【インタビュー】odd five、民族音楽を取り入れた複雑なサウンドで自由に跳躍する『MUTANTS』

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■odd fiveはこれから進化していくということが
■感覚じゃなくて実感として思えました


――「郷風」を聴いたときに、ジャパメタっぽさとか、懐かしい日本のロックの雰囲気を受け継いでいると感じました。どんなイメージで書いた曲ですか。

今来:この曲を作ろうと思ったきっかけは、夢に出てきた街の風景なんです。線路があって、田舎の街に僕が1人でいたのを夢で見て、起きた瞬間にそのままの勢いで1曲書きました。夢で見た、行ったことがないけど懐かしい感じを出したかったんです。

――Aメロで鍵盤が不協和音を入れているのが良い意味で違和感があって面白いです。そういうところに縛られていない感覚があるというか。

中:整えられてないものの方が、現実に近いというか。いいことばかりじゃないですし、そういうリアルさが上手く表現できたかなって思います。

今来:平均点が良いようなOKテイクより、面白いテイクの方をどんどん採用していった感じですね。


――中さんは作詞も共作されていますが、人が見た夢の景色を歌うというのはどんな気持ちなんですか。

中:行ったことがないけど、懐かしい気がする場所とか、ふとしたときに昔を思い出す瞬間って結構あるじゃないですか?それを表現できたらいいんじゃないかと思っていたので、すんなり受け入れることができました。中学で音楽を始めて10年が経って、そこから大人になって変わった部分とか、変わっていない部分とか、この年齢になって出てきた気持ちなのかなと思うので、スラスラと形にはなりました。

――「Mutant talks」はタイトルとも繋がってきますが、どんなテーマで書いた曲でしょうか。

今来:“日常が一番狂気を孕んでいる”ということを感じられる歌詞にしたかったんです。日常で普通に観ている景色が、自分の精神状態や捉え方で恐ろしいものにも感じるし、普段歩いている街が一番、映画の世界よりも奇妙な世界なんじゃないかっていうことを表現したかったんです。ラストサビになるにつれて、日常が変形していくような感じにしたくて。MVは、それを監督に話して、ああいう手法で撮ってもらいました。


――歌詞の“愛融解中”って何だろうって思わず調べちゃったんですけど、造語ですよね。曲のタイトルや歌詞の言語感覚が独特な気がします。

中:歌詞を話言葉にすると、odd fiveのワールド感があまりにも日常に収まってしまうなというのがあるので、話し言葉を排除している感じですね。

今来:僕は結構、斜に構えているというか(笑)。普通のことはしたくないというのがあります。

中:そうだよね(笑)。ラブソングとかが駄目なわけじゃないけど、作れないというか。

――ラブソング、ないですよね。

今来:そういう曲はないですね(笑)。

中:デモの段階でも、「ラララ~」とかじゃなくて、なんでもない言葉で歌ってるんです。

今来:僕が、「Mutant talks」みたいな意味わからん言葉で吹き込んでいるんです。

中:そのニュアンスを出したいが故の言葉選びが多くて。音メインで考えるようにしています。

新垣:もう、それが普通になっていますね。だいたい小難しい言葉とか回りくどい言い回しを使いたがるし(笑)。

一同:(笑)。

新垣:「Mutant talks」は、雑多なゴチャゴチャっとした感じが出ていてとても好きです。


――さきほど話に出た「NAMELESS WARFARE」は中さんが歌詞を書いていますが、罠をトラップ、錯乱をトリップとか、歌詞の漢字と歌っている言葉が違う箇所が度々出て来ます。そういう言葉遊び的な歌詞の手法がある一方で、ストレートなメッセージがある曲ですよね。

中:それこそコロナ禍で出来た曲で、もどかしい気持ちをそのまま書いた、一番スッと出来上がった歌詞です。いつもなら今来にこんな感じの表現をしようと思うって相談したりするんですけど、この曲に関してはバーッと書いてこれで行くという感じだったので、他の曲に比べてストレートに自分の気持ちが乗っていると思います。あと、トラップを罠って漢字にしているところは、横文字、カタカナとかローマ字表記だとごちゃごちゃするかなと思って。もともと「名前のない戦争」というタイトルだったんですけど、ちょっと怒りを孕んでいるニュアンスも、漢字で書いている方が表現できるんじゃないかと思いました。

――時代を切り取ったミニアルバムになっていると思うんですけど、最後に、“我々は此処で今 飛ぶ為に屈むのだ”という一節で、ここから先を歌ってが終わっているところに、すごくこの作品を聴いて良かったなという余韻があります。

今来:ありがとうございます。

中:着地はそうしようと思って書きました。

――終盤でギターソロがありますけど、王道なソロのようでいて最後の方でやっぱりオリエンタルなスケールに行っちゃうところに特徴が表れていますね(笑)。

今来:このギターソロは何回も録ったんですけど、「ああ~やっぱり変わったことしたいなあ」と思って、最後にチョロッと出た感じです(笑)。

――これはベースもすごく動いてますし、全員エモい気持ちで演奏してたのかなって伝わってきます。

新垣:そうですね。コロナになってすぐで、一番フラストレーションが溜まっていた時期に作った曲なので。


――「610452」という曲がありますが、数字の意味はリスナー自身が考えた方がいいですか?

