【インタビュー+機材紹介】五味孝氏が語る、T-BOLANサウンドの変わらぬ本質「より血の通った音楽に」

ツイート

■ギターが入ってるとか入ってないとか
■いい曲はそういうことを超えるんです

──『愛の爆弾=CHERISH ~アインシュタインからの伝言~』は全13曲中6曲がバラードという構成になっていることも特色ですね。

五味:僕らの中では “T-BOLAN=バラード”で、ファンが求めているものもそうだと思います。もちろんライブで盛り上がれる曲もアリだけど、「T-BOLANってなに?」ってシンプルに聞かれたら、やっぱりバラードなんじゃないかな。だからアルバム収録曲にバラードが多いことに違和感は全くなかったし、たくさんバラードを入れることで独自性を打ち出そうと考えたわけではない。今の自分達がいいと思う曲をフラットに選んだら、自然とこういう構成になったわけなんです。たとえば僕らは、「アップテンポの曲を作ろう」って始めても、だんだんテンポが遅くなって、そこにいいメロディーが乗ったりすると、最終的にバラードになったりして(笑)。

──実際、T-BOLANの楽曲はメロディーが素晴らしくて、それは「My life is My way 2020」を聴いてもわかります。原曲はアップテンポですが、そのバラードバージョンなんですよね。

五味:「My life is My way」はバラードでも成立するメロディーだったということですよね。今回のアルバムに入っているバラードは全部好きだけど、僕としては「祈りの空」が印象強い。


▲Fender Twin Reverb/Fender FAT3
 写真左は、煌びやかでファットなクリーントーンを引き出せる1966年製ツインリバーブ。ロックやジャズ、カントリーなどのミュージシャンにも愛用されてきた名器だ。ノーマル/ビブラートの2チャンネル仕様、12インチスピーカー2発搭載、スプリングリバーブとビブラート(トレモロ)を装備。「京恋唄」と「My life is My way 2020」で使用。
 写真右は、1980~1990年代にかけてFender Japanが販売していたFAT3。オールチューブ仕様、Boost回路内蔵、アキュトロニクス製スプリングリバーブ搭載、エミネンススピーカー採用、センド/リターン装備などスペックも高品位。今作では「Re:I」で使用。「FATは、他のフェンダー製と比べると音がまとまっているんですよ。あまり暴れないというか、大人な感じの音」とのこと。

──「祈りの空」はギターが入っていない曲ですが?

五味:そう。最初は森友から、「こういう曲ができたんで、ちょっとアレンジしてよ」と言われて。だけど、自分でアレンジしててもいまいちピンとこなくて、途中で作業を止めたんです。その間、森友もいろいろ考えてたみたいで、最終的にピアニストの小島良喜さんに現場で弾いてもらうシンプルな形になったんです。それが一番シックリきた。パルスに沿ってキッチリ作り込むのではなくて、フワッとした空気の中で歌うことこそ、この曲の持ち味を一番出せた。実は、僕がアレンジを考えていく中で、「これは曲がよくないよ」とはっきり森友に言ってしまったんだけど、小島良喜さんと森友が作ったトラックが素晴らしくて、「いい曲だね!」と訂正しました(笑)。

──粘り強く答えを探したことで見つかったアレンジだと思いますし、ギターが入っていない曲を真っ先にあげるというのも素敵です。

五味:いい曲というのは、自分のギターが入っているとかいないとか、そういったことを超えるんですよ。印象深いという意味では、「京恋唄」もそう。この曲は森友ディレクションで僕がギターを弾いたんですけど、その結果、“嘘だろう?”ってくらいバッキングギターの音量がデカい(笑)。「それは違う」「それそれ!」みたいなやり取りの中でフレーズを構築していったから、彼が思うところにギターを寄り添わせることができたんでしょうね。だからギターが大きくても気にならない……これでも僕が「もう少し音量レベルを落とさない?」と言って下げてもらったんですよ(笑)。他の曲だと、僕が「ギター小さくない?」と言ったところで、「いや、もっと下げたいくらいだよ」って森友に言われることが多いんですけど(笑)。

