【インタビュー】神はサイコロを振らない、2022年第一弾楽曲が物語る「4人全員がカッコいいバンド」

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■2021年の制作の中で一番大変だったかも
■どこを切り取ってもサビみたいになった

──それこそ2022年最初のリリースとなった「イリーガル・ゲーム」は、神サイらしさも、新しさもある曲ですね。一番新鮮に感じる要素はピアノやストリングスの使い方ですが、取ってつけたような感じはなく、ちゃんとバンドとマッチしているのがいいなと思いました。

柳田:この曲は難産でした。Aメロ、A'メロ、Bメロ、Cメロ、Dメロと5つのブロックがあって。“能動的愛を頂戴”から始まるDメロは、もともとサビのつもりで作っていたんですけど、「こっちをサビにしよう」「いや、やっぱりBメロをサビにしよう」とか順序を変えながら、パズルを組み立てていくような感じで考えていったので。やっぱり時間がかかったし、2021年の制作の中で一番大変だった曲かもしれないです。

──「初恋」のインタビューで「ここ最近の制作でトップ2ぐらいに苦戦した。トップ1はまだ世に出ていない曲」と仰っていましたけど、それは「イリーガル・ゲーム」のことだったんですね?

柳田:いや、それは別の曲です(笑)。ま、それはともかく、どこを切り取ってもサビみたいな曲にはなったかなと思います。


──間奏含めて、曲構成の構築度が高いですし、ピアノとストリングスなしでもアレンジすることができたのでは?と思えるほどで。

柳田:実はアレンジは、デモの時点ではバンドサウンドメインだったんです。ただ、ドラマサイドから“ストリングスやピアノがアクセントになる曲を”という要望をいただいて。そこで、星野源さんをはじめ、名だたるアーティストさんの曲でストリングスを弾いている美央さんにストリングスやピアノのアレンジを入れていただきました。美央さんはいい意味で変態的なフレーズをつけるのが上手い人なので、そこに惚れ込んで今回お願いしたんですけど、“バンドがこういうアプローチをしているから、そこにストリングスをどう絡めていこうか”ということを何度も何度も話し合いながら、考えていただいて。バンドサウンドに対して“はい、ストリングス入ってきました”というように取って付けた感じになっていないのは、そうやって一緒に作っていけたからかもしれません。神サイの曲に生のストリングスを入れるのは初めてだったので、最初はどうなるだろう?と思っていたんですけど、カッコよくできてよかったです。

──全体としては、疾走感のある曲調に、いびつな恋愛模様を描いた歌詞をかけ合わせた内容に仕上がっていて。

柳田:アッパーでダンサブルで、ちょっと妖艶な雰囲気もあって。立ち位置的には「揺らめいて候」(ミニアルバム『理 -kotowari-』収録/2020年2月発表)に近いですね。音楽偏差値がちょっと上がって、さらに洗練されたバージョンというか。歌詞のテーマも「揺らめいて候」に近いですけど、こういうドロドロとした恋愛は書きやすいっちゃ書きやすいし、自分の得意分野ですね。


──神サイの恋愛ソングは、後ろめたさのある関係を描いたものが多いですよね。自分が盲目的になっていると自覚しつつ、第三者からしたら「そんな人やめなよ」と言いたくなるような相手との恋に溺れている人が主人公になっているというか。物語の展開的にも“最終的に未来が見える”という感じではないし、最後まで救われないまま終わりますけど、こういう種類の歌が持つポップソングとしての可能性について、柳田さんはどうお考えですか?

柳田:難しい質問ですけど……シンプルに言うと、共感を得られることに一つの意味があるのかなと思います。「夜永唄」も最後まで救われない歌ではありつつ、あの曲で反響をもらった時に、“救われない歌に救われる人もいるんだな”と感じたんですよ。曲を聴いて、別に何かが解決するわけではないけど、“自分と同じ人がいるんだ” “これで大丈夫なんだ”と思えるだけでも意味があるというか。

──なるほど。

柳田:俺、Pay money To my Painの「Same as you are」が高校生の頃から好きなんですけど、英詞なので、歌詞の意味は分かっていなかったんです。でも大学生になって、今でも忘れられないくらいの大恋愛をした時に、初めて歌詞の和訳を見たら、自分の感情がそっくりそのまま歌われていることに気がついて。ボーカルのKさんは俺のことなんか全く知らないし、生まれた環境も、育った環境もまるで違うはず。それなのに、歌詞にある報われない恋の話、一人の女性に対する気持ちが全部自分にも当てはまっちゃったんですよね。それが衝撃的で。

──その出来事は歌詞を書く上で影響していますか?

柳田:はい。ちょうどその時期に作詞を始めたので、かなり影響していると思います。それまでは“歌詞はあくまでも音でしかない”と思っていたんです。だけど、それ以降、言葉の持つ強さや意味についてすごく考えるようになりましたね。だから神サイの曲について、SNSやYouTubeのコメント欄で「自分と同じ人がいるんだと思えました」みたいなことを書いてくれている人を見かけると、当時俺がKさんに抱いていた気持ちをその人たちも感じているんじゃないかと思います。中には、俺の意図とは違う捉え方をしている人もいるかもしれないけど、それでも全然よくて。自分の過去の思い出をつらつらと書き連ねていたら、いつの間にか自分の見えないところで曲を受け取ってもらえていて、たくさんの人に共感してもらえていた。それが形として一番美しいんじゃないかと思います。

──はい。

柳田:「夜永唄」のような重たいテーマの曲に女子高生が共感してくれている姿は本当に興味深かったし、音楽の面白さはそういうところにある気がする。もちろん“絶対に売れる曲が書ける”と自負しているアーティストもいるし、売れるための法則みたいなものもなくはないと思います。だけど僕は、そういうものを度外視して、リアルを書いて、そこに勝手に共感してもらえるのが嬉しいというか。そこは神サイとして曲を書く上で、大事にしているポイントです。

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