【インタビュー】ulma sound junction、「過去一番気合が入っている」

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ラウドロックシーンに軸足を置きながら、変拍子を交えたドラマチックかつエキセントリックな楽曲展開を持つプログレッシブなサウンドと、世界が認めたテクニカルなプレイで差をつけるulma sound junctionが満を持してメジャーデビューする。満を持してと加えたのは、彼らが2005年の結成以来、歩みを止めることなく、シーンの荒波を乗り越えてきたキャリアを持つバンドだからだ。

◆ミュージックビデオ

沖縄県石垣島出身の4人が2005年に東京で活動をスタートさせてから17年。2021年2月にリリースしたEP『primary』がブラックミュージックのエッセンスを取り入れながら、削ぎ落したサウンドとともに歌を際立たせることを追求した作品だったように、彼らのサウンドもさまざまな変遷を辿ってきたが、メジャーデビューを機に新たなキャリアに再着火(=reignition)するにあたっては、自分達の歴史も含め、ulma sound junctionとはどういうバンドなのか、今一度、アピールする必要があると考えたという。

新たなキャリアの第一歩となるメジャー1st EP『Reignition』が、新曲「Modern Bleed」に再レコーディングしたインディーズ時代の4曲を加えた全5曲という、ちょっと変則的な構成になっているのは、そのためだ。

ulma sound junctionとは、どういうバンドなのか。BARKS初登場となる今回、『Reignition』についてはもちろん、バンドの結成にまで遡って、彼らのバックグラウンドや精神的および音楽的バックボーンを訊いてみた。

   ◆   ◆   ◆

■一筋縄じゃ行かない音楽が好きっていうのがみんなの中にある

──メジャーデビュー、おめでとうございます。もちろん、そこをゴールとしていたわけではないとは思いますが、ulma sound junctionにとってメジャーデビューは、活動を続ける上で目標の1つではあったのでしょうか? 

田村ヒサオ(B, Vo):メジャーレーベルからリリースすることを目指したことは正直なかったんですけど、「バンドを続けていく」ということがそもそも大事だなと、改めて思ったタイミングで声をかけていただいたんです。変な話、これがもっと若い頃だったら、メジャーに対して良くも悪くも先入観を持っていたと思うんですよね。それを考えると、どんなふうにメジャーデビューしていたのか、まぁ、今とはなってはわからないですけど(笑)、キャリアを重ねながら時代の変遷も見てきたし、我々の成長も含めた変化も合わせて考えると、すごくいい時期にさらに多くの人の目に留まる機会を与えてもらえたのかな。そういううれしさは感じています。

──メジャーデビューすることよりもメジャーデビューしてからどう活動していくかが、やはり大事になってくると思うのですが、メジャーというフィールドでどんなふうに自分達を高めていけるのか、期待、可能性をどのように感じていますか? 

田村:自分達で設けたハードルではあるんですけど、今回、リリースする『Reignition』では自分達にとって高すぎず、低すぎず、ありのままの姿を打ち出せたと思っています。ハードルの高い、低いを言葉で説明するのは難しいんですけど、変な話、キャラを作りすぎているわけでもないし、守りに入って今の日本の音楽シーンに合わせているわけでもないし、繰り返しになりますけど、ありのままの姿でメジャーというフィールドに立てているという実感はあります。自分達の首を絞めることなく、伸び伸びとやらせてもらっているという感覚もあります。

▲田村ヒサオ(B, Vo)

──つまり、メジャーだから気負ったり、変な色気を出したりせず、これまでと変わらず自分達らしさを貫いていこう、と?

山里ヨシタカ(G):4人とものんびりしているんですよ(笑)。そんな僕達の音楽を良いと言ってくれて、「うちから出さないか」と誘ってもらえたのはすごくありがたいし、そういう協力者ができたのは、すごく頼もしい。チームとして一緒にがんばっていけたらと思っています。助かります(笑)。

──助かりますと言うのは?(笑)

山里:いやぁ、もうすでにいろいろ助けてもらってますよ。たとえばミュージックビデオの撮影1つ取っても、メンバー4人を含め、チームとして取り組むことで、できあがる作品も変わってくるし、こういうふうに取材を受ける機会も設けてもらっているし、これからどんどん良いチームになれればいいですね。

