【インタビュー】mzsrz、等身大の思いを届ける1stアルバム「あのときの私と同じように悩んでいる人に聴いてもらえたら」

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■あのときこういう曲が自分にあればよかったのにな、救われたのになって思う

──みなさんいろんな背景がありますね。デビュー曲の「夜明け」では、プロデューサーであり曲を手がけたDECO*27さんがみなさんにインタビューをして、曲を作り上げたということですが。インタビューではどんな話をしたんですか。

ゆゆん:最近悲しかったことや腹立てたこととかなんですかって聞かれたり、楽しかったことや嬉しかったことは何?とか、本当に些細なことから、趣味まで幅広くという感じでしたね。

──それが「夜明け」という曲になって、曲をもらったときってどうでした。

よせい:初めてデモを聴いたときは、「これ歌えるの?」っていうのが率直な感想でしたね。歌がすごく速い、高速パートがあるんです。そこは何回練習しても噛むなっていう(笑)。これはヤバイぞって思いながら、でも歌詞を見たらすごくいい歌詞で。“ここで泣いていいよ 違ってもいいよ”とか、自分が悩んでいるときに聴いたらすごく励まされるし、勇気をもらえる曲だなって思って。「ヤバイ!」の後に、「めっちゃいい曲!」「好き!」っていう2段階がありました。

──これは自分があのとき話した思いが入っているなというところも?

作山 由衣:自分が歌うパートが、DECO*27さんとインタビューしたときのものなのかなと思ってデモを聴いたんですけど、そのインタビューで私が言わなかったことが歌詞になっていたんです。でもその歌詞が、私がいちばん悩んでいたことと一緒で。心を見透かされていたのかなって驚きました。あとは、mzsrzは不特定多数のあなたや私の日々のミクロな心の機微をつづる“micro music”をコンセプトにしているんですけど、インタビューのときに話した日常の些細な悩みとかが、micro musicというものにつながっていて。歌って、漠然とした不安があるときとか、例えば失恋したときとか自分の人生での大きな事件が起きたときとかに聴くものって思っていたんですけど、こうして自分に寄り添ってくれる身近な曲っていうのがあるんだなって感じて。自分たちがこういうテーマで活動をできることは、たくさんの人を救うことができそうだなって感じて。期待感や、嬉しい気持ちがあります。



──作山さんが見透かされていたっていうのはどんなところですか。

作山 由衣:2番の最初の部分、“答えを探して 迷い込んだ/僕の“正解”はなんだろう? わからないままで“というところです。自分の個性が、今でもあまりよくわかっていないし、見つけられていないんですけど、この歌詞を見てDECO*27さんも私の悩みに共感してくれているんだって思って。すごく安心したし、嬉しいなって思えました。

──実果さんは「夜明け」という曲ができて、どう感じましたか。

実果:よせいと同じで、最初は「うん、これは歌えない。速い!」ってびっくりしましたね。歌割りを見ると、私は1番の出だし部分、“光も届かない 暗い部屋で/辛くたってひとりで抱え込んでいたんだ”というところを歌っているんですよ。私、もともと家で歌を歌うときに迷惑にならないようにって、クローゼットのなかで歌っていたんです。あそこって本当に暗いんですよ(笑)。暗くし、何かつらいことがあったらそこで爆音で音楽を聴いて泣いてるみたいな生活をしていたので。ああ、あのときの感じだって思って。歌うときも思い出されます。


