【インタビュー】Rhythmic Toy World、「青と踊れ」ポジティブなパワーに満ちたスケールの大きなサウンドと心の奥に寄り添う歌詞

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Rhythmic Toy Worldが、2022年1月31日に新曲「青と踊れ」を配信リリースした。新体制となってからの本格的な活動スタートとなるこの曲は、京都文教中学高等学校ダンス部とのコラボレーションで、同校から総勢85名の部員が参加したMVも発表され、制作過程を追ったドキュメンタリーも含めて話題となっている。気持ちが沈みがちな状況の中、そのスケールの大きなサウンドと心の奥に寄り添う歌詞は世代を問わず聴く者にポジティブなパワーを与えてくれる。楽曲を巡る一連のエピソードやそこに込められた思いについて、ボーカル・ギターの内田直孝に話を訊いた。

■感覚的に“33歳の高校生”だと思って書いたんです
■「33歳・内田直孝、高校へ行く」みたいな感じです(笑)


――「青と踊れ」は、2021年にドラマーの磯村(貴宏)さんが活動を休止して新体制となったRhythmic Toy Worldにとって、初めての新曲リリースとなりますね。まずは昨年からここまでどんな思いで活動してきたのかお聞かせください。

内田直孝(Vo.Gt/以下、内田):自分のバンド人生に於いて、メンバーが変わるというのは2度目の体験だったんです。一度目は、このバンドを始めてまだ4か月ぐらいのときに経験したいて、そのときに前のドラムに代わって磯君(磯村貴宏)が入ったので、Rhythmic Toy Worldの歴史のほぼ100%、この4人で歩んできたと言えるんです。なのでやっぱり、寂しいとかっていう言葉ではなかなか形容しがたいことではありました。ただ、メンバーそれぞれの人生や考えを尊敬しているし、尊重したいと思ってずっとこのバンドをやってきたからこそ、12年続けてこられたと思っています。その直感には素直にいたいと思って、メンバーが新たな決断を下したのであれば、そこは友として、家族として、仲間としてそれを受け入れることが一番Rhythmic Toy Worldらしいと思ったんです。それは他のメンバーもおおむね同じでしたし、じゃあ最後の公演に向けてどういう風に時間を過ごすかということを考えていました。最後のライブを終えたときは涙が止まらなかったですけど、涙を流せる関係性であることが、何よりも良いことだったなって感じています。それはこのバンドの1つの真っすぐな精神の証だった気がします。それもあって、次の作品を発信していこうと決めたときに、Rhythmic Toy World結成時にメンバーが何の根拠もなく「このバンドはすごく良い、すごくカッコイイ」と思ったときのまま、楽曲を作って人に届けようと思ったんです。その方がたくさんの方に聴いてもらえるんじゃないかなっていうところで、ここ数年の作品の作り方とは根っこの部分から違いました。

――それは、「青と踊れ」だけじゃなく?

内田:「青と踊れ」もそうですし、今度出すアルバムに入る曲もそうです。「青と踊れ」に関しては、コロナという不測の事態がきっかけとなって生まれた楽曲ですし、コロナがなければ矢下君(京都文教中学高等学校ダンス部顧問・矢下修平先生)から連絡が来ることもなかったかもしれないですし、この企画自体がこの世に生まれていなかったかもしれないなと思うと、つくづく人の人生は奇跡的なものだなって。でもそれは自分のこれまでの日々が手繰り寄せてきたことで、今の自分がどういう未来を手繰り寄せていくのかっていうところにすごく胸を躍らせている状態です。そういう僕らを見て、ファンのみなさんとか仲間とか、いろいろな人がほんの少しだけ「もうちょっと頑張ってみようかな」ってなってくれたらすごく嬉しいなって、今はそういうモードです。


――「青と踊れ」は、今お話に出た矢下修平先生からの連絡がきっかけになったそうですが、もともとはどんな関係だったんですか?

内田:高校の同級生だったんですけど、クラスが一緒になったのは高3のときだけだったんです。でも、1年生のときからお互い存在は見知っていて。彼はダンス部のエース的ポジションで、僕も陸上部でそれなりに成績を残していて看板を背負っているポジションということで、部活の垣根を越えて仲が良かったんです。ある意味、違うフィールドで戦っているからこそ、変な嫉妬心とかないし、お互い普通に褒めあえるというか。高3でクラスが一緒になったときには、ほぼほぼ毎日つるんでました(笑)。授業もそうですし、昼ご飯もそうですし、学校にいる間、部活以外の時間は基本的に行動を共にしているような感じの仲でした。