加勢本タモツ(Dr):コロナ禍になってから2年ぐらいになりますけど、僕ら、ドイツで開催された<エマージェンザ2019ワールドファイナル>(世界最大級のインディーズ・バンド・コンテストの世界決勝)で3位になるという勢いに乗ったタイミングでコロナ禍になっちゃったんですよ。そこからどうやって活動していこうかっていろいろ試行錯誤している中でメジャーから声をかけていただけるっていうのは未来があるのかな。世の中、解散しているバンドが少なくないことを考えると、僕ら逆を行っている気がして。今がバンドとして一番いい時期なんじゃないか、みたいな(笑)。でも、続けてきたからこそ、そういうチャンスにも恵まれたと思うし、これを機に曲をいろいろ作るつもりでもあるし、ライブももっとやっていきたいというのもあるし、過去一番気合が入っていると思います。コロナ禍が終わるまでは思うようには活動はできないですけど、バンドとしては良い状態だと思うので、それを4月16日のワンマンライブで見せたいです。

福里シュン(G):僕は周りの人に喜んでもらえればいいかな。スタッフなり、友達なりが、「ulma sound junctionと知り合いだよ」ってもっと自慢できる存在になれたらうれしいなと思っています。

──今回、BARKS初登場でもあるし、メジャーデビューをきっかけに新たに出会うリスナーもいると思うので、『Reignition』について聞かせてもらう前にulma sound junctionのバックグラウンドを簡単に振り返らせてください。元々は、石垣島の中学校の同級生4人が集まって結成したそうですね? 

田村:そうです。ただ、石垣島にいる頃からこの4人でバンドをやっていたわけではなく、その時は4人の内の誰か2人とか、こっちの2人とか、またこっちの2人とかというふうに音楽をやっていたんですよ。その後、福里以外の3人がそれぞれに東京に出てきてから、たまにスタジオに入るようになったんですけど、それも遊びのつもりで。バンドをちゃんとやろうってなったきっかけは、成人式で石垣島に帰ったとき、福里が、えっと、どこに行ってたんだっけ?

福里:ワーキング・ホリデイでニュージーランドに。

田村:行ってたんですけど、成人式があるからっていうことで、久しぶりに帰ってきてたんです。それで、「ヒマなら東京に来て、バンドやらないか?」と誘ったんですよ。

▲福里シュン(G)

──この4人が集まったのは、音楽の趣味が合っていたからですか? それとも人として馬が合ったからですか?

田村:それを言ったら、全員、好きな音楽はバラバラですね。

山里:上京したとき、一緒に遊ぶ人が他にいなかったんですよ(笑)。だから、週に1回、集まって飲んだり、スタジオに入ったりしてたんです。

加勢本:飲み仲間ですね(笑)。

山里:そしたらシュンが東京に来るらしいってことになって、「じゃあ、4人でやるか」ってなったんですけど、最初は軽いノリでしたね。そしたら、シュンが上京してくるのが思いの外、早くて。よっぽどヒマしてたんでしょうね(笑)。

──音楽の趣味はバラバラだそうですが、たとえば自分の中でヒーローだと思っているミュージシャンをそれぞれに挙げるとしたら誰になりますか?

田村:僕はThe Policeのスティングですね。ベース・ボーカルとして、まさに至高の存在で、70歳になった今現在も元気に活動している。そんなふうに洗練されたまま音楽をやりつづける姿には憧れますね。


加勢本: ulma sound junctionがこういうジャンルの音楽をやるようになったという意味では、僕はやっぱりDream Theaterです。こんな展開の曲をやっていいんだとか、こんなにインスト・パートが長くてもいいんだとか、僕ら、影響は少なからず受けていますね。10分超えの曲なんて、普通バンドに要らないじゃないですか。平気でやっちゃうんですよ、Dream Theaterって。うちらも今はコンパクトに曲を作るに流れになってますけど。

田村:若干ね(笑)。

加勢本:以前は10分超えの曲を平気で作ってたんですよ。

──『Reignition』に再レコーディングバージョンが収録されている「Idea」も約10分ありますね。

加勢本:バンドとしての形態とか、曲の組み立て方とか、Dream Theaterがいなかったらこういうふうにはならなかったんじゃないかな。もちろん、影響を受けたアーティストは他にもいますけど、根本はそこなんじゃないかと思います。 

山里:僕は、そうだな、エリック・クラプトンですかね。高校の時に聴いて以来ずっと…。でも、最初にCDを欲しいって言って、幼稚園の時だか、小学校1年の時だかに買ってもらったのはグレン・ミラーでした。

──ビッグ・バンド・ジャズの。

山里:石垣島の社会人の人達が演奏しているのをたまたま見て、親にCDをねだった記憶があるんですけど、その後、親の影響でクラプトンを好きになりました。クラプトンとか、ボブ・ディランとかを聴いている小学生だったんですよ。そこからLed Zeppelinをはじめ、いろいろなものを聴くようになるんですけど。

──最後に福里さんは?

