【ライヴレポート】MORRIE、<肉塊生誕祭>に新曲含む全20曲と重層的なサウンド

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恒例となっているMORRIEのバースデー公演<肉塊生誕祭 -The Rite of Spring->が3月4日、東京キネマ倶楽部にて開催された。

◆MORRIE 画像

ここ2年はコロナ禍に鑑みて中止されていたこともあり、本人にとってもファンにとっても、まさに待望のライヴだったと言っていい。今回のバンドメンバーは、黒木真司(G / Z.O.A)、秦野猛行(Key)、yukarie(Sax)に加え、昨年11月の<Solo 30th Anniversary “永遠回帰”>の際には来日が叶わなかったHeather Paauwe(Vln)がステージに立ち、リズム隊には繪野匡史(Dr)とTOKIE(B)を起用。荘厳なオープニングSEが場内に流れる中でそれぞれが定位置につくと、いきなり新曲の「Destiny」からパフォーマンスはスタートした。


ヴァイオリンの音色に導かれ、ヘヴィなベースサウンドにつながれるイントロダクション。スローテンポのリズムゆえに重厚さが際立つが、そこにハンドマイクで歌い上げるMORRIEのエモーショナルなヴォーカルが乗り、ドラマが少しずつ構築されていく。初めて耳にする音塊にじっくりと耳を傾けるオーディエンス。彼の冠した“運命”が意味するところは想像するしかないものの、聴き手それぞれが様々な光景を思い浮かべたことだろう。ここに続いた「イカロス」は、有名なギリシャ神話をモチーフにした独自の歌詞が綴られているが、「Destiny」を受けて熟考すると、また新たな視点がもたらされるから興味深い。

そして軽快なリズムの「パラドックス」へ。フロアでは自ずから身体が揺さぶられる。前回のこの曲の演奏時、MORRIEはレスポールスタンダードを手にしていたが、今回はテレキャスタータイプだ。その選択の背景の一つには、繪野とTOKIEが生み出すグルーヴを基盤とするバンドサウンドの特性もあったかもしれない。同じ楽曲でも奏者が異なれば別の響きになるのは自明の理とはいえ、その醍醐味を面白さとして実感できるケースはそう多くない。特にこの日唯一、『影の饗宴』(1995年)からセレクトされた「猿の夢」、『HARD CORE REVERIE』(2014年)からの「Dust Devil」と続いた前半の流れは、この7人が生み出す音をわかりやすく堪能できるシーンだった。



クリーンサウンドのギターストロークも印象的な「異人(ストレンジャー)」は、ソロとしての1stアルバム『ignorance』(1990年)のエンディングトラックである。その曲調には時代性も感じられるが、同時に現在のステージにおいては、音源の再現から踏み込んだ深化した表現になっていることもわかる。特に1990年代の楽曲群に関しては、アルバムでも映像でも、ライヴ作品化をぜひ望みたいところだ。

ここで勢いよく始まったのが「夢鬼歌」だった。DEAD ENDの『DREAM DEMON ANALYZER』(2012年)に収録され、シングルリリースもされた楽曲である。瞬時に場内の空気が変わった。2020年6月16日に急逝した足立祐二の追悼公演<幻想回帰の夜 〜足立祐二を偲んで〜>(2021年6月16日@東京・南青山MANDALA)の際にMORRIEが弾き語りで披露したのを思い出した人もいただろう。オリジナルのニュアンスも意識しつつ、自身の色合いを提示する黒木の巧みなギタープレイにも惹き付けられる。女声コーラスやヴァイオリンも加わっており、DEAD ENDによる演奏の質感とは異なるとはいえ、この名曲を体感できる貴重な機会は純粋に嬉しい。



MORRIEによるリズムギターも心地よいムーディな「パニックの芽」を経て、ドラマティックな「純潔の城」へと続いていく。『光る曠野』(2019年)に収録されているマテリアルだが、彼のバックグラウンドにある多彩な音楽性が集約された一つだろう。深遠な旋律を伴って、じっくりと物語を伝えていく。突如として現れる不協和音的なパートが混迷さを加味させる構成にも趣がある。

そのまま始まったのは「視線の快楽」だった。1991年にシングルとして発表され、初期のライヴから定番的に演奏されてきた楽曲だ。ベスト盤『ECTPLASM』(2005年)にも収録されていない、音源そのものが入手困難なマテリアルはいくつもあるが、その意味では「視線の快楽」も隠れた名曲という位置づけになるのかもしれない。こうしてステージで耳にすると、改めてそんな思いを強くする。



