【ライブレポート】Little Black Dress、歌謡曲に魅せられて

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“リト黒”ことシンガーソングライターのLittle Black Dressが、2021年10月に続いて再び<CITY POP NIGHT>と題し、Blue Note Tokyoに帰ってきた。2月18日に2ステージ行なわれたライブのうち、1stセットの模様をレポートする。

◆ライブ写真

Blue Note Tokyoデビューを飾った前回の公演(ライブレポート:https://www.barks.jp/news/?id=1000209256)では、荒井由実の「中央フリーウェイ」や大貫妙子の「4:00AM」など、時代を超えて愛されるシティポップの名曲の数々を見事にカバーした彼女。シリーズ第2弾の今回は、バンマスのDevin Kinoshita(Key)、休日課長(B/ゲスの極み乙女。、DADARAY)、鈴木明男(Sax)といった引き続きの顔触れに加え、さらなる凄腕プレイヤーとして吉田サトシ(G)と佐々木久美(Org,Cho)、歌ものからインプロまで多彩に叩き分けるレジェンドドラマーの山木秀夫を新たに迎えた計7人の布陣で臨む。


フロアに入ると、“King Of Diggin'”ことMUROのスペシャルオープニングDJがお出迎え。山下達郎「メリー・ゴー・ラウンド」や竹内まりや「夢の続き」といった洒脱なBGMで、場内は早くもシティポップ色に染まっている。そして、キュロットスーツ+ブーツを黒でまとめ、インナーにシルバーのラメニットを合わせたLittle Black Dressを筆頭に、バンドメンバーがステージに揃い、松原みき「真夜中のドア〜Stay With Me」で第2回<CITY POP NIGHT>の扉が開いた。テレキャスターを弾いて歌うリト黒の伸びやかなボーカルはもちろん、やはり脇を固めるメンツの存在感もすごい。Devinのエレピと佐々木のオルガンを軸に生まれる心地よいアンサンブル、流れるように決まる鈴木のサックスソロ、吉田のギターソロなどに一瞬で胸がときめいてしまう。

続いては、山下達郎関連のナンバーをメドレーでお届け。山木のシャープなフィルインから「DOWN TOWN」が始まれば、爽快感が一気に増し、ノリノリで踊る課長のベースラインやサビで寄り添う佐々木のコーラスも映える。タンバリンを片手に歌うLittle Black Dressは前回のブルーノート公演よりも余裕があって、心なしか声が太くなったような印象だ。「プラスティック・ラヴ」「あまく危険な香り」では、ステージ上に用意された椅子に腰かけてのパフォーマンスを見せたり、シェイカーを振りながら大人っぽく聴かせたり。楽曲ごとに表情をガラッと変えては、集まった多くの観客たちを存分に魅了していく。


「みなさんのおかげで<CITY POP NIGHT>も第2弾となりまして、ブルーノートでイチオシの企画と言われているそうです。えー、冗談はさておき(笑)。このような状況下で今日という日を迎えられたこと、こうしてたくさんのお客様にお越しいただいたこと、豪華なメンバーといっしょにBlue Note Tokyoで歌わせていただけること、本当にありがとうございます」と、最初のMCタイムで挨拶したLittle Black Dress。

さらに、<CITY POP NIGHT>を開催するきっかけとして歌謡曲が大好きであること、元を辿れば自身が小さい頃に家族の車でいつも流れていたのが大きいということ、レギュラーを務めるラジオ番組のおかげでより歌謡曲の魅力にハマッたことをあらためて話し、本公演のセットリストはラジオの弾き語りコーナーに寄せられたリクエストやインスタライブでのコミュニケーションが基になっているとも明かした。

「だから、みなさんと作っているライブです。ほとんど知ってる曲ですからね、心の中でぜひいっしょに歌ってください」——そう言って演奏されたのは、寺尾聰の「ルビーの指環」と稲垣潤一の「ドラマティック・レイン」。いずれもロマンティックな詞の世界観が際立つ80年代の名曲で、今度は哀愁たっぷりのストーリーに浸らせてくれる。その音域の広さや歌唱力の高さで男性シンガーの渋みも表現できるあたり、本当にレパートリーが豊富。何より、彼女自身がシティポップで彩ったステージを心底楽しんでいる感じがとてもいい。直後のMCでも「ルビーの指環」を編曲した井上鑑が大好きと語り、お気に入りの曲として稲垣潤一「夏のクラクション」、大瀧詠一「幸せな結末」、小泉今日子「木枯しに抱かれて」を挙げたり。松本隆の作詞活動50周年記念イベント<風街オデッセイ2021>に足を運んだときの話で、同ライブに出演した山木と佐々木とともに盛り上がったりと、あふれんばかりの歌謡曲愛に、観る側も思わず頬が緩む。


