【インタビュー】犬塚ヒカリ、豊かな言葉とメロディーの振り幅で耳と心を包み込んでくれる1stアルバム『Halo』

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柔らかいのに芯があって、可愛らしいのにどこかクール。シンガーソングライター犬塚ヒカリの1stアルバム『Halo』は、そんな彼女の声の魅力を存分に伝え、バラエティーにとんだ言葉とメロディーの振り幅で耳と心を包み込んでくれる作品だ。尊敬する中島美嘉の全国ツアーのオープニングアクトにも抜擢され、これからますますその名を広めていくであろう犬塚ヒカリ。美空ひばりにMISIA、心理学にヒップホップの洗礼など、興味深いキーワードも飛び出した彼女の“これまで”を聞いた。

■学生時代は結構気の強い子でした
■いつでも戦うぞ!くらいの気持ちでいました(笑)


──記念すべき1stアルバム『Halo』が完成しました。今のお気持ちを聞かせてください。

犬塚ヒカリ:CDとしてリリースするのは今回が初めてになるので、ワクワクしています。これが多くの人の手に渡って欲しいなと思いつつ、でも正直なところまだ実感が湧いていないっていう状態です(笑)。

──音楽活動と並行して、大学にも通っていらっしゃるんですよね。

犬塚ヒカリ:はい。今年の3月で卒業なんですが、1月の半ばくらいまでは期末の試験やレポートなどもやっていました。


──大学ではどんなことを学んでいたんですか?

犬塚ヒカリ:心理学系ではあるんですが、いわゆる心理学といった時に皆さんが想像されるものより理系っぽいことをやったりするんです。高校の時から音楽以外にやりたいことをちゃんと見つけておきたいと思っていて、その中で心理学が一番興味があったので大学で専攻しました。

──音楽だけをやるのではなく。

犬塚ヒカリ:はい。もし私が音楽1本という道を選択したら、逃げになっちゃうかなと思って。学びから逃げるために音楽をやるんじゃ意味がない。しかも、自分で進んで勉強していかないと学費的にも時間的にも意味がないと思っていたので、学びたいと思う学問をずっと探していたんです。それが心理学でした。

──心理学を学ぶことで、何か音楽や曲作りに反映するところもありましたか?

犬塚ヒカリ:心理学って人の心を読むというより、いろんな人がいるということを理解できる学問であり、自己受容や自己分析など、自分というものをどんどん細かく刻んで、自分がどういう成分から成り立っているのか、どういう気持ちから成り立っているのかというのを分析できる学問なんですね。そういう意味では、曲作りにも似たところが反映されていますし、何より、日常生活でもいろんな人がいるんだって理解できたという意味では、かなり実になっているかなと思います。

──昨年から「吉田照美の森羅万SHOW」というラジオ番組でアシスタントを務めていらっしゃいますが、いろんな方のいろんな意見に向き合うという点でも生かされているんでしょうね。ちなみにラジオのお仕事には以前から興味をお持ちだったんですか?

犬塚ヒカリ:もともとラジオを常に聴いていたわけではなくて。車に乗っている時にちょっと聴くぐらいだったんですが、コロナ禍になった瞬間に、大学生がみんなラジオを聴き始めたんですよ。今では周りの子のほとんどが聴いていて、私も聴くようになったんです。ちょうどそのタイミングで私自身がゲストで番組に出させていただくことも増え、ラジオってすごく面白いんだなっていうことに気づき、やってみたいなと思っていました。

──番組でもよく出てくる「づかちゃん」というニックネームは昔からですか?

犬塚ヒカリ:そうです(笑)。中学の頃から、仲のいい友達には「づか」って呼ばれていました。私の本名はひらがなで「ひかり」なんですが、それがあまり好きじゃなかったんですね。「じゃあ何て呼んだらいい?」って言われて、そこからそう呼ばれるようになったんです。

──子供の頃、そして学生時代はどんな感じだったんですか?

犬塚ヒカリ:結構気の強い子でしたね。自覚があります。周りから、かなり怖がられていたんじゃないかなって(笑)。今は心理学も学んで逆に丸くなりすぎて困っていたりするんですが、昔はいつでも戦うぞ!くらいの気持ちでいました(笑)。

──それはどういう感情からだったんでしょうね(笑)。

犬塚ヒカリ:たぶん自分に自信がなかったんでしょうね。人から言われることや与えられたものに対して、ネガティブに、マイナスに捉えることが多かったっていうのも一因かなと思います。あとは若いからちょっと攻撃的になってしまうところもあったと思うし、負けたくないっていう気持ちが強すぎたのかもしれないですね。

──小さい頃から楽器もやっていらっしゃったそうですが、それも1番になる!みたいなお気持ちだったんでしょうか。

犬塚ヒカリ:音楽は自分にとってのストレス発散というか、ありのままの自分でいられる場所だったので、メラメラした気持ちよりも、リラックスするものみたいな感じでかなりマイペースでやっていました。幼稚園の頃からピアノを習い始め、中学では吹奏楽部でトランペットをやっていました。

──音楽は小さい頃からお好きだったんですか。

犬塚ヒカリ:はい。小さい頃から歌が大好きで、カラオケに行って祖父母の前で歌ったりしていました。美空ひばりさんがとにかく大好きで、5歳くらいの頃は絶対に演歌歌手になりたい!と思っていました。

──演歌歌手!

