【ライブレポート】ACIDMAN、ツアー<INNOCENCE>初日公演で「この拍手でうるっときちゃいますね」

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12枚目のアルバム『INNOCENCE』を携えた全国ツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “INNOCENCE”>が3月5日、東京LINE CUBE SHIBUYAで幕を開けた。

◆ACIDMAN 画像

コロナ禍のこの2年の間も、無観客配信ライブ<THE STREAM>や全編インストゥルメンタルによるワンマン<This is instrumental>、結成25年/デビュー20年を祝したワンマン<This is ACIDMAN>、また『INNOCENCE』リリース前に、アルバム曲を披露する配信ライブやプレリリースツアーなど、創意工夫をしたライブを行なってきたACIDMAN。

制限される部分はあるけれど、コロナ禍でもライブや音楽を楽しむことができるという経験を積み重ねて、今回の全国ツアーを迎えた。作品を携えてのツアーではアルバム『Λ』(2017年)以来となる。アルバム『INNOCENCE』という作品が持つ、変わりゆく世界や濁りに触れながらも、人の心の強さや美しさを信じていく、この温かでエモーショナルな世界をどう表現していくのか。会場内は静かに高揚したムードが漂う。




ステージが幻想的なブルーの照明で染まり、アルバム『INNOCENCE』のオープニング曲「introduction」のゆったりとした鼓動とピアノ、弦楽器が会場に響きわたり、登場した大木伸夫(Vo/G)、佐藤雅俊(B)、浦山一悟(Dr)が、そこにエネルギッシュなアンサンブルで加わっていく。

アルバム収録曲順に則って「Vistor」「歪んだ光」と続き、3人は曲に命を吹き込み、色を与えていくように、丁寧にアンサンブルを紡ぐ。真っ白な衣でステージに立つ3人の姿は、彼ら自身がスクリーンのような役割でカラフルな照明を反射している感覚だ。またステージにはミラーボールが床置きされていて、反射した光がステージから客席へと矢のように飛んでくる、このまばゆい光の演出も美しい。はじける勢いではじまった3曲に、観客からは、大きく長い拍手が送られた。



「この拍手でうるっときちゃいますね」と、大木は改めてライブだからこそのバンドと観客とのエネルギーのやり取りをMCで語った。

続くブロックは新旧の曲が並び、「Rebirth」の弾むビートやギターのカッティングの気持ちのいいグルーヴを加速していくように、「イコール」「スロウレイン」と途切れることなく編み上げられていく。いずれも現在進行形の3人のバンドグルーヴがアンサンブルを新鮮にし、アルバム『INNOCENCE』の柔らかな風や色味を帯びる。約10年ぶりに披露された「Ride the wave」では、観客の手拍子も音量を上げた。こうした曲にスポットが当てられ、ニューアルバムの世界のなかで息を吹き返していく楽しみがあるのが、作品を携えたツアーの醍醐味でもある。

中盤で観客の心をとらえていったのは、アルバムのなかでいち早くリリースされた「灰色の街」から「素晴らしき世界」へという流れだ。「灰色の街」が作られたのは、まだ世界がコロナに見舞われる以前のことで、「ミュージックビデオの撮影後、すぐに東京では緊急事態宣言が発令され、カメラで捉えたひと気のない街の景色が現実になった」と、大木は語る。一方で、「ポジティヴな思いや希望を湛えたこの曲が、アルバムを引っ張ってくれるものにもなった」という。静かに、憂いのトーンを帯びながらも確かな足取りで歩み生きていく人の強さが映された「灰色の街」のアンサンブルから、アコースティックギターで街に軽やかな風を送るようにプレイする「素晴らしき世界」では、人や生き物、街のざわめきが聞こえ、さまざまな色をまとっていく高揚感があった。コロナ禍でのこの数年の感覚と来たる春への希望が去来するシーンでもあっただろう。また、等身大の人間に焦点を当てたアルバム『INNOCENCE』での生命のきらめきや、人の豊かな情緒や心の機微といったものが、鮮明に胸に飛び込んでくるシーンでもあった。


