【ライブレポート】加藤和樹、15周年集大成の宴にこめた溢れる想い「また、この場所で会いましょう」

ツイート

15周年を迎えた加藤和樹が、4月2日(土)、東京・日比谷野外音楽堂で<Kazuki Kato 15th Anniversary Special Live ~fun-filled day~>を開催した。自身にとっては3度目、13年ぶりとなる野音ワンマン。この日は<ピアノライブ>、9年ぶり一夜限りの<JOKER>復活、そして<加藤和樹&THE DRASTICS>の3部構成になっており、文字通りキャリアの"集大成"となるプログラムでファンを魅了した。

◆ライブ写真



夕刻、花冷えの日比谷野外音楽堂。グランドピアノが鎮座するステージにまず現れたのは、黒いスーツにリボンタイという装いの吹野クワガタ(Pf)だ。客席に向かって静かに一礼し、この日のために書き下ろしたという「祈り」を演奏。神聖な空気に包まれたところで、ステージ後方の高い位置から加藤和樹が現れた。ミュージカルの一場面を想起させるようなストーリー性のある演出で歌われた1曲目は「あなたと出会えて僕は幸せでした」。天にまで想いを馳せるように、全ての出会いに感謝をするように、桜咲く季節の思いを綴ったこの曲を大切に歌い上げた。

「今日は15周年の集大成、日比谷野外音楽堂での13年ぶりのライブになります。何から話そうかと色々考えたけど、いざここに立つと感動で胸がいっぱいになりました。始まったばかりだけど(笑)」


緊張と喜びが入り混じったような表情で会場を見つめながら、集まってくれたファンやここまで支えてくれた全ての関係者への感謝を伝える。またこのピアノライブでは「コロナや震災、戦争など心痛む出来事が続いているからこそ、今届けたい楽曲を」ということで、「願いを託して」(ミュージカル『北斗の拳』より)、「生まれ来る子供たちのために」(オフコース)、そして「いのちの歌」(竹内まりや)などを披露。「春よ、来い」(松任谷由実)では、サイリウムの光で桜色に染まった会場に加藤の優しい歌声が響き、ピアノライブは加藤自身が作詞を手掛けた「ひとりじゃない」で締め括られた。



第2部となるステージは、加藤和樹と伊達孝時によるユニットJOKER。約9年ぶりの復活となったこの日、立ち込めるスモークと真っ赤な照明に煽られながら現れた2人の姿に、会場からは熱狂的な拍手が寄せられる。「お前ら、準備はいいか!」という加藤の声を合図に、JOKERのデビュー曲「No.1」からスタート。当時と同じサポートメンバー(吉田トオル(Key)/五十嵐勝人(Gt)/満園庄太郎(Ba)/今村舞(Dr))が集まったのは、決して"当時"を再現するためではなく、このメンバーじゃないと出せないグルーヴ感やメンバーの個性そのものが楽曲にも反映されているからなのだろう。

MCでは、懐かしさからなのか「楽屋から泣いてた(笑)」と伊達。ベースの満園も「10年待ったよ(笑)」と笑いを取り、リラックスした中にもこの日を迎えられたことへの興奮が隠しきれないといったムードが漂っている。JOKERをやりたいねという話は前から結構2人でしていたが、加藤いわく「やるならドカンと(笑)」という思惑がついに現実のものとなったこの日のステージ。中盤は「Stand up!」、「challenger」とテンションの高いナンバーが続き、2人の動きもどんどん激しく大きくなっていった。

「“ライブ”だね!どうよ、孝時」(加藤)
「最高です!幸せです」(伊達)

とにかく、心から音楽を楽しもう──。9年の月日が経ったとはいえ、目の前で繰り広げられているJOKERのライブからはそんな心意気がダイレクトに伝わってくる。ということは、たとえ明日また復活したとしても、次が数年後になったとしても、ステージ上で生まれているこの“無敵”感はきっと変わらないのだろう。


後半は伊達が手掛けたハッピーなロックンロール・ナンバー「ROCKING MAN」から始まり、爽やかな「Summer Breeze」、力強いメッセージを託した「Fire Soul」などをテンポよく披露。ユニットのテーマとしては男らしく尖ったサウンドやメッセージ性が強く打ち出されているJOKERだが、ライブではどの曲もしっかりオーディエンスと向き合いながら、しかもオーディエンスをどんどん巻き込んでいくように作り上げられていて、とてもオープンな音楽性が内包されているように思えた。音源だからこそ聴き込める部分もあるが、ライブだからこそ伝わるものがあるということを実感した第2部だった。