犬塚ヒカリ:祖父母がよく聴いていたから演歌は常に身近にありましたし、祖父はプロのパーカッション・ミュージシャンで。私が生まれた頃にはやめていましたが、プロでやっていたということは自分にもかなり影響を与えているのかなと思いますね。もう亡くなりましたが、祖父はよく歌を歌ってくれる人でした。お散歩に行くと、手を繋いで歩きながら「靴が鳴る」を歌ってくれていたことをよく覚えています。

──本格的に音楽の道に進もうと思ったのは、何かきっかけがありましたか?

犬塚ヒカリ:漠然とですが、歌をやりたい、音楽をやりたいというのはずっと思っていました。吹奏楽部ってすごく厳しいんですが、その中で先生から認められたという経験も、自分の中で「やっぱり音楽をやりたい」という気持ちに繋がっていきましたね。あとはちょうどそのタイミングでMISIAさんのライブに行くようになり、「本当に音楽やりたい!」という気持ちをちゃんと実感したんです。

──それが中学生の頃ですね。

犬塚ヒカリ:中学3年の受験期でしたが、いてもたってもいられなくなり、勉強の合間にオーディションを調べて応募しました。合格したらデビューというよりもレッスンを積んでいきましょうみたいなものに受かってレッスンを受けるようになり、音楽をやっていきたいという気持ちもちゃんと出来あがり、高校1年になって本格的に音楽活動をスタートしました。

──短い期間にいろんなことが動き始めたんですね。

犬塚ヒカリ:中3から高1の間って、私の人生の中でかなりごちゃごちゃしていた時期なんです。受験勉強をしなきゃいけないし、進路も決めなきゃいけない。出会いや別れも錯綜していて、祖父もその時期に亡くなっているんです。オーディションに受かったことは祖父も知っていたんですが、その後亡くなってしまったので、その悔しさというか、もっと祖父に見せてあげたかったみたいな気持ちも、当時の自分のエネルギーになっていましたね。

──今作にも収録されていますが、だから「幼かった頃 祖父は私の手を引き 歌を歌ってくれた」という歌詞で始まる「チャプター」という曲をその時期に作られたんですね。ちなみに曲作りは独学ですか?

犬塚ヒカリ:特に教えてもらったということはなくて。子供の頃から習っていたピアノはクラシックだったので、楽譜を見て弾くことしかできなかったんですね。コードなどの理論がわからない状態だったので、だったらコードで弾くギターをゼロから始めて、そのついでに曲作りも始めちゃえばって、レッスンしていたところの方に言っていただいて。そこからギターでコードを鳴らして歌うっていう感じで作り始めました。高校の間は、感情が揺さぶられる何かがあるたびに曲を作っていましたね。高校の3年間は、一番曲を書いていた時期だと思います。

──その音源をライブ会場で売っていたと。

犬塚ヒカリ:はい。当時は事務所に入っていなかったので、スタジオなどでギター1本と歌で録音して、ライブの時に売ったりしていました。ライブは月に5~6回、高校の3年間はずっとやっていましたね。平日にライブを入れていたんですが、掃除当番の日は友達に代わってもらって、ギターを背負って駅まで走って行ってっていう生活。友達には「今度の当番の日、変わるから!」って言って、助けてもらっていました(笑)。

──当時から弾き語りのスタイルだったんですか?

犬塚ヒカリ:そうですね。当時、物販とかステージ以外では、ありのままの自分でおしゃべりしたりしていましたが、ステージでは余計なことを喋らないほうがいいのかなと思って、「こんにちは犬塚ヒカリです。高校1年生です。よろしくお願いします」で歌って、「詳しくはHPを見てください。ありがとうございました」でまた歌うみたいなスタイルでした(笑)。

──その当時に作っていた100曲を、その後、一度全部封印したそうですね。

犬塚ヒカリ:はい。ここ1年くらいでまた歌うようにはなったんですが、大学1年から3年くらいは、当時作った曲だけに甘えるのが嫌だったんです。クリエイティブって、過去の栄光…ではないですが、やっぱり自分が作ったという自信あるものにすがりがちになってしまって。そういうのを一度切り離さないと次に進めないと思い、一時期は歌うのをやめたんです。

──その先で見つけた景色が、今回のアルバムでもあると。

犬塚ヒカリ:はい。自分でも今のスタイルにとても満足していますし、今後ももっとやりたい音楽の方向性を見つけたら、あまり固くならずに素直に取り入れていきたいなと思っています。

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