【インタビュー】海蔵亮太、New AL『コトダマ』でシンガーからソングライターへと急激に進化

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■大人になったら楽しいこといっぱいあるよと伝えたい
■自分より若い人たちにもそう思ってもらえたら


――かと思えば、これも海蔵さん作詞の「旅立つ僕らに」のような、純粋無垢な卒業ソングもあるという、この落差。

海蔵:確かに(笑)。この曲は、リリースする時期が2月なので、卒業や環境の変化というものを一つのテーマとして曲にしたいなと思っていました。僕の甥っ子が小学校6年生で今年卒業なんですけど、コロナ禍で思うように学校へ行けなかったり、行っても友達と気軽にしゃべれないし、給食を食べる時も同じ方向を向いて食べたりとか、そういう話を聞いて、自分の学生時代は幸せだったなと思ったんですね。青春時代は一生一度のことで、それを謳歌できない今の子供たちに対して、僕自身がつらいなと思ったんですけど、ただそういうことがあっても、みなさんにとっての素晴らしい未来が絶対にあるよという思いを伝えたいなと思って、この曲を作りました。きっと未来は明るいぞって、大人たちには、それを伝えて行かなきゃいけない義務があると思うので。

――良い話。優しいエピソードです。

海蔵:僕が学生時代には、将来は絶対に明るいと楽観的に思っていたので、そのおかげで大人になっても「なんとかなるさ」みたいな感じでタフに頑張ってきました。でも未来は明るいと思えない世の中に生きている今の学生のみなさんは、本当にすごいなと思っていて、そういうみなさんにちょっとでも、大人になったら楽しいこといっぱいあるよと伝えたいなと思うんです。自分の先にいる人たちが楽しそうじゃなかったら、今何のために生きるんだろう?と思っちゃうので、僕は。幸い、僕の周りの大人の人たちはこういう状況でもすごく楽しそうに生きている方が多くて、僕も頑張れるかなと思うので、自分より若い人たちにもそう思っていただけたらと思います。

――海蔵亮太の活動の基本がわかったような気がします。今の言葉で。

海蔵:今回は自分で言葉を書くという、今までやったことがなかったので、ちゃんと歌詞を書けるのか不安ではあったんですけど、自分自身が小さい頃から歌が好きで、いろんな曲を歌っていく中で、その中から出てきた言葉というものは、すごくシンプルなものだなと思いました。詩的な表現というよりはストーリーで、そういう世界を大事にしている人間なんだなと、書いて思いました。

――言葉の人だなと思います。

海蔵:僕は槇原敬之さんがすごい好きで、小学校1年生ぐらいに曲を聴いて、日本語がよくわかってない小学生の僕でも「この歌わかる」という感動があったので。自分が大人になってこうやって歌詞を書いた時に、絵本のような歌詞にしたいと思いました。たぶんそういう言葉が好きなんだろうなと思います。

――マッキー、何の曲が好きですか。

海蔵:「足音」という曲がすごく好きで、その曲を聴いてマッキーを好きになったことを覚えています。アルバムの中の1曲(*のちにシングル化)でラブソングなんですけど、君が好きとか愛してるという感じではなくて、そっと寄り添うような言葉が当時の自分にハマッたのかな。当時、同級生でマッキーが好きという人はほとんどいなくて、モーニング娘。が流行っている時代に一人でマッキーマッキーって言っていました。あ、そうだ、だから、毎年何かしら目標を叶えているということで言うと、今年もしも叶えられるのなら、マッキーに会いたいです。槇原敬之さんに会ってお礼を言いたい。歌が好きになったきっかけも槇原敬之さんなので、マッキーがいなかったら普通に社会人として生きていたと思います。

――叶いますように。

海蔵:実現したら泣いちゃいますよ。


▲『コトダマ』【TYPE-A】(CD+DVD)


▲『コトダマ』【TYPE-B】(CD

――でもその話、そう思って聴くと、8曲目「ここには」の歌詞とか、まさに聴き手に寄り添うように、シンプルな表現で、「ただ君のそばにいたい」と歌ってくれている。どこかで影響はあるような気がします。

海蔵:「ここには」ができたのは、それこそ「サイコパスのうた」がきっかけで、あいつはサイコパスだってSNSでいろいろ言われて、落ち込まないと思ったんですけど、やっぱり落ち込んでいる自分がいたんです。でもいろんな人と出会っていく中で、SNSの匿名の人の言葉よりも、自分の半径何メートルにいる人の言葉を大事にしていきたいと思った時に、灯台下暗しじゃないですけど、自分の居場所はここにあるんだよという気持ちを形にしたいと思って作った曲ですね。今の時代はSNSありきのコミュニケーションですし、SNSを取り入れながら人とつながっていくことは大事なんですけど、取り扱い方を間違えると、傷つかなくてもいいことで傷ついてしまったり、すごく大変な世の中だとは思うんです。それだけ技術が発展しても、自分の目の前にいる人たちを大事にしていったほうが、その人にとって明るい未来が待っているんじゃないか?というふうに、自分が体験して思ったことを、寄り添うように伝えられる曲があったらいいなと思って書いた曲です。

――「サイコパスのうた」が出た頃のインタビューで“別に傷ついてないですよ”みたいなことを言ってましたけど。実はけっこう傷ついていた。

海蔵:たぶん、両極端の自分がいたんだと思います。傷ついていないふりをしないと、正直しんどいなと思っていた時期だったのかもしれないし、あらためて時間を置いた時に、やっぱり傷ついている自分もいたんだなと思ったり。自分は強い人間だと思っていたんですけど、意外にセンシティブな部分もあるということがわかりました。

