【インタビュー】BURNABLE/UNBURNABLE、“捨てたい感情=ゴミ”から生まれたダークポップ「曲に帰ってきてもらうということ」

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BURNABLE/UNBURNABLEが本日4月9日、新曲「灰になって空に舞う」を配信リリースした。re:caco (Vo)曰く、「私の亡き母に向けて描いた曲です。完成した時はとても感動して泣いてしまったのを覚えています」という同曲は、約1年前のデビュー時に制作を完了していながら、あえてこの時期を待ってリリースされるもの。時間を置いたこと、この日に発信されることに大きな意味があったようだ。

◆BURNABLE/UNBURNABLE 画像 / 動画

“あなたの捨てたい感情をも肯定する音楽を──”とは、BURNABLE/UNBURNABLEのコンセプト。重くダークなサウンドに、穏やかさをまとった声と旋律を乗せて届けられるのは、負の感情に寄り添ってくれるような歌だ。映画を思わせる表現力豊かでリアルな情景描写。そこから浮かび上がる心象風景は切なさや哀しさを漂わせながら、音の欠片がre:cacoというアーティスト像を写し出し、万華鏡のように輝く。

BARKS初登場インタビューでは、自身を形容する“ダークポップアーティスト”や“可燃物/不燃物”を意味するユニット名の真意をはじめ、re:cacoの音楽観や活動履歴、そして最新作「灰になって空に舞う」についてじっくりと話を訊いた。闇とポップエッセンスを両立させたサウンドに溢れていたのは温もり。そのサウンドストーリーが、あなた自身の物語として多くの共感を呼びそうな「灰になって空に舞う」の完成だ。

   ◆   ◆   ◆

■私だけが知っている心の中の大切な箱に
■そっとしまっておくだけでいい

──3月27日にBURNABLE/UNBURNABLE初の有観客ライブ<FUNERAL ver.0.0.0 by BURNABLE/UNBURNABLE>が開催されました。来場者にはドレスコードがあったり、空間演出にもこだわったBURNABLE/UNBURNABLEの世界観を伝えるステージとなりました。初のライブを終えて、今どのような思いがありますか?

re:caco:初のライブということで、とても緊張しました。ライブが終わって自分が何を思うのかとかも、まだわからないままで。すごく楽しかったというのは一番にあるんですけど、終わってからはあまり何も残らなかったなというか。後悔もそうだし、やり切った感とかもそんなになくて(笑)。でも、自分的にはよかったのかなって思っています。同世代の女性のお客さんが多かったのは、嬉しかったですね。当日は“黒”というドレスコードだったんですけど、<FUNERAL>──葬式というライブのテーマに合わせた格好で来てくれて。そういう人が、歌に共感して泣いてくれているのもステージからうかがえたので。



▲<FUNERAL ver.0.0.0 by BURNABLE/UNBURNABLE>

──お客さんの前に立ったことで変化もありますか?

re:caco:誰かひとりでも、心が震えて、泣いてくれる音楽ができていると感じられたことにはありがたいなと思いました。

──初ライブは、あらかじめ会場を公開せず、来場者に招待状を郵送したり、ドレスコードを設けたり、来場者限定グッズを販売したり、クローズドな形で行われました。

re:caco:まず、この1年はBURNABLE/UNBURNABLEの世界観をしっかりと作り上げたいと思っているんです。それに、来てくれた方に特別感を味わってもらいたい。今回も、来場者にだけオンラインでのストアのコードを配布したり、チケットを買ってくれたけれど、急に来れなくなってしまった人に、ライブ音源を聴いてもらったりもしています。一般的には、広く聴いてもらうことのほうが正義なのかもしれないですけど、自分だけの特別感だったり、自分だけが持っているという特別感をファンの方々に感じてもらうことを今は重視しています。

──今のBURNABLE/UNBURNABLEの音楽につながる部分で、re:cacoさん自身が“音楽とのいい出会いだったな”というアーティストや曲はありますか?

re:caco: Aimerさんはつらいときとかによく聴いていましたね。でも、音楽がすべてを救ってくれたとは全然思っていなくて。寄り添ってくれている、代弁してくれているなという感じ。自分の思いにちょっとプラスされる感覚というか。

──re:cacoさんはBURNABLE/UNBURNABLEでは歌詞を書いていますが、以前から自分で歌詞を書くとか、音楽を作ってみるということはしていたんですか?

re:caco:適当に口ずさむ程度でメロディを考えたりすることは、よくありましたね。詩集が好きでよく読んでいたので、その真似をして詩とかは結構書いてました。ポエマーみたいな感じです(笑)。なので、歌詞は結構、自分の思うままに書けるなという感覚はあるんですけど、作曲面に関しては苦戦しましたね。



