【インタビュー】マルシィ、Z世代女性リスナーが大注目の福岡発3人組ロックバンド

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Z世代女性リスナーが大注目の福岡発3人組ロックバンド、マルシィ。2020年リリースの自主制作楽曲「Drama/絵空」が、YouTubeとストリーミング配信でいきなりのヒットを記録した若き逸材だ。昨年12月リリースの「花びら」も各サブスクチャートで上位に食い込み、2022年に最もブレイクが期待できるバンドの一つへと、急成長が止まらない。うきょう(Vo&G)、フジイタクミ(B)、おさみぃ(G)が作り出す、切なすぎるほどリアルな恋愛ソングの世界は、どのように作られるのか。注目のBARKS初登場インタビュー。

■感情の奥深いところを僕が曲にして出すことによって
■誰かが抱えているものに触れることができたらいいな


――まずは、結成の話から聞かせてください。3人は、どんな出会いですか。

うきょう(Vo&G):僕とタクミが最初に出会いました。その頃「バンドをやってみたいな」と思っていたので、友達と二人でカラオケに行った時に「誰か楽器やってる知り合いいない?」と聞いたところ、紹介されたのがタクミでした。

フジイタクミ(B):4年前? そこまではいかないか。

うきょう:そのあと僕の曲を、友達経由でタクミに送ってもらって、会ってみたという感じです。でもタクミとはその前に接点があったみたいで。

タクミ:二人とも高校は違うんですけど、大分の高校で二人ともテニス部に入っていて、実は一回対戦しているんです。県大会の予選とかで。

うきょう:それが本当なのかどうか、僕は覚えていないんですけど(笑)。

タクミ:(うきょうを)紹介してくれた友達が僕と同じ高校で、「昨日試合した奴、俺の友達なんよ」って、それで僕は覚えていました。

うきょう:その試合は僕が勝ったみたいなんですけど。負けたほうが覚えているのかな?と(笑)。

――そしておさみぃくんは、どこで参加するんですか。

おさみぃ(G):タクミとうきょうが出会って、マルシィの前身バンドとして4人で活動していたんですが、ギターとドラムが抜けたタイミングで声をかけてもらいました。うきょうと僕のアルバイト先が一緒だったんですよ。カフェ&バーみたいなところで、シフトはあまりかぶらなったんですけど、ある日僕がキャッシャーをしている時にうきょうが出勤していて、「うちのバンド、ギターが抜けたんで、よかったら入りませんか」というお誘いを受けて、最初はサポートで、2019年1月1日に正式にマルシィに加入しました。

うきょう:前のメンバーが抜けたタイミングでちょうど(おさみぃと)出会って、「一回スタジオに入ってみようよ」と。その時に、僕たちが最初に出した「Drama」という曲のデモを聴いてもらいました。前のギターはがっつり歪ませて爆音で弾くタイプで、僕の表現したい世界観とはちょっと違うなと思っていたんですけど、おさみぃに「Drama」のギターフレーズを考えてきてもらって、それを聴いて「これだな」と思いました。

おさみぃ:最初に聞かせてもらった楽曲の印象は歌がきれいで、ドラマチックな世界観もちゃんとあったのが印象的でした。僕はもともとX JAPANが好きで、がっつり歪んだ音が好きなんですけど、ある程度音を落として作ろうということを心掛けて、最初のスタジオに挑みました。

――そもそも、うきょうくんがバンドを組んだのは、曲を作りたかったから、それともライブをやりたかったから?

うきょう:ライブはもちろんやりたかったんですけど、一番は自分が作る曲を、弾き語りではなく、バンドで表現してみたいというところから始まっています。タクミと出会った頃は、まだエレキギターを持っていなくて、たまたま東京に遊びに行ったタイミングで「ちょっと買ってくるわ」と(笑)。それで、次のスタジオの時に初めてエレキギターを弾きました。すごく楽しかったのを覚えています。

――音楽のルーツの話もしていいですか。もともとどんなのを好きで聴いていましたか?

うきょう:小さい頃からJ-POP全般を聴いてきて、いわゆるお茶の間で流れているような歌謡曲だったり、親が聴いていたDA PUMPとか、学校で流行っていたGReeeeNとか、清水翔太さんとか、J-POPど真ん中みたいな楽曲を聴いてきました。今は幅広く洋楽も聴きます。

――そのルーツは、自分が作る曲の根っこに今もあると思いますか。

うきょう:出てくるメロディとかは、やっぱり影響は受けていると思います。

――タクミくんは何が好きだった?