――ある意味、そうやって身を削って歌ができていくわけですか。

海蔵:そうですね(笑)。でもこういう作品ができるのも、槇原敬之さんを好きになったのがきっかけだなと思います。

――9曲目の「良いことがありますよーに」。これも海蔵さんの歌のメッセージの基本になる、タフで強いポジティブ思考がよく出た歌詞だと思います。

海蔵:最近まで毎日、SNSに絵日記みたいなものを上げていたんですけど、最後にいつも「明日はいい日になりますように」というような言葉を書いていたので。自分でも大事にしている言葉なんだなと思ったんです。それをタイトルにした楽しい曲を作りたいと思って作りました。

――この明るい曲がここにあることで、明るい気持ちになれます。

海蔵:ハッピーなのが一番ですからね。

――歌詞の事をメインに聞いちゃいましたけど、このアルバムはサウンド面でも、さっき言ったシティポップ風だったり、ラテンだったり、10曲目「待ちぼうけ」がジャズっぽかったり。曲調やアレンジ面での満足度は?

海蔵:今回は本当に楽しんで作れたと思います。過程は大変だったんですけど、完成した時に思ったのは「楽しかったな」ということだったので、大成功だったと思いました。

――特にチャレンジだった曲調の曲はありますか。

海蔵:僕は、実はバラードを歌うのがそんなに得意ではないんですよ。

――それはとっても意外かも。

海蔵:たくさん歌ってきてはいるんですけど、バラードに対しては、未だに正解がわからない部分があるんです。1曲目の「会いたい会えない」も、作ったはいいものの、どうやって歌えばいいのか、毎回バラード系は考えさせられますね。ひと言の歌い方を変えるだけで、全然意味合いや感じ方が変わっちゃうぐらいバラードって繊細なんです。歌いやすいとは思うんですけど、すごく繊細なジャンルだなと思っているので、今回のアルバムの中では「会いたい会えない」が一番悩みました。歌っていないところもすごく大事だなというか、それは全部の曲がそうなんですけど。

――最後に入っている「誰そ彼-2022-」も、ピアノとアコースティックギターのバラード。

海蔵:これは、去年シングルで出したもののリアレンジ版なんですけど、オリジナルの壮大な曲に対して、これこそ本当にすごく狭い空間で、目の前の一人の人に耳元で語るようなイメージで歌いました。歌も一緒に「いっせーのせ」で録ったんですけど、今回、けっこうそれが多いんです。「会いたい会えない」もそうですね。今思うと、もっとこうしたかったなとか、いろいろあるんです。でもちょっと声が震えているところも味だなと思ったり、リアルさは伝わっているのかな。

――素敵なアルバムです。あえて狭い世界観で、手渡しで一人に届けるような歌が、今の時代にも合っていると思います。

海蔵:没入していただけたらうれしいですね。

――そしていつか、生のライブへぜひ。

海蔵:そうですね。エンタテインメントのあり方がどんどん変わっていきますけど、僕にとって一番大事にしたいのは生のライブなので。ファンの人たちが来てくれた時に「やっぱり生はいいよね」と思ってもらえるように、これからももっと精進していかなきゃいけないと思いますし、ファンの人には僕の澄み切った声が好きと言ってもらえているので、そこを濁さないようにもっと頑張らなきゃいけない。それを一番に感じてもらえるのがライブだと思っています。今はこういう世の中で、頻繁にライブをすることは難しいかもしれないですけど、少しでも世の中が良い方に変わって、またライブをする時に、みなさんに来てもらえたらうれしいな。

取材・文:宮本英夫

■3rdアルバム『コトダマ』

2022年2月23日リリース
【TYPE-A】(CD+DVD) CRCP-40635/¥4,500(税抜価格¥4,091)
【TYPE-B】(CD) CRCP-40636/¥3,000(税抜価格¥2,727)
[TYPE-A/B共通]
CD
1.会いたい会えない
作詞:海蔵亮太 作曲:海蔵亮太・おだともあき 編曲:持山翔子
2.night light
作詞:やぎぬまかな 作曲・編曲:宮野弦士
3.君を好きになることが どんな罪になるって言うの?
作詞:海蔵亮太 作曲:海蔵亮太・おだともあき 編曲:SUI
4.Style
作詞・作曲・編曲:きなみうみ
5.旅立つ僕らに
作詞:海蔵亮太 作曲:Siwoo・Kuma.P 編曲:SUII
6.いつか
作詞:海蔵亮太 作曲:海蔵亮太・おだともあき 編曲:武藤良明
7.距離
作詞・作曲:海蔵亮太 編曲:橋口佳奈
8.ここには
作詞・作曲:海蔵亮太 編曲:SUI
9.良いことがありますよーに
作詞・作曲:海蔵亮太 編曲:SUI
10.待ちぼうけ
作詞・作曲:海蔵亮太 編曲:持山翔子
11.誰そ彼 -2022-
作詞:重永亮介・加藤哉子 作曲:重永亮介 編曲:武藤良明・持山翔子

[TYPE-Aのみ]
DVD
海蔵亮太 LIVE 2021「Restart」
@渋谷・duo MUSIC EXCHANGE (2021.11.23)より
1. 抱きしめて
2. 繋がってる…
3. エイリアンズ
4. 僕が歌う理由(わけ)
5. 誰そ彼
6. 愛のカタチ
※海蔵亮太 LIVE 2021「Restart」-Behind the Scenes-
※「誰そ彼」MUSIC VIDEO
※「会いたい会えない」MUSIC VIDEO (Another Ver.)

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