【インタビュー】熊田茜音「思う存分自分探しの旅に出られるようになったら良いな」

■初作詞曲「くらげ」は
■いま私が思っていることを受け入れた中で書いた曲

──1曲目は「いいんだよ」。先程悩みのお話もありましたが、そんな中で「いいんだよ」という肯定感がある言葉は、胸に刺さりますね。

熊田：園田健太郎さんは「カコ→イマ→ミライ→？」でお世話になっていて、また書いていただきたいと思っていたんです。デモは仮歌詞だったんですけど、〈いいんだよ〉に音を付けたらこれだ！と思うくらい、〈いいんだよ〉のところが好きだったので、それを残して歌詞にしてくださいとお願いしつつ、今の自分の思いを園田さんに全部吐き出しました。白か黒かで物事を考えてしまうから、相手よりも自分に対してダメだと思ってしまうし、灰色の部分を見てあげたほうが優しくなれるのに、それができないんですよね。



──曖昧なところを認めてあげられないんですね。

熊田：明るくて元気な熊田茜音になりたいし、そう見てもらいたいと思っているけど、何割かはダメな自分もいる。でもそれも自分自身なんですよね。だから〈私だけが知ってる私を 私だけが愛せるのは なんとなく いやだな いやだよ〉という歌詞がすごくキツくて（笑）。園田さんにも「キツいでしょ？」って言われましたけど、歌にすると受け入れられて「そう思っているんです！」と思えたんです。それに1番で〈上手く振る舞えなくたって〉と歌っているのが、2番で〈上手く振る舞わなくたって〉と自分の意思になっているのも良くて。もがいていたけど、これが私なんだ！と思えたというか。自分自身で「いいんだよ」って声を掛けてあげられる曲になったかなと思います。この曲は新録曲で最初に録った曲なんですけど、ここで思いを吐き出すことができたから、その後も自分を出せていけたのかなと思います。



──「Elpis」はロック曲ですが、この曲もさらけ出した曲になるのでしょうか。

熊田：そうですね。ロックなので吐き出したいという思いがありつつ、テーマは過去の記憶にしたいと作詞の児玉雨子さんと話しました。これまでは過去にイヤだったこととか、人間関係にうまくいっていなかった時期のことを話す時に、そういう過去でもあって良かったと、いろいろなところで言っていたんです。そのときがツラかったから、ちょっとやそっとの仕事のツラさはツラいとは思いませんと。でもそれって結局強がりでしかなくて、イヤな記憶なんていらないんですよね。でも過去は消せないので、どう消化するか次第なんです。それを自分の力にするのか、忘れてしまうのか、よくわからないと話していたら、児玉さんが「わかる！」と言ってくれて。わかってくれるとかではなく、同じことを考えてた！みたいなリンクの仕方をしたので、これはもう絶対に私の気持ちを素敵な形で表現してくださるだろうなと思いました。このアルバムのレコーディングが終わったら、LINEでお友達になりたいと思うくらい、波長が合ったんです（笑）。

──特にグッと来た言葉はどんな言葉ですか？

熊田：〈強がりばかりが得意だ〉とか、皮肉めいた〈みんな 前倣(なら)え人生ゲーム　早く降りたい〉とか。あと、〈「愛に愛されてこなかった」〉はキーとなる言葉で、レコーディングでは泣かなかったんですけど、前日に家で歌っているときはぼろぼろになっちゃって（笑）、明日ちゃんと歌えるかな？状態でした。そのくらいグッときた言葉です。ただこの曲はロックナンバーなので盛り上がりますよね。ライブでもコール＆レスポンスできるようになっているし、感情を吐き出せるような曲になると思うので、ライブで歌うのが楽しみです。


──そして熊田さん初の作詞曲「くらげ」ですが、光が見えたのかな？と感じる曲でした。

熊田：今の自分なりの正解を見つけたというか、今私はこう思っているんだというのを受け入れた中で書いた曲になります。ただ作詞って本当にいろいろなことを考えなければいけないんだなということも学びました。もともと作詞をやってみたかったから楽しかったんですけど、伝えたい言葉はこれだけど、それがリズムに合わなくて、言葉を変えなければいけないとか、高いところは母音がこれじゃないと聴こえが悪いとか、韻もうまく踏めないとか、いろいろ考えながら書いていました。

──“くらげ”というのはどこから来たのですか？

熊田：曲を聴いたときに“くらげ”だなと思ったんです。最初に曲を聴いたときの感情は大事にしたいと思って、そこからくらげの生態を調べたりしました（笑）。くらげって呼吸しているときに、波に揺られて移動するみたいなんですけど、それって自分みたいだなって。それが〈気づいたら (また違う) 場所に辿り着いてるんだ〉という歌詞につながっていたりします。あと、途中で行き詰まったときは、映像が見えていないのかもしれないと思って、自分のモヤッとした感情に近しい空の画像を検索したりしました。最終的には青空に虹がかかっているような清々しい雨上がりの空に向かう曲になればいいなと思いつつ、画像を見ながら書いていったら、スッと言葉が出てきました。

──〈正解はもういらないから 心が鳴る色で描き始めよう 手を振って進もう〉で終わっているところからも、雨が上がって光が見えて、一歩前進したんだろうなと思えますね。

熊田：本当に皆さんからのいろいろな言葉があったからこその曲になりました。

──それが『世界が晴れたら』というタイトルにもなっていると思うのですが、このタイトルについては。

熊田：世界がコロナ禍というのもありますけど、それと私の世界が晴れるタイミングが一緒に来るのかなと思って、このタイトルにしました。とても希望のあるタイトルになっています。


──まだ完成はされていないですが、どんな1stアルバムになりそうですか？

熊田：自分自身をさらけ出すことで、共感してくれる方が同世代ではいるだろうなと思っていたんですけど、ふと思ったのは、自分の母も、子供がいる自分や親に対する自分、友達と対する自分……全部が自分だけど、たくさんの自分がいるんですよね。年齢を重ねていくと、大切にしなければいけないものとか、大切にしたいもの、色々なことに対する責任がどんどん増えていくのかなと思っていて。なので、自分探しの旅をしたいと思ってもなかなかそれができないというか、自分のことを考えてあげる時間が、年齢を重ねるごとに少なくなっていってしまうと思うんです。なので、色々な世代の方がこのアルバムを聴くことで、思う存分自分探しの旅に出られるようになったら良いなと思いました。自分について考えてあげられることって、すごく温かい時間だと思うので、このアルバムを聴いている間だけでも、自分探しの旅に出てくれたらと思うし、そういうアルバムになると思います。

──1stライブも決定しましたね。

熊田：1stライブは念願だったのでめっちゃ楽しみです！　しかもアルバムを引っさげてのライブになるので、相当な“熊田茜音”が行くと思います（笑）。今まで応援してくださった方には「こんなところもあるの？」という驚きのあるライブにしたいし、絶対に退屈はさせたくないので、成長したなと思わせられると嬉しいです。初めて私のパフォーマンスを見てくださる方も多いと思います。その方々には1stアルバムにギュッと詰まった熊田茜音がいますので、アルバムを聴いて、熊田茜音はこんな人なんだというのをライブで体感してもらいつつ、一緒に楽しんでほしいです。1stライブは、この先のアーティスト人生を考えたらすごく大きな思い出になると思いますので、この先一緒に未来を歩いてくださる人たちと会えるのを楽しみにしています。

取材・文：塚越淳一


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