【インタビュー】flumpool、コンセプトアルバム『A Spring Breath』に変化と原点「冬が終わることを望んでいたのかもしれない」

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■既発曲といっても全部新曲というぐらい
■リズムからコードから全然変わりました

──アルバムタイトルを『A Spring Breath』にしたこと、またタイトル曲の歌詞には、どんな想いを込めたのでしょうか?

山村:日常に対してどれだけ敏感でいられるか、日々の中でどれだけこの瞬間を大切にできているか?と言われると……僕自身やっぱり、このコロナ禍の2年間は特に、流れていってる感じを受けるというか。何もできなくて当たり前、外に出られなくて当たり前。夢を叶えようとしても“できなくて当たり前”だと、どこか諦めている自分もいるし、後悔すらできない現実だと思うんですよね。でもそれに対してやっぱり、“今年しか見られない桜の花はあるよね”とか“あの瞬間にしかなかった大切な人との想い出とか、愛情とか、そういうものもあるよな”とか。自分一人の力ではどうすることもできないけど、この春というものに願いを託したい、というか。何もできないかもしれないけど、願いだけは絶やしちゃダメだなって思うし。そういう前を向きたい自分たちにとっての、春が来るような歌にしたいなというのは、あったんですよね。

──歌詞について、一生さんと何かやり取りはあったのですか?

山村:春っていうテーマは共有していて、前向きな歌っていう抽象的な話はしていたんですけど、歌詞に関して具体的にどうというのはなかったですね。でも、通ずるものがあるなと思ったのは、コーラスを使ったイントロを一生がつくってきたこと。今回のアルバムは、変化を大事にしたかったのと同時に、やっぱり今のflumpoolらしさも突き詰めなきゃと思っていたので。そういう意味でも、コーラスを使ったイントロは、僕の中ではすごく“あ、これこれ!”という感じがしました。春の優しい風のような、溜息のような、深呼吸のような、期待と不安の両方を孕んでいるような声の用い方で。この季節に向けてつくるイントロとしては、“これだな!”という感じがしましたね。

阪井:アルバム全体を通して、コーラスワークは大事にしたいなと思っていました。「A Spring Breath」に関しては、メロディーより先に、イントロのあのコーラスから始まった、みたいな。“曲をこう始めたい”というイメージだけは先にあって、そこからつくっていったんです。やっぱり春というテーマが、風が吹く気持ちいい感じに繋がって、まずはコーラスでつくって、という意識がありましたね。

山村:それってすごくflumpoolらしいなと思ったんですよ。昔は3人が歌っていた時期もあったし、ハモることに対してすごくこだわっていた路上時代もあったし。そこもある意味原点回帰というか、一生としてもそういう狙いなのかな?と。しっくりきましたね。


▲阪井 一生 (G)

──「A Spring Breath」以外にも4曲の新曲が収録されていますが、どういう順番で生まれていったのですか?

阪井:既存曲のリアレンジと同時進行ではありましたね。ビルボードライブに向けて、既存曲のほうのリアレンジがけっこう進んでいたので、そことブレないようにバランスも取りながら。

──やはり、ビルボードでのライブが今作誕生の大きな鍵となっているんですね。元気さんと(小倉)誠司さんは、あのライブをどう振り返っていますか?

尼川:基本的に、1stと2ndの1日2回公演のうち2公演目はちょっと酔っ払っていたので、あまり覚えていないんですけど(笑)。

阪井:ビルボードはお酒飲めるからな(笑)。でもなかなかおらんで? 俺は怖くてできへん。

尼川:そんなことないでしょ(笑)。ライブは楽しかったですね。既発曲とは言っても全部新曲というぐらい、リズムからコードから全然変わりましたし、グルーヴが全く違う曲もあったりして。レコーディングよりライブのほうが先だったのがすごく久しぶりだったので、ベースのフレーズも、ライブで演奏してみて“あ、ここはこっちのほうがいいな”と思ったらレコーディングまでに変えて、整理できたし。そういうのができたのは、“なんかインディーズの時みたいやな”と思いながら、やっていました。曲が成長していって、その後で録れるほうが気持ち的には楽ですよね。“こういうのもアリやな”と思いました。

山村:たしかに、ライブをしながら変わっていく、磨かれて良くなっていく感がすごくあった。僕も昔は、ライブでお客さんの顔を見ながら歌詞をブラッシュアップしていくことをよくやっていたので。今回は楽器隊にそれが起きた、ということですね。

阪井:昔は全部そうやったもんな。ライブするたびに歌詞が変わっていくって、よく考えたらすごいことだけど。

山村:歌っていると、グルーヴに合わない歌詞とかは分かってくるから。あとは、“ここの感情をもっと入れた歌詞にしたほうが、自分の気持ちが乗りやすい”とか。

尼川:昔の「labo」とか、譜割りから何から、今と全然違うもんな。固まった時点で録って出すっていう。インディーズ時代のその感じをちょっと思い出しました。

▲『A Spring Breath』FC限定BOX SET オリジナルBOX

──誠司さんはどうですか? 昨年のビルボード公演を振り返って、既発曲をアコースティックアレンジでプレイした時、どんなことを感じましたか?