そしてこのアルバム『INNOCENCE』の世界観を補強するように据えられたのが、こちらも久しぶりの披露となった「2145年」だ。「ロボットは望んでいた心を手に入れたけれど、そこで感じたのは人と人とが争ったりと、しんどいことばかりだった」と大木は曲の背景をそう語った。凄味あるアンサンブルで、今まさに世の中が、世界がその只中にあることも突きつける。途中、涙を堪えられなくなり歌えなくなる一幕も。美しいばかりでない、愚かな断面も覗かせながら「人と人はもっともっと繋がり合えるはず。きれいごとかもしれないけれど、きれいごとだからこそ、歌い続ける」と付け加えた。

後半は再び「夜のために」や「Stay in my hand」などアグレッシヴでスピード感のある曲を連投。たくさんのコブシが掲げられる光景を見ながら、ライブは何にも代えがたい宝物だと大木は語る。そして改めて、前だけを向いて音楽をやっていくことを宣言すると、アルバムタイトル曲「innocence」、そしてアルバムの終曲であり、人生賛歌でもある「ファンファーレ」を披露した。この日の物語を今一度美しく織り上げていくような「innocence」、哀愁と祝福の音色が混じり合ったトランペットの旋律と重なる3人のたっぷりとした演奏と願うような歌、そこにファンから送られてきたコーラスとで、様々な人生が絡み合っていくような重厚で、多幸感のあるアンサンブルが生まれた「ファンファーレ」。受けた生を肯定して、かけがえのないものとしていく強さが会場を包み、その高揚感の余韻のなか、ステージや客席を照らした照明がひとつ、またひとつと消えていく。



今回のツアーは何より、その瞬間、瞬間を燃やしていく命のたくましさや美しさ、感情豊かで、大きく深呼吸をして四肢を伸ばしていく自由さに満ちていた。そして何よりライブ、音楽がもたらしてくれる力を実感するものとなった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎AZUSA TAKADA/Victor Nomoto - Metacraft

■<ACIDMAN LIVE TOUR “INNOCENCE”>2022年3月5日(土)@LINE CUBE SHIBUYA

01. introduction
02. Visitor
03. 歪んだ光
04. Rebirth
05. イコール
06. スロウレイン
07. Ride the wave
08. 灰色の街
09. 素晴らしき世界
10. 彩-SAI-(前編)
11. Link(instrumental)
12. ALE
13. 2145年
14. 夜のために
15. Stay in my hand
16. ある証明
17. innocence
18. ファンファーレ
encore
en1. Your Song

■<ACIDMAN LIVE TOUR “INNOCENCE”>

▼2022年
3月05日(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA ※全席指定
3月11日(金) 福島・いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場 ※全席指定
3月21日(月・祝) 福岡・UNITEDLAB ※席種未定
4月09日(土) 広島・JMSアステールプラザ 中ホール ※全席指定
4月22日(金) 大阪・大阪国際交流センター 大ホール ※全席指定
6月03日(金) 東京・Zepp DiverCity ※席種未定
6月12日(日) 宮城・仙台PIT ※席種未定
6月26日(日) 愛知・Zepp Nagoya ※席種未定
7月03日(日) 新潟・NIIGATA LOTS ※席種未定
▼チケット
S席:10,000円(税込)
A席:7,000円(税込)
※ドリンク代が別途必要となる公演あり
※「席種未定」の公演は、感染状況・会場規定を鑑みて、公演2週間前を目安に発表

■<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>

11月26日(土) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
11月27日(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
▼出演アーティスト
ACIDMAN
ASIAN KUNG-FU GENERATION
THE BACK HORN
STRAIGHTENER
10-FEET
Dragon Ash
and more… (50音順)
※出演日、タイムテーブルは後日発表。
※出演アーティストは変更になる場合がございます。
▼チケット
アリーナ 15,000円/1DAY
スタンド席 15,000円/1DAY
KIDS (スタンド席) ※半額 7,500円/1DAY
※対象:小学生 (小学1年生〜6年生)
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999



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