いよいよ最後のパートとなる第3部は、加藤和樹&THE DRASTICS。華やかな色気渦巻く「WARNING」のイントロが響く中、スパンコールのジャケットに身を包んだ加藤が登場。同じバンドスタイルであっても、ここではフロントマンとしてのスイッチを思いきりONにしたような表情であり、パフォーマンスだ。記念すべきアーティストデビュー作となったミニアルバム『Rough Diamond』の1曲目であり、自身の代表曲のひとつにもなっているこの曲をエネルギッシュに披露したのち、キャラクターソングの「LOVE GAME」(ゲーム『B-project』より)、ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』から「こんな夜が俺は好き」と続く。ボーカリストとしての歌い方も、仕草も、体の使い方そのものも楽曲によってガラリと変化していて、15年間様々なフィールドで活躍してきた加藤和樹ならではの実力と魅力が集約された前半だった。

「ここからは<15周年怒涛のメドレー>になります。ラストまで一気に駆け抜けます。デビューからいろんな楽曲を歌わせていただきましたが、このメドレーは僕のデビュー前、僕の歌人生はここから始まったというこの曲からスタートしたいと思います!」

ミュージカル『テニスの王子様』で加藤が演じた跡部景吾の「Flaming ice」から始まったこのコーナー。全13曲が年代順に披露されたのだが、いわゆるメドレーとして印象的な部分だけを歌い繋ぐものではなく、かなりしっかりと1曲1曲の世界観を打ち出しながら届けられていたように思う。「BEACH」や「Ultra Worker」ではみんなでタオルを回し、「灼熱フィンガーでFEVER!」はDORA(G)とのパフォーマンスで盛り上げる。「HERO」では高低差を利用して組まれているセットの上段にまで行って歌ったりするなど、選曲としてはもちろん、視覚的にも楽しませる要素が詰め込まれていた。時間にして約20分。これだけでもずいぶんなボリュームなのに、ひと息つく間も無く歌い始めたのが「Vampire」、そのまま「Blue Monday」と続いた流れに驚いたファンも多かったのではないだろうか。「Blue Monday」ではDORA(G)、五十嵐勝人(G)、川渕文雄(Ba)も降りてきて、ステージ最前で4人が客席を煽るシーンも。声は出せないが、カラフルに輝くサイリウムでオーディエンスも全力のリアクションだ。ラストは、今この社会の中でもがきながらも覚悟を決めて生きていくんだというメッセージを込めた「Answer」。この時点で2時間以上歌い続けているとは思えないパワフルな歌声が、野音の夜空へと響き渡っていた。


アンコールでは改めて今日のメンバーを紹介し、全てのスタッフ、そして駆けつけてくれたファンへ感謝を伝える。「明日から20周年に向けての道のりが始まっていくと思うと、まだまだたくさんやるべきことはあるなと思う。またいつかみんなと騒げるその日まで頑張って走り続けますので、これからも共に歩いて行きましょう!」と笑顔で挨拶し、その時々の気持ちを歌詞に映しながら変化し続けてきたライブの人気曲「Shining Road」の最新バージョン「Shining Road 2021」が披露された。

THE DRASTICSのメンバーを送り出したステージに、1人残った加藤。「13年ぶりの野音。最後は俺とみんなで締めくくりたくて」と少しだけ照れ臭そうな表情で椅子に腰掛け、アコギを手にする。先ほど噴射された銀テープが数本加藤の足元で光っていて、図らずも宴のあとの心地よい余韻を演出していた。


「今日最後に何を歌おうかなと考えたんですが、この日のために作った新曲があります。15周年を振り返ると、自分1人の力ではここまで来ることはできなかったと思う。人ひとりの力って、すごい時もあればどうしようもできない時もあって、自分の無力さを思い知ることも多々あった。それでも前を向いて進んで、明日に向かって希望を持って、明るい明日が来ればいいなって最近本当にそう思うんです。だからこそ、また明日もみんなで笑って笑顔で過ごせるような曲を作ってきました」

