【インタビュー】Rhythmic Toy World「完成がないからこそ僕らは新しい作品を作りたい」

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Rhythmic Toy Worldが、約3年ぶりとなるミニ・アルバム『ココロートの種』を4月6日に発売した。新体制として本格的な始動となる今作のリリース発表時、オフィシャル・ウェブサイトを見ると、「7曲7様でまさに“Rhythmic Toy World”な作品となりました」とあった。そこで今回は、メンバー3人にミニ・アルバムの制作過程を1曲ごとに語ってもらった。まるでバンドを組んだばかりの少年たちのような、音楽への純粋な想いが伝わってくるはずだ。

■「はじめまして、Rhythmic Toy Worldです」っていう気持ちで
■みなさんに聴いてもらいたいなという思いがありました


――まず、『ココロートの種』を制作するにあたってメンバー間ではどんな話をしたのでしょうか。

内田直孝(以下、内田)):“初心に返ろう”というか、1枚目のミニ・アルバム(2013年『軌道上に不備は無し』)を出したときの気持ちで作ろうという話はしました。コロナ禍でライブができなかったりして、自分たちの中では良い意味でリセットされたようなところがあったんです。それは進化や変化、自分たちの中で成長したなっていう部分が各々にしっかりあったので。それを世の中に出すチャンスをもらえるとなったときに、今までのイメージをあまり気にせずに、今自分たちがカッコイイと思うもの、良い曲だと思うものを、「はじめまして、Rhythmic Toy Worldです」っていう気持ちでみなさんに聴いてもらいたいなという思いがありました。

岸明平(以下、岸):コロナ禍で、ピアノや打ち込みとか、みんないろんなスキルが身に付いたんです。ただそれをやりすぎないように、バンドを軸にして初心に返ってやろうという話はしました。

須藤憲太郎(以下、須藤):みんな家で打ち込みで作ることができるようになったことも相まって、スタジオに入っての直感やセンスを出しあいつつ制作できて、すごく成長できた実感のあるレコーディングでした。

――成長しつつ、バンドを始めた頃のパッションがあったわけですね。

内田:テンションは高かったです。高校の軽音楽部だった頃の、ただ好きだからバンドをやりたい、誰かに自分たちの音楽を聴いてもらいたいっていう、ストレートな気持ちでしたね。

――制作の第一歩が「青と踊れ」だったんですか?

内田:そうです。アルバムをリリースしたいという話はみんなでしていて、出すのならツアーをまわりたいですけど、せっかく良い作品を作れたとしても、ツアーが中止になってしまったら、作品の熱量が下がってしまうし、曲たちに申し訳ないなって。そこのタイミングを見極めるのがなかなか難しかったんです。「青と踊れ」という企画は1年以上前からスタートしていたプロジェクトだったんですけど、コロナの状況を見つつ入念に話し合いながら進めて行ったんです。最終的に「青と踊れ」のドキュメンタリー、MVが完全に作れることが決まった段階で、この曲を含む新曲たちでミニアルバムを出そうという話になりました。


――「青と踊れ」については、前回のインタビューでは内田さんに語ってもらいましたが、岸さん、須藤さんにとってはどんな曲ですか。

岸:ドキュメンタリーで学生さんが踊っている姿を見て、それぞれがどんな想いで踊っていたのかを知ってめちゃくちゃ感動しました。完成したMVを見て、学生さんたちの想いが曲をまた別のものとして昇華してくれたという感覚になりました。

内田:今までのMVでは感じたことのない感覚になったよね?自分たちのMVだけど、自分たちの曲がそこに鳴っているだけで、もう別物の映像作品を見せられているような凄みがあった。

岸:そうだよね。それが何故かを考えると、学生さんたち1人ひとりのドラマがあったりとか、「ミクロが重なりあってマクロになる」みたいな積み重なりが、作品としての力になっているんだと思いました。今までにないものができたと思います。

須藤:「これがRhythmic Toy Worldのダンス部に贈る曲だ」って投げたら、想像以上のMVが出来上がったというか。よく覚えているんですけど、スタジオで曲を練習しているときに、「ここではこういう動きが入りそうだよね」って言いながら、僕が踊ってみたりしたんです。でも、そんなものを遥かに超えた作品になっていました(笑)。岸が言ったみたいに、小さな力が大きな力になっていく感じで、僕らが想像していた100億倍ぐらいすごい作品になったと思います。僕はこの曲を弾いてるときに、いつもMVが頭の中に流れてきて、泣いちゃいそうになるんです。それぐらい心に入ってきた作品です。


――「青と踊れ」の後に作った曲はどれですか?

