【インタビュー】YOSHIKIの目に映る、近未来の姿「今こそロックじゃないですか?」

ツイート

▲記者会見(2021年12月23日)

パンデミックがYOSHIKIを覚醒させた。

いやもちろん、決してこれまで寝ぼけていたわけもなく、世界を舞台に八面六臂の活躍を見せてきたYOSHIKIだけれど、2年ぶりの帰国で見せた彼の姿には、これまでにも増して野生の嗅覚で世の中を見渡し、シャープな爪で世の中を切り刻もうとする破壊神YOSHIKIの神気があった。YOSHIKI、完全覚醒である。

世界的なパンデミックは、アーティストに限らず世界中の人々へ様々な影響を与えた。人生設計や生活基盤を崩された者もいただろうし、それまでの価値観が変わってしまった人もいることだろう。破壊と創造…スクラップ・アンド・ビルドは常に世にある摂理だが、新型コロナウイルスは人類の経済基盤と生活習慣を強制的にスクラップした。エンターテイメントとはなにか、その根源を揺るがす破壊を余儀なくされた音楽業界も、あえぐままに2年近くの月日が過ぎ去っていった。

そんな中、11日間20公演敢行というクレイジーなスケジュールで、2022年8月にプレミアムディナーショー<EVENING / BREAKFAST with YOSHIKI 2022 in TOKYO>の開催を発表したYOSHIKIだが、そんな彼の目にはまるで「創造神YOSHIKI」としての眼光が宿っていた。


▲記者会見時ピアノ・パフォーマンス(2021年12月23日)

──今回、約2年ぶりの帰国となりましたが、コロナ禍において2021年はどういう年となりましたか?

YOSHIKI:そうですね…両極端なんですけど、ひとつはいつも思っている「自分でいられること」「YOSHIKIでいさせてくれてありがとう」という皆さんに対しての感謝の気持ちですよね。そこが軸になっているとは思います。チャリティを行っているのも、多分そういう気持ちの一環だと思うんですけど、それがまずひとつ。

──ええ。

YOSHIKI:一方で、やはり僕は「常に破壊をしていかないといけないんだ」とも思う。それが小さかろうが大きかろうが、結局YOSHIKIという枠の中でこじんまりと収まってしまうのは僕じゃないだろ、と。破壊のあとには創造も来るんだろうけど、まずは「YOSHIKIから破壊を取ったら何が残るの?」って思いますよね(笑)。

──もともとロックとはカウンターカルチャーを象徴するものですから、固定観念を破壊することで生まれてきた価値観ですね。クラシック音楽だって当時にとってはとんでもないロックな存在だっただろうわけで。

YOSHIKI:ディナーショーだって、最初の頃は「ディナーショーをやるの?」って逆風でしたからね。もともと「ディナーショーというのは、こういうトークがあってちょっと演目を披露して…」みたいなテンプレートがあったけど、それだけじゃ僕のやりたいことは収まらないから、そういう定義はぶち壊してしまえと続けてきたら、だんだんなんとなく自分の活動の枠組みに入ってきた。






▲YOSHIKIディナーショー

──もはやディナーショーという場で行われるライブエンターテイメントですから。

YOSHIKI:ドラムが台に乗ってせり上がっていくディナーショーなんてなかなかないよね(笑)。もちろんディナーショーが持っているいいところは残しつつ、最近僕がよく言うハイブリッドなものも採り入れられると思っているし、「YOSHIKI」や「X JAPAN」というロックな部分を背負っている自分でもあるから。

──先日はYOSHIKIでいることのプレッシャーをTweetしていましたが。

▲YOSHIKIオフィシャルTwitterより


YOSHIKI:でも、プレッシャーに押しつぶされてしまうのか、むしろプレッシャーを破壊してしまうのかというチョイスもあると思います。基本的には超ポジティブで「僕はあらゆるものを破壊してしまっていいんだろう」と思っていますから。だって、良いか悪いかは未来が決めるだけじゃないですか。

──未来が決める?