──なるほど(笑)。最近はデータのやり取りでクールにレコーディングを進めるアーティストも多い中、顔を寄せ合っていろいろなパターンを試すというのはいいですね。

五味:データのやり取りもいい面はあります。だけど僕は、一緒の場所で作っていくことも大事だと思っているんです。そのほうが、より血の通った音楽になる気がするので。


▲Fender Princeton Reverb/MATCHLESS
 写真左は、フェンダー最初期のツイード期から存在しているプリンストンリバーブ。フェンダー黎明期のトーンを味わえる。10インチスピーカー1発を搭載したコンパクト(12W)なコンボアンプながらリバーブ/ビブラートを搭載していることや適度な歪みが得られるトーン特性がポイント。「宅録で愛用している」とのことで、今作では「A BRA CADA BRA ~道標~」「愛の爆弾=CHERISH ~アインシュタインからの伝言~」で使用。
 写真右のマッチレスは、力強さと透明感を兼ね備えたクリーンやエッジの効いたファットなオーバードライブサウンドが特徴。「僕の印象ですけど、マッチレスはパキーンという音ではなくて、もっと熱くてVOX寄り。なので、パキーンとかカリーンという音が要らないときに使うことが多い」とのこと。今作ではツインリバーブと併用して「京恋唄」、「声なき声がきこえる」で使用。

──全く同感です。では続いて、アルバムのギターサウンド&プレイについて深く話しましょう。今回のレコーディングにあたって大事にしたことや、こだわったことはありましたか?

五味:基本的には1990年代当時と変わっていなくて、唯一変わったのは、テクノロジーが進化した環境。いくらでも録り直せるし、音を後からいくらでも変えられる。ただ、そうなってくると、逆に自分がしっかりした指針を持っていないと、どうにでもなってしまうというか、ブレてしまうんです。それはよくないと思います。なので、僕はシンプルなものがいいと思っているけど、入れられるものは最初に全部入れて、後から抜いていくことにしました。

──引き算を意識したということですね。

五味:これは1990年代のBeingのギタリストでは珍しかったと思うんですが、僕はレコーディングで一切ダブリングをしなかったんですよ。サウンドプロデューサーやディレクターからのアドバイスでダブルにしてみたこともあるけど、“これは俺じゃないな”と思ったし。どういうことかというと、ニュアンスが消えてしまう。だから今も基本的にギターはダブルにしないんですけど、今回、“ここはダブルにしたほうが効果的かな”という場所だけ、ダブルで録っておきました。結局、そのほとんどがシングルになりましたけどね。

──五味さんのギターは、ニュアンスがはっきり出ているのが魅力だと思います。ギターひとりのバンドでいながら、ステレオ感を活かしたアプローチを採っていることもポイントといえますね。

五味:ベーシックが左側のチャンネルで鳴っていて、リードが右側で鳴っているというパターンが僕の基本形です。


──リードパートはどうやって作っているのでしょう?

五味:頭の中でイメージしてとかじゃなくて、実際にギターを持って、オケに合わせて弾きながら考えることが多いです。“ここの音は、このほうがいいか”みたいに発展させていく感じ。バッキングパートはその前に考えていて。たとえば、曲のアレンジ時に仮歌を自分で歌うんですけど、そのためにはドラムやベースと、バッキングギターがどうしても必要になる。だから、その時に“こんな感じかな”って適当に弾いて。そのバッキングが最終的に活かされることも結構あります(笑)。

──それは珍しい気がします。アレンジやメロディーを詰めていく段階でコード進行を変えたり、メジャー/マイナーを整理したりすることが多いようですので。

五味:僕らは多少の音のぶつかりよりもニュアンスを重視するんです。もちろん僕もそんなに耳が悪いわけじゃないので、ぶつかったりしているのはわかるし。ぶつからないように整理した後に、仮のバッキングギターをオフって同じような感覚で本番弾いたりするんですけど、仮ギターを超えられないことがあるんですよね。

──わかります。1970年代ロックは音がぶつかっていたり、メジャー/マイナーが合っていなくてもそのまま活かすことがわりとあったみたいで。それが独特の雰囲気を生んでいたりしますよね。

五味:そうです。これはギターソロでもなんでもそうですが、1stテイク以上のものは出てこないことが多いんですよ。どうしようもない間違いをして使えない1stテイクもあるけど、1stテイクに勝るものはない。それはバッキングやリードも同じで、最初に適当に弾く仮ギターにもそういうところがある気がします。

◆インタビュー【3】へ
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をツイート

この記事の関連情報