福里:2組いいですか? Mr. ChildrenとBUMP OF CHICKENなんですよ。

田村:あれ、(奥田)民生さんは?

福里:3組でもいいんだったら、民生さんも入れるけど(笑)。みんな、家で流れている音楽の影響が強いと思うんですよ。Dream Theaterはさすがに流れてないと思いますけど(笑)、うちの家は完全にJ-POPだったんで、CHAGE and ASKAとか、そこらへんから、ずっとJ-POPが好きですね。

──なるほど。じゃあ、そんな4人が集まって、バンドをやろうとなったとき、加勢本さんがこういう音楽をやろうと3人をひっぱっていったわけですね?

加勢本:いえ、元々は全然違う音楽をやっていたんです。当時、流行っていたって言ったらおかしいですけど、Hoobastankとか。

田村:Red Hot Chili Peppersとか、それっぽいアプローチが多かったですね。

加勢本:今となっては、俺の意思がみんなに伝わったんだと思っています(笑)。でも、元々、みんな根本的に好きだったんだと思うんですよ。Dream Theaterと言うよりは、こういう展開が多い音楽とか、変拍子とか、ポリリズムとかが。そうじゃないと、こういう音楽やらないと思うんですよね。シュンもJ-POPが好きだって言ってましたけど、変拍子、好きじゃん? 一筋縄じゃ行かない音楽が好きっていうのがみんなの中にあったと思うんですよね。

田村:そうだね。

▲加勢本タモツ(Dr)

──じゃあ、そこから徐々に変化していった、と?

加勢本:どういうふうに変化してきたかは、もうちょっと記憶にないです(笑)。

田村:我々の曲作りも時代が進むにつれ、流動的に変わっていったところはあるんですけど、さっき一筋縄では行かないと加勢本が言ったように、根本に一筋縄で行くような曲に反抗したい気持ちがあって。なんとなく全員が天邪鬼気質なんですよ。

加勢本:それはあるかもしれない。

田村:当時、流行っていたような楽曲を作ったとしても、「単純にそのまま終わるのはイヤだ。俺たちは」っていう感覚を持ち合わせていたと思うし、恐らくその感覚は今になってもあると思うし。僕はけっこう流行りものの音楽も聴くんですけど、そういう流行も取り入れながら、確実に我々のエゴは残っているという曲作りの方法は昔から変わっていないと思います。

──曲作りの話になりましたが、奇想天外と言うか、予想もつかないような展開を持つulma sound junctionの曲は、どんなふうに作っているのでしょうか?

田村:2パターンあって、基本、どちらも最終的に僕がコンポーザーとしているんですけど、最初から最後まで僕が作りこんでいく曲もあるんです。それで、おのおののパートが納得できるフレーズにできさえすれば、割とすんなり行くんですけど、時間が掛かるのが、こういうのをやりたいというセクションを、おのおのが持ってしまっているパターンで、それをどうにか1曲にできないかって考えてしまうんですよ(笑)。しかも、山里が必ず言うんですけど、サビや、その曲におけるテーマと言える部分は必ず必要で、サビは絶対メロディアスでければダメだって。だから、テーマ、メロディアスであること、それとそれぞれのエゴっていうものは、我々の曲作りにおいては欠かせない要素になっていると思います。

──なぜ、サビはメロディアスでないとダメなのでしょうか?