YOSHIKI:そう。しかもその未来というのも、来年なのか10年後なのか100年後なのかも分からない。どこを取って未来と言うのか。だから、自分が何かを発言したり行動した数時間後に何か言われたりすることとか、そんなレベルはどうでもいいのかなとも思いますよね。

──今回発表されたディナーショーが「YOSHIKI+ Presents」と、+(PLUS)というキーワードが付いているのも、新たなチャレンジの現れで?

YOSHIKI:今の世の中って、急に変わるじゃないですか。例えば2021年12月23日の記者会見の日は、もともと僕はロサンゼルスにいるはずの日程だったんですけど、LAでの映画の撮影がキャンセルになったので、急遽日本での滞在を伸ばすことになった。大きな目で見れば僕らはまだパンデミックの中にいるわけで、アメリカの状況も急に変わり始めてヨーロッパも変化があるので、急遽プランAからプランB、プランC…と自分のスケジュールも変更していかなければならない。そんな中だけど、今回<EVENING / BREAKFAST with YOSHIKI 2022 in TOKYO>を行うということを発表できるところまで来たのは、ある種の進歩だと思っているんです。だってここに来るまでの間、100ほどの公演を発表することもできずにキャンセルしてきているから。

──ええ。

YOSHIKI:ただ、発表したからといって2022年8月の頃にどうなっているかはわからないですよね。だから常にプランCやプランDまでを用意しておく必要もある。

──それはしんどく面倒くさい作業ですね。

YOSHIKI:それを面倒くさいと思うかどうか。逆にある種のチャレンジですよ。エンターテイメントって何もかもがスムーズにいくことが正解じゃないですよね?ボタンを押したら最後までステージが進んじゃうとかじゃなくて。

──そもそもX JAPANのライブがそうだし(笑)。

YOSHIKI:そういう意味では僕は鍛えられているし…やっぱり予想不可能なものですよ。だからこそプランA・B・Cを用意するし、逆にそこを通るからこそできるようになることもある。そこが+(PLUS)に表れていくんだと思っています。これまでも「ハイブリッド」や「メタバース」といったキーワードは投げていますけどね(笑)。

──そういった先進性・先駆性を持って新たな時代を開拓していくバイタリティは、どのように高め続けているのでしょうか。厳しい筋トレで作り上げた身体も自身に好影響を与えていますか?


▲「Numero TOKYO EXTRA / ICON YOSHIKI」より

YOSHIKI:身体作りもすごく大変だけど、努力って楽ですよね。

──努力が楽?

YOSHIKI:はい。「努力すれば成果が得られるものは簡単だ」という意味です。筋トレなんて努力すれば反映されるし、毎日腹筋千回やれば6つに割れるわけだし、体力作りなんてダイエットして筋トレすれば身体ができるんだから、身体を変えるなんて簡単だなと思いますよ。

──その努力がなかなかできないんだよな…。

YOSHIKI:それは「努力さえもできない状況にいる人たち」のことを考えたほうがいいと思う。腹筋ひとつにしたって、身体の不自由があったりして腹筋自体ができない人もいるわけじゃないですか。でも、僕らは腹筋ができる。だったらそれをやらないという手段はないんじゃないか、という。

──すばらしい。

YOSHIKI:このパンデミックで、僕は海外の行き来ができなくなってしまった。綿密な世界ツアーを組んでいたのに、そこに隔離期間が加わるようになると、もう成り立たなくなる。こればっかりは努力だけじゃどうにもならないんですよね。でも、努力してできることは努力すればいいと僕は思う。だって、努力すればできることを与えられているというのは、それはある種の特権なんだから。腹筋の話と同じですよね。

──YOSHIKIの強さがわかってきた気がします。

YOSHIKI:作曲だって、必ずしも努力とは比例しない。1日16時間1ヶ月書き続けても満足したものにならなくて「もうこの曲やだ…今までの1ヶ月なんだったの」ってこともあるわけです。一方でピアノの練習というのは、弾けば弾くほどある種うまくなると思うので、それは努力と比例する。

──世の中には、地位や名誉・財を手に入れたのに幸せを感じられない人がたくさんいて、そんな人々が身体作りに幸せや充足感を得たりするとも聞きます。そういう感覚ではないんですね。

YOSHIKI:本来、人は、財力とか名誉とかそういうものを求めて生きていないと思う。

──?