タクミ:僕はいろいろ雑食なんですけど、バンドの目覚めは僕もX JAPANで、初めて買ったベースも紫色のTAIJIモデル。マルシィの初ライブまではそれを使っていました。バンドの目覚めはそこですけど、音楽は雑食ですね。語れるとかになると、レッチリとかになっちゃいますけど。

おさみぃ:僕もX JAPANに憧れてギターを始めました。高校生の頃はJUDY&MARY、BOOWY、尾崎豊をめっちゃ聴いていました。YouTubeで見つけたパンクとか、ブラックミュージックも大好きですが、GReeeeN、HY、EXILEとかも幅広く聴いていて、カラオケで良く歌いました。小さい頃は親父が好きなカーペンターズ、キャロル・キング、スティーリー・ダンとか、母親が好きなサザンオールスターズとか、そういうものが流れている家でした。

――それは引き出しが多そう。うきょうくんの家は、親がめっちゃ音楽を聴いていたとかは?

うきょう:いえ、洋楽とかはほとんど聴いていなくて、J-POPですね。ただ母親がピアノを弾くので、よく歌っていたのを耳にして、僕も歌いたいなということは…あったとは思っていないんですけど、あったのかもしれない(笑)。

――そんなうきょうくんが、自分で曲を作ろうと思ったきっかけは?

うきょう:歌うことはもともと好きだったので、自分で曲を作ってみたいという軽い気持ちから始めて、最初はギターを弾きながらカバーを練習して、清水翔太さんとか、宇多田ヒカルさんとかを歌ってみて、自分でも作ってみようと思い、メロディと歌詞を考えていきました。

――今ネットで聴けるマルシィの曲は数曲あって、その中で一番古い曲は?

うきょう:「Drama」です。

――さっきおさみぃくんが「世界観がある」と言ったけど、「Drama」はまさにそうで。とてもリアルでせつない恋愛ソング。自分の歌いたいテーマは最初からはっきりしていた?

うきょう:どうなんですかね? 「Drama」を作った時は、歌詞になっている出来事が自分の身に起きて、それを書いていったので、方向性とかは考えていなかったです。自分の中の衝動というか、その時の感情で曲を書いて、そこから始まったのかなと思います。

――じゃあ「Drama」は、かなり実話度が高い。

うきょう:7割ぐらいは、そうですね。

――それって、特にこういうせつない恋愛ソングの場合、書いていてつらくなるとか、恥ずかしいとか、そういうことはない?

うきょう:自分の感情を曲に落とし込む時に、ふと思ったりはします。普通の人は見せないところを書いている意識はあって、大丈夫かな?という思いがあったりもしたんですけど、逆にそういう奥深いところを僕が曲にして出すことによって、誰かが抱えているものに触れることができたらいいなと思うので。今は逆に、そこを出していければいいなと思ってます。

――それは、ナマの感情を持った自分と、それを客観的に見て歌詞にする作家的な自分と、どっちもいたりするのでしょうか。

うきょう:両方いるかもしれないです。のめり込む自分と俯瞰して全体像を見ている自分の両方が自分の中にはいますね。

――おさみぃくん、うなずいていますね。

おさみぃ:メロディも歌詞もそうなんですけど、本音で生きてる感覚があります。ちゃんと自分が伝えたいことをしっかり歌詞にしているところもそうです。

――そのやり方だと、1曲書くのにかなり時間がかかりそう。

うきょう:かかる時とかからない時がありますね。感情を歌詞に乗せる時は、感情の沸点が高い時にできるんですけど、そこでメロディとのはまりを俯瞰して直してみたり、自分が自分の曲に対して要求するレベルが、曲を重ねるごとに高くなっていて、そういう意味では、時間がかかるようになってはきていると思います。

――やっぱり、せつない感情のほうが、詞にしやすいですか。

うきょう:それはあるかもしれないですね。マイナスな感情ではないですけど、そういう感情の時に曲は書きやすいかなという印象はあります。ポジティブな時、幸せな時にも書けることは書けるんですけど、落ち込んでいたり、ズーンとなっている時のほうが、密度が濃く書けたりします。

――歌詞の言葉使いとか、表現とかで、特に影響を受けた人はいますか。この人の世界観好きだなぁとか。

うきょう:この人、というのは思い浮かばないですけど、自分の中で、というものはあります。最初の頃は文学的というか、あえて全体像をぼかすみたいな、難しい言葉や遠回りするような言葉を使って、よく考えてもらわないと見えにくいものを作ったりしていたんですけど、そういう時期を経て今はよりダイレクトに、伝わりやすい歌詞を意識しています。自分との対話、というところが大きいかもしれない。

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