライブをしない”ではなく、生粋のライブバンドだからこそライブをしなかったというわけだ。

ファンはもちろんメンバー自身もライブを渇望している苦しい時期を経てthe GazettEは大阪と名古屋でライブを行い、健在ぶりを披露。11月に予定されていた東京公演が急きょ延期になるというアクシデントがあったが12月23日に振替公演が決まり、東京ガーデンシアターでツアーファイナルが開催された。


暗転した場内に荘厳なオープニングSEが流れ、ステージ前に降ろされた紗幕にthe GazettEのメンバー達のシルエットが浮かび上がる。声出し禁止のため歓声が湧き起こらないにも拘わらず場内の熱気が一気に高まったことが感じ取れる中、葵が奏でるギターリフが鳴り響き、ライブは「BLINDING HOPE」で幕を開けた。

ヘヴィネスと翳りを融合させたthe GazettEならではのエモーションを爆音で聴くのは快感で、“そうです! これを待っていたんです!”と思わずにいられない。余裕の表情で演奏するメンバー達の姿と1曲目から激しいリアクションを見せるオーディエンス。ライブが始まると同時に場内はひとつになり、この場にいる総ての人が今日という日を心待ちにしていたことが伝わってきた。


その後はアッパーな「ROLLIN’」と緊迫感を湛えた「GUSH」を相次いでプレイ。ステージを行き来しながら楽曲のテイストに合わせて表情豊かなボーカルを聴かせるRUKI。華やかなオーラと感情を込めたギターソロのマッチングが印象的な麗。躍動感に溢れたステージングとソリッドなギターワークで魅了する葵。ミステリアスな雰囲気を醸し出しつつファットにうねるベースサウンドを轟かせるREITA。全身を使ってパワフル&テクニカルなドラミングを展開する戒。5人が発する存在感の強さは圧倒的だし、彼らがステージに立って演奏しているだけで非日常の空間が創出されることに、あらためて驚かされた。

「待たせたな、お前ら。見てのとおりピンピンしているから安心しろよな。今夜は俺も全力で暴れていくからさ。お前らも全員暴れてこいよ!」というRUKIの挨拶を挟んで、2ndブロックではメロディアスなのに狂気めいたものを感じさせる「NOX」やダーク&キャッチーな「裏切る舌」、ハイボルテージな「HOLD」などが演奏された。ヘヴィネスや翳りを打ち出しつつドロドロしていないというthe GazettEの楽曲は本当に魅力的だ。アグレッシブでいながら光や希望も感じさせる彼らのライブは感情を揺り動かす力に溢れていて、心を駆り立てられずにいられなかった。


ライブ中盤では心に染みるサビを配した「DRIPPING INSANITY」と壮大なスケール感を放つ「THE PALE」、麗と葵によるアコースティックギター2本のアンサンブルをフィーチュアした「LAST HEAVEN」が届けられた。激しいライブの中で瞬時に気持ちを切り替えて、エモーショナルなナンバーをしっかり聴かせるのも実に見事。バンドとしての表現力にさらなる磨きがかかったことを感じたし、特に「LAST HEAVEN」で見せた“大人の色気”は魅力に富んでいた。キャリアを積んできた彼らだけにこういうテイストも自然と増えていくことは確実で、そういう意味でも今後のthe GazettEが楽しみだ。

華やかなジャズテイストが心地いい「ガンジスに紅い薔薇」を経て、「INCUBUS」からライブは後半へ。ハードな歌中とメロディアスなサビの対比を活かした「TWO OF A KIND」やデジタルテイストが退廃的な雰囲気を醸し出す「UGLY」、スリリングな「ABHOR GOD」などが怒涛の勢いで演奏された。フィジカルなステージングを展開しながら爽快感に溢れたサウンドを鳴り響かせるthe GazettEとヘッドバンギングや折り畳み、息の合ったジャンプといった熱いリアクションを見せるオーディエンス。場内は膨大なエネルギーに満たされた空間と化し、“声出し禁止”ということを感じさせない熱狂的な盛り上がりとなった。


その後は本編のラストソングとして「UNFINISHED」をプレイ。爽やかな楽曲と笑顔を浮かべて演奏するメンバー達、一体感に溢れたリアクションを見せるオーディエンスなどが折り重なって、場内は華やかな空気に包まれる。ファンの思いや期待にしっかりと応え、爽やかな余韻を残してthe GazettEは本編を締め括った。