ギターのフィードバック音から歌につながれた「Unchained」は、叙情性を湛えつつ、不穏な空気もまとう。スローテンポでありながら、静から動へと移ろう感情を体現するかのようなアンサンブル。特にコーラスパートを支える轟音は、サウンドエフェクトだけではなし得ない、ミュージシャンがその場でプレイするからこそ生まれる求心力がある。そんな光景を目にしながら頭をよぎったのが、表舞台から姿を消していた10数年の間、MORRIEはクラシックばかりを聴いていた時期があると話していたエピソードだった。今回のライヴに付された副題<The Rite of Spring>がストラヴィンスキーの「春の祭典」と同名であることもあり、こういった重層的な音の組み上げ方に古典との近似性を見出していた。

これも個人的な観点でしかないが、次の「Ride the Night」を聴きながらふと思い起こしたのは、鬼才として知られるポーランドの芸術家、スジスワフ・ベクシンスキが描いた作品の世界だった。死、そして退廃。無論、この曲を『HARD CORE REVERIE』で耳にするときとは違った受け止め方である。そんな不可思議な想像が生まれてくるのも、MORRIEが催す“饗宴/響宴”の面白さだ。


ここで各奏者が即興的に音を載せながら作り出していく、独特の緊張感を持った導入部から「Cosmos(カオス)の中に」が始まった。バンドサウンドの厚みがより前面に押し出されていたように感じたのは気のせいではなかっただろう。ここがある種の転換点となり、後半は体感度、即効性の高いマテリアルが連射されていくことになる。

「Cosmos(カオス)の中に」で際立っていたベースラインがさらに躍動感を増した「SEX切断」の絢爛さも特筆したくなる。ゴシックテイストのあるファンクロックとでも言うべきか。オーディエンスの体の動きも大きくなった。中盤のインタールード的アンサンブルを、指揮者のように両手を広げて受け止めるMORRIE。恍惚感と同時に、MORRIEの鋭い視線に緊張感も覚える。しかし、場内の熱量は高まる一方で、そのまま黒木のソロプレイから始まったサックスも主軸的に響く「破壊しよう!」では、いつものようにダンサブルな空間が作り出されていった。


そんな中で披露されたのが「Fly Me To Neptune」なる新曲だった。ややアップテンポに進む軽やかさ。初めて耳にしただけでもキャッチーさがわかるが、シンプルな構成かと思いきや、個性的なコードワークを始め、演奏が進むにつれて随所に音楽的なアクセントが見えてくる。今回のステージでの実演が、実際の音源制作においてプラスαの影響も与えそうだ。

TOKIEのベースに牽引された「Danger Game」、同じくギターリフで押していく「眺めのいいあなた」という流れも勢いを増していく。非日常と称しては簡単すぎるが、何かしらの抑圧から解放され、異空間での舞踏を楽しむかのような昂揚感がそこにはある。本編を締め括ったのは「眩暈を愛して夢をみよ」。メロディックであり、グルーヴィでもある。様々に湧き上がった感情をほどよく和らげるかのようなセレクトだ。ただ、ここでリフレインされる“夢”が、実は今夜の通奏低音のようなキーワードではなかったのかと感じたのがこの瞬間だった。MORRIEがしばしば用いる言葉とはいえ、セットリストを振り返ってみれば、このタイミングで先述した「夢鬼歌」を選んだ点も含めて、特定の意図を感じ取りたくもなる。また、“飛翔”を意味する言葉も同じように響く場面が多々あった。


アンコールで歌われたのは「あとは野となれ山となれ」。『ロマンティックな、余りにロマンティックな』に(1992年)収録された楽曲だが、ライヴのエンディングに配された場合、特に彼の哲学的な普遍性に目を向けたくもなる。純粋に“いい曲”として楽しめるのはもちろん、演奏に触れながら、精神が浄化されていくような感覚になる人も少なくないだろう。

最後は「また会いましょう。元気でね」と笑顔でステージを去ったMORRIE。当然、ファンとして気になるのは、今後の具体的な活動だろう。コロナ禍でも行われてきた弾き語り公演<SOLITUDE>が続いていくのは予想できるが、その他の事柄についても間もなく明らかにされるはずである。続報を待ちたい。

取材・文◎土屋京輔
撮影◎森好弘

■<肉塊生誕祭 -The Rite of Spring->2022年3月4日@東京キネマ倶楽部 SETLIST

01. Destiny (新曲)
02. イカロス
03. パラドックス
04. 猿の夢
05. Dust Devil
06. 異人(ストレンジャー)
07. 夢鬼歌
08. パニックの芽
09. 純潔の城
10. 視線の快楽
11. Unchained
12. Riding the Night
13. Cosmos(カオス)の中に
14. SEX切断
15. 破壊しよう!
16. Fly Me To Neptune (新曲)
17. Danger Game
18. 眺めのいいあなた
19. 眩暈を愛して夢をみよ
encore
20. あとは野となれ山となれ

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