――その後も、矢下先生はRhythmic Toy Worldのライブを観に来たりはしていたそうですが、再会は13年振りということでしたね。

内田:そうです。今回はちょっと関係性が違ったというか、プロジェクトを成功させるために、向こうは学校の代表として、僕は僕らの音楽を作る上で先陣を切って何かを作るということだったので、初めて同じフィールドでお互いのアートをぶつけ合う感覚はあったかもしれないです。お互いより良いものを作るために、僕は向こうのダンスに負けない音楽を作ろうと思いましたし、向こうはきっと僕らの音楽に負けないダンスをっていう気持ちで挑んでくれていたと感じていたので、すごく気持ちの良い戦いでしたね(笑)。

――プロミュージシャンに直接曲を依頼することってなかなかないので、ちょっと躊躇してしまう気がします。

内田:例えば人に何かしらを頼むとか話を持ち掛けるときって、僕ら大人はどこかビジネスが絡んでいると思うんですよね。そういうのって、それをすることによって自分にどうやって利益をもたらすかとか、そういうのが見え隠れしちゃうからこそ、頼みづらかったりする。矢下先生からの話は、そもそもそういうビジネス的観点ではなくて、ただ友として自分の近況を話し合った中で、彼が生徒さんや今までの教え子さんにすごく誇りを持っていることを感じたんです。だから、難しいことじゃなかったというか。だって、そういうことをしたくて僕たちはずっと続けてきたわけですから。何も手に入れていなかった学生時代に、「将来、お互い好きなことをやっていて、一緒に仕事とかで会えたらめっちゃかっこええやんな」っていう、なんのこともない昼下がりに話していたようなことを、ついに実現できるチャンスが目の前に来たら、是が非でもやりたい。めっちゃ面白いし、一つのプロジェクトで他の人に元気が広がっていくようなことがその時点で見えていたので、こんなことが音楽で出来たら本望じゃないですか。だから、いろんなことは抜きにして、「こういうことやりたいな!」「こうやったら面白いんちゃう!?」って勝手に僕らの中で盛り上がっちゃって。それで早速、次の日にマネージャーに、「こういう話で盛り上がったんだけど!」って伝えて始まった感じです(笑)。

――そうした純粋な気持ちで始まったプロジェクトへの感謝を、矢下先生、生徒さんたちが内田さんに伝える場面がドキュメンタリーの中にありました。内田さんも、感極まっていましたね。

内田:なんか、卒業式の先生の気持ちみたいな(笑)。曲を提供している側としては、素敵な思い出や好きなことを好きだと言い続けられることの素敵さだったりとかを、この子たちに感じてもらえたら、それだけで僕はもう本当に幸せだったんです。そういう見返りみたいなものを求めていない状態で、ああいう真っすぐな目で感謝な気持ちを伝えてもらえるっていうことは、なかなか経験できることじゃないので。だから不思議な感じでしたね。経験したことのない心の動き方というか。それで気付いたら涙が出てきていました。



――生徒さんたちの姿を見たら、「中高生ってこんなに清々しいんだ?」ってビックリしちゃいました。

内田:いやあ、そうなんですよね。本当失礼な話、「僕の中高生の頃ってこんな素敵やったかな?」って思っちゃいました(笑)。俗に言う不良みたいな感じではなかったですけど、かといって、超優等生だったかというとそうでもない。学校に親が呼び出されたり家に先生が来たりっていうのは、一通り経験しているので。僕の人格を今でも形成しているところの一つだと思うんですけど、学生の頃から何でもかんでもうがった見方をする癖があったんですよ。でもそのうがった考えをなんでしていたのかを今思い返すと、たぶん子ども扱いされたくなかったんでしょうね。自分がどれだけ頑張って答えを出すのに悩んでいても、大人たちが明らかに僕よりも正しいことを知っていて、「もう答えを知ってるけどね」みたいに振る舞われるのが、きっとすごく嫌だったんですよね。「なんで俺の人生の答えをこの人が知ってんのやろ?そんなわけないのになあ」って。それは反骨精神にもつながってると思うんです。「この大人より魅力的になりたい」とか(笑)。そういうところは、歌詞にもちょっと散りばめていたりするんですけど。

――中高生へ向けた「青と踊れ」の歌詞を書く上で、どんなことを一番考えたのでしょうか?

内田:最初は、彼らの今感じていることは何なのかとか、15歳~18歳の子たちの目線に立ってこの世界を見たらどうなのか、という入口から入りました。でも、それがなんか違うなって思い始めて。僕は僕であって彼らじゃないし、彼らは彼らで僕にはなれないから。僕が彼らになったつもりで書いた言葉より、僕が僕として言葉を紡いだ方が、伝わるんじゃないかなっていうのもあって。僕は今33歳なんですけど、感覚的に“33歳の高校生”だと思って書いたんですよね。だから、18歳のときの考えではなくて、「33歳・内田直孝、高校へ行く」みたいな感じです(笑)。クラスメイトに33歳のやつがいる、みたいな。

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