山里:メロディアスと言うか、イントロとAメロとサビはキャッチーじゃないとイヤなんです。逆に言うと、BメロとCメロは何してもいい。やっぱり聴く人がスタートボタンを押してからの数秒で、どれだけ気持ちよく聴けるかっていう耳当たりの良さっていうのが大事だし、サビはきれいであるべきだと思います。あと、終わり方もきれいじゃないとイヤなんですよ。曲を作る時は、終わり方にちゃんと意味がないとって、いつも思っています。好きな音楽の話に戻っちゃいますけど、クラシックも好きなんです。中でもムソルグスキーの「展覧会の絵」って曲が一番好きなんですけど、あれも10曲からなる組曲で、メインテーマがどんどん変わっていって、最後、大盛り上がりして終わるんです。それが子供の頃から好きだったんですけど、それも影響しているかもしれない。だから、Dream Theaterを初めて聴いた時も曲の組み立て方がえげつないと思って、すんなり入ってきましたね。

──クラシックを通っていない上に根が貧乏性の僕は、ulma sound junctionの曲を聴いて、これだけのアイデアを詰め込むんだったら、この1曲であと3曲ぐらい作れるんじゃないかと思っちゃうんですけど(笑)。

全員:ははは(笑)。

田村:それはよく言われます。確かに対バンのバンドからも、「何曲かに分ければいいじゃん」って言われ続けてきましたね。なんで、それをしないんでしょうね(笑)。たぶん、そのフレーズごとに切り取って、1曲にしてしまうと、さっき言ったテーマ、メロディアス、エゴの3つが揃わないんでしょうね。その3つを1つにしたいっていうのが、我々のこだわりなんだと思います。

──さて、『Reignition』について聞かせてください。前作『primary』は、ulma sound junctionが自らの殻を打ち破った作品でしたが、1年ぶりにリリースする『Reignition』が新曲「Modern Bleed」に再レコーディングしたインディーズ時代の4曲を加えた作品になったのは、どんな理由からだったのでしょうか?

田村:『primary』以降も試行錯誤しながら曲は作っていたんですけど、今回、メジャーデビューするにあたって、まず我々の歴史を伝えるためにリテイクしたインディーズ時代の4曲が必要と感じました。新曲の「Modern Bleed」はリード曲という位置づけなんですけど、『primary』以降の我々の最大の長所を集約したものという意味で、「これがulma sound junctionです」という挨拶代わりの1曲でもあるんです。メジャーに行って、「守りに入ったね」とか、「変わったね」とか言われないために、どちらかと言うと、古くから僕らを知っているファンのみなさんや、今まで対バンしてきたたくさんのバンドに、「やっぱりulma sound junction変わらないよね」って言われることを目指したところはあります。『primary』は我々の攻撃的な部分とメロディアスな部分とグルービーな部分をそれぞれ別個の3曲に表現したEPだったと思うんですけど、そこから今回の『Reignition』がもっと多くの人に聴いてもらえる機会になるという意味で、ちょっと意識の変化があったところもありますね。

──「Modern Bleed」を聴いて、『primary』の3曲よりもulma sound junction本来の、らしさを追求していると感じましたが。

田村:そうだと思います。SNSで見たかぎりですけど、初期のulma sound junctionらしさを感じる曲というリスナーの感想を見かけたので、僕らとしてはしてやったりじゃないですけど、「本当にその通りです」という気持ちです。



──ulma sound junctionは新曲を作ると、音源化する前にライブで披露して、お客さんの反応を見ながら、曲をブラッシュアップしていくそうですが、「Modern Bleed」は何度かライブでやっているんですか?

加勢本:1回やったんですけど、大変でした(笑)。

田村:コロナ禍でライブの本数が減っているということもあって、まだ1回しかできていないんですよ。確かにこれまではレコーディングのプロセスに入るまでに曲をライブで育てる期間を設けることがあったんですけど、そうじゃない作り方も求められているのかなと思ったと言うか、メジャーで活動する上では、そういうスピード感も大事なんだと思いつつ、思いきりの良さって言ったらいいのかな。「この曲はこうだ」というふうに自分達で決める感覚も養っていかないといけないのかなと思いながら、今回はスピード感を意識したところもあります。ただ、それは曲によりけりですけどね。そういう作り方が合っている曲もあるだろうし、逆に、これまでどおり、もうちょっとライブでやって、この曲のことを知りたいという曲もあるだろうし、そんなふうに分かれていくと思います。

