【インタビュー】新山詩織が語る、5年半ぶり作品『I’m Here』と再始動「素直な自分のまま歌っていけたら」

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新山詩織が4月6日、約5年半ぶりとなるオリジナルミニアルバム『I’m Here』をリリースする。曰く、「一つの曲が一つの場所から“私は今ここにいるんだ”と声を上げながら、自分と相手を受け止めながら、日々過ごしている」との意味が込められた『I’m Here』は、自身初のセルフプロデュース作品となるもの。再始動から約1年、一切の無駄を削ぎ落としたシンプルな楽器編成の核を貫く、新山詩織本来の美しい歌声が遂に届けられる。

◆新山詩織 画像 / 動画

2012年12月12日にデビューを果たして以降、シングル9枚、アルバム3枚、ライブDVD2枚をリリースするなど着実に歩みを進めていた新山詩織が活動を休止したのが、2018年12月12日のこと。そして2021年4月、突如SNS上に新曲のアカペラ動画をアップして再始動を発表。同年12月12日、活動休止から3年の沈黙を破って再始動後初となる有観客ライブ<新山詩織 live 2021〜In The Beginning〜>を開催した。『I’m Here』には同ライブで初披露された新曲を含む、全6曲が収録される。

活動休止当時の心境、活動休止中の3年間、そして再始動の理由と『I’m Here』収録曲について、じっくりと語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。「止まることなく、一歩一歩前進して、みなさんに曲を届けたい」とは新山詩織の決意だ。

   ◆   ◆   ◆

■今までは余裕のない瞬間がたくさんあった
■今は落ち着いてもっと周りを見られる

──2021年12月12日に渋谷WWW Xで、再始動ライブ<In the Beginning>が行われました。活動休止前最後に立った思い入れのあるライブハウスで、ここからまたスタートするというステージになりましたが、いま時間が経ってみて、あの時を振り返っていかがですか?

新山:本当に久しぶりのライブで。ステージに立って歌うという時間はすごく好きだったので、改めてそれができたことが嬉しかったです。スタッフさんやいろんな人が環境を整えてくれて、活動休止前の最後と同じステージに立てたことがすごく嬉しくて。だからこそ待っていてくれたファンの方々に向かって、この日は素直な気持ちで立とうという一心でした。


──お休み中は、誰かの前で歌うことはしていなかったんですか?

新山:なかったですね。家でひとりで歌って、録音して聴いてみたりとか。あとはスタジオにこもって練習をしたりだったので。みなさんの前で声を出すのは久しぶりでした。

──ステージに立つ前に、何か想像していたことはありましたか?

新山:正直、こうなるなというのは思い浮かべられなかったかもしれないです。果たしてお客さんは、何年ぶりかの新山詩織を前にして、どんなふうに思うんだろうとかが、その日にならないとわからなかったので。とにかく、“戻ってきました。これからまた頑張ります、よろしくお願いします、という気持ちで立つんだ”という思いだけ、当日持っていった感じでしたね。

── 一回ライブをやってみて、気持ち的に何か高まったところはありましたか?

新山:ライブは、自分から出てくるライブならではの歌い方や、気持ちがあるので。その時は、またバンドで歌いたいなという気持ちがすごく出ましたね。

──約5年半ぶりの新作のお話をお聞きする前に、活動休止中のこともうかがっていきたいのですが。まず一旦音楽活動を休止しようとなったのは、どういった思いからだったのでしょう。

新山:当時は、一度音楽の世界から離れて、別の環境に身を置いて過ごしてみたいなという思いがあったんです。だからといって音楽が嫌いになったとかはまったくなくて。ただただ、もっといろんなことをしてみたいという気持ちがきっかけではありました。

──活動を止めるというのは、とても大きな決断ですよね。

新山:そうですね。次の新しいシングルとかアルバムとかを制作をして、これから頑張っていくぞっていう時期に、私からスタッフさんにその思いを伝えたので。結構、勇気は要りました。

──その思いは、結構以前から温めていたものだったんですか?

新山:わりとその1年前くらいから、何かを感じ始めていたのはあったかもしれないです。音楽から離れる/離れないというよりは、これからどんなふうに進んでいったらいいのかなという、迷いの時期に入っていたと思うんですね。といってもミュージシャンとしてまだまだな時だったんですが……でも、もっと見たことない景色を見たいなっていうのがあって。

──それくらい、それまでは音楽が自分の生活のど真ん中にあったということですね。

新山:そうですね。高校を卒業するタイミングで、大学に行くかどうかの選択肢が出てきたときに、一瞬学校に行こうとしていたんですけど。その当時は、家の事情があったし、音楽活動もしていたので。せっかく、大好きな音楽をやれているんだから、中途半端にせずに音楽一本でやっていったほうがいいよねっていうことで、そっちを選んだんです。


