【インタビュー】JOSUKE、国境を越えた反応を集める“再構築”の芸術。1st AL『Beyond The Sin』

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ロックバンド「SINSEMILLA」を経て、2011年に一旦音楽活動を休止。バンドメンバーと「株式会社アートリー」を立ち上げて以降、精力的な事業展開を続けているJOSUKE。ユニークなプロフィールも目を引く彼は、2018年からソロ名義での楽曲リリースを重ねている。そして1月29日から配信がスタートしたのが、バンド時代の楽曲をダブステップ、フューチャーベース、EDM、R&Bサウンドで再構築した1stアルバム『Beyond The Sin』だ。これまでにリリースした楽曲が海外のApple MusicのJ-POPチャートで1位になるなど、国境を越えた反応を集めている点にも注目させられる。完成したアルバムと、活動のビジョンについて、JOSUKEにじっくりと語ってもらった。

◆『Beyond The Sin』収録曲MV

■かつてのバンドサウンドが
■エレクトロ、EDMのビート主体にアップデートする瞬間


──バンド活動をしていた時期を経て、会社を立ち上げたんですよね?

JOSUKE: はい。「アプリとかIT関係をやろうか?」ということで。もともとインターナショナルスクールに通っていて、幼少の頃からパソコンに触れていたんです。中学の頃からプログラミングをやっていて得意だったので、そういう背景から仕事を受けるようになって法人化していった……というような流れでしたね。

──主にどういう事業を展開しているんですか?

JOSUKE: システム開発、アプリケーション開発、ウェブデザインが軸になっています。それに加えて約2年前、丁度コロナの影響で最初の緊急事態宣言が出た頃にスタジオが着工して、わりと広い52坪のスペースも経営しています。バンドをやっていた頃に活動と並行してラジオパーソナリティーをしていた背景もあって、「番組作りの経験がビジネスに活かせるんじゃないか?」って考えて、インターネットテレビ番組みたいなものができるスタジオを作ることにしたんですよね。コメダ珈琲店さんのコラボCMを制作したり、動画、広告写真、番組制作、ライブ配信のアプリケーションを作ったりと様々な展開をしています。

──事業展開をする中でクリエイターチームの体制が整ってきたのが、JOSUKEさんの音楽プロジェクトの始動に繋がったとお聞きしています。

JOSUKE: はい。楽曲制作は継続してやっていたんですけど、アーティストのクリエイティブ面を手掛けている友人に相談した際にあるクリエイターを紹介してもらって、「SINSEMILLAの曲をバンドサウンドで終わらせるのがもったいない」と思ったというか。1周回ってバンドサウンドに戻るのもいいんですけど、全世界の状況を踏まえるとエレクトロ、EDMのビート主体の感じにアップデートしてもいいんじゃないかと。それでエレクトロミュージック、ダブステップ、EDM系のものにアレンジャーさんに編曲してもらうっていう発想が生まれたんです。主にお願いしている菅原一樹さんはギタリストでもあって、ロックを通ってきているんです。同い年で価値観が似ているのもあって、僕の好きな感じで表現してくれるんですよね。それが今のサウンドの感じに繋がったということだと思います。

──JOSUKEさんは、幅広く音楽を聴いてきたそうですね。ロックの他にも、ヒップホップ、R&Bとか。

JOSUKE: はい。インターナショナルスクールに通っていたのもあって、小学校の頃からバンド系だったらKORN、LIMP BIZKITとか。その他にもEMINEM、ブリトニー・スピアーズとか、当時の洋楽をたくさん聴いていました。その一方でSHAZNAが好きでIZAMさんのコスプレをして学校に来ていた友達もいたり(笑)。周りの影響で幅広く多国籍な音楽を聴いていました。バンドでは作曲もしていたんですけど、周りにヒップホップとかも聴く人がいたので、そういうのに触れていたのもルーツになっています。

──SINSEMILLAとして活動していた時代は、ギター、ベース、ドラム、ボーカルによる編成のロックバンドでしたけど、その頃の曲をアレンジし直した楽曲のリリースを、ソロプロジェクトでは重ねていますよね?

