【インタビュー+楽器紹介】生形真一(Nothing's Caved In Stone)、東阪ワンマン開幕直前に語る新曲と「“2つの初”がおもしろい」

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■初めて生ライブを観たときの衝撃
■それをいろんな人に伝えたい

──「Fuel」はインパクトの強いベースリフで始まり、そのままユニゾンになるかと思いきや、違うギターリフが入ってくるというアレンジになっています。

生形:ユニゾンじゃなくて、別のギターリフを乗せたほうが面白いものになると思ったんですけど、最初はリズムとベースフレーズ、ギターリフが同時に始まる形でした。でも、「ギターリフも印象的だし、別々にしようか」という話になり、ベースとドラムから始まって、音がバッとなくなってギターリフが入り、その後、全て混ざる流れにしました。

──ベースフレーズの上に違うリフを乗せるという発想はさすがですし、インダストリアルなギターリフは音色も含めてすごくカッコいいです。荒々しさとメカニカルな質感を併せ持ったトーンですよね。

生形:ワーミーでオクターブ下を出して、ファズをかけた音ですね。ワーミーをオクターバーとして使うとちょっとデジタルな音になるので、それを活かしました。こういうギターサウンドはNothing's Caved In Stoneの音になりつつあるというか、いつでも作れるんですよ。使い過ぎないように出し惜しみしているくらいな感じです。


▲<ANSWER TOUR 2021-22>

──サウンドメイクのセンスを感じます。それにBメロで世界が変わったり、サビでバーンと行きつつ、テンポは遅かったりする展開も絶妙です。

生形:構成は最初に俺とひなっちで作った後、4人でスタジオに入って音を合わせる中で決まっていきました。俺とひなっちとマニュピレーターの3人で作っているときと、オニィ(大喜多崇規 / Dr)と拓ちゃんが加わったときでは、雰囲気が変わったりするんですよ。そのままのときもあるけど、やっぱり人間がドラムを叩くだけで全然変わることもある。それを踏まえて、「ここはハーフビートになったほうがいいんじゃないか」というようなことを話し合っていきました。

──2人で作るメリットとバンドならではのメリットの両方を活かされているんですね。間奏で、重厚なリフパートから速い16ビートに切り替わると同時にギターソロが入ってくる瞬間が気持ちいいです。

生形:ソロのフレーズも含めて、最初に作った時点であったものですね。俺の場合、あまりないことなんですけど、ソロフレーズがパッと出てきたんです。元々はその前のリフパートはハーフビートではなくて、もっと自然な感じだったんですよ。普通に8ビートから、そのままギターソロへの流れだった。でも、ヘヴィなリフからパッと場面が変わるアレンジをメンバー全員が気に入って、ああいう展開になりました。

──構成やアレンジを丁寧に練り込むことで、「Fuel」は3分半ほどのコンパクトなサイズでいながら、ドラマ性がある曲に仕上がっています。

生形:わりとここ数年のNothing's Caved In Stoneの流行りというか、課題というか。それまではだいたい1曲が4~5分あったじゃないですか。その中で演奏で楽曲をドラマチックに構成していたけど、最近は短い時間の中にドラマをギュッと入れる方向にシフトしています。

──今の時代感にフィットするスタンスですし、最新音楽に求められている疾走感も体現されています。

生形:実際のテンポと異なる体感的スピード感は、今はすごく大事にしているかもしれない。簡単にいうと、バラードみたいな曲でもメロディーの節回しで、すごくテンポがよく聴こえたりするんですよね。逆にいうと、テンポが速い曲なのに間延びして聴こえることもあって、後者は絶対に避けたいので、その辺は最近特に考えているかな。


▲<ANSWER TOUR 2021-22>

──海外のヒップホップなどに顕著ですが、テンポはスローなのに言葉を詰め込むことで、すごくスピード感を出してますよね。

生形:まさにその辺のアプローチに触発されたというか。ヒップホップは完全に歌でビートを作って、バックトラックと混ざることですごく心地いいサウンドを作り出しているんですよね。

──キャリアを積んだメンバーが揃っていつつ、時代の音に敏感なこともNothing's Caved In Stoneの大きな強みになっています。新しい音楽を聴かれるのは、ミュージシャンだからという義務感のようなものからですか? それとも自然なことでしょうか?

生形:以前は常に最先端の音楽を知っていたかったけど、そういう気持ちがなくなった時期もありましたね。好きな音楽だけ聴いていればいいんじゃないかと。今、サブスクによっていくらでも新しい音楽をスマホから聴けるようになって、逆に俺は、それがあるからこそ聴かなくなったんですよ。情報が多過ぎて、どれを聴いたらいいかわからなくなってしまった。最近聴いた曲をもとにおすすめ楽曲を自動表示してくれる機能があって、俺が好きな感じのロックだったり、そういうのをずっと聴いている時期もあったんです。でも、情報に対する取捨選択の仕方が身についてきたというのかな。自分に合うサブスクの使い方がわかってくると、新しい音楽を聴くようになって、やっぱり面白いなと思えたりするんですよね。

──そこから得られるものもありますか?

