【ライブレポート】10-FEET、自身初ホールツアーのセミファイナルで「会話をしなくても伝わるのがライブや音楽」

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10-FEETが、2022年1月5日(水)にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でワンマンライブを行なった。これは2021年9月23日(木)に岩手県・大船渡市のリアスホールを皮切りにスタートした全国ホールツアー<10-FEET “アオ” TOUR 2021-2022>のうちの1本で、同ツアーのセミファイナル公演となる。また結成25周年を迎える10-FEETにとって、その幕開けとなる公演でもあった。

◆10-FEET 画像

18時35分、SEが高らかに鳴り響く中、オーディエンスの大きな拍手で迎えられた10-FEET。まずはTAKUMAが、客席を100%埋めつくしたオーディエンスに「オイ、やるぞ!!」と叫んだ。そしてKOUICHIのもとにNAOKIと集まり、お互いに言葉を掛け合い、さらにコブシを合わせ、気持ちをひとつにした3人。


SEが終わった瞬間、始まったのは「hammer ska」。エネルギッシュなメッセージとバンドサウンドが炸裂し、オーディエンスの気持ちを一気に熱くさせていく。歓声の代わりにコブシが突き上がり、その激しさは10-FEETサウンドを彩る。間髪なく曲は「JUST A FALSE! JUST A HOLE!」へ突入。コロナ禍前ならコール&レスポンスも起こす曲だが、今日はノーピッキングのスライド奏法でTAKUMAがソロフレーズを挟むという小粋なアレンジ。続く「4REST」では会場に一体感を作り出し、NAOKIのベースラインから入った「タンバリン」では強烈なグルーヴで会場を支配。そしてカウントの入り方でTAKUMAが遊びながら「SHOES」を決めると、楽しさでみんなの身も心も躍らせる。おなじみのキラーチューンからワンマンならではのシングルカップリング曲など、序盤から120%出し尽くす勢いの10-FEETだ。

「新年会へようこそ! オマエらと朝まで飲み明かしたい。“全員とベロチューしたい”みたいなことを前に言ったら、数名、“ほんまに、それはちょっと…”って言うてる人がいた(笑)。でも、ほんまの気持ち。“帰りたくないなぁ〜”ってなる夜にしましょう!」──TAKUMA

そう語り掛けると、サビのメロディを歌い出すTAKUMA。優しい表情も見せながら“あと少しだけオマエらとここにいたくて”とアドリブも加え、「Fin」で寂しさを温かさで包み込んでいった…。




10-FEETにとってホールツアーは初めてのこと。ライブハウスやフェスを主戦場にしている彼らとしては、コロナ禍にならなければホールツアーという選択肢は浮上もしなかっただろう。だからホールでのライブは最初は戸惑いもあったはずだし、手探りの部分も多かったと思う。メンバーだけでなく観る側にとっても。しかしツアーの終盤にあたるこのライブを観ていて感じるのは、ホールというライブ空間を楽しみ、味わっているメンバーとオーディエンスの純粋な姿だ。

音響的に優れた作りのホール会場だけに、ホールリバーブがいい具合に掛かって、歌がどこまでも気持ち良く伸びていく。それにいつもなら歓声でかき消されてしまう演奏の細かい部分やバンドアンサンブル、さらにTAKUMAとNAOKIのハーモニーなども、歓声が出せない今、クリアに響いていく。また観る側にとっては、みんなと身体をぶつけ合いながら騒ぐ楽しさはホールにはない。しかし自分のスペースが確保されていて、集中してライブにどっぷり入り込むことができる。いわば、“自分と10-FEET”という構図だ。そうなれば10-FEETの曲や歌、音の魅力に改めてハマるばかり。笑顔に溢れるみんなを前にして、10-FEETの3人も表情をほころばせていった。



「ハローフィクサー」が終わったところで、突然、TAKUMAが「2時間ぐらい、みんなとしゃべろうか」と言い出す。

「最近、インターネットいじめ時代やなと思って。あんなところで傷つけあってももったいないし、そんなところで落ち込んでもいられへん。便利になるようにもともと作られたんやし、利用するべきものに利用されないように、ハッピーに過ごしたいな。いつも言うんやけど、文字だけでは伝わらへんと思う。その人がどんな気持ちで言ってるか分からへん。一番ええのは、こうやって会って、目を見て言うのが、声のトーンも伝わると思う。そうなんやけど、会話をしなくても伝わるのが、ライブや音楽やと思っていて。音楽やライブってポジティヴに取れるものやと思ってるから。今日、みんなと分かり合った気になって帰りたいなと思ってます。みんなと一緒に集まって楽しかったね、って気持ちに酔っぱらって帰りたいと思います。機嫌よく、強い心で、楽しい心で、最後まで楽しんでいってください。…じゃあ、10-FEETでした。終わりです、さよなら」──TAKUMA

いいこと言ってるのに、最後は笑いで落とすという、熟練の技も見せるTAKUMA。笑いの神様の技に、拍手喝采どころか、我慢できずに笑い声まで起こる。


「今日は制限があまりなくみんなと集まれているんでね。せっかくなんで、今日、最後の曲がジャーンって終わったとき、ここ(客席)が滑り台になって、みんなが前に集まるようになってるんで」──TAKUMA