YOSHIKI:だから、そういうものを得ても「あれ、何のために努力してきたんだろう」って思う。僕らはそういう生き物じゃないんだと思うんです。生きている過程ではそういうものもあるかもしれないけど、だけどそれを得たからって幸せになるとは思わない。僕もフェラーリを何台も手にしたこともあるけど、何台買ったって「だから?」ってなる。それよりも転んでいる人に手を差し伸べて、立ち上がったときに「ありがとうね」って言ってくれたときのほうがすごく嬉しいし、ずっと心に残るんですよね。だからそういうことの発展型として音楽をやっているんじゃないかな。本当に素敵な音楽を作って、それによって誰かが救われるとか、そのときにかけがえのない幸せを感じる。「あの曲によって救われました」って言われると、すごく嬉しいんです。

──ですね。

YOSHIKI:だからこそ、そういう曲だと自分で認識しているのであれば、その曲は世の中に広めたいですよね。いわゆるロックスター的な立ち位置というのは何らかのインセンティブにはなっているとは思うけど、そこは目標でもなんでもない。だから、実はそういった山を登っているわけじゃなくて、山の頂上にはそういうものはない。何合目かにはそういうのがあるかもしれないけど、その後は空気も薄くなっていくし、何をもって上なのか、上に登っていくことがいいことなのかどうかもわからない。そう考えたら、自分が登っている山なんてぶち壊してしまえばいいし、何ならもう一回登り直せばいい。

──ソリッドな考え方ですね。

YOSHIKI:パンデミック前よりも、ある種ロックになったかな。感謝の気持ちもありながら、グルっと回ってなんかロックになった気がします。


▲「Numero TOKYO EXTRA / ICON YOSHIKI」より

──パンデミックによって、できないことだらけの中で、余計なものが削ぎ落とされたのかもしれません。

YOSHIKI:そうかも知れませんね。身体を鍛えていると言ってもあと何年ああいう激しいドラムを叩けるかなんて分からないじゃないですか。今はデビュー当時と同じ感じで叩けますけど、それはスポーツではありえないことですよね。30年前の記録を作るというのはなかなか難しいでしょ?でも音楽はそれができる。それができるうちはロックしたいと思ってますね。

──ディナーショーのスケジュール自体がロックしてますから(笑)。

YOSHIKI:無謀です(笑)。何をやらかすんだ?と思ってほしいです。もともとロックにも、革新的で何が起こるんだ?という期待感とドキドキ感・ワクワク感があったのに、なんとなくここ10年は安定して安心してきちゃった感があるので、僕はそれをもう一度ぶち壊さなくちゃいけないと思ってる。

──パンデミックによって強制的に破壊された世の中ですから、今必要なのはフロンティア…ロックスピリットですよ。

YOSHIKI:今ほどロックが大事なときってないんじゃないかな。今こそロックじゃないですか?その気持ちですよね。

──音楽ジャンルの「ロック」という意味ではなく。

YOSHIKI:そう。それはロックでもヒップホップでもクラシックでも、どんな音楽で表してもいい。そういう意味で、僕はロックです。挑戦であり、常に進化することであり。だからX JAPANが次に出てくるときも、あのまま出てくるのではないと思う。ノスタルジックもいいけれど、そういうんじゃないんですよね。「え?」「なに?」という。

──ワクワクする。


▲記者会見(2021年12月23日)

YOSHIKI:進化の過程では必ず賛否両論あるけど、ただ単純に肯定されてもつまんないよね。「それ、すばらしいいいアイディア」と言われても、そうじゃないかもしれないし。「破壊と創造」って言うけど、みんな破壊の後の創造を先に見ちゃっている。逆に破壊してみないとわからないものってあるじゃないですか。とりあえずぶっ壊しちまえってやつです。あとから創造が出てくるかもしれないし、その破壊の後には何もないかもしれない。「何もないから破壊できない」というのは、それは破壊じゃないよね。創造がないかもしれないけどぶっ壊しちゃおう…それでいいんじゃないですか(笑)?