中:いや、別に隠してるわけではないので(笑)。そこまで意味のある数字ではないんですけど、この曲は映画の『タクシードライバー』をモチーフにしていて。ああいう発展していくアメリカのカオスな狂気を孕んでいる空気感とか、街並みとかを、ちょっと懐かしい感じのディスコサウンドで表現しました。

今来:映画の中に、「610452」という数字が出てくるシーンがあるので、そこからタイトルにしたんです。

中:なんでもないシーンなんですけど、ロバート・デ・ニーロ扮する主人公のトラヴィスが、偽名とかでたらめな住所を言うんです。そのときの郵便番号が「610452」なんです。そこのモチーフを明確にしておきたくて、タイトルに拝借しました。

新垣:この曲はセッションしながら作ったんですけど、昔のシンセサウンドが入っていたり、今まで僕らが取り入れたことがなかったところに手を出せて、新しい面白いものができたと思っています。

――ここでもアラビア音階が出て来ますね。

今来:アコーディオンが入っていて、裏でアラビア音階っぽい音を鳴らしています。

――そういえば、今回のミニアルバムにティンホイッスルは出てこないですよね?敢えて使わなかったんですか。

今来:いや、敢えてではなくて、たまたまです。それも、こだわりがなくなったというか。

中:前までは、アルバムとして考えたときに「笛の曲をもう1曲欲しいよな?」っていう風に作っていたんですけど、今回は出来上がって考えてみたら、そういえば入れてないねっていう感じでした。

――「VERMILLION」は、物語を想像させる曲ですが、どんなことを歌っているんですか。

中:最初に今来のデモを聴いてイメージを訊いたときに、「ダークヒーローみたいなイメージで作った」って言われて。映画で言うと『Vフォー・ヴェンデッタ』とか、ゲームで言うと『DARK SOULS』とか『Bloodborne』とか、おどろおどろしい感じを思い浮かべて。そのときに、「クトゥルフ神話」を面白いなと思って趣味で見ていたりしたんです。そういう、言葉にできない恐怖感を表現したいと思いました。なので、徐々に人格が乗っ取られて崩壊していくような歌詞にしたくて、舞台設定と歌詞の表記も意識して作りました。

――同じ歌詞の文字間隔が前半と後半で違うのはそういうことなんですね。

中:主人公は小説家で、普通に文章を書いているんですけど、2番では物語に人格が乗っ取られて、呪文のようにバーッて書いているのを文字を詰めて表現しています。歌詞カードの最後のサビは文字がグチャグチャになって、「これを書いたのはどこの誰なんだ!?」って終わるんです。

――完成した作品はご自身にとってどんな1枚になりましたか?

中:捉え方によっては、今までのodd fiveと全然違うなって思われかねないなという不安もありますが、今まで作ったときの感覚とは全然違う感覚で、「これはジャンルは何になるんだ!?」みたいな感じです(笑)。今までもジャンルを決めていたわけではないんですけど、これまで以上にそう思ったというか。その分、単純に面白い聴き応えのある作品になったと思っています。odd fiveはこれからすごく進化していくっていうことが、感覚じゃなくて実感として思えました。

今来:確実にマイベストだって素直に思います。頭から終わりまで筋が通っているし、マジで良い作品だと思っています。

新垣:今までと違う作り方もしたので、最初は不安もあったんですけど、できてみたら僕らがカッコイイと思うものを詰め込んだだけで、良い作品が出来たことで自信になりました。

――<MUTANTS RELEASE TOUR 2022>が1月16日(日)愛知 豊橋 club KNOTからスタートですね。この作品をライブでどう表現するのか非常に楽しみです。見どころを教えてもらえますか?

今来:楽器でいうと、テルミンを『MUTANTS』で導入していて、ライブでもやっています。今までは民族楽器を増やしていたんですけど、最近はシンセ系を増やす方向になっていて、バンドサウンドの充実感がめっちゃ上がってるので、是非そういうところもダイレクトにライブで楽しんでほしいです。

取材・文:岡本貴之

リリース情報

5th mini Album『MUTANTS』
\2,000-(+tax) FIRE-008
発売元:FiREFLY
1.郷風
2.Mutant talks
3.戯夢
4.610452
5.VERMILLION
6.NAMELESS WARFARE

ライブ・イベント情報

<MUTANTS RELEASE TOUR 2022>
1/16(日)豊橋 clubKNOT
1/27(木)愛知 名古屋栄 RADSEVEN
1/29(土)神奈川 横浜 BAYSIS
1/31(月)神戸 太陽と虎
2/4(金)埼玉 越谷 EASYGOINGS
2/5(土)茨城 水戸 SONIC
2/12(土)大分 club SPOT
2/13(日)福岡 小倉 FUSE
2/14(月)福岡 天神 Queblick
2/26(土)香川 高松 MONSTER
2/27(日)高知 X-pt
3/5(土)広島 ALMIGHTY
3/6(日)岡山 Crazy Mama 2nd room
3/12(土)群馬 SUNBURST
3/13(日)新潟 上越 EARTH
3/19(土)山口 周南 rise
3/20(日)島根 出雲 APOLLO
3/21(月・祝)奈良 NEVER LAND
3/26(土)三重 鈴鹿 ANSWER
TOUR FINAL
4/9(土)下北沢 ReG
4/15(金)大阪 MUSE

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