渋谷公会堂がTV番組『8時だョ!全員集合』の聖地だからといって、ザ・ドリフターズのコントみたいな仕掛けはないはず。しかし別の仕掛けを企んでいた10-FEET。このツアーでは、リクエストに答えて1曲やる日もあったという。飛沫が出ない低いトーンでボソボソした声で、各地でリクエストしてもらったそうだ。その現場を再現するようにTAKUMAが低い声でしゃべり始めたら、素っ頓狂もない高い声でリクエストを始めたのはKOUICHI。「なんだよ、俺より高い声やんけ!」とNAOKIが突っ込む。

放っておけばドリフばりのコントも始めてしまう10-FEETだが、それを見習うかのように、とぼけたリクエストをするオーディエンスも何人か。客席側との絶妙のやり取りもありながら、本日はKOUICHIの独断で「LIFE LIFE LIFE」だ。さらに「RIVER」のカップリング曲のひとつ「FUTURE」も。


20年以上前の懐かしいナンバーなども織り交ぜつつ、最新シングルからの「朝霧を抜けて」や、そのタイトル曲「アオ」ももちろん披露。コロナ禍になり様々なことが起こり、誰もが悩み苦しんだ。そして自分自身とも向き合った。そうした心模様や心情を描きながら、しかし、ただ不安だけを綴るのではなく、心を開きながら明日へと向かう。そんなちょっとした勇気も見せてくれた曲たちは、ライブになると効果絶大。身体中に響く歌と音は、気持ちを解きほぐし、新しい力もみなぎらせてくれる。そこからの「1sec.」では、激しいライブパフォームも繰り返しながら強烈なバンドサウンドを叩きつける。まるで全てを生き返らせるようなパワーで。

さらに曲が続く中で「よう来たな!」と大声で大歓迎もすれば、「またこうして集まろうぜ」や「オマエらにやっと会えた」などアドリブで歌詞を変えて歌うことが何度も。


曲はライブで育つとよく言われる。しかし10-FEETの場合は、その日に出会えたみんなとライブを通して互いに呼吸しながら、みんなの表情から気持ちを汲み取りながら、本心でメッセージする。曲名は同じであっても、そのライブでしか聴くことのできない曲や歌がある。

「その向こうへ」や「VIBES BY VIBES」では、あちこちを見ながら手を振って歌うTAKUMA。オーディエンスとアイコンタクトどころか表情を確かめ合いながら弾くNAOKI。みんなと再会できた嬉しさを音に込めて叩くKOUICHI。また「CHERRY BLOSSOM」では、みんなに一度座ってもらって、キメに合わせて一斉でジャンプも。このツアーを通して様々なトライ&エラーも繰り返してきたと思うが、今ではホールでも自分たちらしいライブができるという、新たな自信も掴んだ10-FEETがステージにいる。



彼らが選んだこの日のラストナンバーは「goes on」。もともと自分たち自身を奮い立たせるために書いた曲だが、今ではライブ会場にいる全員にとっての応援歌のような存在にもなっている。一緒に歌うことはできない今だが、力の限りのハンドクラップで曲とひとつになるオーディエンス。そして曲がエンディングに近づいたとき、TAKUMAは「最後、もう1回、みんな座れ!」と叫んだ。

座ってから、さあ、ジャンプするぞと構えたオーディエンス。ところがTAKUMAはギターを置くわ、NAOKIもベースをスタッフに渡す。ニヤッと笑いながらKOUICHIが発したのは「いいで、みんな立って大丈夫やで」の一言。笑いの神様たち、やりやがったな、である。これでライブは本当に終わり。大きな拍手とこぼれずにはいられない笑いが、ライブのエンディングを締めくくった。そんな中、薔薇を一輪ずつファンに投げるイケてる歌手のように、わき毛を抜いて投げる仕草をしつつ陶酔する表情の約1名。楽しかった気持ちに、誰よりも先に酔っぱらってしまったTAKUMAでもあった。

取材・文◎長谷川幸信
撮影◎三吉ツカサ (Showcase)

■<10-FEET “アオ” TOUR 2021-2022>1月5日(水)@LINE CUBE SHIBUYAセットリスト

01. hammer ska
02. JUST A FALSE! JUST A HOLE!
03. 4REST
04. タンバリン
05. SHOES
06. Fin
07. ハローフィクサー
08. LIFE LIFE LIFE
09. FUTURE
10. 朝霧を抜けて
11. RIVER
12. アオ
13. 1sec.
14. シエラのように
15. 蜃気楼
16. 太陽4号
17. その向こうへ
18. VIBES BY VIBES
19. ヒトリセカイ
20. CHERRY BLOSSOM
21. goes on

■全国ホールツアー<10-FEET “アオ” TOUR 2021-2022>

※終了した公演は割愛
2022年1月20日(木) ロームシアター京都 メインホール
open18:00 / start19:00
▼チケット
前売り:¥5,500(税別)
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400

■10-FEET主催<京都大作戦2022>

2022年7月02日(土) 京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ
2022年7月03日(日) 京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ
2022年7月09日(土) 京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ
2022年7月10日(日) 京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ


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