内田:「ゴーストタウン」はもともとずっと頭の中にあった曲なんですけど、デモを最初に作ったのは「ありったけ」かな?学生さんを目の前で見ていて、学校だけじゃなくて社会人、バンドマンたちにも卒業があるし、いつかは訪れるかもしれない別れ、でも死別とかで一生会えない別れじゃなくて、お互いがそれぞれの道を選んで進んでいくさまみたいなものを歌にしたいなと思ったんです。

――学生さんたちから受けた影響は、今作に結構反映されている?

内田:悪い意味ではなくて、大人としての矜持に気付くこともできましたし、いつの間にか自分たちの中で身を潜めてしまったような気持ちがすごく浮き彫りになった感覚がありました。それってラッキーなことだし、自分はまだ捨てたもんじゃないなって思ったんです。誰でも、自分を見限ってしまうような瞬間、苦しかったり挫折したり、楽しいときでも、なんだか急にシュンとしてしまうことってあるじゃないですか?でも、それらすべてが人間らしくてじつはめちゃくちゃ素敵なことだなっていうことを、年齢性別問わずこの作品を手に取ってくれたみんなに伝えたいなと思ったんです。その気持ちをありったけ楽曲に込めたら、「ありったけ」という曲になりました。

――こういうバラードはRhythmic Toy Worldの1つの真骨頂ですよね。

内田:そうですね。サビのメロディはパッと浮かんでいたんですよ。「青と踊れ」の撮影を京都に観に行った帰りの新幹線の中で、なんとなく浮かんでいたものを家に帰ってすぐボイスメモに録ったんです。サビのメロディと歌詞は、事務所でメンバーに「とりあえずサビだけ」ってアコギで弾き語りして聴かせた覚えがあります。

岸:最初にワンコーラスと一番のサビまでできているのを聴かせてもらったんですけど、そのときすでに直孝の中で伝えたいことが歌詞になっている力強さを感じました。なので、バンドで作っていくときもそこは壊さないようにしようと思って、難しいギターを入れたり変な展開にしないようにしました。直孝の歌を一番活かすアレンジにしたかったんです。

須藤:内田の中でもう出来てるものがあって、それが僕らの中にも明確に入ってきたので、それを壊さないように、さらに僕らが増幅させられるような寄り添い方を、とくにこの曲は意識しました。

――内田さんは前回、「歌詞を先に書くようになった」とおっしゃっていましたが、この曲もそうなんですか?

内田:そうです。最初から書きたいと思っていたことをそのまま書きました。まったく悩まなかったです。歌詞が降りてきたというよりは、「楽曲に書かされた」みたいな感じですね。

岸:それは本当に伝わってきました。直孝の体からスッと出てきた歌詞というか。芯があるし嘘をついていない、本当に直孝が言いたいことなんだろうなって。

――歌詞があるのとないのとでは、アレンジの仕方の全然違ってくるんじゃないですか?

岸:そうなんですよ。それが今回は大きかったですね。歌詞がある状態とない状態では気持ちの込め方が全然違います。「青と踊れ」は、自分がピアノのアレンジを作ったんですけど、Aメロの〈眩しさは時として〉という歌詞のところでちょっと高音で眩しい音を入れてみたりとか、〈「才能」というモンスターに〉のところは、裏で力強いモンスターみたいなコードを入れたり、本当に1音ずつピアノのアレンジをしたんです。今回はほとんどの曲で歌詞が先に付いていたので、アレンジに関してはそこがすごくデカかったです。

須藤:僕は歌詞とメロディ、リズムの間を取り持つところをどれだけ差異なくやれるかを考えてベースを弾きました。1音入れるか入れないかで曲のイメージがガラッと変わるので、「ありったけ」に関しては1音1音の選び方をすごく意識しました。とくに後半の静かなところで僕のベースが上から降りてくるところがあるんですけど、そこは何パターンも作って、岸に「これどう?」って聴きながら、ベースだからこそできる1音の重さを大事にしました。

――「残像とエイトビート」は文字通り8ビートでストレートな曲ですね。歌詞に【魂の叫び】と書かれた箇所でシンガロングしていますが、コロナ禍のライブで声を出せない分、意識的にシンガロングを入れているように受け取れました。

内田:「いつかこれをみんなで歌える未来が来ますように」という願いと祈りみたいなものを曲に託しました。ライブ会場ではみんなはまだ声を出せないですけど、自宅やカラオケだったら思う存分歌ったり叫んだりできるかもしれないし。でも、明確に歌詞じゃないもの、各々の尺度で叫びたいことを叫んだり声を出せるようなものをみんなに届けたいと思っていました。ライブでもみなさんが声を出せなくても僕らだけで完結できるものに仕上げたつもりです。そういう意味では、時代と共に変化を楽しんでもらえるような作品かなと思います。

須藤:この曲は、本当にエイトビートに対して愚直に刻んでやろうという思いがあって、ドラムもエイトで叩いているので、ベースもずっと刻みまくっているので、正直「修行」でした(笑)。

内田:エイトビートってシンプルで簡単そうって思っていらっしゃる人もいるかもしれないですけど、かなり難しいんですよね。要は同じリズムを同じ感覚でずっと刻み続けないといけないので。針の穴に糸を通すような作業に近いと思います。ちょっと1音前や後ろに行っただけでズレて聴こえちゃうし、スピード感がなくなっちゃうので。この曲は体から湧き上がってくるエネルギーを、思いっきり出したかったんですよね。だからスタジオで合わせてたときも、何かわからないけどみんなテンションが高かった(笑)。

岸:確かに(笑)。この曲は結構スタジオで何度も合わせた記憶があって、アレンジも何パターンかあったんです。でも結局ストレートなこのアレンジになって、「とことんエイトビートで行こう」というというところに落ち着きました。そこもやっぱり、ライブ感を味わってもらいたかったからなんですよね。ギターは敢えてハウリングを起こしていたり、ミックスもいつもは左右にバッキング、真ん中にリードギターが鳴っているんですけど、この曲は常にバッキングとリードギターが左右に分かれているんです。意外とそういうミックスは今までなかったので、そこでもライブ感を出そうと思っていました。

須藤:俺ら、スタジオでライブしてたよね?

内田:そうそう。基本的にみんなちょっとドヤ顔だった気がします。なんかわかんないけど、カッコつけてたなあ、みんな(笑)。この曲演奏してると自分がカッコよくなった気がするんだよね。

――それこそ、軽音楽部でバンド始めたばかりの高校生じゃないですか(笑)。

岸:まさにそうでした(笑)。

内田:「ヤベえ曲作っちまった!」みたいな(笑)。この曲には、最初に話した「ただ好きだからバンドをやりたい、誰かに自分たちの音楽を聴いてもらいたい」っていうストレートな気持ちが表れていると思います。

――「バーサーカーステップ」は今作で一番意外性のあるサウンドというか、ジャパメタっぽいイントロのギターに驚きました。

岸:はははは(笑)。仮タイトルが「ボスバトル」で、イントロは直孝のデモに最初から入っていました。

内田:これはもう、僕の中に眠る“全中二感”を詰め込みました。事前に「こういうリズムの曲が欲しい」ってみんなで話していたんですけど、そこからどういう曲にしようかって考えていたんです。僕は休日にゲームをめちゃくちゃやるんですが、ボス戦をクリアしたときにあのイントロが自分の中で鳴ったので、そのままデモに録音しました。僕の中に鳴ったBGMがあれだったんです。自分で言うんかい!って感じですけど、「絶妙なダサさ」というか(笑)。「UNCOOL IS COOL(ダサイはカッコイイ)ってやつですね。ちょっと遊びが入っている感じが、中指立ててる感じもあってカッコイイなって。

岸:僕は歌詞がやっぱり、めちゃくちゃ中二で大好きなんですよ。2番の〈ザナドゥ〉が歌い方といいフレーズといい中二感があって好き(笑)。その歌詞を見ながらギターフレーズを作っているときは楽しかったです。

――途中でスカっぽいフレーズで展開が変わりますね。

岸:裏打ちになりますね。踊れる感じを目指して作りました。

須藤:このビートが来たら踊るしかないでしょっていう。自分もそれに合わせて作りました。

内田:ぶっちゃけみんな中二なので、楽しかったんだと思います。

――「残像とエイトビート」の高校軽音学部から「バーサーカーステップ」でさらに中二に遡るという。初期衝動丸出しですよね(笑)。

内田:そうですね(笑)。カッコイイとかカッコよくないとかを他人に決められたくないというか。

――今のセリフがもう、中二(笑)。

岸:ははははは(笑)。

須藤:「キングオブキングス」ですから(笑)。

内田:本当に、その感じなんですよ。「こういうのをやれば人にウケるだろう」とか、この曲はそういう気持ちがまったくないんですよ。

岸:デモの「ボスバトル」から、直孝がみんなの前で「本チャンのタイトル決まったわ。「バーサーカーステップ」」って言った瞬間、全員「おおっ!かっけえ!」みたいな(笑)。全員中二なので(笑)。

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