──「Modern Bleed」の、それぞれのパートの聴きどころを教えてください。

山里:僕らのようなヘヴィ系のバンドではピックアップがシングルコイルのギターってあまり使わないと思うんですけど、僕はクラプトンが好きだっていうこともあって、シングルコイルが載っている配列のギターが好きなんです。そのシングルコイルのギターを、今まではクリーン・サウンドばかりに使っていたんですけど、今回「Modern Bleed」で言ったら、イントロのジャギジャギした金属を叩いたような音はシングルコイルにしか出せないと思って、使ってみました。それがヘヴィだよねって感覚が『primary』から出てきて、今回、「Modern Bleed」ももちろんですけど、リテイクした曲にもがっつり入れたんですよ。「Rotten Apple」のイントロもシングルコイルを使うことで、イントロからがらっと音を変えちゃって、なんだかすっごく悪い音になってます(笑)。レコーディング中、メンバーから「革ジャンを着たオールバックの悪そうなおっさんが弾いているような音になってるよ」って言われました(笑)。もちろん、基本、歪みはハムバッカーなんですけど、シングルコイルの音も使うことで、いいアクセントになっていると思います。

▲山里ヨシタカ(G)

──「Rotten Apple」の音色の話が出ましたが、再レコーディングした4曲は音色のみならず、アレンジも変わっているんですか?

山里:けっこう変わっています。リアレンジしてからレコーディングに臨んだ曲もありますし、レコーディング中にアレンジを変えた曲もあります。サビのコードをがらっと変えた曲もあるんですよ。

──なるほど。今のulma sound junctionのサウンドを、過去曲に落としこんだわけですね。加勢本さん、「Modern Bleed」のドラムの聴きどころは?

加勢本:この曲は4分の5拍子が基調になっているんですけど、それを聴かせたかったっていうのはありました。イントロとCメロのフレーズが4分の5拍子なんですけど、リズムで言うと、それがメインになってるのかな。作っている段階ではそこは意識していました。随所で出てくるじゃないですか。それが聴きどころって言うか、おもしろいところなのかなと思います。気づいたらすげえ入っているんですよ。

──そういうリズムを入れることで、曲調に変化が生まれるということですか?

加勢本:そうですね。イントロのドラムのフレーズを重くしたのがBメロ、Cメロのフレーズになっているんです。だから、この曲はこのリズムがメインと言えば、メインだよね? 

田村:そうだね。上に乗っかっているフレーズとかスケールとかがメジャーか、マイナーかの調も含め、変わっているので、意外とわからないかもしれないですけど、リズムのテーマとしては、そのフレーズがずっとイントロ、Bメロ、Cメロ、アウトロでずっと鳴っているんです。それにもかかわらず、それを感じさせないところがおもしろいと思います。

──そのリズムから作っていったんですか?

加勢本:そういうわけでもないんですよ(笑)。むしろ後からこのリズムを当てはめていったんです。だから、田村が作ってきたデモがほぼ原形をとどめていない(笑)。でも、うちらの曲ってそういうことが多いかもしれないです。

田村:その曲で表現したいテーマが明確にならないまま曲作りに入ってしまうことがあるんですよ。まさに「Modern Bleed」がそれで、僕の表のテーマとしては、2つ目のイントロ、CDで言ったら30秒ぐらいのところがメインのつもりでいたんですけど、みんなのエゴを1曲の中で統合していくうちに複合的な要素として出てきたものがいつの間にか楽曲のテーマにシフトしていったというのがおもしろいと思いました。

加勢本:予想外でしたね。でも、曲を作りながらわくわくするところでもあるんですよ。

──ベースボーカルとしては、どんなところが聴きどころだと?

田村:ライブの時、メインで使っているWarwickっていうベースがあるんですけど、今回、初めてレコーディングでそれを使わなかったんです。代わりにDINGWALLってメーカーのベースを使ったんですけど、そこでサウンドがさらに現代風になったと思います。そのサウンド・チェンジはけっこうデカいのかな。それは僕だけではなく、ギターの2人にもギターを代えてもらったらおもしろいサウンドができるんじゃないかなと思ってます。ボーカルとしては、メロディにはもちろん自信があるんですけど、実はシャウトとかデスボイスとかに関して、最近、俺、そんなにうまくないなって向き合うきっかけがありまして。今のエンジニアさんと組んでから、もっと出せる方法があるんだって思って、今回、シャウトに関しては、さらに真摯に向き合ったところはあります。かなり練習もしたんですよ。もちろん、まだまだ精進するべき部分ではあるんですけどね。

──シャウトの練習って何をやるんですか?