JOSUKE: はい。大きく変わったのは2点ですかね。ロックからエレクトロサウンドになったことでビートが変わったのと、歌詞は多少手直しが必要でしたね。さらに付け加えるならばボーカルレッスンも受けるようになったので、昔と比べると歌い方も変わりました。

▲『Beyond The Sin』

──1stアルバム『Beyond The Sin』は、1曲目の「Intro」以外は、SINSEMILLAの曲の再構築ですか?

JOSUKE: そうです。

──「夢の中で」は、2018年12月に配信された際にフランスのApple MusicのJ-POPチャートで1位になったんですよね?

JOSUKE: はい。インスタグラムで広告配信をやったりもしているんですけど、海外はマーケティングの観点で広がりがいいというか。広告単価が安いのでやっていたら、向こうの国でバズったという感じでした。GYAO!で「蜉蝣」のMVがいきなり90万回再生とかされて、「どういうこと⁉」って驚いたりもしましたね。



──「蜉蝣」もロシア、イタリアのApple MusicのJ-POPチャートで1位になりましたが、積極的に海外展開しているという感じではないんですか?

JOSUKE:SNSで海外にも発信しているというのはありますけどね。フォロワーを増やす目的ということならば例えば中東、地中海沿岸のモロッコ、アルジェリア、トルコとか、あの辺に展開するとファンはめちゃくちゃ増えるんです。でも、違法アプリで聴かれることが多いので再生数に影響しないっていうのもあるんですが(笑)。

──(笑)。日本のカルチャーに関心がある層が、海外の各地にはたくさんいるっていうことですよね?

JOSUKE: そういうことですね。中東とか、結構熱いのかもしれないです。BTSとかの影響もあるのかもしれないですけど。

──BTSの人気が東アジア全体のカルチャーへの関心に繋がっているんですかね?

JOSUKE: そうかもしれないです。あと、アニメによって日本に対する興味が生まれている部分もあるでしょうし。アニソンはかなり浸透していると思います。僕に関しては「1再生を稼ぐには海外も日本も同じだろう」という考え方で、マーケティングの観点からもコストが安い海外にも打ち込んでいった結果、こういう感じになっていったんですけど。日本は音楽市場のマーケットとして世界2位らしくて、Spotifyの日本のチャートで1位とかになるとグローバルチャートで20位とかに入っちゃうんですよ。だからそういうことを通じて海外でも日本の音楽の認知が高まったらいいですね。僕からすると、J-POPのメジャーシーンにいる人たちも広がっていって欲しいという気持ちがあります。切り拓いていってくれると、僕も展開がしやすくなるので。

──Apple Musicのグローバルチャートを聴いていると、J-POPが結構上位に入っていますよね? 最近ですとAimerさんとか。

JOSUKE: グローバルチャートの中にJ-POPが入っていると、サウンド的な面で重心が高いような印象があります。低音の位置が高いというか。だから“グルーヴ”というよりも“ドライヴ”、“曲を浴びる”っていう感じのサウンドが多いのかも。でも、世界的にはグルーヴがメインだから、低域で音楽を作っているのが今の主流ということですね。

──JOSUKEさんの現在の音楽性もダンスミュージック的な方向性ですから、どちらかと言えば海外の潮流に沿っていますよね?

JOSUKE: はい。そうなったのは運が良かったのかもしれないですね。 基本的に4つ打ちやトラップビートを取り入れていますから。トラップのあのグルーヴの感じはバンドにも通ずるものがありますし、自分が過去にやっていたものと共通するものがあるのかなと思います。

──そういう要素が基盤にありつつも、メロディとかも含めて和的な情緒のようなものが漂っているのがJOSUKEさんの音楽だという印象を受けました。そこが海外のリスナーにとっても新鮮なのかも。

