【インタビュー】工藤晴香「宇宙って未知の世界だから魅力的に感じちゃう。見上げたら絶対にあるものだし」

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■そこまで宇宙に詳しいわけではないんですけど
■分からないからこそロマンチックだなと思うんです


──続く「家路」もバラードですが、これは家族に対するものでありつつ、恋人とかでもいいのかなと思いました。

工藤:いろいろな相手を想像してほしいなと思っています。私がこの曲を書いているときは甥っ子のことを考えて「生まれてきて良かったね」という気持ちを大切にして歌詞を書いたんですけど、聴き手によってはパートーナーや家族、友達、いろんな相手を思って聴いてほしいと思っているんです。

──その人にとって帰る場所って、それぞれですからね。

工藤:そこはすごく意識していました。完全に家族の歌という感じにはしたくないなって。

──表現としては、<目に見えない幸せは 誰にも譲れない壊せない>という部分が心に残りました。このあたりはどんな気持ちで書いていたのですか?

工藤:幸せって人が決めるものではなく、自分が決めるものじゃんっていうスタンスなので、それは顕著に出ているかもしれないです。私の幸せは私が決めているし、それは誰にも譲れないし壊せないでしょっていう。でもこう見るとわりと強い歌詞ですね。優しい気持ちで書いていたはずなのに、私の気の強さが出ちゃうのかな(笑)。

──「Real me」はなりたい自分になろうという曲ですね。

工藤:これは自分探しの旅って感じですね。ライブを意識して書いた曲でもあります。

──メタルというか、全体的にヘヴィですし、あのツーバスの凄さですよ。

工藤:すごいですよね!「Under the Sun」とかもかわいい曲なのにツーバスがすごくて、ライブで歌っていても、耳の中がすごいことになっていますから。

──歌詞も語呂がいいし、歌うのが楽しそうだなと思いました。

工藤:レコーディングはめちゃめちゃ楽しかったです。いつもレコーディングは速いんですよね。ただプリプロには時間がかかるんですけど。

──そこで歌い方とかを決めているんですね。

工藤:そうなんです。プリプロでいろいろ歌い方を練ってからレコーディングをするので、レコーディングをスムーズにするためにプリプロをしているんです。

──「ROCK STAR’s Brand new song」は歌詞のメッセージが良くて、背中を押してくれる曲ですよね。

工藤:この曲は自分が言われたい言葉を書いていきました。誰か私を救ってくれ!と。自分が言われたいことを書いていったらこの曲ができたんです。

──それを言ってくれるのがロックスターだと。この曲もライブが見えますよね。オーディエンスにこうしてほしいっていう要望が、まんま歌詞になっていますし。

工藤:手を叩くところもギミックを入れているし、右手や左手を上げてほしいですね。やってくれなかったらめちゃめちゃ凹みますよ(笑)。でもこの曲こそライブを経験したことが大きかったと思います。最初の1年はライブをやれていなかったから、2ndミニアルバムの『POWER CHORD』のときは、ライブを意識して曲を書いていなかったですから。その年によって見ている景色が違うから、そういうのは作品に出るんだなって思いました。


▲『流星列車』【初回限定盤】


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──「No scenario」は問題作ですね。ひとつとして同じメロディがないし、アレンジも多彩で。

工藤:Aメロ・Bメロ・サビみたいな曲の構成が普通と言われる中で、全部違う曲があっても面白いんじゃないかなと思っていたら、本当に全部違う曲が届いたので、すごいな!って思いました(笑)。なので、歌詞は苦戦しましたね。6割くらい書いて、歌詞書けませんと伝え、2ヶ月くらい寝かせていたんですよ。突然「書いている? 間に合わないよ」と言われて、あぁ!となって書きました(笑)。

──1曲の中に2~3曲入っている感じですからね。

工藤:そうなんです! だからガッチガチにテーマを固めないと書けないと思って、映画というテーマで書きました。映画っていろいろなジャンルがあるので、それをごちゃ混ぜにしたら楽しいだろうなと思って。

──ボーカルは、ポップでキュートな感じでしたよね。

工藤:強めな曲が多かったり、バラードだと優しかったりするんですけど、声優として活動をしているので、ちょっとキャラクターっぽい部分も見せられたらいいなと思ったので、この曲は遊びました。


──そして1stシングル曲である「Under the Sun」ですが、アルバムの中で聴いていかがですか?

工藤:アルバムに入ったことによって印象が変わりますね。記念すべき1stシングルなので、単体でも好きなんですけど、アルバムに入ったことで輝きを増したと思います。この流れで聴くからこそ、違う捉え方ができるというか。

──ピアノのアレンジが素敵だなと思っていました。

工藤:デモの段階ではピアノが入っていなかったんですけど、平地さんがどうしてもアレンジしたいということで。そのままでも十分良いと思っていたんですけど、ピアノが入ったことで「なるほど!」って思いました。

──ピアノが歌詞の内容にすごく寄り添っている感じがしたんですよね。

工藤:少しエモみを増したい、ということとだったんですかね。ドラマチックさを足されていたので、とてもありがたかったです。

──ここでピアノが入っていることで、「Scar」へのつながりも良くなるんですよ。

工藤:「Scar」は悲しみが強い曲ですよね。今回も全曲歌詞を書いていて、それ以前のミニアルバムは全部自分の主体だったんです。アルバムでもそれだと聴き手が疲れちゃうし、言っていることは一緒じゃん!となっちゃうので、「Cry for the moon」もそうですけど、登場人物を自分の中で作って、その人の気持ちで歌詞を書くことにトライしました。私自身は割り切るタイプで悲しみを引きづらないんですけど、世の中には引きずってしまう人もいるので、その人たちの気持ちで歌詞を書きたいと思ったんです。そうしたらアレンジも、ピアノとストリングスでドラマチックな感じになっていて。

──これは最初から入っていたのですか?