紆余曲折もありつつ、それを乗り越えて2年ぶりのツアーファイナルにふさわしい上質なライブを披露してみせたthe GazettE。ブランクを感じさせないどころかよりパワーアップした姿からは表立った活動をしていなかった期間も、それぞれがスキルアップに務めていたことがうかがえた。オーディエンスにカタルシスを与える彼らの力量はさすがの一言で、“王者の帰還”という言葉が似つかわしい素晴らしいライブだった。

さらに、終演後に彼らが2022年3月10日に国立代々木競技場 第一体育館で20周年を記念した公演<20th ANNIVERSARY -HERESY->を行うことがアナウンスされた。その後の活動予定もどんどん決まっているとのことで、今後のthe GazettEにも大いに期待したい。


最後に、今回のライブでメンバー達が語った言葉をお届けしよう。


ご心配をおかけしましたが、いろいろなことがあって、またひとつ成長ができる機会を貰いました。本当にみんなのお陰で、より強くなれたよ。ライブが延期になっちゃって、今日これなくなったヤツらもいっぱいいる。だから、届くか、届かないかわからないけど、それでも届いてほしいと思って今日は歌いました。

そして、こうしてみると早いもので、間もなく俺らも20周年になるんです。年数を重ねるごとに俺らの絆は深まっているんだなと感じる。でも、それは俺らの中では、お前らも同じことで。ずっと見てきてくれた人がいっぱいいて絆が深まっているという意味では、俺らとお前らも同じことだと思うよ。

まだ言えないけど、来年のこともいろいろ決まっているので、忙しくなりそうです。会う機会がもっともっと沢山できると思います。だからさ、予定明けといて(笑)──RUKI


18周年のライブがなくなってから、いろいろと上手くいかないことも続きまして。そんな中で10枚目のアルバムの『MASS』を作ったけど、そこからまだまだコロナは終わらなくて、ずっと引きずってきてしまった部分があるんですけど。大阪、名古屋のライブを終えたときに、この空間に帰ってこれたことは本当に感謝でしかなかった。自分の中の総てなんだなと再認識させてもらいました。いろいろありましたけど、でもそれがあったからこそ今さらに結束が強くなって、こうしてステージの上に立てて、みんなの顔を見て、すごく幸せです。ありがとうございました──戒

コロナになって2年間待ってくれた人、今日きてくれた皆さん、本当に長い間待ってくれていて、そういう皆様に支えられて今こういうふうにステージに立てていると思うので、もう本当に感謝しかないです。こういうときに限って感謝ばかりしていると、感謝の重みが薄まっちゃうと思うんですけど、全然そんなことはなくて。本当に、本心から、ありがとうございます。昔を取り戻すのは簡単じゃないかもしれないけど、支えてくれるみんながいることでがんばれるので、来年もよろしくお願いします。ありがとうございました──麗

去年は0本で、今年は3本しかライブができなかったけど、それでも大きな意味がある1年になりました。会えない間も本当にみんなの思いというのはずっと伝わってきたし、俺達はライブができなくても繋がることができるんだなと思えた1年でした。なので、本当に感謝しかない。今年も本当に、お世話になりました。あんまり喋るとね、泣いちゃったりするので(笑)。これくらいにしておきますけど、本当にありがとうございました。お疲れしたぁ!──REITA

振替公演にあたり、本当に多くの方に予定の変更を強いてしまって、それは本当に申し訳ないと思いますが、こんなに大勢のみんなが集まってくれて、本当に感謝しています。今日これなかった人もね、不満とかあると思うけど、グッと堪えて応援してくれたその声に、とても救われました。来年はthe GazettEにとって大きな節目になる年ですけど、その年を前にあらためてこういった守るべき場所や、みんなも含めたかけがえのない仲間を大切にしていきたいなと強く思いました。まだthe GazettEでやりたいこととか、見たい景色が沢山あって、その一瞬一瞬にみんなも一緒にいてほしいと思っています。すぐ会えると思うので、そのときまた楽しみましょう。ありがとうございました────葵

取材・文◎村上孝之
写真◎Keiko Tanabe


セットリスト

1.BLINDING HOPE
2.ROLLIN’
3.GUSH
4.NOX
5.CLEVER MONKEY
6.裏切る舌
7.HOLD
8.DRIPPING INSANITY
9.THE PALE
10.LAST HEAVEN
11.ガンジスに紅い薔薇
12.INCUBUS
13.TWO OF A KIND
14.UGLY
15.ABHOR GOD
16.UNFINISHED

EN1.INSIDE BEAST
EN2.VERMIN
EN3.HEADACHE MAN
EN4.Filth in the beauty
EN5.TOMORROW NEVER DIES

◆the GazettE オフィシャルサイト
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