【イベントレポート】<SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2022>に見るKDDI 5G SAとエンターテイメントの可能性

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3月15日(火)、いとうせいこう、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、emmaの3名をMCに迎え、無観客のライブ会場で<SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2022>が行われた。本イベントは、スペースシャワーTVの視点で2021年の音楽シーンを総括し、様々な音楽コンテンツで功績をあげたアーティストとクリエイターに、感謝と敬意を込め、表彰するアワードである。ARTIST OF THE YEARにはYOASOBIが選出された。

この企画と並行して、サテライトライブイベントが銀座のGINZA 456 Created by KDDI(以下、GINZA 456)と、虎ノ門のKDDI DIGITAL GATEで開催された。今回、我々取材陣は撮影が行われている本会場ではなく、こちらのGINZA 456にてauの5G SA×8Kテクノロジーを用いて同時に配信されるライブ映像を体験していた。なお、本イベントでは、メイン会場の超高精細8Kライブ映像を5G SA対応スマートフォンで受信して大型スクリーンに投影。また、サテライト会場では、8KVR(3D 180°)カメラで撮影されたVR映像も5G SAを通じて配信された。本稿は、この日のレポートを綴りつつ、今後のエンターテイメントの発展性について考察するものである。




しかしその前に、以前BARKSがKDDIの5Gコンテンツを取材したとき(新型コロナウイルス騒動が本格化する直前の2020年の1月末)の様子を振り返りたい。シンガー・ソングライターの須田景凪によるフリーライブイベントがLINE CUBE SHIBUYAで行われ、当時の最新鋭の技術を動員した実験的な試みが実行された。このときはまだ5G SA(スタンドアローン)ではなく、シンプルに“5G”と呼ばれていた。LINE CUBE SHIBUYAとKDDI直営店であるau Style SHIBUYA MODIをつなぎ、MODIに居るファンが遠隔でLINE CUBE SHIBUYAのステージ演出に参加するものだ。メイン会場とサテライトフロアを繋ぎ、リモートで双方向に何かしらの影響がある点は、今回のイベントとも共通する。前回はau Style SHIBUYA MODIとLINE CUBE SHIBUYAのスクリーンが繋がっており、インタラクティブなライブパフォーマンスが実現した。参加者がMODIに設置されたスクリーンの前で5G搭載のスマホをかざすと、須田景凪のいる会場での演出に影響を与えることができる。というものだった。

参考:【レポート】uP!!!NEXT 須田景凪〜晩翠〜 powered by au 5G、au SHIBUYA MODIにて

しかし、今回はより双方向性の高い試みが実現していたのである。5G SAは、5Gと異なり、基地局〜コアネットワーク〜インターネットを5G用の設備だけで構成されている。言わば、今回のイベントで使われたテクノロジーは「真の5G」だ。




前回のイベントでは、MODI(サテライト)からライブ会場(メイン)への干渉は可能だったが、その反対方向からのレスポンスは特になかった。ラグのないパフォーマンスは確かに実現していたが、すべてのユーザーがそのインタラクションを実感できていたかは分からない。

けれども、今回ははっきりと確信を持って5G SAの特長を感じ取れた。本イベント内におけるMCのトークコーナーで、我々のいるGINZA 456とメイン会場を繋ぎ、5G SAスマートフォンを送受信機として使用して、ライブ会場にいるような形でコール&レスポンスを実施。本会場さながらの一体感が演出された。画面に映るハマ・オカモトらが我々に対し呼びかけていたが、それがほぼ「対話」に近かった。つまり、相手が目の前にいるときの感覚と大差なかったのである。テレビなどで散々見かけた、通信の遅れによるタイムラグで会話が上手く成立しない状況から解放された。近年まことしやかに喧伝されていた「5Gの時差は人間に感知できない程度のもの」という説を実感できた瞬間である。いや、正確にはそれを理解できたのは少し時間が経ってからだ。なぜなら、そこに意識が向かないほどリモートの会話がスムーズだったからである。「そういえば全然タイムラグなかったよね」と会場内から漏れてくる会話によって、筆者は初めて気付いた。この実感は、2年前にはなかったものだ。




これまでにも各所で5Gによる驚異的な進歩は伝えられていたが、いよいよ具体的に想像できるようになってきた。「超低遅延/多数同時接続」がエンターテイメントにもたらす影響は大きい。それに関しては、むしろコロナ禍以降に実感する場面が多くなっているのではないだろうか。イベントがようやく開催できるようになったかと思いきや、いまだにキャパシティは制限されている。依然として配信の重要性は増すばかりだ。5Gの恩恵があるのは配信だけではないのだが、顕著に影響があるのはここだろう。フジロックやサマーソニックも近年では配信に力を入れており、今年何らかの変化があるかもしれない。ボーカロイドやVTuber界隈を見るとARテクノロジーを積極的に導入しているし、大いに発展の可能性を感じる。家にいながら、あるいは今回のようにサテライト会場にいながら、これまでとは次元が違うエンターテイメントを体感できるだろう。

KDDIのプレスリリースによると、ゲーム業界でも5G SAの技術検証は行われており、ユースケースの開発は日進月歩で進められている。「フォートナイト」はいち早くマシュメロをゲーム内のパフォーマーとして呼んでいたし、パンデミック以降は「GTA Online」もナイトクラブをゲーム空間に実装した。つい先日、「フォートナイト」を運営・開発するEpic GamesはBandcampを買収し、話題を集めた。これは余談だが、GTAの開発元であるRockstarは当初、創始者のハウザー兄弟によって音楽レーベルとしてスタートしている。さらに2021年度、アメリカの調査会社MRC Dataが集めたデータ(PDF)を参照する限りでは、ゲームが音楽の消費にもたらす影響は甚大だ。昨年3月に開催された「Roblox Bloxy Awards」のあと、UKのロックバンド・ロイヤル・ブラッドのストリーミング総再生数が前週比27%伸びた。同年5月21日、スウェーデン出身のザラ・ラーソンが同じくRoblox上で行ったバーチャルコンサートの影響により、彼女のアルバム『Poster Girl』のストリーミング再生数が前週比で26%増加した。つまり、かつてないほどゲームと音楽は近づいているのだ。その点を踏まえても、両者の関係性は注視してゆくべきだろう。

いずれにせよ、面白い未来が見えた。

取材・文◎Yuki Kawasaki

◆au 5G SAとは
◆<SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2022>イベントサイト
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