──どういうことでつらくなってしまうことが多かったですか。

実果:学校生活でも、普段の生活でも、自分はなんでこれができないんだろうって思うことがすごく多かったんです。

──そこで音楽が助けてくれたんですね。

実果:そうですね。

──ゆゆんさんはどうですか。

ゆゆん:mzsrzが結成され、そこからDECO*27さんにプロデュースをしてもらうことが決まって、すごいワクワクしていたんです。「夜明け」のデモ音源を聴いたときは、私も早口の部分が歌えるか不安でした。でも歌詞がすごく良くて。私のパートで、“誰かと違うから 指をさされ/“本当”だって偽物 信じられないよ“という歌詞があるんですけど。私は高校を中退していて、周りの普通と自分の普通がちがった。指をさされているかはわからないけど、自己嫌悪に陥って、周りとちがうから何もできないしダメなんだって思って、そこからどんどん沈んでいくような人間だったんです。DECO*27さんは私のことをわかってくれてるんだって嬉しくなったし。早口のパートも、自分の心の中で思っていることが、歌にのって溢れ出ている感じで素敵な表現だなって思って。最後の“逃げよう さあ今日がやってきた”という部分は5人みんなで歌うんですけど、全員で、1本のマイクに向かって歌っているんです。それが、「これからはじまるんだな」っていう幕開けの感じがあるっていうか(笑)。レコーディングは1年以上前ですけど、もう懐かしい感じもあります。

──デモが上がってきたときに、5人でこういう曲だねって曲や内容について話をしたりもするんですか。

よせい:コロナ禍で活動がスタートしたこともあり、また地方組もいたりするので、なかなか会う機会がない状況でした。仕事で会う日のちょっとした待機時間にしか喋れない感じで。それもあり「夜明け」のときは、まだメンバーみんなで楽曲について深く語るとかはまではできなかったんです。DECO*27さんも、それぞれの解釈で、それぞれの気持ちで歌ってほしいというディレクションだったので。私たちも、語らずに自分の気持ちで歌っていました。

──では完成して驚くこと、気づくこともありそうですね。

よせい:みんな、うま!っていう(笑)。それこそmzsrzって“多様声”だなっていうのがどの曲でも伝わるなって思います。ひとりひとりが素敵で、特徴のある声で、あきないというか。

大原きらり:ははは(笑)。

よせい:何回も繰り返して聴けるなって。私自身、“mzsrzのファン”なのでとくに思うんですけど。

──グループ内にいちファンがいるのは頼もしいですね(笑)。その後のシングルも多彩な曲なりましたが、アルバムのリード曲となる「フェーダー」もまた多彩な表現でmzsrzの魅力が伝わる1曲ですね。意識したのはどんなことですか。

ゆゆん:「フェーダー」はアルバムのなかでもいちばん、mzsrzらしい楽曲だなって思います。

よせい:サビの掛け合いが、特に注目してもらいたいところで。1番のサビでは私と実果のか細い系のヴォーカルで、2サビでは作山と大原の芯のある、のびのびと突き抜けたヴォーカルが聴けて。その1番と2番、どちらも支えているのがゆゆんなんです。こういう掛け合いも初めてだし、「フェーダー」は本当にアルバムのリード曲っていう感じですね。



──ちなみに最後の大サビで、高らかなハイトーンで突き抜けていくのは誰のヴォーカルですか。

大原きらり:私ですね。ここは苦労しました(笑)。

──「フェーダー」は5人それぞれの声が生きているのもそうですし、より自由にエモーショナルに表現している曲で。歌詞の面でも複雑に揺れる心境を、繊細に表現していますね。

ゆゆん:デモをいただいて歌い出しの部分を聴いたときに、号泣しちゃったんです。“待ちに待った未来は ちゃんとあっていますか”という歌詞です。今もごく稀に、本当に「これであっているのかな」って思うこともありますし、「フェーダー」をレコーディングしていた時期(2021年の6月)はとくに精神面も不安定で。「大丈夫かな、この先ちゃんと生きていけるのかな」っていう不安もあったんです。でもそういう気持ちをDECO*27さんが歌にのせてくれて、私の気持ちを理解してもらえているんだなって感じることができて。それでまたわーって泣いちゃって。私自身にとっても、すごく刺さる曲になっているなって思いました。

実果:この曲は子どもと大人のはざまの気持ちを歌った曲で。“待ちに待った未来は ちゃんとあっていますか”“失くしちゃった分だけ“大人”なんて可哀想“というところは、私が歌手という夢を忘れていたように、大人になろうとしていた部分が歌われている感じがして。その後に、“ねえうるさいよ 正しくもないこと”っていう歌詞が出てくるんですけど。なんて言ったらいいんだろう……すごくぐちゃぐちゃな思いというか、大人になりたいけれど、叶えたい夢もあるしっていう葛藤が出ている曲で──。


