【ライブレポート】Non Stop Rabbit、2年ぶりの有観客ライブ「あなたはあなたのために一生懸命でいてください」

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2020年にアルバム『爆誕-BAKUTAN-』でメジャーデビューを果たしたNon Stop Rabbit(以下、ノンラビ)が、約2年ぶりとなる有観客ライブを行った。会場は東京・渋谷CLUB QUATTRO。<メジャー入り初のワンマンライブ!2年もLIVEしてなかったからリハビリさせてや!本気の2DAYS、4番勝負!〜あの日の俺らを取り戻す〜(エモぉー)>というタイトルに凝縮されている通り、2日間で4公演という気合いの入ったこのライブの初日第1部をレポートする。

◆ライブ写真

平日の16時開演にも関わらず、この日を待ちわびていたファンが静かな興奮とともに集結した渋谷CLUB QUATTRO。客電が落ちてメンバーが登場すると、声援の代わりとなるオーディエンスの拍手がフロアに響いた。1曲目「私面想歌」のオープニングを情感たっぷりに歌い上げると、「待たせたな、渋谷ー!」と矢野晴人(Vo,B)。2年もの間ライブができなくなるなんて、結成当初は(彼らに限らずだが)想像すらしていなかった事態。ノンラビにとって最初のシングルでもあるこの曲からスタートするというのは、良い意味で一旦リセットして、ここからまた始めようという所信表明なのかもしれない。


田口達也(G)は湧き上がってくるとてつもない興奮とせめぎ合うような表情で自らのプレイに集中し、太我(Dr)もまた目の前に広がっている景色よりも内側に意識を向けるようなオーラを放ちながらプレイしている。「上向くライオン」、「明るい歌」と、コロナ禍で様々な影響受けながらもこのままじゃ終われないという気概を込めた2曲が続く。みんなで“雄叫び”を上げることはできないが、ライブハウスで、オーディエンスの前で、この曲を披露できる日が来たことに違いはない。歓声の代わりに高く掲げられたみんなの拳がとても力強く思えた。


MCではまず「ライブってこんなにアツかった!?ヤバイね」と矢野。田口も大量の汗を拭いながら「いやーなんか、緊張したわ(笑)」と本音らしき言葉を漏らしていたが、実は「前日って結構ドキドキするのに、2年ぶりだと緊張の仕方も忘れてた(笑)」らしい。それぞれのライブ前夜をトークしつつ、お客さんとはアンケート形式でコミュニケーションを取っていく3人。「ノンラビのライブに初めて来た人」も「今日は地方から来た人」にも結構な数の手が挙がり、現在もチャンネル登録者数を増やし続けているYouTuberとしての人気っぷりや、メジャーデビューというきっかけで彼らの音楽の魅力に着目した人が“ライブ”という現場にもちゃんと足を運んでいることを証明する景色が生まれていた。


また今日のこのライブに際して「俺らも緊張してたけど、お客さんも緊張したよっていう人」の問いにもたくさんの手が挙がり、田口は「そんな緊張をほぐすために持ってきた」という新垣結衣のレアタオルを披露。単なるネタだったのかもしれないが(笑)、タオルに書かれた「Make my day」(※新垣結衣の1stシングルのタイトル)の文字は、照れ臭くて言えない気持ちの表れだったのかも。下ネタばかり挟んでいた太我は「(カップルで来た人は)電車賃出すから帰って(笑)」などと笑っていたが、そんな風に少しずつノンラビらしいトークを重ねる中でお互いの緊張もほぐれ、ライブは中盤戦へと突入した。


ダンスビートがガシガシと疾駆する「BAKEMONO」から「TABOO」へ。シリアスなムードが、3人の爆音で増幅していく。それまでステージを真っ赤に染め上げていた照明が透明感ある光へと一転し、「dress」が始まるという演出のタイミングも絶妙。エモーショナルな世界観は「大丈夫じゃない」へと引き継がれ、男性と女性、それぞれの目線で描かれている歌詞にオーディエンスはじっと聴き入っている。オケだけをバックに歌い上げるパートからバンドインするアレンジもメリハリが効いていて、この曲のドラマチックな表情がさらに際立っていた。


