【インタビュー】伊津美 敬 、40歳再起の1stシングルリリース。「年とること そんなに悪くないぜ」

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10代でギターを手にして以来、衝動に突き動かされるままに伊津美 敬 は自身の高ぶる気持ちを歌声にぶつけ、ギターの弦を掻き鳴らし続けてきた。

◆「TEENAGE」ミュージックビデオ

25歳で結成、30代頭まで活動を続けてきたバンド・未成年では、伊津美は何時までも消えない夢を追い求め青春し続ける姿を、力強いメッセージに変え歌い続けてきた。中でも「TEENAGE」は、夢を追い続ける気持ちを後押す楽曲としてファンたちの間で高い支持を集め続けていた。

幾つになろうとも夢を喰らい続けきた伊津美だったが、33歳で大病を患い、音楽活動を停止。以降は表舞台に立つのをあきらめ、自身の経験を元に、夢を追い求める表現者たちを後ろから支える立場に転身。みずから株式会社IZUMI PROMOTIONを立ち上げ、今もエンターテイメントの世界で、夢を現実にし、成功へ導く人たちや企業を支える活動を行っている。

しかし、一度本気で抱いた夢は簡単に消えることはない。エンターテイメントの世界に於けるコンサルティング業務で信頼を得た今、伊津美は40代へ足を踏み入れたことをきっかけに、ふたたびギターを手にし、歌い始めた。彼の最初のアクションになるのが、3月1日に配信リリースする「TEENAGE」になる。ここに、伊津美の今のリアルな言葉をお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

──伊津美さんがバンド活動を始めたのは、幾つのときでした?

伊津美:音楽活動を始めたのは16歳のときでした。当時はX JAPANやLUNA SEAなどに衝撃を受け、衝動のままにみずからも音を鳴らしていました。地元は山口県になるのですが、バンド活動を始めて間もない頃から地元のコンテストで入賞するなど相応の評価を得てきました。そのときの自信から「音楽の道で形を成せる」と思い、何の伝もないまま19歳で上京。それからは音楽活動へ本格的にのめり込みだしました。3月1日に、自分は1stシングル「TEENAGE」を配信リリースしますが、実はその曲を作ったのが25歳のとき。自分の音楽人生の中に大きな影響を与えた未成年というバンドを始めるにあたって作った楽曲でした。

──「TEENAGE」は、ある程度人生経験を積んできた人が、まだまだ夢をあきらめないぞと気持ちを奮い立たせる歌。てっきり40歳を迎えた今の時期に生まれた楽曲だと思ってました。

伊津美:この曲を作った時に多く言われてたのが、「25歳から新たなバンド活動を始めるなんて遅すぎる」の言葉。当時のバンドへ未成年と名付けたのも、そういう声に対してのアンチテーゼとしての意味もあってでした。確かに、40代という今の年齢で歌うからこその深みを持った説得力が「TEENAGE」にはありますけど、この楽曲が生まれた頃も、20代後半へ入る時期特有の、約束の無い夢を追いかけ続けることへの焦りを持って歌っていました。


──「TEENAGE」に込めた思いは、今にも通じると。

伊津美:自分は、音楽活動を一度辞め、以降は裏方として経験を重ねながら、みずからの会社IZUMI PROMOTIONを立ち上げ、今に至っています。今、ふたたび音楽活動を始めましたが、現在は、これまでの業務を左脳で、音楽活動を右脳で表現する形を取りながら、二つの活動を並行して進めています。その経験を踏まえて歌う今の「TEENAGE」は、20代のとき、10代の頃の自分へ向けて「歳取ることも悪くねぇぜ」と歌っていたのとは違う意味を持つようになりました。夢を閉ざしてゆく自分と同世代前後の人たちへ向け、「こういう生き方も悪くねぇぜ」と、生きてく背中を見せる楽曲として歌っているなと今は思います。 

──伊津美さんが音楽活動を止めたのは、いくつのときでした?

伊津美:ロックバンド未成年を解散したのが31歳のとき。それから2年間はソロとして活動をしていましたが、ちょうどYouTubeを通して音楽を発信してゆく流れが大きくなってきた時期、同じように舵を取ろうとした矢先に大病を患いました。そこで活動を止めざるを得なかったこと。その当時ひどく落ち込み、自分が10代の頃から追い求めていた夢が心の中ですべて枯渇してしまったことから、新たな道を作り直そうと決め、退院後からは異なる世界へ飛び込みました。

──アーティスト活動を辞めてもずっと音楽に、広く言うならエンターテイメントな仕事へ携わり続けています。やはり、音楽の道からは離れられなかったわけですね。

伊津美:最初は音楽の道から自分を遠ざけようと、まったく関係ない業種で仕事を始めようともしましたけど。気がついたら、手にしたお金で新しいギターを購入したり、アーティスト仲間と交流を深めている自分がいました。結局は、自分の血が音楽を求めて止まなかったんでしょうね。改めてみずからの活動を振り返ったときに、当時の自分は楽曲の権利のことやタイアップの取り方など、アーティストとして大成するために知っておくべき知識があまりにも欠けていた。それを学ぼうと、音楽業界へ裏方として復帰。芸能プロダクションの仕事へ携わる誘いもあり、2年ほど芸能プロダクションの社員としてマネージメント業務に携わりながら、音楽業界で生き抜いてゆくために必要なスキルをいろいろ学び続けました。