──まさに自分が通ってきた道ですね。

実果:はい、すごく当てはまる曲です。

作山 由衣:実果が言ったように子どもと大人の境目にいて、大人になるときに感じる“濁り”を歌った曲なんです。自分が子どもの頃に思い描いていた中学校生活や高校生活って、すごく楽しそうなものに見えていたんです。でもいざ自分が学校や社会集団のなかに入ってみると、例えば気まずさとか嫉妬とか、きれいな感情だけじゃないものも混じりながら人とコミュニケーションをとることに、イメージと現実のギャップを感じて。こんなはずじゃなかったのになって思うことがあって。「フェーダー」の歌詞にある、“待ちに待った未来は ちゃんとあっていますか”っていうところは、昔の自分に問いかけられているような感じがして。すごく今の自分に響くなって思います。

──大原さんは自分自身と重なる部分はありますか。

大原きらり:私は今19歳なので、まさにっていう感じなんです。成人はしていないけれど、でも高校を卒業しているから子どもとも言えないしというところで、歌詞のすべてが突き刺さります。先ほど高2のときにオーディションを受けたという話をしたんですけど、実はこのオーディションを受ける少し前に一度オーディションに落ちていたんです。進路を決めなくちゃいけない時期で、先生にはフリーターになるって言ったんですけど、それじゃ先生は安心して送り出せないじゃないですか。親は好きなように生きたらいいよっていうし、でも先生は大学に行けっていうし、私はオーディションに落ちて未来がないし、家庭環境でもいろんな問題が起きていて。私、食べることが好きなんですけど、食事も喉を通らない状態で、毎日泣いて学校にも行けない1ヶ月くらいがあって……。あのとき、こういう曲が自分にあればよかったのにな、救われたのになって思うんです。でもそういう曲をmzsrzが歌って、あのときの私と同じように悩んでいる人に聴いてもらえたらすごく嬉しいなとも思います。


──よせいさんどうですか。

よせい:私は最年長で一足早く20代になってしまったので、もう濁っちゃった大人の感じですけど──いや、濁ってないです! でも歌詞に“綺麗なまま濁っていくんだ”ってあるように、いろんな過程を経験してきてはいるんですよね。

──歌の両面がわかる感じがありますね。

よせい:そうですね。「フェーダー」は大人になっても、理解ができるというか。みんなが言っている“待ちに待った未来は ちゃんとあっていますか”というところも、どんな年齢になっても思うことだろうなって思うんです。今自分がしたいことは本当にこれなのか、今自分がここに立っていていいのかとか、誰しもが思う瞬間があるのかなって。子どもから大人になるという過程の曲でもありつつ、人生の節目節目に刺さる曲だなって思いました。あとはmzsrzでは、それぞれの声にゆゆん=共鳴声、実果=感受声、作山=共存声、大原=多面声、私は流動声と、それぞれの声の特徴を「声」として表現しているんですけど、アルバムのリード曲としてまさに5人のそれぞれの感情や想いが「声」に現れ、それが感じられる曲だなって思います。


──よせいさんは4人より少しだけお姉さんじゃないですか、メンバーが今こんなことで悩んでいるのかなとか、こういう状況かなって感じることもありそうですね。

よせい:例えば受験とこの活動の両立で大変だったり──私は受験生のときにこの活動をまだしていなかったので、大変さを十分に理解できないところもありますけど。でも受験の大変さや、ゆゆんがよく“生きづらい”と言っているんですけど、その気持ちもわかるし。人間ってSNSには楽しいこととか、自分のいいところしか載せないじゃないですか。それを見て、私はなんでこうなんだろうって思う瞬間って多いと思うんです。私もだれかの幸せそうな部分を見て、いいな素敵だなと思いつつ、私はなんでこうなんだろうって思うのが多いので。メンバーみんなが抱えているような不安は、“お姉さん”ということもあってすごく理解できてると思います!

メンバー:(笑)。

──見守っているんですね。

よせい:あるよね?