──活動休止期間では、学校にも通っていたそうですね。

新山:母親がずっと福祉の仕事をしていたのを見ていたので、自分もやってみたいなという気持ちがあって。2年間、福祉系の専門学校に通いました。音楽から離れて、いざ学校に入って、でも結局はその学校の中でもピアノや音楽に触れる機会があったりして。音楽はそばにずっとあるような環境で学校生活を送っていました。クラスメイトは10代の子がほとんどで、同世代は4〜5人くらいしかいなかったんですけど(笑)。

──それはそれで面白い体験になっていそうです。

新山:10代の中で流行っているものとか、聴いている音楽とか、普段だったらあまり知ることがなかっただろうなということを知れたので、いい刺激になったなって思います。実習とかもあったから、結構グループで授業を受けることが多かったんです。みんなで一緒に物事を考えて答えを出すとか、そういうこともすごく楽しかったですね。10代の頃は、そういうことがいちばん苦手でしたけど。

──ちょっと年上だから、頼られちゃったりもして?

新山:そうですね(笑)。敬語で話されていたんですけど、それに全然慣れなくて、逆に私が敬語になっちゃったりして。でもみんな慕ってくれて、とにかく会話をたくさんしました。意識的に会話をしようって。以前はわりと、相手が来てくれるのを待っちゃうタイプだったので。だからこそ自分で新しい場所を選んで──それが学校だったんですけど、そこに身を置いて、新しい人たちと一緒に生活をするという。そういう部分で、音楽活動をしていた時には得られなかったものをクラスメイトや先生、授業の中からもたくさんもらえたなという。

──クラスメイトは新山さんが音楽をやっていることを知っていたんですか?

新山:入学して数人が気づいてくれたんですけど。私もあえて自分からは一切そういう話をしなかったので。ただのクラスメイト、20代の人っていう感じでした(笑)。

──では2年間、学生としての生活を送ってきたんですね。

新山:濃い2年間でした。

──その間は、音楽との向き合い方や付き合い方というのはどういう感じだったんですか?

新山:昔から好きなアーティストの曲とかは聴いていたし、学校から帰ったらギターを弾いたりもしていて。曲もちょくちょく作っていました。活動していた時は、“作らなきゃ”っていう瞬間がたくさんあったんですけど。そういうこともないなかで、リラックスして作ってみようっていう感じだったんです。

──そういうリラックスした制作からできてくる音楽って、それまでとはこういうところが変わったなとか、自分で客観的にみられる部分はありますか?

新山:出てくる言葉ですね。以前は自分自身に向けて、こうしたいんだ、ああしたいんだっていう、葛藤みたいなものが多かったんですけど。最近は特に、誰かにこれを伝えたいとか、相手に対して伝えたいことが言葉として出てくるようになったので。今回のアルバム『I’m Here』も、友だちや家族とかに対して伝えたいことっていうものになりました。

──ベクトルがそう変わったのは、なぜでしょう。

新山:やっぱり学校で、初めて出会った人とたくさん話したりとか、身の回りの友だちや家族にも変化があって。新しい環境になったりしたので、新しい話をたくさん聞くことが増えたんです。そういった話を聞いた時に、自分もこんなふうにいれたらいいな、あの人に伝えられたらいいなっていう、自分が感じたことがいろんなところでつながっていって。今までは、自分のことで精一杯じゃないですけど(笑)。余裕があるようで、余裕がない瞬間がたくさんあったと思うんです。今は落ち着いてもっと周りを見られるようになったと思うので。そこの変化もすごく大きいかなと思います。

──歌うことの楽しさだったり、逆に難しさが芽生えたことはありますか?

新山:歌に関しては、逆に難しさはあるかもしれないですね。今回のアルバムレコーディングで感じたのは、以前と歌っている時の感覚が全然違うってことで。声の出し方や言葉の言い回し、歌い方だったり、すごく細かい部分で、なんか違うぞ?って(笑)。ちょっと戸惑いに近いものがあったんですが。でも一周回って、今の自分で素直にやるのが一番だっていう気持ちで、レコーディングしました。

──ちょっと迷いなどもあったりしたんですか。“こうしなきゃいけない”じゃないですけど、求められているのはこっちかなと考えてしまうこととか。

新山:ガッツで思い切り歌うというところから、多分抜け出せていないというか。なんだろうな……今まで、自分の内の靄(モヤ)だったり葛藤だったりを思い切り歌うというイメージが、自分のなかにも強く根付いていたので。決してそこを全部消すわけじゃないけど、今は今の私で歌うにはどうしたらいいんだろうなって。その難しさや迷いみたいなものはあったかもしれないですね。

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