【インタビュー】mabuta、『LANDMARK』は聴く人の目印になると同時に「自我を失わない」という自分のための目印

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埼玉県秩父市出身の4人組ロックバンドmabutaが、2022年1月19日に3rdミニアルバム『LANDMARK』をリリース。多いときには月19本のライブをやっていたという彼ら。多くのバンドマン同様に、ライブ活動がままならない状況を経験した上で生まれた今作の楽曲たちからは、今だからこその心境が伺えると共に、未来へ向かっての強い意志も感じさせる。4人はどのようにして自分たちの“目印”を自ら創り上げたのだろうか。メンバー全員に話を訊いた。

■アルバムに込めたい意味とかはなくて
■純粋に良いと思う曲を集めてアルバムにしました


――現在の4人になったのは最近のようですが、結成からここまでを柏木さんから紹介してもらえますか。

柏木裕人(Vo.Gt):もともと、高校の文化祭に出る目的で、僕と松本ともう1人のドラムで組んだのがバンドの始まりです。そのうち、地元のライブハウスのブッキングライブとかに出るようになって、ドラムが辞めたタイミングで今のドラマーの中井君が入って、もう1人のギタリストと4人で活動していました。その後ギターが辞めて、そこからずっと手伝ってくれていたギタリストの(伊東)潤君が2022年の年始に正式加入したんです。

伊東潤(Gt):僕は2019年の5月頃からずっとサポートをしていました。

松本舜平(Ba):(伊東は)よく出るライブハウスの店員さんだったんです。

伊東:僕が働いていた都内のライブハウスに、月2、3回秩父から来るバンドがいるって聞いて。本当に、しょっちゅう顔を合わせるので、それでどんどん仲良くなって行ったんです。僕ももともとギターボーカルでバンドをやっていたんですけど、そのバンドを止めた後に電話があって「手伝ってほしい」って言われました。もともとリードギターをやったことがなかったのですごく不安だったんですけど、「もう音が出てれば大丈夫なんで!」みたいな感じで誘ってくれたので。

――「音が出てれば大丈夫」ってどういうことですか(笑)。

柏木:ツアーが結構組んであったのに、急にギターが辞めちゃったので、かなり切羽詰まった状況だったんです。

中井勇介(Dr):ツアーが10何本以上入ってましたから。

松本:ちょうど、初めてのリリースツアーの初っ端で、関西のツアーに穴が出ちゃったんで、「ヤバい!」って。

――そこで、3ピース編成でやらなかったということは、4人でこそ成立する音楽をやっているということですよね。

柏木:そうですね。そこは、3人でやるっていう選択肢はなかったです。

――コロナ前までは、毎月10本以上もライブをやっていたんですね。どうしてそんなに多くのライブをやろうと?

柏木:もともと、初期衝動的にライブが楽しくてバンドをやっていたんですけど、別にたくさんライブを入れようと思っていたわけではないんです。

松本:やり方がわからなかったんですよね。とりあえず誘われたらいっぱい出たいみたいな(笑)。

柏木:知らない土地にライブをやりに行くと、そこの人たちと交流ができるじゃないですか。それでその日のうちに次のライブを決めて帰るっていうのを続けていたら、本数が多くなっちゃって。


▲Vo/Gt.柏木裕人

――ドラマーは機材も多いし体力も使いますよね。

中井:その通りです(笑)。もう気合ですね。ツアー中にここ(松本と中井)がバチバチになったりして。

松本:「もう疲れちゃってドラムのキックが踏めねえよ」って言うから、「踏むんだよ!」って、根性論で(笑)。

伊東:7日連続ライブという日程になっちゃったことがありました。関西で5日間やって千葉を挟んで最後は東京で。運転もみんな交代でやっていたんですけど、車中泊だったりするんで満足に休めてない体でライブをやっていたんですよ。それで、6日目の千葉ですごい空気になって(笑)。

柏木:「もう7日連続はやらない!」って(笑)。

――そういうライブを続けてきたおかげで、演奏力も上がったのでは?

松本:演奏力も上がったと思いますし、何かあっても「いけるっしょ?」って思えるぐらい強くなったと思います。

――最新作の3rdミニアルバム『LANDMARK』まで、毎年作品はリリースしていますね。それだけライブをやりつつ、曲も常に書いていたということですか。

柏木:結果的に毎年リリースできているんですけど、曲はコンスタントに作っているわけではなくて、レコーディングが決まってから間に合うように作れるときに作っています。今作もそうですね。

――曲はすべて作詞が柏木さん、作曲はバンド名義ですよね。

柏木:僕は曲を作るって言っても、超ラフな感じなんです。「こういう感じ」っていうなんとなくの音を聴かせて、あとはみんなとスタジオで演奏をしながら作る感じなので、作曲はバンド名義にしているんです。

松本:最初、「こんな感じがいい」っていうバンドの音源を聴かせてくれるんです。それでみんな「なるほど」って言って、とりあえず演奏してみるところから曲作りが始まるんですよ。だからすごく時間がかかりますね。ただ、今回は間に合わなくて初めて打ち込みで作っています。


▲Gt.伊東潤

――打ち込みで作ったというのは、コロナ禍で集まれなくなったのでこれまでのやり方を変えたといことですか。

柏木:それもあるんですけど、メンバーの住んでいるところが変わったことで集まりにくくなっていたので、「家でやってみるか」って、DTMにチャレンジしました。そんなに緻密なものじゃなくて、本当に初心者というか、ただギターの音を入れてドラムを指で打ち込んでっていうぐらいの感じなんですけど。

松本:僕は、作ってる最中もほぼ一緒にいて、「ああ、こんな感じね。じゃあベースはこうしてみよう」とかずっと考えていたので、やりやすかったです。

――ところで、バンド名の由来ってなんですか?