──でも、会社という組織に従属するのではない生き方を、その後に選ぶわけですよね。

伊津美:そこは性格なんでしょうね。マネージメントのノウハウを学ばせていただいた事務所の方々には、今でも感謝しています。でも、僕の心の性根が個人事業主指向なんですよ。それもあって、学んだスキルを活かそうと、みずから全額出資してIZUMI PROMOTIONを設立。アーティストにまつわる様々な活動のサポート業務を。それこそタイアップや楽曲配信、ミュージックビデオやWEB制作にWEBプロモーション、楽曲の権利の管理などなど、大きくいえば音楽活動を行ううえでの業務全般のコンサンルティング活動を始めました。ただし、すべてを自分が担うのではなく、みずからも携わりながら、餅屋は餅屋ではないですが、それぞれの得意分野の仲間たちとチームを組み、その人が求める面を支え、仲間たちと一緒に成果を伸ばしてゆく形を取っています。

──そこにはどんな思いが?

伊津美:以前の自分にも言えたことですが、アーティストというのは前へ前へという気持ちが先走り、そのために必要な裏方としてのスキルや業務が疎かになり、真正面は熱いけど、背中はがら空きになってしまうことが多くある。その背中の部分をIZUMI PROMOTIONが埋める形でサポート。そうすることで、アーティストは安心して前だけを向いていける。それが、今の業務にもなっています。


──でも裏方に専念することなく、ふたたび表舞台に立ち始めたきっかけが気になります。

伊津美:きっかけは幾つかありました。そのうちの一つを言うと、ソロ活動をしていた時期にYouTubeチャンネルを立ち上げ、幾つかアップしている動画の一つとして、長渕剛さんの「しゃぼん玉」のカバー動画を上げました。その後、裏方として働きだしたことから、そのチャンネルのこともすっかり忘れていたのですが、IZUMI PROMOTIONとしての事業を立ち上げ、YouTube展開の大切さを認識してゆく中、ふっと自分のチャンネルの存在を思い出し、久し振りに開いたんですよ。そうしたら、数年の時を経てたとはいえ、何も触っていなかったにも関わらず、アップした「しゃぼん玉」の動画が36万回も再生数を稼いでいて、チャンネルの登録者も増えていた。要は、長渕剛ファンの方々がいろんな動画を漁っていくなかで辿り着き、そこから長渕剛ファンの間で情報が交わされ、その数字にまで膨れ上がっていたわけなんです。それに触発されたのが、一つ。他にも、自分がコンタルタント業務で携わっているプロダクションに所属するアイドルさんのライブを目にしたとき、熱く焚きつけられるものがあった。そこから、そのアイドルさんの楽曲をカバーさせていただき動画にアップしたのですが。そうやってふたたびみずからギターを持って歌ったことも、火種が点いたきっかけになりました。



──そこから一気に、音楽活動再開へのギアがグッと入ったわけですね。

伊津美:周囲の方々からも、「活動再開へ向けてのギアが一個入ったね」と言われますけど。自分としては、今もまだ馴らし運転をしている感覚ですけどね(笑)。

──今回も、長渕剛さんの「ろくなもんじゃねえ」をカバーし、ミュージックビデオを制作。YouTube上にアップしています。長渕さんの影響は、かなり大きなものがあるのでしょうか?

伊津美:もともと自分はバンド側の人間だから、長渕さんに強く影響を受けてきたわけではないです。ただ、長渕さんが行っている社会活動を目の当たりにし、実際にコンサート制作などで長渕剛さんのライブ現場で仕事として関わるようになったことで、そこから学んだスキルや自信には大きなものがありました。以前、「しゃぼん玉」をカバーしたときは、単純に自分の歌声や歌い方を最大限に活かせる曲ということで選びましたけど。今回「ろくなもんじゃねえ」をカバーしたのは、今の自分を形成する一翼にもなった長渕剛さんへの感謝の気持ち。そして、YouTubeチャンネルに多くの長渕ファンが登録してくれていること。何より、自分が歌いやすいし、好きな曲として選び、カバーした次第です。これからは、「日本語ロック名曲伝道師」と掲げ、自分の血肉となったロックの名曲たちをカバーし、YouTube上にアップしていこうとも思っています。



──なぜ「TEENAGE」をふたたび歌ったのか。その理由を、改めて聞かせてください。

伊津美:長渕剛さんのカバー曲がYouTube上で火が点いたのは、自分が本気で感情をたぎらせ歌ったことで、その歌に人の心を揺さぶる説得力が生まれたからだと思います。じゃあ、自分が一番感情を燃やして歌える曲は何か……。それは、自作の曲なんですよ。自作曲は、すでに100曲を超えるレパートリーがある。 その中から、最初に提示するには何が良いのか。しかも、40歳のアーティストが世の中へ発信する1stシングルとて何が相応しいかと考えたときに出てきたのが、歌うたびに自分の感情に熱を滾らせる「TEENAGE」でした。