大原きらり:今、圧にやられてます(笑)。

よせい:本当はいちばんしっかりしてるのが、最年少の作山なんですよ(笑)。


──アルバムが完成して、いろんな人に聴いてもらえる機会が増えたり、これからライブも増えていくと思いますが。ここからのグループとしてやりたいことや芽生えている思いはありますか。

よせい:みんなでいろんなライブハウスに行って、いまのmzsrzの思いや等身大の歌声を、応援してくださっているひとりひとりに届けることができたらいいなっていうのが大前提としてあります。あと個人的な思いとしては、みんなともっともっと仲良くなりたい。コロナ禍で、会う機会自体がお仕事の時しかないので、みんなと一緒にご飯に行ったりとか、音楽についてそれぞれ何をしたいのかをもっと話し合いたいなって思います。

ゆゆん:私も同じですね。お仕事以外で会う機会がないので。信頼性をもっと高めるというか、一緒に成長していけたらと感じてます。

よせい:すでに仲はいいんですけど、もっともっと深くね。

大原きらり:今の状況は、有観客での自分たちのライブがなかなかできなかったので、まずは自分たちを応援してくれる人に会ってみたいなっていうのと、あとはみんなで遊園地とかいきたい(笑)。

メンバー:いいね!

取材・文◎吉羽さおり
写真◎いわなびとん

■mzsrz 1stアルバム『現在地未明』

2022年3月16日(水)発売
【CD+Blu-ray(ライヴ映像 ver.)】
品番:AVCD-96906/B
【CD+Blu-ray(リリックビデオ ver.)】
品番:AVCD-96907/B
【CD ONLY】
品番:AVCD-96908
各予約サイト https://mzsrz.lnk.to/1srALBUM

[CD]
01 夜明け(Debut SG 作詞・作曲 DECO*27 編曲 Rockwell)
02 ノイズキャンセリング(2nd SG 作詞・作曲 DECO*27 編曲 TeddyLoid)
03 エコー(5th SG 作詞 DECO*27 作編曲 Rockwell)
▶︎テレビ東京 水ドラ25「JKからやり直すシルバープラン」主題歌(エンディング)
04 インベーダー(4th SG 作詞・作曲 DECO*27 編曲 Rockwell)
▶︎テレビ東京 次世代型オーディション番組「ヨルヤン」課題曲
05 パンデモニウム( 作詞 DECO*27 作編曲 椎乃味醂)
06 フェーダー(アルバムリード曲 作詞・作曲 DECO*27 編曲 Rockwell)
07 アンバランス(3rd SG 作詞・作曲 DECO*27 編曲 Rockwell)
▶︎映画「ショコラの魔法」主題歌
08 パントマイム(アルバム曲 作詞 DECO*27 作編曲 Teppe)
09 フィルター(6th SG 作詞 DECO*27 作編曲 ポリスピカデリー)
▶︎テレビ東京 ドラマ Paravi「部長と社畜の恋はもどかしい」主題歌(エンディング)
10 Repeat(アルバム曲 作詞 DECO*27 作編曲 kous)

[Blu-ray(ライヴ映像ver.)]
AVCD-96906/B
バンドとして自身の進む先を提示した初のライブ映像を収録
01 夜明け
02 インベーダー
03 アンバランス
04 ノイズキャンセリング
05 innocence performed by 作山 由衣
06 22歳 performed by 大原きらり
07 深い森 performed by ゆゆん
08 プラネタリウム performed by よせい
09 愛すべきひとよ performed by 実果
10 大切なもの performed by mzsrz
11 エコー
12 フェーダー

[Blu-ray(リリックビデオ ver.)]
AVCD-96907/B
・夜明け(illustration : ajimita / movie : よたばいと)
・インベーダー(animation & movie : KICO / motion graphic : Rayleigh)
・エコー(movie & illustration : まご山つく蔵)
・ノイズキャンセリング(illustration: がーこ / frame design: ゆうたONE / movie: noka pi)
・アンバランス
・フィルター(movie & illustration: だ子)
・フェーダー

◆mzsrz オフィシャルサイト
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