【インタビュー】LM.C、アルバム『怪物園』に新たな表現と覚悟「全11曲、どれもが怪物級」

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■10代当時の自分に聴かせたい作品
■自分の集大成を辿りながら作った

──『怪物園』ジャケットのアートワークについては?

Aiji:アートワークについては前回のアルバム『FUTURE SENSATION』を横尾忠則さんに描いてもらって、その後のフルアルバムというのを考えた時に妄想を膨らませることもできれば、現実と重ね合わせることもできて、絶対LM.Cでは表現しないアートワークにしたいと思いつつも、これまでやってきたことからなかなか離れることができなかったんです。で、カメラマンさんの過去のストックやアートディレクターがイメージする『怪物園』的写真を見せてもらった中、俺とmayaがピンときたのがジャケットの写真です。自分たちでもこのアルバムをどう目に見える形で提示できるのか、わからなかったので。

──そうだったんですね。

Aiji:何十枚も見せてもらった中の1枚なんです。今までの自分たちだったら絶対に選ばない要素があって、お互いのイメージがたまたま合致したんですよね。

──あの建物の中が怪物園なのかな?とも思わせられる。

Aiji:そうとも捉えられるだろうし、怪物園というモニュメント的な何かにも見えるし。ある意味抽象的で“これ、何なんだろう?”って思わせられるものにはしたかったんですよね。『怪物園』に入っていく導入としては“?(ハテナ)”でいい。その時、感じたことがアルバムを聴き終わった時にどういうふうに膨らんでいくのか楽しんでほしいですよね。


▲Aiji (G)

──お互いの書いた楽曲に触発されたとか、印象的な曲は?

Aiji:「Happy Zombies」をリリースした時もそうだったんですが、コロナが流行る前に作った曲なのに歌詞に“ウイルス”という言葉が出てきたり、ロシアのウクライナ侵攻が始まる前に作った「Valhalla」という曲でも“マシンガンを撃っ放して”っていう歌詞が出てきますよね。今のような世界情勢になる前だったので、作詞する人って世の中に対するアンテナが敏感っていうか、感度が高い人ほどシンクロする言葉も出てくるのかもしれないですね。ビックリしたし、不思議な気持ちにもなりました。

──「Valhalla」はエッジが効いててダークな色合いで、前半から今までのLM.Cとは違う印象を受けました。

Aiji:収録曲に関しては「Happy Zombies」以外は自分の曲なので、驚きは特にないとは言え、今までのLM.Cにはない楽曲になっていると思います。ただ、自分がやっていた前のバンド(PIERROT)時代から知ってくれてる人たちにとっては「Aijiの曲ってこんな感じだよね」って思ってもらえるものにもなっていると思うし、『VEDA』(2016年発表)以降、自分が10代の頃に“ロックってカッコいいな”って思った原体験というか、その当時の自分に聴かせられる、聴かせたい作品になっているのかが、けっこう重要で。

──なるほど。

Aiji:これまでキャリアを積んできて、ミュージシャンとしての原点回帰じゃないけど、10代の自分が心掴まれたロック、自分が憧れたロックのカッコよさを今一度、今の自分のフィルターを通してアウトプットしている感じ。そういう意味ではLM.C以前の活動も含めて、自分の集大成みたいなところを辿りながら曲を作っている部分はありますね。

──シンプルなのにキャッチーでカッコいいギターリフは確かにPIERROT時代を彷彿とさせます。

Aiji:そうだと思います。そういうふうに思われてもいいと思っていたので。自分の音楽のキャリアは足跡でしかないんですけど、歩んできた道を消せるわけではないし、消したいわけでもない。当時のような表現はLM.Cだからやらないということではなくて、“こういう雰囲気の曲って、やっぱりカッコいいよね”っていうところに素直に向き合って作っていたというか、そんな気分でこの数年は作曲していますね。

──こんなにAijiさんの曲が割合を占めるアルバムはLM.Cでは初めてですか?