小倉:プレイ自体は楽しかったですし、ライブも楽しかったです。ただ、今までのflumpoolとは違ったグルーヴなので、そもそも自分の体に入っていないものをまず入れるのにちょっと苦労した部分はありました。あと、杉ちゃん(杉本雄治 / WEAVER / Vo, Pf)と初めて一緒にプレイさせてもらって、すごく気持ち良かったですね。イヤモニから聴こえてくる杉ちゃんのピアノが生き生きしていて。メンバーと音を合わせる感覚も、杉ちゃんが加わることで少し違ってきたし。またセッションしたいなぁと思わせてくれましたね。

──WEAVERと言えば、flumpoolの初日本武道館ライブ(2009年)では、彼らのメジャーデビュー翌日、緊張した様子でオープニングアクトを務めていましたよね。時が経ち、こうしてまた違った形でコラボレーションを果たしていることが、とても感慨深くて。

山村:僕ら自身、あの時は緊張してましたし(笑)。杉ちゃんはまだ二十歳とかで、かわいかったですね。僕らも彼をすごく信頼してますし、彼もflumpoolを理解してくれてるし、愛してくれてるし。それを感じたから、やりやすかったです。

──今回のアルバムでは、一生さんと杉本さんが全編曲ダブルクレジットとなっています。共同作業をしてみて、いかがでしたか?

阪井:すごくやりやすかったです。僕らの音楽も、僕らのことも、長い付き合いでよく知ってくれているのが大きいですよね。デモを杉ちゃんに送ると、ピアノはお任せですし、すごくいいアレンジで返ってくるので。なので、自分にないものを埋めてくれている感じがして、めちゃくちゃ相性が良かったなと。

──アイディアも豊富ですよね?

阪井:すごく知識があって、音楽的なIQが高いなという感じがしますね。僕の作ったデモに対して「こっちのコードはどうですか?」とか提案してくれて、「絶対そっちのほうがいいね!」みたいなこともありましたし。

尼川:ライブでも一緒にやってみて、やっぱり新しい感じはすごくしました。グルーヴが細かいというか。“あ、16ビートで行かなあかんのか?”みたいな。新曲を初見で弾こうとするレコーディング時に、そう感じることも多かったです。ピアノだけのグルーヴではないと思うんですけど、俺らのグルーヴと杉ちゃんのグルーヴの違いなのかな? 

──しっくり馴染むというよりは、化学反応的な感じがあったんでしょうか?

尼川:そうですね。ムズいなとも思いました(笑)。


──リアレンジする既発曲のラインナップは、どういう基準で選んだのですか?

山村:今作のテーマである“変化”を生むにはやはり、“最近の曲をアレンジするよりも、昔の曲のほうがいいね”という軸は固定されていましたね。自分たちとしてもできるだけ、ライブでよくやってきた曲とか、ファンの人たちはもちろん、ファンじゃない人にも知られているような曲、マニアックなアルバム曲というよりはflumpoolらしさを支えて来た曲を、というところですかね。だからこそ変化を感じてもらえるんじゃないかな?って。

──なるほど。実際、劇的な変化を遂げている曲も多いですよね。

山村:たしかに。僕も分からなかった曲があります(笑)。

──例えば代表曲の1つである「証」は、イントロでは判別できませんでした。

尼川:でも「証」は分かりやすいほうですけどね。「どんな未来にも愛はある」は分かりにくいかな。

阪井:基本、全部分かりにくいけどな(笑)。

尼川:「Hydrangea」と「証」は分かる、俺は。だってフレーズ一緒やん?

山村:「君に届け」も、まぁ分かるかな。

尼川:「君に届け」は分からん。

阪井:もう、やるならとことん変えたほうが面白いなって。中途半端に弾き語りっぽくするぐらいだったら……と思ったんですけど、ちょっとやり過ぎましたね。自分でも覚えられないっていう(笑)。ビルボードライブでの演奏に影響しましたけど、やって良かったです。あまり経験のない挑戦というか、アコースティックアレンジ自体ほとんどやったことがなかったし。生楽器だけでどう構成していけばいいんだろう?って。最近は打ち込みとか、そういう音楽も取り入れている中でのことなので、逆にめちゃくちゃ難しかったです。ジャズっぽい音楽を聴いてみたり、コードの構成音の中の四度の取り入れ方とかを勉強したり。アコースティックアレンジだからこそできるホーンセクションやストリングスは、際立たせるべきだなと思いながら、武器にしていましたね。

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