「次の曲は盛り上がるというより、みんなに心でノンラビを感じてもらえる曲になっています」という矢野のMCから始まったのは、最新アルバム『TRINITY』のラストに収められている「未来へ」。現状に負けないで、諦めないでみんなで目指そう!と声高に叫ぶのではなく、肩の力を抜いて、「選ぶ道に×も○も何もないからともに生きていこう」と歌われるこの曲には、ノンラビの楽曲の根底にある優しさがストレートに表現されている。会場はこれ以上ないほどのあたたかい空気に包まれたが、次の曲「全部ブロック」では一転して田口が牙を剥くーー「SNSの時代になった。俺らもそこから出てきた人。こんなご時世だし、みんなしんどい思いをしている。だからと言って、誰かをサンドバッグにしていいのか?そんなの間違ってる!」。


とは言え彼らが提示するのは、あからさまな反撃などではなく「全部ブロック」というタイトル通りの大技だ。のちのMCでも話していたが、まずは自分の心を守ること。荒々しい曲に見えても、やっぱり彼らの軸はブレていないのだ。続く「Needle return」はエレクトロポップなオケをメインにしたダンスチューンで、矢野と田口はハンドマイクでのパフォーマンス。太我のドラムが躍動感をアップさせ、フロアもタオルを回しながら大いに盛り上がっていた。曲が終わると歌詞が飛んだことに突っ込んだり突っ込まれたりしながらも、「久しぶりやなこの感覚!楽しいな、おい!」と田口。そして改めて、オーディエンスに向けて話を始めた。


「ライブが出来ないなんて、自分達の取り柄を片方奪われたようなもの。曲を書いていても直接届けられないんだったら意味ないなとも思ったし、そんな中で書くのもしんどかった。でもそんな中だからこそ生まれた曲もあったから、今日は届けられてよかった。これからもしんどいことは続くと思うし何が起こるかわからないからこそ、みんな自分を大切に、自分のことを優先してください。その結果、また会えるようにお互い頑張りましょう」


ここで、7月から放送されるテレビアニメ『転生賢者の異世界ライフ』のオープニング曲を担当することが決まったと報告し「これからは俺たちがお前らの背中を押せるように頑張っていきます!」と宣言。たくさんの拍手が寄せられる中「これはそんな皆さんのために書いた曲。優等生になんてならなくていい。あなたはあなたのために、一生懸命でいてください」と言葉を続け、最新作のオープニングを飾る「優等生」が披露された。3人から贈られたこの曲は、新学期や新生活の始まりを前にした人にも、少しずつ動き出した世の中で戸惑っている人にも、今必要な勇気をくれる1曲として響いたのではないだろうか。勢いを止めることなく迎えたラストの楽曲は「PLOW NOW」。ノンラビ結成後、デモ音源として初めて発売されたこの曲もまた、今日のライブに込めた彼らの思いをダイレクトに伝えているようだった。

「これ、あと3公演出来そうですか(笑)?」「ちょっと無理そう(笑)」「体力の計算、完全にミスった(笑)」などと口にしながらも、リスタートとも言うべきライブを全力で終えた3人。2年分の思いを爆発させたNon Stop Rabbitの"本気"は、ここからもっと楽しく、さらに鋭くなって、たくさんの人の心動かしていくはずだ。

取材・文◎山田邦子
写真◎菊島明梨

セットリスト

1.私面想歌
2.上向くライオン
3.明るい歌
4.BAKEMONO
5.TABOO
6.dress
7.大丈夫じゃない
8.未来へ
9.全部ブロック
10.Needle return
11.優等生
12.PLOW NOW

◆Non Stop Rabbit オフィシャルサイト
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