【インタビュー】LEGO BIG MORL、さらなる強靱さと深みと多彩さが加わった新アルバム『kolu_kokolu』

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LEGO BIG MORLのニューアルバム『kolu_kokolu』(コル・ココル)は、バンド結成15年のキャリアを凝縮した素晴らしい作品となった。ポップでカラフルであることと3人のヒューマンなバンド感とが、見事に両立している。ドラムが脱退して3人体制になった彼らが新たな可能性を模索して形にしたのが、前作『気配』だった。そしてその先にある景色を見せてくれているのがこの新作である。4人時代のバンドサウンドの美しさと力強さと自在さは彼らにしか生み出せないものだった。しかし3人となった彼らが生み出す音楽には、さらなる強靱さと深みと多彩さが加わっている。喪失すらもバネにして新たな創造を行い彼らは進み続けているのだ。15周年の節目、コロナ禍、再メジャーデビューというさまざまな状況の中で完成した新作『kolu_kokolu』(コル・ココル)について、カナタタケヒロ(V&G)、タナカヒロキ(G)、ヤマモトシンタロウ(B)の3人に話を聞いた。

■3人の顔がよりはっきり見えるサウンドでメジャー性のある音楽
■自分たちの中でのポップな音楽を目指そうということになった


――『kolu_kokolu』は再メジャーデビュー1作目になります。バンドが再メジャーデビューするケースはそんなに多くはありません。思うところはありますか?

タナカヒロキ(以下、ヒロキ):またチャンスをもらえたということなので、その期待を超えていきたいと考えています。

ヤマモトシンタロウ(以下、ヤマモト):僕らはこれまでにメジャーとインディーズの両方を体験させてもらったので、それぞれに良さがあることはわかっているんですよ。今は個人でも音楽を発信できる時代になりましたが、メジャーにはメジャーの良さがあって。その良さとはたくさんの人が力を貸してくれて、僕らの音楽を広めてくれることだと思っています。多くに人に関わっていただいたことで、バンドのモチベーションが上がっていると感じています。

カナタタケヒロ(以下、カナタ):僕も同じですね。もう1回デビューできることよりも、アルバムを制作するにあたって、たくさんの人に関わっていただき、意見を出し合いながら進めていけていることの価値を実感しています。まわりから「おめでとう」というメッセージをたくさんいただいて、みんな、僕たちを見てくれているんだなということも感じつつ。その気持ちを裏切らず、突っ走っていけたらと思っています。

――前作『気配』はさまざまなアレンジャーと組んだ作品でしたが、新作『kolu_kokolu』はさらに多くのアレンジャーと組んだ作品です。アルバムのイメージがあって制作したのですか? それとも1曲1曲全力で作ってから、まとめたのですか?

ヒロキ:曲によって両方ありますね。再メジャーデビューやアルバムのことは関係なく、何年も前から作っていた曲もありますし、曲を並べる段階で、アルバムに必要なピースを埋めるために、キンタ(カナタ)とシンタロウ(ヤマモト)が合宿に行って作った曲もありますし。2人が合宿に行っている間に、僕は歌詞を書いて足りないものをまとめる作業をやっていました。

――前作『気配』を踏まえた作品でもあると思うのですが、そのあたりは?

カナタ:『気配』を作ったことで、3人の音楽としてどう表現すべきかの土台ができあがったと思っているんです。いろいろなアレンジャーさんと一緒に制作することで、自分たちのうまみを引き出していただき、そのうまみを自分たちで感じながら、その流れの中で「潔癖症」や「愛を食べた」を作ることができました。15周年のスタートということもあり、自分たちの未来の方向性を示すアルバムということを頭の片隅に置いて制作していました。

――前作以上に多くのアレンジャーが参加しています。どんなことを意図していたのですか?

ヤマモト:先に前作のことを説明すると、ドラムのだいちゃん(アサカワ)が脱退して、4人で作っていたものを3人でどう表現するかといった時に、今まで作ってきたものを更地にしよう、イメージを一新しようという意識があったんです。バンド像も含めて、何にも縛られないようにしたかったので、前作『気配』では、これまでにやってこなかったアレンジャーさんと一緒に制作しました。その過程で、3人の自分たちの方向性みたいなものが見えてきて、その方向性を踏まえて、今回のアルバムのデモを作り始めました。

――3人体制で見えてきた方向性というと?

ヤマモト:ドラムが脱退したこともあり、アナログのサウンドにそんなにこだわらなくてもいいだろうということです。3人でライブをやることにも次第に慣れ、ありがたいことに再メジャーデビューや15周年という大きなキーワードがある中で、今回の作品の方向性がだんだん見えてきました。3人の顔がよりはっきり見えるサウンドで、メジャー性のある音楽、自分たちの中でのポップな音楽を目指そうということになったんですね。それで1曲1曲のイメージをビルドアップしてくれる人に手伝ってもらおうということになり、曲の目指す方向性によって、さまざまなアレンジャーの方にお願いしました。

――カナタさんとヤマモトさんが曲作り合宿をした理由は?