工藤:いや、あとからだと思います。どこかの曲でストリングスを入れようという話にはなっていたんです。「家路」もありかと思ったんですが、しつこいかなと。静かな感じが「家路」っぽいからやめようとなり、「Utopia」でもひっそり遊び要素として入っているんですけど、ガッツリ入れるとしたら「Scar」かなと。

──感情が揺さぶられますよね。

工藤:すごいですよね、ストリングスって! ドラマチックになるから、また違った曲になりました。

──最後の「Tread this Earth」は、明るい曲で終わろうと?

工藤:デモをいただいたときから、明るい曲だけど「Under the Sun」ほど突き抜けず、儚さも感じられるアルバムの締めくくりの曲にしたいなと思っていました。全部の歌詞を書き上がったら、総括で書きたいと思って後回しにしていたんですよね。

──すべてを聴き終わったあとの、映画のエンドロール的な感じがしました。

工藤:まさにエンドロールですね。最後で良かったなと思う曲です。この曲が届いたとき、これまでと違うテイストの曲が来たと思ったんですよね。EDM寄りというか、これも洋楽だよなと思って、英語が多めになるのかなと思いつつ、今まで来たミドルの曲とも違っていたので大変でした。

──それはどのへんが?

工藤:何よりメロディが良すぎたので、内容もグッと来るものにしないと曲が死んでしまうと思って、そのプレッシャーが大きかったんですよね……。こんなに良い曲なのに、それを活かすも殺すも私の歌詞次第だったから、ひたすら自分を切なく儚い気持ちに落とし込みながら書いていました。

──それぞれが歩んでいく感じが、切なくて良かったです。

工藤:出会いもあれば別れもある、見ていた景色、これから見るであろう景色だったりが違っていることに時の流れのようなものを感じる。そういうものを描きたかったというのはあります。学生生活もそうなんですけど、ずっと3年間同じことをしていたのに、卒業式を迎えた途端、突然別の人生を歩み出すじゃないですか。見る景色が違ってくるということで、そういった切なさを書きたかったんです。

──今、ものすごくしっくり来ました。最終的にそれらの曲をまとめたタイトルが『流星列車』というのも素敵です。

工藤:ありがとうございます。そこまで宇宙に詳しいわけではないんですけど、分からないからこそロマンチックだなと思うんです。手に触れることもできないし、そこに身を置くことも現状できない。未知の世界だから魅力的に感じちゃうんですよね。それに見上げたら絶対にあるものだし。

──そしてワンマンライブ<「Vogel」-Under the Sun- / -Cry for the Moon->が、5月4日に豊洲PITで開催されますね。

工藤:『流星列車』の旅に、来てくれたみんなと一緒に行けたらいいなというのと、ほとんど初披露になるので、どんなふうになるのか私も楽しみにしています。バンドのメンバーがどうアレンジするんだろうとか思いますけど、私も未知の世界なので、ぜひ付いてきてほしい! みんなと一緒に未知の世界に行きたいです。

取材・文:塚越淳一

■『流星列車』

2022年3月30日(水)リリース
【初回限定盤】CD+M-CARD
CRCP-40640 / ¥5,000 (税込)
【通常盤】CD
CRCP-40641 / ¥3,000 (税込)

[CD収録内容]
初回限定盤、通常盤共通
1号車 旅立ち
2号車 Cry for the Moon
3号車 Utopia
4号車 Supernatural
5号車 HOPE
6号車 家路
7号車 Real me
8号車 ROCK STAR’s Brand new song
9号車 No scenario
10号車 Under the Sun
11号車 Scar
12号車 Tread this Earth

ライブ・イベント情報

工藤晴香ワンマンライブ
<「Vogel」-Under the Sun- / -Cry for the Moon->
1部:-Under the Sun-
2部:-Cry for the Moon-
5月4日(水・祝) 豊洲PIT
〒135-0061 東京都江東区豊洲6丁目1-23
1部:開場 14:00 / 開演 15:00
2部:開場 18:00 / 開演 19:00
※開場開演に関しては情勢を鑑み、変更になる可能性もございます。
各部終演後、工藤晴香による“お見送り”を実施いたします。
感染症対策に充分配慮し実施いたしますが、情勢により中止となる場合がございます。予めご了承ください。
■チケット
◎FC限定プレミアムチケット \20,000
(前方エリア/特典付)
◎一般指定席 \9,500

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