中盤で印象的だったのは、2021年にNHKの音楽番組『うたコン』でも披露した八神純子の「みずいろの雨」。吉田が爪弾くボッサ調のアコギにLittle Black Dressがスキャットを重ねる幕開けから恍惚として聴き入ってしまう味わい深さがあり、次第にジャジーなアレンジに移る中、「ずっとカラオケの十八番だった」「雨で人の心模様を表すっていうのは、日本人ならではの感性でとても好きです」と演奏前に話していたリト黒の感情の込め方、楽曲への憑依ぶりが絶品で、歌謡曲に対する想いがより生々しく伝わってきた。

ライブ後半は、ファンキーなグルーヴが冴えわたる角松敏生のアーバンチューン「After 5 Crash」を投下。ミラーボールが美しく輝き、リト黒の誘いでフロアに手拍子が起こり出すと、間奏ではメンバー紹介に合わせて、課長→吉田→Devin→佐々木→山木→鈴木の順で各パートが華麗なソロ回しも。そして、その勢いのまま“City Pop Girls”メドレーへ突入。杏里「CAT'S EYE」から、泰葉「フライディ・チャイナタウン」、大橋純子「シンプル・ラブ」、松任谷由実「BLIZZARD」までを彼女らしく情熱的に歌い上げ、本編をきりりと締め括った。レジェンドを含む手練バンドの演奏でシティポップを直に吸収しながら躍動するリト黒、ダイナミックなボーカルに引っぱられて血が騒ぐ名プレイヤーたち。互いに刺激し合っているようなステージを観られるのが、この<CITY POP NIGHT>の醍醐味かもしれない。

「“シティポップは日本の時代の象徴で、文化の象徴だと思う”と、山木さんがラジオ番組で話してくださったのが印象深くて。洋楽からのオマージュもありつつ、その中で日本人ならではのオリジナリティが培われて、それがリアルタイムを知らない私たちの世代や海外の方に魅力的に映っているんだなと感じました。自分も音楽を作る身として、どう生きたのかという証を残していけるようなシンガーソングライターになりたいです」


Little Black Dressのそんな言葉が聞けたアンコールでは、「令和のシティポップをお届けいたします」と自身のオリジナル曲「雨と恋心」を、文化を受け継ぐようなトーンで、このメンバーのクリエイティビティが光るアレンジで披露。ラストは再びアッパーに転じ、1986オメガトライブの「君は1000%」、アン・ルイスの「恋のブギ・ウギ・トレイン」をメドレーで活き活きと繋ぐ。都会の夜を彩る華々しいサウンドに加え、アウトロにおけるリト黒と鈴木の掛け合いが最高で、彼女のシャウトにむせび泣くサックスが応えるというライブ感に満ちた大ハッスルぶりに、バンドの全員から屈託のない笑顔がこぼれる。オーディエンスのボルテージもピークに達し、万雷の拍手があふれる中で7人はステージを後にした。


個性の強いバンドメンバーを牽引し、ニューミュージックやAORなどをひっくるめてシティポップの魅力を新鮮に伝えてくれたLittle Black Dress。レジェンドたちとの邂逅を含め、素晴らしい瞬間が目白押しのイベントだけに、第3弾の開催を願っているファンもきっと多いのではないかと思う。また、ライブ中には山木をドラマーに迎えて新曲をレコーディングしたという話があったので、次のリリースも気になるところ。続報を楽しみに待ちたい。

取材・文◎田山雄士
写真◎Santin Aki









セットリスト

1.真夜中のドア〜Stay With Me
2.TATSURO'S Medley
 DOWN TOWN
 プラスティック・ラヴ
あまく危険な香り
3.ルビーの指環
4.ドラマティック・レイン
5.みずいろの雨
6.After 5 Crash
7.City Pop Girls Medley
 CAT'S EYE
 フライディ・チャイナタウン
 シンプル・ラブ
 BLIZZARD

en1.雨と恋心
en2.Medley
 君は1000%
 恋のブギ・ウギ・トレイン

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