田村:叫ぶだけなんですけど(笑)、突き詰めると、音の粒の粗さが変わってくるんですよ。あと、どこで響かせるのか? 口の中なのか、鼻の中なのか、頭のてっぺんなのか、なんなら後頭部なのか。それでシャウトの乗り方ってだいぶ変わってくるんです。これまではそんなに意識して聴いてなかったんですけど、他のボーカリストのシャウトを聴こうと思って、パンク、ハードコア、デスコア、グラインドコア、いろいろうるさい音楽を聴いて、研究しました。

──最後に福里さん、お願いします。

福里:ブリッジミュートをがんばりました(笑)。

山里:やったことなかったもんね。

福里:正しいやり方を教えてもらって、レコーディングでやったんですけど、モニターの波形に出るんで、その波形を見ながら、「それそれ!」「それを続けて!」みたいな感じでやりました。

田村:こういうラウドな音楽をやっているギタリストなら普通やってるよねってところを通ってなかったんですよ。 

福里:Mr.ChildrenとBUMP OF CHICKENはやってなかったんですよ(笑)。

田村:メタル的なブリッジミュートはやらないと思います。

加勢本:いわゆるズンズン系のね。

福里:「Modern Bleed」はそれが多い曲だったんですよ。今後、やるかやらないかわからないですけど、今回、コツは掴みました(笑)。

──ところで、「Modern Bleed」の歌詞は、現在のSNSが作り出した監視社会の恐怖を歌っているように感じられましたが。

田村:単純に僕が感じたことなんですけど、日本ではSNS上の言葉の暴力、誹謗中傷は法律で全然、取り締まられていないという感覚があって、我々はそういうことをもっと考えるべきじゃないかという思いを込めました。

──タイトルの現代的な流血とは、そういう意味だったわけですね。田村さんは歌詞を書く上で信条としていることはありますか?

田村:音響として言葉を捉えているってことですね。歌詞を書くプロセスにおいては、9割ぐらい響きやリズムで言葉を選んで、残りの1割で物語を繋げているんですよ。だから、メンバー達も歌詞の内容については意外に知らなかったりするんです(笑)。

──なるほど。「Modern Bleed」の歌詞の内容について、話していただきましたが、尋ねられれば、そういうふうに答えるけれど、曲として聴いてもらう上で、歌詞に込めたメッセージを伝えようという気持ちはない、と?

田村:そうなんですよ。僕個人の価値観を押しつけるのは傲慢なことだと思っているので、聴いてくれた人達がもし僕と同じことを感じてくれたら、それはそれでうれしいですけど、曲としてもっと俯瞰で捉えてほしいと思っているんです。だから、このメッセージを伝えたいみたいなことは、歌詞を書く時にテーマとして考えないようにしていますね。

──ulma sound junctionがどんなバンドなのか、だいぶわかってきました。最後に『Reignition』リリース以降の活動予定を教えてください。

田村:コロナ禍が収まっていない状況ではあるので、4月16日のリリースライブの後のライブはまだ決まっていないんですけど、今までどおりライブができる状況に戻っていってほしいと思いますし、僕らとしては今回、さらにたくさんの人に聴いてもらえる機会をもらったので、『Reignition』で止まらず、もっとでかい振り幅で、こんな表現もできるんだってことをアピールしながら、いろいろなシーンに立つことが重要だと思っています。ラウド・シーンだけで頂点を目指すのではなく、もっといろいろなシーンに立てるような作品を作っていこうと考えています。

取材・文◎山口智男

メジャー1st EP『Reignition』

2022年4月13日(水)発売
品番:KICS-4044
定価:¥2,200(税抜価格:¥2,000)
配信リンク:https://king-records.lnk.to/Reignition

Track-Listing
01. Modern Bleed
02. Rotten Apple
03. Utopia
04. Idea
05. Elem-5/6/7

<ulma sound junction One Man Live 2022 “Reignition”>

202年4月16日(土)Shibuya CYCLONE
Open:17:30/Start:18:00

・Ticket
前売¥3,800(税込)|当日¥4,300(税込)
配信¥2,800(税込)(アーカイブ 1週間有り)

◎一般発売
3/16(水) 19:00~▶
https://t.livepocket.jp/e/mzx2c

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