「明日からの皆さんの日々が、素敵なものでありますように」と言葉を添え、弾き語りで披露された新曲のタイトルは「また明日」。人の脆さも強さも知っている加藤だからこその言葉と優しいメロディーに、オーディエンスはじっと聴き入っている。15周年の終わりであり、20周年へ向けた新しい日々の始まりでもあるこの夜に、そっと心と心で手を繋ぐような1曲だ。「ありがとうございました。また、この場所で会いましょう」。最後の最後までファンに対する感謝を伝え、風邪を引かないようにと繰り返しながら笑顔でステージを後にした加藤。終演後にはこの新曲を含む6ヶ月連続の配信シングルのリリースと7月に開催される新たなツアー<Kazuki kato NAKED 2022>も発表されるなど、まさに<fun-filled day>と呼ぶにふさわしい1日となっていた。


加藤和樹は本ライブでラストに披露した新曲「また明日」を、ライブ翌日の4月3日より配信スタート。同曲はその優しいボーカルワークとリリックから、ファンの間ではおやすみソングとして早くも反響を呼んでいる。

取材・文◎山田邦子

セットリスト<Kazuki Kato 15th Anniversary Special Live ~fun-filled day~>

2022年4月2日(土)日比谷野外大音楽堂
出演:加藤和樹 & THE DRASTICS/JOKER/吹野クワガタ(Piano)
【BAND MEMBER】
THE DRASTICS:吉田トオル(Key)DORA(沢頭たかし)(Gt)五十嵐勝人(Gt)川渕文雄(Ba)今村舞(Dr)
JOKER:加藤和樹(Vo)伊達孝時(Gt)/ 吉田トオル(Key)五十嵐勝人(Gt)満園庄太郎(Ba)今村舞(Dr)

■Part1<Piano LIVE>
1.Opening
2.あなたと出会えて僕は幸せでした
3.願いを託して(ミュージカル『北斗の拳』より)
4.生まれ来る子供たちのために
5.春よ、来い
6.いのちの歌
7.ひとりじゃない

■Part2<JOKER>
8.No.1
9.Pain
10.Stand up!
11.challenger
12.ROCKING MAN
13.OVER
14.Summer Breeze
15.Fire Soul

■Part3<加藤和樹&THE DRASTICS>
16.WARNING
17.LOVE GAME(ゲーム『B-project』より)
18.こんな夜が俺は好き(ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』より)
19.15周年怒涛のメドレー
20.Vampire
21.Blue Monday
22.Answer
EN1.Shining Road 2021
EN2.また明日 ※新曲

配信シングル「また明日」

2022年4月3日配信スタート
https://kato-kazuki.lnk.to/see-U-tomorrow


<Kazuki Kato NAKED 2022>

2022年7月22日(金)名古屋ボトムライン
【昼公演】開場14:00/開演14:30
【夜公演】開場18:00/開演18:30
お問い合わせ:ZOOM (TEL) 052-290-0909
http://www.zoomep.co.jp

2022年7月24日(日)心斎橋 JANUS
【昼公演】開場13:30/開演14:00
【夜公演】開場17:30/開演18:00
お問い合わせ:サウンドクリエーター (TEL) 06-6357-4400
http://www.sound-c.co.jp

2022年7月26日(火)恵比寿 ガーデンホール
開場17:30/開演18:30
お問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション (TEL) 03-5720-9999
http://www.red-hot.ne.jp

出演:加藤和樹(Vo)/吹野クワガタ(Piano)/田口慎二(Gt)/川渕文雄(Ba)/髭白健(Dr)

チケット料金:全席 着席指定席 8,800円(税込)※ドリンク代別
■チケット一般発売(PG):2022年5月28日(土)10:00〜

■『加藤和樹15周年スペシャルライブ~fun-filled day~』

2022年5月29日(日)21:00~23:00
放送チャンネル:フジテレビTWO ドラマ・アニメ
※スカパー!放送サービスでフジテレビONE/TWO契約の方はスカパー!番組配信でもご視聴いただけます。
出演:加藤和樹 & THE DRASTICS / JOKER / 吹野クワガタ(Piano)
番組URL:https://otn.fujitv.co.jp/KK15/

◆加藤和樹 オフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報