柏木:最初に始めたバンドでドラマーが辞めて中井君が入ってきたタイミングで、やってる音楽も変えたいし、新しいバンド名を考えようって言って、みんなで地元のファミレスに朝イチで集まって決めました。バンド名に特に意味はなくて、響きだけで決めた感じです。

松本:覚えやすくて、カッコつけてない感じがいいっていう話になって。

柏木:そういうフワッとした話から、「じゃあ体の一部にしよう」って。

松本:最初、「耳」とか「爪」とか言ってたんですけど、ハードコアバンドみたくなっちゃうんで(笑)。もうちょっとマイルドな感じがいいって言ってたら、もともとギターで入る予定だったやつが、「まぶた」って言い出したんです。

伊東:あ、別のやつなんだ?

中井:前からそう言ってるけど、じつはそれ言ったの俺なんだ。

松本:あ、そうだっけ!?じゃあ、中井君らしいです(笑)。

中井:そのギターの人が「ローマ字表記にした方が良いんじゃない?」って言ったんです。俺はひらがなが良いって言ったんだけど、それだと可愛すぎるってなって。

柏木:覚えてない(笑)。要は、バンド名にとくに意味はないってことですね。

――『LANDMARK』を作る上で、メンバー間でどんな話をしましたか?

柏木:アルバムのコンセプトみたいな話は、いつもしないんですよ。

松本:できた結果、「あ、こういうアルバムになった」ということが多いです。

柏木:バンドで共有したいっていうアルバムに込めたい意味とかはなくて。純粋に曲を作っていって、良いなって思う曲を集めてアルバムにしてるっていう感じです。


――とはいえ、オープニング曲「Supersonic」から最後の「BELLETT」まで聴くと、1枚通して筋が通った印象を受けます。

柏木:そうですね、全体的に暗い感じになっているというか。昨年、一昨年とライブができなくてフラストレーションみたいなものが若干あるのかなと思います。ただ、アルバムをどういうものにしようかっていうことは、そこまで意識していないです。

――今作は、どの曲も歌の良さを活かすためのバランスの良い演奏をしているのが良いなと思いました。

柏木:歌が大事っていうのは全体にあるんですけど、じつはレコーディングで全員のオケが録りきれるまで歌が決まってないんですよ(笑)。

松本:歌のこと考えずに、「こういうのカッコいいよな」っていう演奏を詰め込んだ結果、そこに歌が乗っているんです。

中井:それを考慮して歌ってるから、結果的に歌を活かしていることになるかもしれない(笑)。

柏木:逆に僕の中では、カッコいいオケを作って、そこの間を埋めるような感覚で歌うっていうイメージです。

松本:だから、レコーディング中は、「えっここって歌入るの!?」みたいな確認が結構あるんです。あと、ベースとしては、歌が入るならあんまり動かないようにしようとかっていうことはよくあります。

伊東:3人がザっと録ったスタジオ音源が送られてきて、そこにギターをつけたんですけど、「ここは歌が入るんですか?何を弾けばいいですか?」っていうところから入ったので、すごく大変でした。なので、詰め込み過ぎて精神的に鋭くなりすぎて、あんまりレコーディングで自分が何を弾いたか記憶がないです(笑)。


――完全にオケから先にできるんですね。じゃあ、どういう歌になるのか……

松本:まったくの未知です。

――それでいて、演奏陣が歌に寄り添っている感じに聴こえるのがすごいと思います。

松本:全然、意図していないんですよ(笑)。ただ、この4人で作ったプラスアルファで歌が良くなる曲しか選ばないとは思うので。歌を入れてダメになる曲ならもともとレコーディングしないですから。

柏木:逆に歌う側が、「こういったら歌が死ぬな」っていうところにいかないようにしています。

――なるほど、面白いですね。反対に、柏木さんから「ここのフレーズをこうしてほしい」とかっていう話はするんですか?

柏木:それも、レコーディングのギター録りのタイミングではまだ僕も歌がどうなるかわかっていないので。たぶん、オケがカッコよければ、かっこいい曲になるんですよ(笑)。ギターの音はこれだと詰め込み過ぎ、とか言うことはあるといえばありますけど。

伊東:ギターの音は一番、2人で話して決めました。歌が入る想定に合わせて、「Aメロはこういう感じのギター」とか。

松本:アルペジオの音探しとかみんなでやったもんね?

伊東:エンジニアさんとか、ドラムのテックの方とかも交えて「ここはどう弾いたらいいですか?」って言いながら考えました。僕はもともとボーカル・ギターだったので、ギターのリフを曲につけるのに慣れていなくて。

――新しく正式メンバーになった伊東さんは、mabutaのそういう曲の作り方やバンドのアンサンブルをどう感じていたんですか。

伊東:最初にmabutaを観たときの印象で言うと、「何がしたいかわからない音がデカいバンド」ですね(笑)。でも、だんだん知るにつれて、「意外と良い音楽やってるな」と思うようになって。たぶん、最初のうちは右も左もわからない状態だったと思うんです。いろんなライブハウスに出るようになるにつれて、彼らのやりたいことや伝えたいことが見えてきたタイミングで、自分も関わるようになったんです。演奏だけじゃなくて、「歌や曲は大事だよね」っていうことを(ボーカル)僕が言ったことで大事にしてくれるっていうのもあったと思うし、今回は僕が一から関わった作品としては初めてだったので、そこはすごく気にしていたんじゃないかなっていう感じはします。

柏木:歌は大事です(笑)。もちろん、自分の中で歌をないがしろにしたことはないんですけど、よりそこへの意識は強まったとは思います。

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