生形:最近特に思うのは、俺が通ってこなかったヒップホップやR&Bの中に、いろんなヒントがあるということなんです。特にリズムのヒントがたくさん。アメリカでは何年も前からヒップホップやR&Bがシーンの中心にあったのに、自分はそこを避けてきたんですよね。でも、どういうジャンルにもカッコいい音楽があってカッコいい人がいて、それを避けてきたというのはもったいなかったと実感しています。

──話を「Fuel」に戻しますが、“人生は痛みや苦しみに溢れているけど、ここからまた歩いていこう”という内容の歌詞を歌っていますね。

生形:Nothing's Caved In Stoneの歌詞は拓ちゃんと俺が書いていて、もちろんそこには個人的な思いも込めるけど、バンドとしてのスタンスやメッセージを発信するということが、暗黙の了解としてあるんです。「Fuel」の歌詞は拓ちゃんが書いたもので、やっぱりそういう内容になっていますね。最近の拓ちゃんは歌詞の草案をまずLINEで送ってくれるんですよ。それに対する俺らの意見も聞いてくれたりして。今回は特に誰も言わなかったかな。拓ちゃんが自分で何回か書き直して完成しました。


▲<ANSWER TOUR 2021-22>

──普遍的な応援ソングであると同時に、パンデミックや戦争が起きている今の時代に対する希望の歌になっていることが印象的です。では、「Fuel」のギターレコーディングで使った主な機材も教えていただけますか。

生形:まずアンプは、歪んだ音で基本的にマーシャルのJMP-2203。いつも使っているアンプですが、真空管を全部ヴィンテージのムラードに替えたんです。結果、ハイもローもだいぶ出るようになって、出過ぎちゃって少し抑えているくらい。ギターは結構いろいろ使っていて、自分のシグネチャーモデルのギブソンES-355、ヴィンテージのギブソン・ファイヤバード、あとヴィンテージのギブソンES-335です。ギターソロはシグネチャーモデルですね。実は俺、ソロで使うギターはわりとなんでもいいんですよ、大事なのは左手(フィンガリング)だと思っているから。自分が望む程度に歪んでくれればいい。あと、リッケンバッカーの335も使いました。

──リッケンバッカーですか?

生形:最近よく使うんですよ、ワーミーとファズとリッケンバッカーという組み合わせで。

──リッケンバッカーとファズ!?

生形:そう、U2のジ・エッジがやっているんですよ。2019年のU2来日公演を観にさいたまスーパーアリーナへ行ったら、ワーミーを使ったリフをリッケンバッカーで弾いてて。それから自分もリッケンバッカーを使うようになったんです。1966年製のリッケンバッカー335で、アームが付いているタイプです。最近はリッケンバッカーとファズの組み合わせが多いから、「Fuel」のファズパートでも使ったかもしれない。ファズはトーンベンダーだったかな。ちなみに、リッケンバッカーは『ANSWER』のレコーディングでも結構使いましたよ。アルペジオとかでも。

──生形さんがステージでリッケンバッカーを弾く姿も観てみたいです。「Fuel」は、バンドとしてまた新たなところへいったと同時に、多くの人に響く音楽となったのではないでしょうか。

生形:本当ですか? 自分達としては久しぶりに、攻撃的なNothing's Caved In Stoneサウンドを聴いてもらおうかなと思ったんです。元々は大阪野音ライブに合う曲を作ろうと思っていたんですけど、野外に全然合わないゴリゴリの曲になった(笑)。日比谷野音ライブのときに作った「Beautiful Life」(2021年9月)は“野外”という感じでしたが、今回はNothing's Caved In Stoneらしい曲でいこうということになったんです。


──洗練されていて純粋にカッコいい曲だと思います。そして、ここまでの話でも出ましたが、Nothing's Carved In Stoneは4月9日に自身初の大阪城野外音楽堂、4月20日に自身初のホールワンマンとなるLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演といった東阪ワンマンライブ<Bring the Future>を開催します。

生形:大阪野音は初めてだし、実はホール会場でのライブも初めてなんですよ。学園祭出演のときに学校のホールでライブをしたことが一回あるだけで。<Bring the Future>はもともと、大阪野音がブッキングできて「いいじゃん! やろうよ!」ということになって。だったら東京でも開催しようと会場をいろいろ探したらLINE CUBE SHIBUYAをおさえることができた。大阪は初の大阪野音、東京は初ホールという“2つの初”というのもおもしろいなと。

──まさに“未来をもたらす”というライブタイトルにもぴったりですね。当日はどんなものにしようと?

生形:なにができるかをスタッフと話していて、新しいこともいろいろ考えています。実はアコースティックもやろうと思っているんですよ。年末から年始にかけて廻ったツアーはアルバム『ANSWER』収録曲をメインにしたセットリストだったから、4月もその延長でいこうかという話も当初はあったんです。だから、<ANSWER TOUR>の追加公演で大阪と東京という形も考えていた。だけど、新曲「Fuel」をリリースすることになって、セットリストでもベストライブ的なものをやりたいねということになって。来てよかったと思ってもらえるライブをする自信はあります。

──以前からNothing's Caved In Stoneを応援している方は必見ですし、このコロナ禍で知って、まだ生でライブを体験していない人にもぜひ観てほしい内容となりそうですね。

生形:そうですね。ライブの感覚というのはどうしたってPCやスマホ、テレビ画面では伝わらないから。なるべく伝えようと思って映像作品にはしているけど、やっぱり圧倒的に違うものがあるじゃないですか。全身に響く音だったり、会場の高揚した空気感だったり。これは現場に行かないと味わえない。自分が初めて生ライブを観たときの衝撃はいまだに自分の中にあって。それをいろんな人に伝えたいという思いがあるんです。ずっとそういう気持ちでライブをしてきたし、コロナ禍によって最近はそういう思いがより強くなっている。4月の2本のライブもそういう意識で臨みます。

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