ヤマモト:人数が増えれば増えるほど意見が多くなってしまって、曲に向かう集中力が分散してしまうところがあると考えたからです。10周年の時もスタッフもいない状態で、2人だけで合宿したんですが、その時の集中力とスピード感に手応えを感じたこともあり、今回も2人で合宿することにしました。お互いにデモを持ち寄り、2人で詰めて、楽曲がブレないようにして、できた曲をヒロキに伝えて、ヒロキが歌詞を書くという流れです。僕もキンタ(カナタ)もその歌詞に影響されて、さらに曲をビルドアップしていくやり方でした。

――3人のやりとりを重ねることで、曲の形が明確になっていったんですね。

ヤマモト:そうですね。なので、アルバムに収録するであろう曲の根幹を固めて、「この曲の核はこれ」ということをまわりの人に伝えやすくする作業でもありました。キンタとは数メートルの距離で作業していたので、メロディができたら聞かせてもらい、違うと感じたところがあったら変更してもらうという流れになっていて、レスポンスのスピード感も良かったんですよ。その場その場で修正を繰り返しながら曲を詰めていく作業に集中できました。

カナタ:お互いに面と向かって話し合えるので、情報交換がしやすいメリットがありました。メロディを創っては壊し、壊しては創り、という構築作業に専念できました。合宿所でのこの集中力は、東京の自宅ではなかなか味わえないものですね。“シンタロウがすぐそばにいるから大丈夫だろう”という気持ちを持って、伸びやかに曲作りに集中できました。そうすると、いつもの適当なラララとは違って、仮歌でもキーワードとなりそうなワードが出てきやすくなるんですよ。ある程度の日本語を入れた状態でヒロキに渡せましたし、良い化学反応が生まれたんじゃないかと思っています。


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――コロナという今の状況とリンクする歌詞も目立っていますが、作詞に関してはどんなことを考えていましたか?

ヒロキ:この2、3年の日常生活を描いていくと、自然にコロナのことも入ってくるんです。避けるほうがむしろ不自然なので、感じるままに書いていこうという意識はありました。合宿で二人が作ったものに関しては明確なイメージがあったので、「なるほど」と思いながら書きました。言葉があることで書きやすい場合もありますし、難しい場合もありますし、曲によって違いますね。

――個々の楽曲についてもうかがっていきます。アルバム1曲目の「ラブソングを聴いてしまった」は最初の<ラブソングを聴いてしまったあの日>というフレーズがとても印象的な曲で、いきなり胸を突かれました。この曲はどんなところから生まれたのですか?

カナタ:これは夏くらいに作ったんですが、「今、気になるワードはある?」ってヒロキに聞いて、リストをもらった中に、この言葉があったんですよ。自分の中でもハッとした部分があって、すぐ作業にとりかかったらメロディが下りてきました。あのワンフレーズからメロディが出てきて、そこから一度もまわり道をすることなく、最後までメロディがでてきました。それをシンタロウがアレンジして、Aメロのメロウな空気感をドッキングして、ひとクセある曲に仕上がりました。歌いやすい曲でもあるので、歌も迷いなく一筆書きで歌ってやろうと思って、何も考えずに、体の鳴りにまかせて歌いました。



――<Oh shit~>からの展開が入ってくることによって、ポップさも増していますよね。

カナタ:確かに、ああいうフレーズだからこそ、すかしたキャッチーさが出せたのかなと。“みんなで鼻で笑ってやろうぜ”みたいな共有感が出たのかなと思います。

――音楽がテーマになっている曲という意味では、個人的には「タイムマシン」も大好きな曲です。Bメロの<あなたの香りした~>などのフレーズにもグッと来てしまいました。これはどんなところから生まれた曲ですか?

カナタ:「タイムマシン」は合宿で作った曲ですね。

ヤマモト:合宿に持っていった時点では破片しかなかった曲です。「これにメロディを入れて」とキンタにお願いしました。

カナタ:この曲は難しい曲には絶対にしたくなかったんですよ。子どもたちにも歌える歌にしたいなと思って作りました。

――歌詞の中に<ピーヒャラピーヒャラ>って入ってますしね。

カナタ:ヒロキに具体的な言葉で説明したわけじゃないんですが、歌詞がついて戻ってきたら、<ピーヒャラピーヒャラ>が入っていて、びっくりしました(笑)。

――音楽の持つ機能をタイムマシンにたとえている点も見事です。

ヒロキ:「タイムマシン」に関しては、懐かしいことやノスタルジックなことだけを歌うのは避けたかったんですよ。音楽は過去にも未来にも行けるわけで、どちらもちゃんと歌わなければいけないなと思っていました。再メジャーデビューのタイミングということもあり、「タイムマシン」といわれたら、昔のことを思い浮かべてしまうかもしれませんが、バランスに気をつけながら書きました。Bメロは唯一人肌を出せたところだったかもしれませんね。

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