▲<FUNERAL ver.0.0.0 by BURNABLE/UNBURNABLE>

──主に作曲面やサウンド面を手がけるのが、コンポーザーでサウンドプロデューサーの須藤優さんとなります。BURNABLE/UNBURNABLEの曲はどんなふうにでき上がっていくんでしょう。

re:caco:作り方としては、まず、須藤さんがアーティストコンセプトに沿って作ってくれたデモを3〜4曲送ってくれて、そこから作っていった感じでした。当時はまだ何もわからずにやっていたんですけど(笑)。初めて曲のデモをもらったときは、嬉しかったですね。“この曲が自分たちの曲になる” “初めての自分の曲”という実感は徐々に湧いていった感じです。

──アーティストコンセプトとしては、ダークだったり、声質を含む低音だったりというキーワードが挙げられると思いますが、それらを音楽的な方向性に落とし込むという作業もあったという?

re:caco:「この感じはいいですね」とかチーム内でまず話をして。その後、須藤さんのトラックを微調整していただきながら、よりポップスが得意なメロディメイカーのARAKIさんにも加わってもらいました。今もデモは、メロディが乗ったり、歌詞が乗ることで、トラックに手を加えたり、音色を変えたりと何工程も重ねていきますけど、一番最初に手掛けた音源の変遷は特に面白かったですね。最初はもっと暗めのものだったものを、よりポップにしてもらった感じ。そのメロディを乗せたタイミングで、歌詞を乗せたんですけど、その歌詞も結局5回くらい作り直したのかな。それで、BURNABLE/UNBURNABLEとして最初にできたのが、1stソングとなった「このままどこか」でした。

──“メロディはポップに”というものも、もともとのコンセプトにあったんですか?

re:caco:最初に発信する曲だったこともあって、ちょっとポップにしたほうがいいかなっていうのはありました。

──曲をもらって歌詞を書くという作業はどのように行うんですか。

re:caco:デモのトラックから曲のイメージに合うワードをひとつ考えるんです。例えば最初、須藤さんが送ってくれた3〜4曲のデモを聴いて、この曲は宇宙だなとか、家族だなとか、友だちのことを思う曲だなとかイメージしたり。この曲は嫉妬とか怒りとか、曲全体のイメージから、そこに合う言葉をはめていくという感じですね。そういえば新曲「灰になって空に舞う」も、実は最初に送ってもらった数曲のデモに入っていたものなんです。


▲<FUNERAL ver.0.0.0 by BURNABLE/UNBURNABLE>

──活動初期から存在していた曲だったんですね。

re:caco:「灰になって空に舞う」は歌詞の書き直しもなく、すごいスピード感でできた曲だったんです。デモを聴いたときに、家族というイメージがまず出てきて。

──歌が真ん中に据えられた曲で、物語が見えてくる内容になっていますね。先日のライブのMCでは、「歌詞には必ず自分の体験、経験が織り込まれている」と話していましたが、この「灰になって空に舞う」は、よりプライベートな思いが形になった曲で、心の変遷が丁寧に描かれているなと思います。個人の思い、体験が詰まっている一方で、聴いた人が心を寄せられる曲になっていますね。

re:caco:ミックスされて出来上がったときは、信じられないくらい嬉しかったです。実はライブのとき、この曲についてもっと言いたいことがあったんですけど、ステージ上で頭が真っ白になってしまって全然出てこなくて(笑)。「灰になって空に舞う」は、亡くなった母を思って書いた曲なんです。前を向けるようになった今だからこそ、意味のある曲になったんじゃないかな。それまでは、“なんで私は生きているんだろう?”とか、“生きてる価値なんてないんじゃないかな?”と思っていたこともあって。でも、母は私の心のなかでずっと生きていて、それでいいんじゃないかって。私だけが知っている心のなかにある大切な箱にそっとしまっておくだけでもいい。そして、たまに思い出してあげられたらいいんじゃないかなって、今はそう思って歌えているんです。

──時間を重ねたからこそ素直に歌える言葉なんですね。

re:caco:そうですね。書いた当時は殴り書きみたいに綴ったというか、つらいなって思いながら詩にしたんですけど。今は少し前向きになれたかなって思います。満足のいくものができたからこそ、リリースは大事なときがいいなと思っていて。最初は歌詞にある桜の咲く頃にリリースできたらと思っていたんですけど、母の命日である4月9日にリリースできることになりました。

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