──なるほど。

伊津美:先の話にはなりますが、今後も自作曲は積極的に配信音源化し、YouTube上でもミュージックビデオの発信も続けていきます。そのうえで必要なネタは豊富にある。今回の「TEENAGE」も、今の自分の心情に置き換え、一部歌詞を今の気持ちへ直しています。たとえばの話、「コロナ禍の今に向けてメッセージしたい」となったとき、過去の曲の中、その思いに重なる楽曲がある。ならば、その楽曲を今の時代に合わせコンバージョンしていけば、十分、今の時代でも説得力を持った歌になる。そういう活動を、これからはしていこうと思っています。



──もちろん、これまでの裏方業務も行いつつ、そこへ表立った活動も並行して加えてゆく形を取るわけですよね。

伊津美:もちろんです。少し重い話になりますけど。自分の母親がなくなったのが43歳のとき。当時はまだ自分は10代でした。でも今は、自分がもうすぐ母親が亡くなった年齢に達しようとしている。昔から自分は母親似と言われてきましたし、ひょっとしたら自分も母親と同じ年齢で亡くなるかも知れない。そのときに、「俺はあと3年で何を成すべきか」と考えました。だからこそ悔いのない人生を送ろうと思い、もう一度ギターを手にし、歌い始めたわけです。それに、自分のアーティスト活動を提示してゆくことが、今、仕事として行っていることを示す試金石にも繋がること。ただし、自分の活動に関しては「売れる」ことを追求するのではなく、いろんなやり方を試作してゆくためのものとしても、裏方側の意識では捉えています。アーティスト側の意識は、ただただ燃えたぎる気持ちをぶつけたい、それだけですからね(笑)。

──「TEENAGE」を聞いてると、ふたたび夢を追いかける気持ち以上に、まだまだあがいてもいいし、あがきたいなという気持ちにしてくれます。伊津美さん自身も、20代の頃と、40代になった今、「TEENAGE」を歌っている中で感じる意識や捉え方の違いもあるのでしょうか。

伊津美:20代の頃は、10代だった頃の自分に対して、どこか悔やんでいる感情を持って歌っていました。でも、40歳になった今は、「俺はもう歳だから」と言って新しいことへ踏みだすことをあきらめてしまうまわりの大人たちへ向け、「そうじゃないよね。みんなも心根は10代や20代の頃と変わってないでしょ」と焚きつける気持ちで歌っています。自分は、「TEENAGE」を通して「ふたたび夢を求めよう」と歌っているわけではない。もちろん、そう思って頑張る人が出てきたら、それは嬉しいこと。でも、人それぞれ家庭や家族を背負ったり、会社の中の立場を担うなど、いまさら新たな夢を無謀に追い求めるのは難しい環境へ置かれているのもわかっている。であれば、今、置かれている環境の中で、気持ちを狭めるのではなくフルスウィングしてもらいたい。その引き金に「TEENAGE」がなってくれたら、俺はそんな嬉しいことはないと思っています。

──その姿勢を描いたのが、「TEENAGE」のミュージックビデオですからね。

伊津美:子供時代に夢を追いかけていた2人の姿と、大人になった今のそれぞれの姿。でも、今も性根は変わってないだろという思いを、映画風に映し出した作品なので、ぜひ目を通してください。

──「TEENAGE」を皮切りに、伊津美さんがこれからどんな思いを発信してゆくのか楽しみにしています。

伊津美:「TEENAGE」を自分と同じ世代や前後の年代の人たちのテーマソングとして提示したうえで、またいろいろと発信していきますよ。詳しくは、今後YouTubeチャンネルを通して伝えていくから、そちらをぜひチェックしてください。自分自身が演者と会社の経営者という二刀流として活動を始めたように、リアル二刀流で活動することの意味をこれから示しますから。日本の音楽シーンにもリアル二刀流がいたぞという姿に、ぜひ注目してください。

取材・文◎長澤智典

「TEENAGE」

リリース情報
・YouTubeチャンネルにてミュージックビデオ公開(2022年4月1日)
・apple musicほかデジタル音楽配信開始(2022年4月1日〜)
・カラオケDAM、JOYSOUND配信決定(今春4月〜)
・有線放送USENにて楽曲リクエストオンエア可能(2022年3月1日〜)

発売元:IZUMI PROMOTION inc.
販売元:NexTone

Singer/Actor/Songwriter/Electric & Acoustic Guitar:伊津美 敬IZUMI TAKASHI
Rhythm Track:金真範 Kon Masanori
Mix & Master:池田公洋(島爺、Bentham) / SLOTH MUSIC
Video & Art Director:MASA / TA HOMIEZ FACTORY

ミュージックビデオ役者共演
野田賢輔 (ex ASIAN2 ギタリスト)
米盛秋音
土屋晴真

企画制作:㈱IZUMI PROMOTION
https://izumipromotion.co.jp

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