JOSUKE:今回のアルバムの原曲を作ったのは15年前とかで、ヴィジュアル系の音楽をたくさん聴いていた時代なんです。だからメロディとかはそういう雰囲気が出ているのかもしれないですね。でも、それを今のビートに合わせるような調整を意外とした結果、メロディが微妙に変わっていたりもします。

──「夢の中で」「蜉蝣」「花化粧」とか、まさに和的な情緒を感じる曲です。

JOSUKE:自分で自分が作った音楽を評価するのはなかなか難しいですけど、わりと個性的なものになっているのかなと思います。グローバルなシーンで聴かれるには、何か明確なジャンルみたいなのがないと難しいというのはあるんですけど。やはりプレイリストの一環で聴かれるものなので。その点は今後もっと考えて、何らかのジャンルみたいなものに寄り添っていく必要があるのかもしれないです。

──国によっての傾向の違いはもちろんあると思うんですけど、海外のみなさんはどういうところに反応してくださっている印象がありますか?

JOSUKE:まずビジュアルの部分に対する反応が良いっていうのは感じます。あとは声ですね。でも、メロディラインに関してはどうなんですかね? 「曲が好き」というのは言ってもらえるんですけど、細かな分析はまだできていないです。

──JOSUKEさんにとってアートワークも含めたビジュアル表現は、サウンドと同列ですよね? 「花化粧」のMVに出てくるたくさんの花で作られた壁とか、すごく印象に残りましたから。

JOSUKE:あの花の壁、かなり大きいんですけど、自分たちの手作りだったんですよ。ああいうものも自分たちで作ったりしているので、やっぱり自分の表現活動って幅広い要素を含めたアートなのかなと思っています。活動がまさに“インディーズ”なんですよね。MVはもちろんそうだし、プラットフォームとかも自分たちで作っちゃいますから。やはり普段からそういうのを仕事としてもやっているので、クオリティは高くなるというか。でも、やっているこっち側の気持ちとしては自分たちで手作りをしているインディーズなんです。


──極端な言い方をするならば、学園祭の準備をしているような感覚?

JOSUKE:まさにそういう感じですね。今は個人の起業家もそうですし、DIYアーティストがどんどん出てきていますからね。それこそ普通の高校生が作った曲がサウンドクラウドでバズったりすることも起きていますし、いろんなことが個人でできてしまう時代になっているんだと思います。でも、音楽はもちろん、ダンスとか様々な分野のクリエイターが非常に増えてきているので、選んでもらえるための理由となる何かがきちんとないと難しいのかなと。今は小学生が作った何かがブレイクする可能性だってあるんですから。

──現在は名古屋を拠点として活動していますが、インディーズのDIY精神に根ざした発信が、今後さらに世界に広がっていったら、すごく刺激的ですよね。

JOSUKE:はい。海外の人にとってはJOSUKEが日本で有名で売れているかどうかは、正直なところわからないわけです。例えばクロマキーとかを使って撮影して、日本武道館みたいな大きい会場でライブをやっている映像を作っても、それが本当の状況として受け止められるかもしれない(笑)。でも、そういうコンテンツも表現の1つとしてあってもいいのかもしれないですね。

──サウンドに関しても幅広いですから、様々な国で新鮮な音楽として受け止められる可能性が、まだまだあると思います。例えば「届かぬ想いに遊みながら」とか、先程申し上げた和的情緒とかとはまた別の風味を感じる曲です。

JOSUKE:あれは僕の中ではミクスチャーという位置づけですね。原曲の要素をかなり活かしたんですけど。ヴィジュアル系の音楽へのオマージュというか、ヴィジュアル系って、音楽的には何でもありですから。

──ヴィジュアル系は日本国内だとロックバンドの主流という感じではないのかもしれないですけど、海外での人気を確立するバンドが現れているじゃないですか。あれは興味深い動きですよね。

JOSUKE: ヴィジュアル系はもともとニッチな層にアプローチしてきたわけですけど、それが海外に進出して分母が大きくなったというか。だから海外にも広がっていくことに繋がったのかもしれないです。自分が今やっている活動も、そういうことと同じなのかもしれないですね。

◆インタビュー(2)へ
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