Aiji:そうですね。今まではmayaの曲とほぼ半々だったので。


──では、mayaさんにとって印象の強かった曲は?

maya:全体的に今までの延長線上にはあると思うんですけど、「End of the End」は次に向かうという意味では大切な役割を担っていたと思いますね。2曲目の「Elephant in the Room」も原曲とサビが変わったこともあり、今までの自分たちとは異なる曲になった気がするし、歌があるという意味では1曲目のポジションにふさわしい曲になっていますね。サブスク的には曲順は関係なくなっていると思いますが、フルアルバムの並びとして考えた時にはキャラクターが立っている感じがします。

──タイトルも“部屋の中の象”って何を意味するんだろう?とか、mayaさんの歌詞は哲学が加速している印象を受けたんですよね。

maya:そうですね。

──SE的な1曲目「開園」で怪物園の中に入って、いろいろな葛藤や想いが渦巻く中、「End of the End」で突き抜けるというか、答えを出して最後の「閉園」で怪物園を抜けるみたいな解釈もできると感じたんですよね。“終わりの終わり”という言葉は8曲目の「Lost Summer」にも出てくるし、アルバムの物語みたいなものがあって歌詞を書いたんでしょうか?

maya:最初に「End of the End」を書いて、この曲は最後に持ってきたいなと思っていたし、「Elephant in the Room」は最初にしたいと考えていたんですね。「Lost Summer」はアルバムの流れを考えて「End of the End」を意識しているし、単体の物語としても成立する曲として考えてました。それぞれ歌っている内容は説明できるんですけど、それだけが正解ではないので、難しいところではあるんですよね。

──わかります。「Lost Summer」に関してはコロナ禍でのボーカリストとしての心情が描かれていると思ったのですが。

maya:「Lost Summer」は、ゆくゆくは違う気持ちや物語と重なってもいいんですが、2020年の夏のことを歌った曲です。この先、何を歌っていこうかなと思った時に、2020年以降の我々が経験している出来事には目を逸らし続けるわけにはいかないなと。基本的に起こった出来事や世界の状況を直接歌うことは、LM.Cがやらなくてもいいと思っていたんですが、無視できないなと。一回言葉にしておこうと思ったんですよね。歌詞に書いたほど憤っていたり、何かを憂いていたわけではないというか、多少デフォルメしている部分はあるんですが、今、形にしておいたほうがいいなと。堅い言い方をすると覚悟ができたことによって「End of the End」が生まれて、そこから「Lost Summer」に繋がったんですよね。

──「End of the End」には“厭世観 それすら今ではララバイ”というフレーズが出てきますが、コロナ禍を経験してそういう境地に達したんですか?

maya:そこはまさに。思っていることを一回言葉にすることによって「Lost Summer」のような、ある季節の気持ちを切り取った言葉も残せるようになったんですよ。結果的に全部よく出来たなと思いますけどね。


──こういう時代の中、精神世界に深く潜ったからこそ、生まれた歌詞たちなのかなと思いました。

maya:そうですね。この15年間、すんなりできた歌詞は数曲しかなくて、今作もそれぞれ時間はかかったんですが、言葉が生まれない、降ってこないという状況でも必要以上に頭を抱えることはなかったです。気持ち的には5年前や10年前とはレベルが違うところにいるというか、楽でした。当時、ちゃんと頭を抱えて作詞に向き合ってきたからだと思うんですけど、経験もあるし、100曲以上あるLM.Cの楽曲に後押しされつつ、愛せる曲たちになると思ったので、時間はかかっても仕方ないなと取り組んでましたね。3ヵ月後の未来の自分と歌詞の答え合わせをしたいなと考えたりしながら。でも、素晴らしいものができましたね。

Aiji:話を聞きながら今、改めて歌詞を読んでいたんですが、15年がひとつも無駄になってないというか。延長線上であり、作品ごとに表現力が増やしてきたという感じがして、いいですよね。

maya:どの曲もそうなんですが、歌詞だけ見ても成立するものにしたいんですよね。曲がないとわかりにくかったり、日本語として成立しない歌詞ってあると思うんですが、個人的にLM.Cはそうしたくないという想いがあるんですよ。書いてから時間が経てば経つほど他人事になっていくので、今はただただ、“天才だな”と思ってます(笑)。

──自画自賛モードに入ってますが(笑)。

maya:自画自賛というか、自分が書いた感じがしなくなってくるんですよね。

──だんだん作品との距離が生まれてくるということですか?

maya:そうですね。そうなるとより楽しめるし、素直に素晴らしいなと思えるんですよ。

──怪物園の扉を開けて、世界に入っていって、いろいろな気持ちを体験して、出口を見つける。そういう楽しみ方もできると思います。

maya:単純に難しいことを考えずにエンタメとして聴いてもらうのもよし、今回もいろいろな旋律や物語が揃っているので、自分の人生と重ねたり、いろいろな状況を相対的に見て楽しんでもらうのもよし。そこは今まで通りですかね。タイミング的にも良かったですね。あと何ヵ月か発売がズレていたら、この言葉は選ばないなと思うものもあるし、Aijiさんが触れたように戦争が始まってたら、こういうふうに書かなかっただろうなという表現もあるので。

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