──50年後、100年後にも楽しめるワインが完成し発売となったように、100年後も楽しめるX JAPANのアルバムの発売も期待します。

YOSHIKI:アルバムに関しては…、ひとつだけいいですか?そこはディストリビューションの定義が関わるんです。ブロックチェーンの技術が生まれ、NFTでデジタルが流通する時代になる。音楽って、聴くもの/体験するものから、ひょっとしたら権利を所有するものにもなるかもしれない。僕の音楽をみなさんひとりひとりが所有する時代ですよ。

──まさにNFT(非代替性トークン)を用いた音楽流通の可能性ですね。

YOSHIKI:僕らは、権利的にそれができるところにいるんです。この激動している時代に、どういう流通に乗せるべきか、考えますよね。それが今、変わる時期に来ているんです。

──Xのデビュー作『BLUE BLOOD』がソニー最後のアナログ盤だったように、今また時代の間(はざま)にいるわけだ。

YOSHIKI:そうです。今、そういうところに来ているんじゃないかと思っています。「YOSHIKI、また言い訳してる」と言われそうですけどね(笑)。

取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)

YOSHIKI+(PLUS) Presents
<EVENING / BREAKFAST with YOSHIKI 2022 in TOKYO>

2022年
8月11日(木祝)Breakfast Show / Dinner Show
8月12日(金)Breakfast Show / Dinner Show
8月13日(土)Breakfast Show / Dinner Show
8月14日(日)Breakfast Show / Dinner Show
8月15日(月)Breakfast Show / Dinner Show
8月19日(金)Dinner Show
8月20日(土)Breakfast Show / Dinner Show
8月21日(日)Breakfast Show / Dinner Show
8月26日(金)Dinner Show
8月27日(土)Breakfast Show / Dinner Show
8月28日(日)Breakfast Show / Dinner Show

会場:グランドハイアット東京 ボールルーム

【Breakfast Show】
・OPEN :11時
・BREAKFAST START :11時45分
・SHOW TIME     :13時(15時終演予定)
・チケット料金    :80,000円(税込)

【Dinner Show】
・OPEN    :17時30分
・DINNER START   :18時30分
・SHOW TIME    :20時(22時終演予定)
・チケット料金  :100,000円(税込)

【ディナーショー内容(予定)】
・YOSHIKIのピアノとカルテットによるX JAPANやYOSHIKIのソロ楽曲のライブ演奏に加え、状況に応じてオペラシンガーやシンガーの来日もあり
(BREAKFAST WITH YOSHIKI とEVENING WITH YOSHIKIとでは一部演目を変更予定)。
・YOSHIKIの普段聞けないスペシャルトーク!
・YOSHIKI監修、 フレンチのフルコースディナー!(EVENING WITH YOSHIKIのみ)
・YOSHIKI監修、 スペシャルブレックファスト!(BREAKFAST WITH YOSHIKIのみ)
・YOSHIKI新作ワインを含めた素敵なお土産をご用意!
・YOSHIKI本人がプロデュースしているYOSHIKIMONOのファッションショー!
・YOSHIKIの私物を落札できるチャリティーオークションの開催!
・限定グッズの販売!
・その場での楽曲リクエストコーナー!
・YOSHIKIと牧阿佐美バレエ団によるバレエ・パフォーマンス!
・東京ドームやアリーナクラスで演奏されるYOSHIKIのドラムパフォーマンスを目の前で観賞!
・スペシャルサプライズあり! (EVENING WITH YOSHIKIのみ)

<券売スケジュール>
12月23日(木)~1月10日(月) 楽天カード YOSHIKIデザイン 第1次先行抽選受付
1月11日(火)~1月23日(日) 楽天カード YOSHIKIデザイン 第2次先行抽選受付
1月24日(月)~2月 6日(日) YOSHIKI VISAカード(VIP、 VISA)、 yoshikitty Mastercard先行抽選受付
2月 7日(月)~2月20日(日) YOSHIKI mobile / YOSHIKI CHANNEL 先行抽選受付
3月2日(水)~       一般先着販売

チケット受付詳細:https://jp.yoshiki.net/info/769/



◆YOSHIKI オフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス